少女は星を追いかける   作:まんじゅう卍

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第15話 丸亀城の戦い

 私は珍しく若葉ちゃんと2人きりで街に出てきていた。

 

「いや〜。2人きりで外出なんていつぶり?」

 

「いつもはひなたと琴音の3人だったからな。もしかしたら初めてではないか?」

 

「7年近く一緒にいてこれが初めてなんて不思議なこともあるもんだね〜」

 

 今回は若葉ちゃんから誘ってきてくれたので、何かしら意味があるのではないかと深読みしていたが今の所そう言った様子は見受けられない。

 こうも相手の心理を読もうとするのは私の悪い癖かもしれない。

 

「そう言えば琴音は結局外したままなんだな」

 

「あ、うん。なんだかこっちの方が解放的だし」

 

 そんな今更気づいたのかみたいな目を向けるのはやめて欲しかった。

 

「昔から琴音は見た目を気にするところがあるからな。以外だった」

 

「私も若葉ちゃんくらい美人博麗だったら気にしなかったと思うよ」

 

「琴音も気にするほどではないとは思うのだが」

 

「はっはっはっ!笑わせてくれる」

 

「何を言っても無駄ではないか……」

 

 だからそうも可哀想なものを見る目。もしくは呆れ果てた顔をしないで欲しい。

 

「戯言だから気にしないで」

 

「そうか。っと、ついたぞ」

 

 着いた。と言われても、そういえば私はどこに向かっているかを聞いていなかった。ここは確か位置的にはアパレルショップがあったと記憶している。

 

「おっ、ビンゴじゃん」

 

「何がだ?」

 

「いやいや。こちらの話。これまた珍しいね。若葉ちゃんが洋服だなんて」

 

「わ、私のことをなんだと思っているんだ」

 

 なんだか私自身酷いことを行った気がしたのでとりあえず謝っておく。そんなに悲しそうな表情見せないでほしい。ついつい土下座とかしてしまいそうになる。

 

「んんっ。実は昨日の夜、ひなたに私服のサイズが合わなくなっていることを指摘されてな」

 

 せっかくなら琴音と2人きりで行って選んでもらえとの話だったらしい。私に服を任せるとはひなたちゃんわかっている。もれなくセンスがないやつ2人で選んだらどうなるか思い知らせてやろう。

 

「……どうしてそんなに緊張してるのさ」

 

「いや、何気に自分で買うのは初めてでな」

 

「嘘だあ」

 

 にわかには信じられないことを言われ、私はそれを信じぬままひとまずお店の中に足を踏み入れたのだった。

 

 数十分後のことであるーーーーー。

 

「若葉ちゃん。確かに若葉ちゃんはおかしいよ」

 

「お、おかしいか」

 

「うん。だって……」

 

 何をどうしたらそこまでおしゃれ感皆無の色合いぐちゃぐちゃの運動重視の服ばかり持ってくるんだ。

 

「今日はひなたちゃんから可愛らしい服を一つでも買ってくるって任務があったでしょ!?」

 

「とは言えだ!私服はよく着るものなのだから機能性があってしかるべきではないのか!?」

 

「………む。確かに」

 

 これで納得してしまうのだからきっと私はダメだ。若葉ちゃんは私を言いくるめれたことに満足してそうだし。そうだ。ここで折れるのは何か違う。

 私は適当に手元にあった白いワンピースを引っ掴むと若葉ちゃんに押し付けた。

 

「やっぱり認められない!これ着てきて!」

 

「わ、私に似合うのか。これが?」

 

「いいから。絶対似合うから!あ、髪はおろしてきて」

 

 私は勢いに任せて若葉ちゃんの背中を押し、試着室の中に押し込んだ。若葉ちゃんも渋々と言った様子で大人しく試着室の中へと入る。

 ガサガサとしばらく音がした後、カーテンが開けられた。そこにいたのはまさしく美少女だった。

 

「………」

 

 私が思わず見惚れて無言で立ち尽くしていると、若葉ちゃんは不安に思ったのか「やっぱり、私には似合わないな」とその服の裾に手をかけた瞬間。私は若葉ちゃんの肩を掴んでいた。

