少女は星を追いかける   作:まんじゅう卍

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第7話 真なる友情〜壱〜

 2回目の戦闘から2日が経った。私はあの後、問答無用で病院へと連れて行かれて入院となった。

 

「入院って死ぬほど暇だね」

 

「私の気持ちが少しはわかったかな?」

 

 足を負傷し、寝たきりの私に希望はお見舞いの品で持ってきたりんごを剥いてくれてそれ差し出してくれる。

 

「食べさせてよ」

 

「自分で食べてよ」

 

「ケチ」

 

 手でリンゴを受け取り、一口で頬張る。りんご特有の甘さが口の中に広がって、私は幸せな気分になった。

 

「全く。私が見てないとすぐ無茶するんだから。2回も勝手に精霊宿して。その影響もまだわかんないことばっかりなのに」

 

 希望は小言を言いながら、私にまたリンゴを差し出した。

 動物園で餌やり体験するあの感覚で渡してくるものだから、私は餌付けされてる気分になる。

 

「左眼のこと忘れたの?あの時も無茶してたじゃん」

 

「忘れるわけないじゃん。希望は私の右眼にしか映ってないわけだし」

 

 もう痛みはないし、この視界の狭さの違和感もない。

 

「私のことは両眼で見て欲しかったな〜」

 

「無茶言わんでおくれ。と言うか、私この包帯キャラ固定なの?」

 

「自分でそれが良いって言ったの忘れたの?」

 

 確かにそんなことを言ったような気もしなくはないので今は引き下がることにした。

 

「ま、メディアは琴音のこと大きく報じてるよ」

 

「『秋山琴音無くして勇者は語れない』だっけ。馬鹿も休み休みに言えってんだ」

 

 私はまた差し出されたりんごを口に放り込んで、その甘みで口の中に広がった苦味を打ち消す。

 そんなことを書いて報じたところで何の役に立つと言うのか。私は懐疑的でならない。

 

(それで私に言い寄ってくる昔の奴らは尚更嫌いだ)

 

 希望に私の過去をどこまで話したかは覚えていない。それでも、この調子だと全部話す日も近そうだ。

 

「結構忘れるんだけどさ。希望の体調が悪いって設定はどこ?」

 

「設定言うな。今はかなりマシになったってだけ。まだ貧血気味なこと結構あるし」

 

 苦笑いを浮かべながら言う希望へ手を伸ばし、肩を軽く叩いた。

 

「ちゃんと自分の身体労ってね」

 

「そのままそっくりお返しするよ」

 

 希望の目は私の足を見る。

 そこまで重傷ではないので、そう気にすることはあるまい。

 私と希望が顔を見合わせて、くすっと笑った時病室の扉が勢いよく開かれた。

 

「タマが来てやったぞっ!琴音っ!」

 

「琴音さん。お邪魔します」

 

「おおっー!タマちゃん!杏ちゃん!」

 

 予想外の2人の登場に舞い上がった私はベッドの端を掴んで起きあがろうとした。

 しかしそれは希望によって封じられる。

 

「いたたたたた!?」

 

「重傷ではないけど傷が広がるでしょうが!無理に動かない」

 

「………うす」

 

 希望ってお母さんみたいだね。と追加で言うと、余計な一言だったみたいであの最強のデコピンをおでこに食らうことになった。

 

「うぅ…。暴力反対」

 

「私の力が強いって言う設定もどうせ忘れてたでしょ」

 

「自分で設定言うてるやんけ」

 

 私と琴音がギャーギャー言い合っていると、隣で杏ちゃんが小さく笑った。

 

「お二人は本当に仲が良いんですね」

 

「杏ちゃんとタマッチには敵わないよ〜」

 

 希望も2人を見てそう言った。

 

「当たり前だっ!タマと杏はほとんど姉妹みたいなものだからな」

 

 そう言ってタマちゃんは杏ちゃんに抱きつく。

 

「えへへ」

 

 杏ちゃんもそれを決して迷惑とは思っていなさそうで、むしろ嬉しそうにタマちゃんを受け入れている。

 私も負けじと対抗してみることにした。

 

「ちなみに私と希望も姉妹みたいなものだからね」

 

「は?」

 

「辛辣すぎない?」

 

