少女は星を追いかける   作:まんじゅう卍

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お久しぶりです!
結構サボってしまっていて忘れ去られてるかもしれませんがここからまた投稿増やしていきますよ!
それではどうぞ!


第8話 真なる友情〜弍〜

入院生活も長々と続きはしたものの、私の予想通り2週間経つ頃には退院を許された。

 とは言え結局のところ足の怪我が完治しただけで精霊の影響はわからず終いらしい。私も詳しい事は教えてもらえていないので多分今のところは碌な情報が出てこなかったに違いない。

 

「精霊の影響とはなんぞやね」

 

 今の所身体に異変は一つもない。大社が懸念しているほどのことなのかと私は思ってしまう。

 荷物を整理し終わり、最後に病室の隅に安置してあった【生弓矢】と【倶利伽羅剣】を手に取ってから私は病室を後にした。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「たっだいま〜!」

 

「おおっー!コトちゃんお帰り!」

 

 退院早々荷物を持ったまま、真っ先に私が向かったのは教室だった。時間的にもそこに行けば皆いるとわかっていたからというのもある。

 友奈ちゃんの手を取って2人でぴょんぴょんと飛び跳ねて退院した喜びを分かちあった後、改めて皆の方に向き直る。

 

「秋山琴音、無事帰還しました!」

 

 私がビシッ!と敬礼をすると、若葉ちゃんはやれやれと言った表情をしているがどこか安堵しているようにも見えた。

 そこにタマちゃんが勢いよく飛びついてきた。

 

「タマは待ちくたびれたぞ!琴音っ!」

 

「私もタマッチ先輩と一緒です。お帰りなさい。琴音さん」

 

「今度は酷い怪我しないようにしてくださいよ」

 

 タマちゃん。杏ちゃん。ひなたちゃんと順に私に声をかけてくれる。私はそれに笑顔でありがとうと伝えた。

 私はそのまま希望の方にも目をやる。珍しい並びというか、千景さんと希望が隣同士でいるのは何かと不思議だった。

 

「希望は私に何も言ってくれないの?せっかく戻ってきたのに」

 

「はいはい。お帰りなさいませ」

 

「なんか冷たくない?」

 

「だって琴音、私が迎えに行くって言ったのに拒否したから」

 

「えぇ……」

 

 なんだか良くわからない理由で希望は拗ねているらしい。

 めんどくさくなっている希望は一旦置いておいて、隣にいる千景さんに視線を向けた。

 

「私、チカちゃんのお出迎え欲しいな〜」

 

 半分本気、半分冗談の気持ちで私は言ってみる。

 

「…ニヤニヤして、気持ち悪い…わね…」

 

「いや〜。またみんなの所に戻って来れて嬉しいからね。それが顔に出ちゃってるんよ〜」

 

「……そう。…おかえり」

 

 私から視線を逸らしながらも、はっきりと千景さんはそう言ってくれた。私はなんだかそれがとても嬉しくて舞い上がりそうになる。

 

「ふふっ。琴音さん、嬉しそうですね。でも私たちも忘れては困りますよ」

 

「ひなたちゃんと若葉ちゃんの事を忘れなんかはしないよ。お見舞いにも来てくれたし、感謝してる」

 

 私が若葉ちゃんとひなたちゃんに素直に感謝の気持ちを伝えると、2人とも小さく笑ってあのくらいは当然だと頷いてくれた。

 改めて思う。私は仲間に恵まれているのだと。

 この先の困難も簡単に撃ち抜けると。今は、簡単に思えた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 私が丸亀城に戻ってから1週間の時がすぎた。意外なことにバーテックスの侵攻は今の所まだない。

 呑気に過ごすこともできただろうが、私はなんとなく身体を鍛える以外の事もしておいた方が良いと考えた。

 そして今、私は杏ちゃんと共に丸亀城周辺の地図を眺めている。

 

「樹海化すると街は蔓に覆われるじゃん?けど、街の高低差。死角の位置は変わらないのかな」

 

