ハァイ、フリーレン!   作:失踪のフリーレン

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アウラ、有明では大活躍だったな。


今回シリアス風味となりますが次回からはギャグに戻ります。
感想、評価ありがとうございます。


ハァイ、アウラその2

ペニーワイズ特製確定申告会場──────

 

 

 

ペニーワイズによって排水溝に引きずり込まれたアウラが目を覚ますとまた見慣れない空間にいた。

 

「もう・・・、いったいなんなのよ・・・・・・。」

 

 昨日から勇者一行によって自慢の軍団は壊滅させられるは、逃げ延びた先で変なピエロに恐ろしい目に会わせられた挙句排水溝に引きずり込まれるわで、本当に散々な目に会いプライドやメンタルがズタズタのボロボロであったが、それでもペニーワイズと遭遇した時と比べれば何とか周りを注意深く見渡せるくらいの心の余裕は生まれていた。

 

 そしてアウラは辺りを見渡すが、背後は石の壁で前方は石で作られたトンネルが伸び一定間隔で置かれたランタンが仄暗い闇を照らしている。

 足元を見ると一段低くなるように溝が造られているようでそこを水が音を立てて流れていくおり、どうやら今いるところは水路のようだ。

 しばらく周囲を警戒しているとアウラはある事に気が付いた。

 

(あれ?あのピエロがいないじゃない)

 

 そう、自分を引きずり込んだ相手であるペニーワイズが出てこないのだ。

 その事がアウラにとっては心底不気味に思えた。目的がアウラの殺害であるのならば気絶していた先程の状況は絶好のチャンスの筈である。

 なのにわざわざアウラを目が覚めるまで待っていたという事は別の何かがあると考えざるを得ない。

 仮に、アウラの想像通りの目的があるとすれば逃げ道が無い下水道にいるというこのシチュエーションは非常に危険である。

 

 一刻も早く抜け出さなければと思い出口を探すが何処にも見当たらない。

 

「歩き回るしかなさそうね・・・・・・」

 

 アウラは重い体に鞭を打って立ち上がりトンネル内を探索し始める。

 暫くしてアウラは道に何かが落ちているのを見つけた。

 

 それは丸い物体で大きさは南瓜より少し大きい程だった。

 

「何これ?」

 

 アウラはそれを拾い上げ明かりに照らして見た物は生気が抜け落ち、窪んだ眼窩は虚空を向いてるにも関わらずこの世のすべての憎悪を煮詰めたかのような濁った眼で己を見つめる生首であった。

 

「ひぃっ!!」

 

 と悲鳴を上げそれを投げ捨てるが床に落ちると湿った音をたてながら転がり壁にぶつかって動きを止める。

 それを尻目にアウラは壁に背を預けへなへなと座り込む。

 

(な、なんで?生首なんて見慣れてるでしょう??)

 

 そう自分に言い聞かせるが心臓の鼓動は徐々に早くなり呼吸も浅くなっていく、それと同調して体の震えが止まらない。

 

(と、とにかく前に進むしかないじゃない・・・)

 

 アウラは力の入らない体を無理やり動かすべく壁に手を当てながら立ち上がろうとするも手に柔らかな感触を感じた為手元を見ると先ほどまで石を積み上げた壁だったものが人間の生首に置き換わっていく。

 よく見ると壁だけでなく天井までもが石造りから人間の生首に変化しており全ての首がアウラを見つめていた。

 怒りの目線、憎しみの目線、軽蔑の目線、恐怖の目線などありとあらゆる感情が籠った生々しい人間の眼球の視線──────。

 

 

 聡明な彼女はそのすべてに見覚えがあった、己の魔法により服従させ首を撥ねる瞬間に見せていた表情そのままだ。

 つまりこれは自分手にかけてきた人々の首であるという事を理解してしまったアウラは耐え難い胸の痛みと吐き気により体制を崩し後ろへよろけてしまう。

 

 だがアウラを受け止める存在が居たために何とか転ぶことはなかった。振り返るとそこには昨日ヒンメル一行により壊滅したはずの不死の軍勢が彼女の背後に立っていた。

 