 思った以上に厳しい反応が返ってきて私は泣きそうになった。

 なんかさ。もっと、こう……照れながら「そうだね」とか言ってくれたら私、今まで以上に張り切っちゃったと言うのに。

 

「ふっふっふっ。お前たちはタマたちみたいにスキンシップを深めることから始めるんだな」

 

「スキンシップも何も。私、出会った3年前から希望の身体見続けぐはあっ!!」

 

 またまた私は余計なことを言ったらしく、砲弾の如きデコピンが私の額を襲う。

 あまりの痛さに手鏡で額を見ると煙が出ていた…わけではないが真っ赤に腫れていた。

 

「なかなかに激しいスキンシップですね……」

 

「う、うん……。そうなんだよね…。これが私たちなりの距離感……ガクッ」

 

 私がギブアップとばかりにベットに倒れ込む。希望は私の額を軽くさすると、視線をタマちゃんの方へと向けた。

 

「そろそろ一緒に暮らしそうだよね。2人とも」

 

「タマも一緒に暮らしてもいいと思ってたからな」

 

 そんなタマちゃんを揶揄うように杏ちゃんは言う。

 

「えー、でもタマッチ先輩と一緒に住むの大変そう。部屋の中に自転車あるし、テントあるし。よくわからないキャンプ道具たくさんあるし」

 

「自転車はロードバイクだから、ああやって部屋の中に置いといて錆びないようにしてるんだ。それにキャンプ道具だって……そのうち使う時が来るはずっ!」

 

 タマちゃんの趣味はアウトドアだった。そのために色々こっちに来てから買ったらしいが、勇者としての御役目が始まってからは全く行けていないらしい。

 

「だいたい、あんずの部屋も凄いじゃないか。本だらけ。伝記ものかと思ったら次の棚には恋愛小説、恋愛小説、恋愛小説!また増えてたし!」

 

「それがいいんだよー。本に囲まれて生活するのとても幸せだもん」

 

 うっとりとした様子で杏ちゃんは言う。

 杏ちゃんは大の本好きで、私も何度か足を踏み入れたことがあるが本棚は思わず感嘆の声が出るくらいには凄い。

 しかも、最近また増えたらしいので一体どうなってるのやら。

 

「琴音さんもよく私の部屋に本借りに来るんだから」

 

「杏ちゃんのおすすめしてくれる本、全部面白いからね。いやほんとに」

 

「むっ。なら、琴音。今度タマがキャンプに連れて行ってやる!一からキャンプの楽しさを教えてやるよっ!」

 

「いいね。その時はみんなで行こうよ。きっと楽しいよ」

 

 私がそう言うとタマちゃんは元気よく頷いた。

 

「っと!忘れるところだった。これ持ってきたぞっ!」

 

 タマちゃんは一つの袋を私に手渡した。その中身はりんごだった。

 希望も持って来てくれたし、今のトレンドなのかもしれない。

 

「それで、いつ頃退院できそうなんですか?」

 

 りんごと睨めっこしていた私は杏ちゃんの問いに、微妙な笑みを浮かべながらでしか答えられなかった。

 足の怪我は本当に大したことない。2週間あれば余裕で歩けるようにはなる。しかし、大社が懸念したのは精霊の2連続使用による影響だった。

 

「結構かかりそうなんだよね。戦う時も前線には出れないかも」

 

 精霊のせいだとは私も言えず、足の状態を中心に話を進めた。

 希望は私が嘘をついている事を知りながら、私に話を合わせてくれる。

 

「うーん。ならキャンプも当分お預けだな」

 

「そゆことになるね」

 

 私がそう言うと、逆にタマちゃんは落ち込むどころか私たちを楽しませる準備が出来ると嬉しそうにしていた。

 

「ふふっ。タマッチ先輩楽しそう」

 

「だね〜」

 

 ニコニコと微笑む希望と杏ちゃん。

 度々思うけど、私たちはそれぞれ仲の良いペアごとに保護者のような人が付くのがお決まりなのでしょうか。

 

「そういや琴音。後で友奈と千景も来るぞ」

 

「そうなの?」

 

「おう。なんか千景が言いたいことがあるらしい」

 

「私、何かしたかな」

 