「どうでしょう。まだ確認してみないと分かりませんが…。私たちもまだ出撃回数は2回ですから」

 

 まあ、私たちがどうしてわざわざ丸亀市の専門的な地図を見ているのかと言うと以前私が杏ちゃんに言った言葉が発端ではあった。

 

『力が強いだけが全てじゃない』

 

 私がなんの気なしに言った言葉は杏ちゃんの支えになっていたらしく、杏ちゃんはせめて頭脳の方では貢献したいから私に協力して欲しいと言ってくれたのだ。

 

(杏ちゃん、気にしなくても充分頼りになるんだけどなあ)

 

 本人のやる気を削ぐのもどうかと思うので口には出さないが、私は杏ちゃんのことは信頼している。

 

「仮に変わらないとしよう。となると最も高い場所はこの丸亀城だね」

 

「…丸亀城を中心に戦いを展開するってのはどうでしょう」

 

「けどそれだと囲まれた場合危険じゃない?逃げ場がない」

 

「だから東、西、正面に配置するんです。敵を3分化する。だいぶ戦力も分散できます」

 

 そう言って杏ちゃんは私特製名前入りフラッグを3つ海側に押し上げる。

 

「なるほど。いいね。しかも後方には指示を出せる人と援護できる人が私か杏ちゃん。各方面には敵からしたら死角が3つある。前線から撤退することになっても休憩中の人を配置して、誘い込み様に倒す」

 

「本当だ。そこまでは読めてませんでした!流石です琴音さん!」

 

「あはは〜。それほどでも。…仮にこの作戦をするにしても問題は山積みだけどねえ」

 

 杏ちゃんも思い当たる節があるのか、苦笑いを浮かべる。

 

「私たち、連携とかチームプレーとかの経験値が少なすぎますからね」

 

「正直、この2回は全部若葉ちゃんのワンマンプレーだからなあ。今はいいけど、どこかで躓きそうだよ」

 

「それを教えてあげないんですか?」

 

 鋭い質問に今度は私が苦笑いを浮かべる番だった。頬を軽く掻いてから、私は若葉ちゃんが毎朝鍛錬をしている庭の方を見る。

 

「私が若葉ちゃんが負ける姿を想像できないから…かな」

 

「まあ、私もできませんね」

 

 そう言って杏ちゃんはクスクス笑った。その美少女っぷりに私は引きそうになる。羨ましいですね。

 

「それにまだ私はわからないの。若葉ちゃんがあのままでいるのが正解かもしれないし、間違いかもしれない」

 

 下手に助言して、若葉ちゃんを悩ませた結果負けるなんてのは嫌だ。

 戦場では迷いと焦りは死に直結する。私自身の経験がそう言っていた。目の傷が全てを物語っているのだから。

 

「だから、私は性格が悪いから若葉ちゃんが自分自身で気づいて躓くまでは今の若葉ちゃんを信頼するって決めてる」

 

 強くて誰かに関心を持ってそうで、実際はそうでない若葉ちゃんを。

 

「けどそれで誰かがピンチになってしまった場合は?」

 

「うわあ。意地悪な質問するね。さすが軍師候補の杏ちゃん!」

 

「褒めてます!?」

 

「褒めてる褒めてる。大事な素質だよ。まあ、答えを言っておくとね」

 

 私はいつか希望にも言ったことを杏ちゃんにも伝える。

 

「私が全て引き受けるよ」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 3回目の襲撃はそんな会話をした翌日に起こった。

 若葉ちゃんの見ているマップを私は覗き込む。

 

「今回も100体くらいかな?」

 

「そうだな。それならばこれまでとやることは変わらない。私が前に出る」

 

 そう言って若葉ちゃんは【生太刀】のその美しい刀身をこの世に顕にさせる。その輝きはまさしく若葉ちゃんのようであった。

 すぐにでも前に飛び出していきそうな勢いの若葉ちゃんを杏ちゃんが止めた。

 

「待ってください!若葉さん!一体、高速で移動する反応が…」

 

「なに?」

 

 若葉ちゃんは直ぐに端末でその反応を確認する。

 

