オタク文化の創造神と呼ばれた俺がVtuberになった訳 作:ユリガスキー
改めて説明しておくと、一期生はクリスマスツリーを、二期生はサンタの像を作っている。
一期生は他と比べて、人数が1人多い上にマイクリ経験者も多いので、既に工程も半分以上進んでいる。ツリー内部では色々な仕掛けを作る! と意気込んでいたため様子を伺おうと中に入ろうとしたのだが「立ち入り禁止!」と書かれた看板があったため泣く泣く引き下がった。これはクリスマスのお披露目会までお預けだな。
二期生は……まだ土台しか作っていないから、今の段階ではサンタのサの字もないな。というか、土台デカ過ぎんだろ……どんだけ大きなサンタ像を作ろうとしているんだ?
二期生の3人全員マイクリ初心者なこともあって、期限に間に合うのか怪しいところだが、後々救済処置があるので心配はしなくても大丈夫なはずだ。
「いやー、これは凛たちも負けていられないにゃ」
「そうですね。私たちも一期生に対抗して超巨大雪だるまの内部に何か作ってみましょうか」
「おぉー! ナイスアイデアにゃ!」
「そのためには小さな雪だるまを早めに作らないと、ですね」
「うにゃーー……なんだか夢にまで出てきそうだにゃ……」
盛り上がっている凛ちゃんとは対照的に、考え込んで黙りこくっている彗月ちゃん。
まぁ、何を考えているのかなんておおよそ見当もつくが……
「先輩達の建築がいまひとつで拍子抜けしちゃいましたか?」
「えっ!? そ、そんなことないわよ」
彗月ちゃんは、雪だるま(小)を作っている時に「このクオリティで勝てるんだろうか」と何度か心配そうな顔をしていた。質より量を重視した建築、特に大量生産する雪だるま(小)はそれが顕著に現れるのは彗月ちゃんもわかっているだろうが、にしたってこれでいいのかという気持ちが僅かに漏れ出ていたのだぜ。
ところが、実際に先輩達の建築を見てみると思っていたほどクオリティが高くないと拍子抜けしてしまったのだろう。
「責めている訳ではありませんよ。むしろ、私のせいで勘違いさせてしまって申し訳なく思っていて……」
「勘違い?」
話している間にちょうどリスポーン地点である神殿に辿り着いた。
そう、この神殿と倉庫こそ彗月ちゃんの勘違いを起こした原因だ。マイクリを初めて右も左もわからない状態で初めて目にした建築が、この俺が作った建物で、それを作るのに半日もかかっていないという情報は、彗月ちゃんの「マイクリ建築の常識」を大いに歪ませたのは言うまでもない。
それに、横にいる凛ちゃんも俺の建築に対して全然反応を示さなかったしな。
つまり本当に悪いのは凛ちゃんだった……?
「確かに、コレを初めて目にしたら価値観が狂っちゃうよにゃー……って、なんで凛が悪いことになっているのにゃ!」
それもこれも目の前の神殿と倉庫が悪い。
こんな建物があるからいけねェんだ! 俺が全部ぶっ壊してやる!
「というわけでこれら2つの建物を改築しようかと思いまして」
「えぇー! めちゃくちゃもったいないにゃ!」
「景観を揃えるのは大事なことですよ? これはエトワールの世界にはそぐわないですので」
そう言って神殿から少し離れた場所にポツンと置かれているチェストの元へと2人を案内する。
チェストの中には大量のTNTとチェストが入っていて、中身を見た凛ちゃんは目を輝かせていた。
「これを使って派手に爆破解体しようとあらかじめ準備しておいたのですよ」
「うおおぉぉ!! やるにゃ、やるにゃー! T・N・T! T・N・T!」
T・N・T! T・N・T!
T・N・T! T・N・T!
それを こわすなんて とんでもない!
