オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳 作:ユリガスキー
「ではそろそろ何を建てるかについて話し合いますか」
「えっ……えーと、凛ちゃんは放置でいいのかしら」
彗月ちゃんの視線の先には、空を見上げたままニャーニャー鳴いてる凛ちゃんの姿があった。どうやら、ガチ清楚なお嬢様と腹黒いお嬢様(?)との温度差で脳がやられたようだ。
とはいえ、今の俺たちには凛ちゃんとリスナーの回復を待つだけの時間は残されていない。まだ何も成していないというのに、もう30分以上も経過している。このままだと今回の配信も3人で楽しく遊んだだけで、何の成果も得られませんでしたーなんてことになりかねない。
というか、もともとの俺の目的は横道に逸れた会話を軌道修正することだったはずだしな!
「そもそも渚ちゃんが過去の境遇を語らなければこうはならなかったんじゃ」
「あー、あー、何も聞こえませーん。
というか、あのお話しは咄嗟についた嘘なので、過去の境遇でもなんでもないですよ」
「あら、そうなの?」
どうやら何か企んでいそうな雰囲気を感じ取った彗月ちゃんだったが、語っていた内容そのものは本当のことだと思っていたらしい。
「彗月ちゃんを騙せたのなら、私の演技もなかなかのものですね♪」
「なかなかってレベルじゃなかったわよ? 「嘘の中に真実を混ぜると信憑性が増す」なんて言葉があるけれど、あの時話したことに真実はなかったのかしら。友達がとか、仮面を被ってとか」
「……えぇ、生まれてこの方、仮面を被ったことはないですよ。ただの1度も、ね」
本当か?
友達は?
渚はなんか友達少なさそう笑
普段の渚でもお嬢様な渚でも少なさそうだよな
↑前者はついてこれるやつが少ない、後者は雰囲気云々でね
「私に友人がいるか、だなんて愚問ですよ? 今の私には最低でも9人もの友人がいるのですから。ねぇ、凛ちゃん」
「そーにゃ、そーにゃ! エトワールに来るまで友達0人だったとしても、今の渚には9人も友達がいるのにゃ! 大成長だにゃ!」
「グハッ」
り、凛ちゃん……
悪気がないからより刺さるなw
まさか復活と同時に刺しにくるとは
無邪気さって時に罪なんやな
「い、いえ、私は気にしていませんよ。えぇ、気にしていませんとも。そんなことよりも早くマイクリを始めましょうか」
「? おぉー!」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
…………ここまでくるのに本っっっ当に長かった。すぐに興味が別のものに移る凛ちゃん、悪ノリする彗月ちゃん、可愛いとしかコメントしないリスナーども。
話が横道に逸れるたびに軌道修正をして、犬や猫を発見したら見つからないよう視線を誘導して……これら全てをお嬢様言葉を使いながらだったからマジで疲れたぜ。
だが、これでようやく俺たち三期生も何を作るのか決まったんだぜ!
そう! 俺たち三期生が作るものは「雪だるま」だー!
おぉん? 雪だるまを作るって、なんかちょっとショボくないかって?
そこはほら、物量でなんとかするんだよ。
地平を埋め尽くすほどの大量の小さな雪だるま、ところどころに中ぐらいや大きめな雪だるまを作り、中心地に超巨大雪だるまを作ってやれば……なーんか、らしくなってきただろ?
「名付けて「質より量〜建築センスがないなら物量で誤魔化せばいいじゃない〜」作戦、ですね!」
「その名前だけはダサいから却下にゃ」
お前は建築センスある側だろうが
作るのめっちゃ大変そう(小並感)
でも一期生や二期生の建物と比べたら地味じゃない?
あー、点数が低くなる可能性があるのか
「そこは見せかたで工夫するのはどうでしょう。たくさんの雪だるまを一望できる高台、もとい展望台も一緒に作っておくのです」
「なるほど。審査員が見る場所さえ良ければあとは誤魔化しがきくというわけね。それならいっそのこと審査員が通るルートもあらかじめ決めておいて……」
よしよし、これで彗月ちゃんの意識は雪だるま作成のほうにいったようだな。これで色々と楽になるぜ!
ちなみに、クリスマスの期間中は建物を作る範囲には雪が降るよう設定を変更しているため、雪だるまが乱立していても違和感はないはずだ。
という訳でゆるーく雑談しながら雪だるま(小)を延々と作っていく。雪だるま(中)や(大)、超特大雪だるまは後日3人で設計図を作成するということで、簡単に作れる代わりに数が膨大な雪だるま(小)を少しずつでも作っていこうということになったのだ。
雪だるま(小)のサイズは縦3ブロック×横3ブロック×高さ5ブロックとかなりコンパクトだ。たった45ブロック分しかないなかで、雪だるまの丸みを表現するために頭とお尻を階段ブロックを使って丸みを表現したり、マフラーを巻かせることによって顔と胴体の境目を表現したり、目や鼻をボタンなどで代用したり……工夫を凝らしてなんとか45ブロック以内に収めることができた。
「おぉー、案外この小ささでも雪だるまって認識できるもんなんだにゃー」
「……でもこれで大丈夫かしら」
「これだけ見ると低クオリティな建築かもしれませんが、この子がメインというわけではないですから。それに、大量に作っていけば案外観れるものになりますよ」
無事設計図も出来たため、3人で手分けして雪だるま(小)を量産していく。
途中、凛ちゃんの「帽子とか被せてみてもいいかも」という思いつきで、一部の雪だるまには個性をつけよう! ということになった。クリスマスの帽子を被せたり、花を植えた鉢を頭に置いたり、鼻を伸ばしたり、手と脚を生やしたり……
そんな一幕もあり、作業のペースはちょっとだけ落ちちゃったが、まぁこれくらいなら問題ないだろ。
そんな感じで俺たちは配信の最後まで雪だるま作りを──
「うにゃぁぁぁあああ!!! もう飽きたのにゃーーー!!!」
──するつもりだったが、単調な作業で凛ちゃんが根を上げてしまった。
おいおい、この程度で根を上げるとはやる気が足りないんじゃねーの?笑
「凛ちゃんもお疲れのようですし、ここらで少し休憩しましょうか」
くそっ! 思った言葉がお嬢様フィルターを通してまったく別の言葉になって出てきてしまう!
……いや待てよ? よーく考えてみると思考と言語が一緒に出てくるタイプの人間である俺にとって必要なのはお嬢様フィルターだった……?
「なら休憩がてら先輩方の建築を見に行きましょうか」
「おぉー! さっそく見に行くにゃ!」
お嬢様フィルターの有用性に気づき始めた俺を置いて、先輩達の建築を見に行くことが決まってしまった。
またもや横道に逸れてしまった訳だが、今日の進捗を振り返れば作業の量は十分だろうし、期限までにはまず間違いなく完成するだろう。そして何よりも、俺自身が先輩達の建築を見たい!
3人の思惑が一致したということもあって、俺たちは意気揚々と先輩達の場所へとお邪魔することにした。