「なんだこいつは」

 

「……このままだと…すぐ来るわよ」

 

 これまでには考えられないバーテックスの動きに、皆頭が働かない。

 どう判断すべきなのかを迷っているようだった。そんな迷いは私たちを更なる混乱に陥れた。

 

「みんな、来たよ!って!何あれ!?変態さん!?」

 

 真っ先に視界に捉えた友奈ちゃんが言った通り、そいつは二足歩行で高速でこちらに向かってくる変態だった。

 

「うへぇ、気持ち悪い」

 

「あれは食えんな」

 

「のんきね…2人とも……」

 

「そう言ってる千景も呑気そうだぞ!?あれどうにかして止めないとタマ達轢殺されるって!!」

 

 変なところで肝が座ってる私たちを見て、タマちゃんはどう反応して良いのかわからないと言ったご様子。

 

「じゃあどうすれば止まるか考えてみよっか〜」

 

「そんな時間あるわけないだろ!?」

 

 タマちゃんが指差したその瞬間、その変態は既に私たちの目の前に到達していた。

 ゆうちゃんや千景さん。杏ちゃん、タマちゃんは回避行動に入っていたが私と若葉ちゃんだけは【生太刀】と【倶利伽羅剣】を抜刀する。

 

「琴音!下と右だ!」

 

「言われずともっ!」

 

 若葉ちゃんは神速の如き抜刀で進化体を囲み、私はそれに合わせて動き出し、同じように太刀筋だけで進化体の行き場を塞いだ。

 次の瞬間、私の【倶利伽羅剣】が右足を。若葉ちゃんの【生太刀】が首と思われる部位を吹き飛ばす。

 

「……お前たちの方がよっぽど変態じゃないかっ!!」

 

「こんな化け物と一緒にされても困る」

 

 タマちゃんの叫びに斜め上の返答を返す若葉ちゃん。私はその傍で、この変態が傷を修復した後もどこにも逃げられないよう矢で身体を樹海の蔓にビス溜めした。

 

「と言うか、タマちょっと試したいことがあったんだけどなっ。それが試せなくてショックだ」

 

「何をするの?」

 

 ろくでもなさそうなことだが、一応反応してあげる。するとタマちゃんは勇者装備の懐から冷凍うどん1玉を取り出した。

 皆怪訝なものを見る目でそのうどん玉を見る。

 

「なしてうどん」

 

「アイツら、タマ達人間を食うだろ?だから、他のものも食うのか知りたくてさ」

 

「……頭おかしいんじゃないの?」

 

 千景さんの一言は普段であれば言い過ぎだと私も止めたことだろう。だが今回ばかりは私も千景さんと同じ気持ちだった。

 

「とにかく!ちょっと試してみようや」

 

 そう言って呑気にうどん玉を取り出して進化体の前にタマちゃんは放り投げた。何か既視感があるぞ?と思ったがすぐに鯉にパンのかけらをやる様子だと言うことに気がついた。

 

「興味示さないね」

 

 ゆうちゃんがじっとその様子を見つめる。他の面々も経過を観察する。

 

(なんだこれは)

 

 本当に意味のわからない様子に私は何度も目を瞬かせる。

 全くもって変化を見せないので私は痺れを切らした。それにあまり樹海化を長引かせるものではないのだ。

 私は進化体に近づいて問答無用で切り捨てた。するとすぐにその姿を光の粒子に変えていく。

 

「この戦いに意味はあったのでしょうか」

 

「それは考えちゃダメだよ。杏ちゃん」

 

 素直な感想を言う杏ちゃんに、ゆうちゃんがやけに神妙な顔をして首を横に振った。

 

「…と言うか…乃木さんと……秋山さんの強さが…狂気すぎて100体近くいた敵…皆徹底してるじゃない…」

 

 千景さんがマップを見ながらそう呟く。私もその時、確かにそのくらい敵がいたと思い出した。

 皆、一体この戦いに何の意味があったのかを見出すことなく、首を傾げたままこの日の御役目を終えたのだった。

 

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