 普段であったら頼もしい光景であったが今のアウラにとっては恐ろしい存在にしか見えなかった。

 やがて首無し騎士達は各々持っていた武器を構えアウラに近づいていく。

 

「こ、来ないで・・・お願い・・・」

 

 後ずさりしながら必死に訴えるアウラだったが騎士達の歩みは止まらない。

 そして彼らの持つ剣の間合いに入った時一斉に襲い掛かってくる。

 

 アウラはなんとかそれを回避すると一目散に逃げだした。途中でトンネル内で何度も躓いて転倒したりしたがそれでも諦めずにただひたすらに走った。

 止まったら最後殺されるのは目に見えている。まだ生きたい、死にたくないと願う彼女の執念が足を動かし続けていた。

 

 どのくらい走っただろうか、どれくらい時間が経っただろうか最早時間間隔も分からないほど走り続け肉体的にも精神的にも限界が近づいていたアウラの目に前方でランタンに照らされているドアが映った。

 

 あのドアの向こう側には何かあるかもしれないという微かな希望を抱いたアウラは最後の力を振り絞り全力で駆けていった。

 そしてついにたどり着いたドアを勢いよく開け中に入るとすぐさま閉め閂を差し、更に鍵をかけた。

 

 これで一先ずは安心と膝を折り息をつくと、部屋の隅に何者かがいるのが目に留まった。

 アウラは警戒しつつ声を掛けようとするが、アウラの口から声が出る前に彼方のほうから声がかけられる

 

「ハァイ、アウラ」

 

 その人物こそ、アウラをこの状況に引きずり込んだ張本人、ペニーワイズであった。

 

「あ、あなた・・・、私をこんな悪趣味な所に連れてきてどうするつもり?い、今すぐ元の場所に戻すというのならば見逃してあげるわ」

 

 文面だけ見れば立派だが震え声が隠せないアウラに対しペニーワイズは笑顔で答える。

 

「君のその反応が答えさ、以前の君なら悪趣味って捉え方なんてしないだろう?」

 

「そ、それは・・・」

 

 確かにそうだ、アウラはペニーワイズの言う通り以前ならばこの様な事捉え方はしない。

 断頭台と呼ばれ恐れられた彼女の魔法は強い意志により一時的な抵抗ができてしまう為相手の首を切ることで安全に自分の手足のように扱うことを可能にさせるが故に彼女は多くの人間をその手で殺めたのだ。

 そんな彼女が今になってこのような反応をするというのは彼女自身にとっても予想外の出来事である。

 

「でもまぁ、オイラとしては嬉しいよ。君みたいな七崩賢といわれるほどの魔族でもそういう感情の付与が可能である事が分かったんだからね」

 

「ふ、ふざけるな・・・、私は七崩賢が一人400年を生きた大魔族なのよ。この程度の事で心を乱すわけがないじゃない」

 

「あくまで意地を張るんだね。それじゃあ、最後の仕上げといこうか」

 

そう言ってペニーワイズは指を鳴らすと、彼の体が徐々にぼやけてていき違う姿へと変化を始める。

 

「は?、いったいなn──────」

 

 それをみて困惑するアウラの言葉を遮るようにして彼女の体が勝手に膝をつき頭を垂れた。

 アウラは慌てて自分の体を動かそうと抵抗を試みるがまるで金縛りにあったかのように全く動かない。

 そうこうしている間にアウラの目の前に人影が現れ、彼女の顎をくいっと持ち上げる。顔を上げることが出来たアウラの目に映ったものは──────。

 

「あ・・・、え・・・?わ、私・・・・・・??」

 

 思わず間抜けな声を上げてしまうが、そこにいたのは紛れもなくアウラ自身であった。

 アウラは目を疑ったがどう見ても鏡などでは無く本物の自分が立っている。

 しかし現在進行形で跪いているアウラと違う点はといえば、背後に首がない騎士を侍らせている点と、左手には双方の皿に魂が乗った上で黒い魂のほうに傾き切った天秤を左手に持っている点である。