 

「買おう」

 

 結局、若葉ちゃんはその後もあれこれ抵抗したものの、私の確固たる意思に屈して購入を選択したのだった。

 

 思いのほか素直に褒められたことが嬉しかったのか、上機嫌な若葉ちゃんの隣を歩きながら街中を進む。なんだったら途中で麦わら帽子まで購入する始末。私も羨ましかったのでお揃いの麦わら帽子だけ買った。

 私はなんとなくで買ったその麦わら帽子を外し、空を仰ぐ。

 

「ん?なに、あれ」

 

 思わず声が出たと同時だった。空は晴れているのに、白くて大きな雪のようなものが突然降り注いできた。太陽はその大きな塊によって遮られてしまい、私たちのもとには光すら届くなってしまった。

 怖くなって若葉ちゃんに声をかけようと空から目を離して前を向くと。

 

 若葉ちゃんは目の前で化け物と形容するに相応しいモノに噛みちぎられた。その生温かい血飛沫は、私の左目をベッタリと覆った。

 空から降ってきたものは雪ではなかったと私はこの時理解する。先程までお揃いで持っていた麦わら帽子という幸せの象徴は風に靡いて、どこかへ消えていった。

 

「わかば、ちゃん?」

 

 目の前の光景をにわかには信じきれず、その化け物から逃げ出す動作も見せることすら私にはできなかった。

 ゆっくりとした動きで私に近づいた化け物は、そのグロテスクな口を大きく開いて、そしてーーーー。

 

 抵抗する間も無く、私は死んだ。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「………夢か……」

 

 目が覚めて最初に気がついたのは左の視界が真っ暗だったからだ。寝ぼけ眼を擦ると同時に、部屋に満ちた冷たい空気によって私の身体は覆われた。そう。季節はまだまだ冬だ。そんな真夏に着るようなワンピースなど誰が買うと言うんだ。

 

「変なところで夢だと気づくもんだなあ…」

 

 押し寄せる欠伸を噛み殺すことなく受け入れてから、私は布団という温もりから抜け出した。

 そのままの足でカーテンを開けるが、日差しはまだ出ていないので世界は真っ暗だ。気分もあんなものを見せられた後は良くはない。仕方なしで私は頬を軽く叩いて気合いを入れる。

 

「さてと。今日も一日頑張りますか!」

 

 母さんと決別してからまだ約1週間。完全に重しが無くなった私は、何の迷いもなく生活を送っているのだった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 そんな悪夢に近いものを見た日の昼食時。私は食堂にあるテレビを見ながらうどんを啜っていた。相変わらず私たちの特集が定期的に組まれ、同時に諏訪ではまだ人々は戦っていると言う嘘の情報が流れている。

 おまけにひなたちゃんが帰って来てくれた時に伝えられた新しい情報。四国の外にまだ生き残っている人々がいる可能性についても更にテレビ内では言及されていた。

 

「ずるいと言うかなんと言うか……」

 

 ぼーっと画面を見つめ、一言感想を漏らす。それと同時に背後から声をかけられた。

 

「……何が…ずるいのかしら……」

 

「その声はチカちゃんだね」

 

 振り返ると見事大正解。チカちゃんは小さく笑うと、私の正面の席に座った。

 

「今更だけど……席、いいかしら」

 

「うん。どうぞどうぞ」

 

 1人でテレビを見ながら食べるのも飽きてきた所だったし、こうやって千景さんと2人でご飯を食べる機会というのもないので喜んで承諾した。

 千景さんは一口二口うどんを啜った後、話を切り出した。

 

「……大規模な侵攻の話…どう思う…?」

 

「うーん。勝てるかどうかって話?」

 

 頷いた千景さんを右眼に捉え、私はしばらく考え込んだ。

 

「勝てるよ。なんたって、今若葉ちゃんと杏ちゃんが作戦考えてくれてるから」

 

「そこに自分が……1枚…噛んでるとは言わないのね……」

 

「誰から聞いた」

 

「吾妻さんよ……」

 

