ハァイ、フリーレン! 作:失踪のフリーレン
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──────とある日の朝。
昨日、七崩賢「断頭台のアウラ」を取り逃がしつつも彼女の軍勢を壊滅させたヒンメル一行は、誰一人欠けることが無かったことを喜びつつ食後のお茶を楽しんでいた。
そんな朝食後のティータイムの最中──。
「ハァイ、みんな。今戻ったよ」
一行の朝食を準備した後に野暮用があると言って出掛けていたペニーワイズが不自然に丸まったもぞもぞと動いており時折中からくぐもった声も聞こえてくる毛布の塊を背負いながら戻って来た。
その不自然な光景に、ヒンメル達は一斉に怪訝な表情を浮かべてペニーワイズに視線を集中させる。
すると、その視線に気付いたペニーワイズは背負っていた毛布の塊をそっと地面に置いて、ヒンメル達へ向き直る。
「これが気になるのは分かるけどまずはオイラの話を聞いてほしいんだ」
そう言って、ペニーワイズは毛布の塊を優しく撫でながら話し始める。
「実はいいニュースと人によっては悪いニュースがあるんだけどどっちから聞きたい?」
「じゃあ、いいニュースから聞こうかな」
ペニーワイズの言葉にヒンメルは即答する。
すると、ペニーワイズは待っていましたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべると、
「実は前々から温めていた魔法が完せ『魔法!? 』」
ペニーワイズが最後まで言い切る前に、目を輝かせたフリーレンが飲みかけのマグカップを片手にふんすふんすと食い気味に反応する。かわいい。
そんな最近ヒンメル一行へ甘えるようになった結果若干精神年齢が幼くなったものの感情表現が豊かになりつつあるフリーレンにペニーワイズは微笑むと説明を続ける。
「実は魔族をより人に近い存在にする魔法が作れないかって前から試行錯誤してたんだけど、その魔法が遂に完成したんだよ!」
予想外の言葉だったのかブフォッと勢いよくお茶を吹き出すフリーレン、アイゼンはすかさず自分のカップを持ちつつバックステップで回避し、ハイターはヒンメルを盾にし無事であったが、盾にされ顔面にもろにお茶を浴びてしまったヒンメルは自分の状況を理解すると同時にしめやかに意識を手放した。ワザマエ!
後方で発生している惨状もとい茶番を気にも止めず、フリーレンはペニーワイズに詰め寄る。
「そ、それは本当なの!? 」
いつぞやのぐるぐるおめめになったフリーレンに若干後ずさりしつつもペニーワイズは答える。
「ああ、本当だともさ! かなり苦労したけれども昨日の戦闘のお陰で最後のピースが嵌ったんだ」
「最後のピース?」
フリーレンの疑問にペニーワイズは頷くと、倒れ伏したヒンメルの顔を魔法で綺麗にしながら答える。
「フリーレン、魔物や魔族が死んだらどうなる?」
「それは……塵になって消えるよね」
ペニーワイズの質問に、フリーレンは答える。
その答えに満足そうに頷くと、ペニーワイズは言葉を続ける。
「そう、人は死んだら体が残るけれども魔物や魔族は消えちゃうだろ? そこでオイラは考えたのさ。魔物や魔族が体を構成するために必要な設計図がどこかにあるんじゃないかって思いついたんだ」
「設計図? そんなのどうやって調べるの?」
フリーレンが純粋な疑問をぶつける。
「うん、そこで暗礁に乗り上げてたんだけど、昨日のアウラとの戦闘でインスピレーションを得たんだ。フリーレン、それがなんだかわかるかな?」
「『魂』か・・・」
「そのとおり!流石はフリーレン。そう、アウラの魔法を見て魔族にも魂があるなら、それを弄れば人と限りなく近い思考が出来る魔族を誕生させることが出来るんじゃないかと考えたんだよ。ヒンメルには話したけれどオイラも昔はヤンチャしてたからその辺りの考え方についてもすんなりと落とし込むことが出来たんだ。という訳でいいニュースの話はおしまい」