 

「そ、そんな・・・。どうして私がもう一人居るのよ!?」

 

 混乱し叫ぶアウラに対して、アウラの姿をした者は静かに口を開く。

 

「貴女も薄々感づいてるでしょう?先程から体験している現象は全て、自分が今まで行ってきた行動の結果だということを」

 

 その言葉を聞いた途端、アウラは先程の水路での出来事を思い出した。

 あれらは全部、自分の行いのせいで起こったことなのだと理解してしまった。

 そして、先ほどペニーワイズが言った仕上げという言葉。それが意味する事はつまり・・・。

 それに気付いた瞬間、アウラの全身から血の気が引いていく──────。

 

 

 それを見たアウラの姿をした者は口を三日月型に歪ませた笑顔をこちらに向けてた後にアウラの顎から手を離し後ろへ振り向くと後方に待機していた首無し騎士の元へ歩み寄ると艶かしい手付きで差し出された剣を受け取る。

 そしてアウラの方へ向き直ると、右手で持った剣を上段に構えゆっくりと距離を詰めてきた。

 

 その行動に自分が想像した最悪の展開が間違っていなかった事が分かりアウラの顔色は更に青ざめ汗が噴き出す。

 だが体は相変わらず石になったかのように跪いた姿勢から動けず逃げようにも逃げられない。

 

「待って!やめて!殺さないで!!助けて!!!」

 

 涙を流し必死に懇願するアウラであったが彼女はどんどん迫っていき、とうとう剣が届く距離にまで近づいた彼女はアウラの首元に狙いを定めて剣を振り上げる。

 

「いや、いやっ、いや・・・・・・、いやぁああああああああああああああああ!!!」

 

 断末魔の叫びと風切り音が重なると共にアウラの首が宙に舞う。

 

 

(あ────────────死────────────)

 

 

 くるくる・・・・・・くるくる・・・・・・と空中を舞った後、べちゃりと音を立てて床に落ち次第にぼやけていくアウラの目が見たものは崩れ落ちる己の体と気色悪い笑みを浮かべながら首だけとなった自分を見つめる瓜二つの少女の姿であった──────

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 朝日が森の中にある洞窟がある広場を照らしている。

 その傍らで横たわる少女を眺めつつ一仕事終えたとばかりに額の汗を拭う存在がいた。

 

「やれやれ、魂を弄るのがこんなに難しいとは思わなかったよ。」

 

 そう言いつつペニーワイズが見つめているのは、洞窟から出てきた所を結界で捕らえた後に魂を弄ったアウラであった。

 

 魂を体から取り出した際、アウラの体は形を保てなくなり霧散してしまったが、作業を終えた魂を魔力に結び付けた際体は再構築され元の美しい姿に戻っている。

 しかし、その姿は以前の彼女とは少し違っていた。

 彼女の頭部には立派な二本の角が存在していたが今は見る影も無くなっており、最早十代後半の人間の少女と変わらない見た目になっていた。

 その事を確認したペニーワイズは満足げな表情で彼女の髪を撫でる。

 

 すると、その刺激に反応したのか彼女の瞼がピクッと動いた。

 やがてゆっくりと目が開かれていき、しばらくぼんやりとしていたアウラだったが徐々に意識がはっきりしてきたのか、顔色を真っ青にしてガバッと起き上がり首元をペタペタ触り始める。

 

 「ハァイ、アウラ。気分はどうだい?」

 

 その様子を見てペニーワイズは彼女に声を掛けた。

 アウラは声をかけられたことに気付き彼の方を見ると一瞬ビクっとした後、その瞳に涙を溜めこんでいき遂に大声で泣き始めた。

 

「ちょ、ちょっとどうしたんだい・・・?あ・・・、そうか記憶そのままで価値観を人と同じにしたから今までの所業に耐えられなくなっちゃったんだね。ごめんよ、オイラとした事が配慮不足だったよ。」

 