 希望だった。あの人、千景さんには何もかも話すからちょっと困る。私が希望に対して心の中で文句を垂れていると、千景さんはより一層真面目な顔をして私をみていた。

 

「どったの?」

 

「前も聞いたかもしれないけど……。秋山さんは……少しでも…多くの人に認めてもらいたいとは…思わないの?」

 

 確かに以前されたようなされていないような。せっかくなので今一度付け加えて話してみるのも良いかと思った。

 

「私は…あまり世間に名前を出されてもね。結局、ちやほらされてもその時だけだし。多分、調子に乗って名前を出して。失敗したらまた私のこと魔女扱いだよ」

 

 私は大阪での経験からあまり表に出ることを好まなくなったと言ってもいい気がする。

 

「魔女……」

 

「そうだよお?今の人なんて、みんな私たちの活躍に一喜一憂してるけど、それは逆もあり得るんだから」

 

 ついつい話している間に当時を思い出してしまい、熱が入ってしまった。私がそれを誤魔化そうと「なはは〜」とうなじのあたりを掻きながら笑っていると、千景さんは妙に神妙な顔をしていた。

 

「…その視点は…なかったわ……」

 

「私はさ。チカちゃんや他の子達にだけ認められればそれで良いのかも。って最近思えてきた。多くはいらないよ」

 

 母さんのことが頭をよぎり、大阪での人たちのことがよぎる。私は一本の麺を箸でつまみだし、眺めた。その私の言葉を聞いた時、千景さんは再び動かしていた箸を止める。

 

「……あなたは私を…認めてくれる?」

 

 これまた唐突な質問だことで。この質問には私は何も考えずに答えることができる。今の所、私が唯一即答できる問いだと言えた。

 

「これまた藪から棒に。もちろん。私は郡千景って言う人を信じてるし大好きだよ。仮にさ、私たち勇者として出会ってなくてもきっと友達になれてたと思う」

 

 迷いなく、純粋な言葉だけを私は並べる。これを綺麗事だと言われて仕舞えば、私は更なる言葉を持って感謝の言葉や様々な言葉を伝えるだろう。

 千景さんは『勇者として出会ってなくても』と言う点が引っかかったみたいなのか、自分の口の中で今一度反芻していた。

 

「もしかしてだけど……。チカちゃん。勇者の時の自分しか価値がないと思ってたり?」

 

 余計なことを聞いてしまったかと思って、若干の後悔。だが、返ってきた言葉は私が想像していたものとは事なっていた。

 

「……そうでは…ないの?」

 

 まさかのまさか。誰がビンゴだと思うのでしょうか。しかもそんなに当然のことでしょう。と言わんばかりの表情を見せないで欲しかった。しかも、今まで千景さんは私たちが素直な気持ちで関わっていたのにそんな風に思っていたのかと言う怒りが胸の奥から沸々と湧き上がってくる。

 

「なわけないでしょ。あまり私たちを馬鹿にしないで」

 

 私はそれだけ言うと一気に残りのうどんを口の中に放り込んだ。手を合わせてから、立ち上がる。

 それと同時に私が怒ったのが意外だったのか、面食らっていた千景さんは小さな声で私に頭を下げた。

 

「…ごめんなさい……」

 

 謝らせるのもなんだか気が引けてしまったのは千景さんの目が僅かに潤んでいたからだろうか。

 私が謝ろうとしたところで千景さんは微笑んだ。

 

「……ありがとう。…嬉しかった……」

 

 千景さんはそれだけ私に伝えると、それ以降は何も話さずに食事に集中してしまった。

 私は一度立ち上がってしまった手前、また座るのも変だと思ったので千景さんに「また後で」とだけ声をかけてその場を後にしたのだった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 それからと言うものの、千景さんの様子を気にしながら過ごしていたが変だったのはあの時だけだったように思う。平常運転と言えばそこまでなのだが、やっぱり私には引っかかるのだ。

 

「琴音、聞いてるか」

 

 思考の海に沈んでいた私の意識は若葉ちゃんの声によって引き戻される。そう言えば作戦会議中だったと同時に思い出した。杏ちゃんは私の様子を見て、小さく笑っていた。ちなみに若葉ちゃんの首と胴体はちゃんと繋がったままで一安心。