「はぁ・・・やっぱりペニーワイズの魔法は魔族の魔法みたいにでたらめだね・・・」
ペニーワイズの言葉にフリーレンは呆れも含んだ笑顔を浮かべると、いつのまにか蘇生し二人のやり取りを聞いていたヒンメル達の方へ向き直る。
「ねぇ、ヒンメル」
「ん?なんだい?」
フリーレンに呼ばれ、首をかしげるヒンメル。
「ペニーワイズの話を聞いて、この魔法を上手く使って魔物と魔族が分かり合えることが出来るかもしれないって思った?」
「ああ、その通りだよフリーレン。その技術が上手くいけば魔物や魔族達が恐れることなく人と共に暮らせるようになるかもしれないからね」
フリーレンの問いかけにヒンメルは答えると、真剣な顔で続ける。
「けど、それはそんなに簡単なことじゃないのは解ってる。僕は魔物や魔族もたくさん見てきたけど根底から考えを変えるとなると今以上の困難があることはわかるつもりだ。けれどその困難を打破してこそ初めてみんなが共存出来る未来があると思うんだ」
「ヒンメルならそう言うでしょうね、しかしあの時とは違い魔法の裏付けがあるならば、少しくらいは信じても女神様はお怒りにはならないでしょう」
「・・・・・・複雑な気分だが、無用な戦いが減るのならばそれに越したことはない」
そう言い切るヒンメルに対しハイター及びアイゼンも慎重な答えを返すが、決して否定的ではないようであった。
そんな二人の反応を見て、フリーレンは頭に手をやり深く息を吐きだすと絞り出すような声で言う。
「わかった・・・。ヒンメルの言葉を信じるよ」
その言葉を聞き、アイゼンはフリーレンの背中をポンと叩き、ハイターは頭を優しく撫でる。
そんな三人からの反応にヒンメルも嬉しそうに表情を浮かべつつペニーワイズに向き直って言う。
「良いニュースについては分かったよ、じゃあ人によっては悪いニュースを聞こうか」
「ああうん・・・それが・・・なんだけれどね・・・」
ヒンメルの質問に対し、ペニーワイズは冷や汗を流しつつひきつった笑みを浮かべる。
ペニーワイズの反応に不穏なものを感じ取ったヒンメルは苦笑しながら先を促す。すると、ペニーワイズが言いにくそうに答える。
「まあ、変にオイラがどうこう言うより実際に見てもらったほうが早いだろうね」
そう言って、ペニーワイズは傍らに置いていた毛布の塊を優しい手つきで解いていく・・・。
すると、中から現れたのは紫の髪をふんわりと左右で分け三編みにした少女だった。
しかし顔には長い間泣き腫らしたであろう涙の跡が痛々しく刻まれており、陽の光の下にいるはずなのに生気というものが感じられない。
急に陽の光を浴びた為か眩しそうに顔を歪めていたが、やがて光に慣れたのか少女はゆっくりと目を開けると虚ろな瞳で周囲を見渡し、視線の先にいた呆然とした表情を浮かべるヒンメル達と目が合う。
すると、少女は再び嗚咽を漏らしながら再び泣き始めてしまう。そんな少女の頭をなだめるように撫でつつペニーワイズが答える。
「こちらがその・・・、近くに潜伏してるのを発見したから不意打ちで捕まえて、さっき言った魔法の実験台(強制)になってもらったアウラちゃん・・・です・・・ハイ」
そう、ペニーワイズの傍らで泣き腫らしている少女は昨日ヒンメル一行により撃退された七崩賢、断頭台のアウラであった。
一行は驚きで声が出ないといった様子で、しばしの間アウラの嗚咽が響くだけの沈黙が続くのであった。
【ヒンメル一行】
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コメディ書きたいのに何故か出来上がる文章がシリアスっぽくなる現象に名前を付けたい