 ペニーワイズはそう言うとアウラを優しく抱きしめると優しく頭を撫で背中をさする。

 暫くの間嗚咽を漏らしながら泣いている少女とそれを慰めるピエロという奇妙な光景が続くのであった・・・・・・。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「──────といった次第で今に至るわけでございまあす・・・。」

 

 泣き疲れて眠ってしまったアウラを寝かしつけた後、ペニーワイズは事の次第をヒンメル一行に説明していた。

 話を聞き終えた一行は暫くの間沈黙していたが、やがてヒンメルが口を開く。

 

 「つまり、もう彼女は二度と魔族が行うような悪行は出来ないってことでいいのかな?」

 

 「そのとおり、今の彼女の感性はもう人間って言っても過言じゃない。今までのように悪事を働くことは不可能だよ。」

 

 その言葉を聞いたヒンメルは安堵のため息をつく。

 そんな彼を尻目に、アウラの処遇について考えを巡らせる者がいた。

 

「ではヒンメル、彼女をどうするつもりですか?」

 

 眼鏡を光らせながら問うハイターに、彼は答える。

 

「そうだね・・・、彼女は今まで多くの人を傷つけてきた。でもこのまま放りだす訳にもいかないし、あの時とは違って人としての倫理観を身に着けているのならば僕としては経過観察の面も含めて仲間に迎えたいと思っているんだけどどうかな?」

 

 その言葉を聞いたハイターは若干諦観した様子で

 

「貴方ならそういうと思ってましたよ。ちゃんとお世話するんですよ?」

 

 と釘を刺しつつも了承した。

 そんなやり取りを聞いていたアイゼンも、特に異論は無いようで黙って頷いている。

 二人の賛同を得たヒンメルは最後にフリーレンへ問いかける。

 

「それで、フリーレンはどう思う?僕は彼女を迎え入れたいと思うけど・・・。」

 

「・・・正直よくわからないんだ。確かに彼女は許されない事を沢山やってきたけど、さっきの光景はまるで普通の女の子みたいで・・・。」

 

 そう言いつつ眠っているアウラの方を見る。

 その表情からは複雑な感情が入り混じっていることが伺える。 

 だが、暫く彼女を見つめた後に溜息を一つ吐くと、

 

 「でもさっきヒンメルを信じるって言っちゃったからね、私も受け入れるよ。」

 

 その返答を聞いて満面の笑みを浮かべたヒンメルが感謝の言葉を述べると、耳を赤くしたフリーレンは照れ隠しなのかそっぽを向いてしまった。

 その後、目覚めたアウラを交えて話し合いを行った結果、彼女は正式にヒンメル達の仲間に加わることとなった。

 

 次の日─────。

 野営の道具を片付けているヒンメルへフリーレンが声をかける。

 

 「ねえ、ヒンメル。少し相談があるんだけど・・・。」

 

 その表情は真剣そのもので、何かあったのかと心配するヒンメルであったが、とりあえず話を聞くことにした。

 

「実は昨日の夜の事なんだけど・・・。アウラの事を古い知り合いに手紙で相談してみたんだよ。そうしたらアウラの事を見てみたいって返ってきたんだ。だから知り合いのところに行きたいんだけどいいかな?」

 

 それを聞いたヒンメルは少し考える素振りを見せた後、笑顔を浮かべて 了承する。

 

「ところで、その知り合いっていうのはどんな人なんだい?」

 

 その問いに対してフリーレンは少しだけ懐かしそうな顔をしながら、こう答えた。

 

「彼女は、大昔に魔族を恐怖に陥れた神話の時代から生きている大魔法使いだよ、その名前は───」

 

 

 

 

「ゼーリエ、私にとって大師匠に当たる人だ。」




 断頭台のアウラとしての彼女は死んだ。
 人となった彼女が今後どのような人生を歩むことになるのかはまだ誰にも分からない。
 これから先、彼女は様々な困難や試練にぶつかるだろう。しかし、彼女は一人ではない。
 ヒンメル達が居る限り彼女は決して孤独にはならない。なぜなら、彼女が人であろうとする限り彼らは彼女の味方なのだから──────。
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