フェイス・オフ   作:その辺の残骸

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前編

 

 惑星封鎖機構の兵器の性能評価試験は、確かにフロイト好みの任務であり、実際楽しいものだった。

 しかし、機体がACを遥かに超える性能を誇っていても、AIや選抜されたアーキバスのパイロットの力不足は否めず、早々に飽きがきた。

 かといって、目下ルビコンにおけるアーキバス最大のプロジェクト、延伸作業中のバスキュラープラントの警備など退屈だ。とても耐えられない。

 

 ある日、スネイルからの小言を早々に切り抜けたフロイトは、愛機に用いているベイラム製パーツや整備用部品の都合で、普段から世話になっている資材管理部に出向いて封鎖機構からの鹵獲品を見物させてもらった。ちょっとした気分転換だ。

 

 資材保管庫に残っているのは、予備部品やパイロットスーツをはじめとした個人用装備だ。

 それらは膨大な数に上り、整理が昼夜を通して続いている。資材が乱雑に並べられている通りの一つで、フロイトはそれを見た。

 

「こいつは何だ? アナログな小型金庫のようだが、違うのだろう」

 

 不愛想で、血色の悪い中年の管理官に訊く。フロイトは黒い四角形の装置らしきものを指差している。

 

「大したものじゃありません。AC向けのVRシミュレーションデータを納めた古い型のストレージですよ、首席隊長殿」

「ふぅむ」フロイトは興味深そうに装置を見つめている。

 

 管理官によれば、なぜこのような古い代物を封鎖機構が後生大事に保管していたのか分からないという。

 

「軽く解析した程度ですが、ACとの一対一の戦闘がセッティングされています。大昔のデータなので他ならぬV.Ⅰの相手にはならないと思いますが」

 

 否定的な管理官に対して、フロイトはこの記録装置に何かを感じていた。

 

「ロックスミスに繋げるか?」

「可能です。特別な作業は必要ありません。ただコネクタを繋げばいい。機体のシミュレーターを使用するので、感覚も普段と変わりませんよ」

「そいつはいい。もらっていこう」

「はぁ。では、いつものように書類に記入を」

 

 五分ほどで書類への記入を済ませた。フロイトは金庫のような、大昔の記録装置を抱えて基地の廊下を足早に歩き、格納庫に向かった。

 ヴェスパー部隊専用の駐機スペースには空きが目立った。

 

「よう、ロックスミス。いいものを持って来たぜ」

 

 コクピットに入り、空いているスペースに記録装置を置いてコネクタを繋いだ。

 

 次に自分の準備に入る。アーキバス標準仕様のVRゴーグルを被る。強化人間であれば神経直結コネクタに身体を繋げるだけでVR訓練を開始できるが、一切の強化手術を受けていないフロイトが仮想現実に没入するには、こうした機器が必要だった。

 

 ロックスミスは問題なくデータを読み込んだ。フロイトは視界に投影されたデータに目を通していく。

 

演習コード:Face/Off

作戦領域:ベイロードシティ

敵戦力:アーマードコア「デュアルフェイス」/レイヴン「ジノーヴィー」

友軍:なし

作戦目的:敵機の撃破

 

 フロイトは木星戦争を始めとした紛争で活躍した、過去の名パイロット達に精通していたが、聞いたことのない機体とパイロットだった。パイロットを指してレイヴンと呼ぶ慣習も知らない。

 

「レイヴンか」

 

 不意にその呼称に独立傭兵レイヴン――――フロイトが対決を切望しながらも、スネイルに捕縛され再教育センターに送られたAC乗りを想い出した。

 

 ベイロードシティという都市の名も聞いたことがない。遠い星系の戦闘データなのか、あるいはシミュレーションのために設定された架空の物なのか。

 

 プログラムを開始すると視界が暗くなる。黒い背景に、薄青色に輝く「NOW LOADING」の文字が流れた。

 

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