 私は自分の不手際を誤魔化すために軽口を叩いた。

 

「うん。魔法の使い方だっけ?任せといてよ!私の才能見せてあげる」

 

「一体なんの小説に影響されたんだ」

 

「影響も何も。私にも、もしかしたら魔弾の一つや二つ撃てる日がくるんじゃないかなって期待してるだけだよ」

 

 若葉ちゃんが私の妄言に頭を抱え始めたところで、私はしっかり話を本題へと戻した。

 

「おふざけはこの辺にして……。私は杏ちゃんの案で良いと思うよ」

 

 杏ちゃんの案は、私と以前に考えたものに少し手を加えたものだった。それに対して私は杏ちゃんの考え出した陣形にバーテックス側の動きを書き加えたのである。

 

「逆の視点で考えてみたんだけど…ちょっと失敗だったね」

 

 私の持つ地図中に描かれた数百通りの侵攻図。それは様々な線が入り混じりすぎて、見えづらいことこの上なかった。

 

「うーん。やっぱり私、バカかもしれない」

 

「た、確かに見難いですけど。凄いです。けど、どうして琴音さんはバーテックスの侵攻図を想定したんですか?」

 

「ほら。バーテックスって知性があるでしょ?私たちの動きに当てはめれるかはわからないけど、経験則に基づいてって感じ」

 

 相手側から見て、何を目的に。どんな選択をしてこちらへと仕掛けてくるのかを先に読んで読んで読みまくって。なるべく後手に回らぬように立ち回る。当然のことだが、これが意外に難しい。私の戦術はなるべく相手を数百通り思いついた案のどれか一つに誘導することを厳となしている。

 つまり要するに確実な陣形などの形がない。その場その場で臨機応変な対応が必要となってくるのは言うまでもなく、私たちはまだそこの領域には到達できていないのが実際のところだ。 

 

「琴音はどこまで見えているんだ?」

 

 私の戦術案に一通り目を倒したのだろう。珍しく私を怪物を発見した時のような目で見てくれるではないか。全くもって嬉しくない。

 

「若葉ちゃんだって私より賢いんだから相手の三手先まで読むなんてお手のものでしょ」

 

「か、簡単に言ってくれるな……」

 

「私も若葉さんと同じ意見です……」

 

 杏ちゃんも私の発言にドン引きしていた。何もそこまで頬を引き攣らせなくても良いのではないかと思う。私だって若葉ちゃんの戦闘力や杏ちゃんのその思考の速さにはドン引きしたいまである。

 私が言い返そうとしたところで、若葉ちゃんが先に口を開いた。

 

「今更にはなるが、皆はそれぞれ長所があるのだからそれに応じた配置をするべきでないか?」

 

「おお。若葉ちゃんの口から出たとは思えない」

 

「琴音。あとで道場に来い。その減らず口、叩き直してやる」

 

「はっはっはっ!バカ言わんでください。死んでしまいますよ?」

 

 あまりにもその視線と声音が本気だったので心が震えた。恐怖で。

 気を取り直して若葉ちゃんは話し始める。今度は私も杏ちゃんも遮るようなことはしなかった。

 

「私はあれから数日、ようやく皆を知ることができた気がする。その気づきを活かさない手はない」

 

「具体的にはどうするんですか?」

 

「まずはだなーーーーー」

 

 作戦会議は一歩。また一歩と進み続ける。時計の針もその歩みに追いつこうと必死になって追いかけて来た。

 私たちには大規模侵攻までのわずかな猶予しかない。この侵攻を誰1人欠けることなく終わらせる。そのための知恵を、私たちは働かせて続けた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 空を埋め尽くすは無数の星。燦然と煌めくその星々は一つとなり、やがて大地に流星のように流れ落ちる。

 ひなたちゃんが私たちにもたらした神託。その文に似た一節が、以前読んだ小説にあったことを、私は眼下の様子を見て思い出した。

 

「ぬあーっ!数を数えようと思っても多すぎて無駄だっ!」

 