 希望に聞くと「したにはしたんじゃない?」とまともに答えてはくれなかった。

 

「怖すぎる……。あの大きい鎌で私の首を」

 

「……取るわけ…ないでしょ……」

 

 私が冗談めかしてそんな事を言うと、千景さんは友奈ちゃんと共に病室へと到着していた。

 話をすればなんとやらだ。

 

「これお見舞いの品だよ!」

 

 友奈ちゃんはそう言って私に一つの紙袋を手渡してくれた。

 

「わざわざありがとう!」

 

 どれどれ〜?と袋を開けると、私はデジャブに襲われた。二度あることは三度あるとはよく言ったものだが……。

 

「りんご……」

 

「良かったじゃん。私好きだよ。りんご」

 

 そう言って希望は私の手からりんごを取ると、持って来ていたナイフで器用に皮を剥いていく。

 

「せっかくみんな持って来てくれたわけだし、もうみんなで食べちゃえばいいよね」

 

 希望の綺麗な鼻歌が病室で奏でられる。それに聞き惚れていると、皮剥きは一瞬で終わっていた。

 

「実言うと私も、タマッチと杏ちゃんもみーんなお見舞いでりんご持って来てたんだよ」

 

 凄い偶然だよね。と希望が友奈ちゃんと千景さんに言うと2人は小さく笑って「そうだね」「そうね」と頷いた。

 

「ならタマはこれにするぞ」

 

「あー!タマッチ先輩のやつ私も狙ってたのに」

 

「残念だったなあんず!こう言うのは早い者勝ちだっ」

 

「……大人気ない…わね…」

 

「ぐんちゃん先取りなよ。私は後でいいから」

 

「……ありがとう…高嶋さん…。吾妻さんはいいの?」

 

「私はさっき琴音と一緒に食べたから最後でいいよ」

 

「なら私も貰っちゃおっと」

 

「結局…食べるのね……」

 

 突然始まったりんごパーティー。皆、年相応の笑顔を浮かべながら境遇など関係なく、会話を楽しんでいる。

 もしかしたら私の願う世界はこんな些細なことで皆が笑い合える世界なのかもしれない。

 だけど、この場に2人足りない。私が誰よりも会いたくて会いたくてたまらなかった2人。若葉ちゃんとひなたちゃんがこの場には居ない。

 

(忙しそうだし仕方ないよね)

 

 わがままを言えば少しくらい顔を見せて欲しかったりする。でも、そこまで寂しくないと言うのが私の素直な感想だったりもするわけで…。

 

(私の中で若葉ちゃんとひなたちゃんの存在の大きさが変わって来てる?)

 

 それは不思議なことではない。誰にでもあることだろう。

 とは言え釈然としないのも事実だ。

 

「琴音」

 

 私は名前を呼ばれてその声の主の方を見る。

 

「大阪ではあり得なかったよね。こんな景色」

 

 希望が感慨深げにそう言った。私は本当にその通りだ。と微笑を浮かべた。

 私に釣られて希望もふふっ。と小さく笑う。

 それを見て、私は思った。

 

(私の中で希望の存在は誰よりも大きいのかも……。いつの間にか、若葉ちゃんやひなたちゃんよりも大きくなってたのか)

 

 若葉ちゃんとひなたちゃんは『幼馴染』と言う関係性だ。確かに仲は良いが『親友』とは言い切れるかは怪しい。

 なら希望はどうか。希望とは多くの辛い事を乗り越えた『戦友』の方が正しいと思っていた。だけど、心の底から通じ合える仲に気がつけばなっていた。

 

(『親友』……『真友』の方がニュアンス的には面白いかもね)

 

 私は思った以上に希望の事を信頼して、好いているらしい。

 隣でみんなと談笑している1人の少女を横目で見ながら、誰にもバレない程度に頬を緩めた。

 

(あれ?そう言えばちかちゃんの言いたい事ってなんだったんだろ)

 

 結局、なぜかそっちがわからず終わってしまった。雰囲気的にも言い出せる様子は見えない。

 また聞く機会はあるだろうと自分を納得させ、この日は楽しんだのだった。




とりあえずは書きたいものをかけている状態です!

どんな評価でも受け付けるのでよければ今後の参考にしたいので感想お願いします!

それではまた次回で!
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