↑まぁ渚にとっては半日で作れる程度の物だから……
しかも素材集めやギミック作成の片手間にな
「私と彗月ちゃんで倉庫の中に仕舞われているアイテムをこちらに移しておくので、凛ちゃんにはTNTの設置をお願いしても「当然! 引き受けたにゃ!」
芸術は爆発にゃー! と叫びながらTNTを設置していく凛ちゃん。結構まばらに置かれていて、このままだと全部を破壊しきれないのだが……まっ、いっか。
「これは早めにチェストの中身を移動させないと、凛ちゃん1人で設置が終わっちゃいますね。私たちも急がないと」
「……でも本当にいいの? 破壊しちゃって」
んん? ……ははーん、なるほどな。
自分で実際に建築してみたり、他の人の建築を観察するうちに、俺が作った建築が実は凄いクオリティのものだったことに今更ながら気づいたのだろう。それで壊すのがもったいなくなったと。
しかし、この2つの建築はコメントにもある通り片手間で作ったものだ。
「これくらいの建築はちょっと勉強すれば誰でも作れるようになるので、彗月ちゃんが気にすることはないですよ」
ちょっと……?
誰でも……?
流石にそれは無理があるんじゃないですかね
まぁでも、ここまでとはいかなくてもある程度なら再現可能だしな
「うーんと、そうじゃなくてね。
……渚ちゃんは言ってたわよね? 「この世界に、エトワールに合っていないから景観を合わせるんだ」って」
「? えぇ、そうですね」
「でも、私はこの建物がエトワールに合っていないなんて思わないわ」
「先輩たちの建築を見るために移動しようって話しが出た時に何気なく後ろを振り返ってみたら、そこには小さな雪だるまが大量に並んでいて私ちょっとだけ感動しちゃったの」
「でもそれは大量の雪だるまに圧倒されたからではないわよ?
私の赤い長っ鼻の雪だるま、凛ちゃんのお洒落な帽子を被った雪だるま、渚ちゃんの手脚の生えた雪だるま……そこには私たち3人で作った雪だるまたちがいて、3人で一緒に作った実感が湧いたから私は感動しちゃったの」
「あれは、あの景色は誰か1人でも欠けていたら作れる物ではなかったわ」
「先輩方の建築だって多分そう。あれは一期生4人が、二期生3人がいなければ作れる物ではなかったはず」
「この世界で作った建築の全て……いいえ、この世界を構成する全ては、エトワールの10人全員で作り上げたもの。9人でも11人でもない、この10人で作った世界だから意味があるの」
「だから私は思うの。この建物がエトワールに合ってないなんて思わないって。渚ちゃんはエトワールの一員で、そんな渚ちゃんが作った建物は、この世界を構成する一部なのだから」
「────」
なんてこった。Vtuberを初めて結構経つというのに「エトワールの一員」という実感が足りていなかったなんて。
まるで学生気分が抜けていない新社会人……なんて茶化すのは違うか。
「──うん、そうですね。この建物もエトワールを形作る物の一部……なら、簡単に壊すわけにはいきませんね」
「それにね? 個性的な面々ばかりのエトワールのみんなが本格的に建築を始めたら、そのうちこの建物も埋もれていくと思うわよ?」
「ふふっ、確かにそうですね。ならもっと「私らしい建築」を作らないと、ですねっ!」
泣いた
確かにメンバー全員この建物にはお世話になっていたしな
わずかな時間とはいえ思い出がないわけではないのか
「そうと決まれば凛ちゃんに爆破解体の中止を伝えないと」
「凛ちゃんガッカリするかしら?」
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「ううぅぅ……なら仕方ないにゃ。でもTNTを使いたかったにゃー……」
「代わりにあの山の麓を爆発させてもいいですよ」
「…………あの山は確かこの前整地しようって言ってた範囲……代案を持ってきたと見せかけて整地させようとしてないかにゃ?」
「ソンナコトナイデスヨー」
くそっ、普段お馬鹿なくせして、こういう時だけ勘が鋭いのはおかしいだろ!
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(爆発オチにするつもりだったのにどうしてこうなった)