 タマちゃんの言葉はこの場に立つ皆の総意に変わりはなかった。

 スマホのマップに映るその数は到底数えられるものではなく、その数は二千を超えることは間違いなかった。

 

「比喩ではなく『無数』というわけか……」

 

「その無数を屠るためにこの半月、色々やって来たんでしょ?」

 

 私は若葉ちゃんの隣に並んで、その眼前に迫ってくる大群を見る。

 不思議と以前ほどの緊張はない。自然体でこの戦闘に挑めるような気がした。それは若葉ちゃんも同じようだ。

 

「だが厳しい戦いにはなるだろうな」

 

「そんなこと気にしてたらキリないよ。ほらほら。ユウちゃんも何か若葉ちゃんに言ってあげてよ」

 

「コトちゃんの言う通りだよ!私たちは勝つためにここにいるんだから!また帰ったら耳かきしてあげるね」

 

「えっ。そんなことしてたの?破廉恥!」

 

「べっ!別にそんなことないだろう!?」

 

 ニッコニコな笑顔な友奈ちゃんとは対照的に、若葉ちゃんは顔を真っ赤にさせて焦り散らかしている。耳かき、大して変な行為ではないのにその反応をされると変なものに思えてくるではないか。

 明後日の方角を向いてしまった若葉ちゃんを尻目に私が再びスマホの画面に目を向けると友奈ちゃんがそっと耳打ちしてきた。

 

「コトちゃん」

 

「ん?どったの。改まって」

 

「ごめんね。前は。まだ謝れてなかったから」

 

「ああ〜……」

 

 私の母さん事変のことを言うてるのだろうとはすぐにわかった。

 

「ユウちゃんが悪いわけではないから気にしないでよ。それに私、やっと少しだけユウちゃんの事がわかった気がするよ」

 

 念押しで今一度気にしないでね。と付け加えると友奈ちゃんはホッとしたのかまたいつもの笑顔に戻った。けどあの時以来思うのだ。友奈ちゃんは誰かが傷つくのを相当に拒む。その笑顔の裏ではとてつもない苦悩がーーーー。

 

(今はやめとこう。考えたって無駄だし)

 

 私は思考がブレてしまったことを頬を叩くことで元の方向へと引き戻した。

 

「さて、リーダーの若葉ちゃんの肩の力も抜けたところでアレやりますか!」

 

「おっ!いいね!アレだね!」

 

 若葉ちゃんと杏ちゃんは首を傾げたが、友奈ちゃんはすぐに察してくれて私の肩に手を回す。

 

「確かにアレをやるしかないなっ!」

 

 友奈ちゃんの動作で『アレ』の正体に辿り着いたのか、タマちゃんも私の肩に手を回した。ここまで来たら他の3人も理解はしたみたいだった。

 

「円陣ですね。これをやるの球技大会以来かもしれません」

 

「……いいかもしれないな」

 

 2人も肩を組んでようやく私たちは一つの円になりかける。

 千景さんはどうすべきなのか、視線を彷徨わせていた。

 

「千景も入らないと一つの円にはならないだろ?」

 

「そうだよ!ぐんちゃんも!ほらっ!」

 

 若葉ちゃんの声に押され、友奈ちゃんの伸ばされた手を取った千景さんは友奈ちゃんに招き入れられる形で円陣へと加わった。

 

「じゃあリーダー、めいいっぱい気合いが入るの頼むぞっ!」

 

 タマちゃんに言われ、若葉ちゃんは頷くと声を上げた。

 

「四国以外にも生き残っている人々がいる可能性が出て来た。私たちはその人々に『希望』を届けなくてはならない。四国の人々にもだ。そのためにーーーー私たちは負けるわけにはいかない。この戦いも必ず勝つ!ファイト、」

 

「「「「「オッーーーーー!!」」」」」

 

 勇者達の声が樹海に轟く。それは同時に開戦の狼煙となった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 今回の戦いにおいて私たちが考え出したのは陣形を使うことだった。勇者を決められた位置に配置し、役割を分割してバーテックスを撃退する。

 この迎撃における中心地は丸亀城。まだ樹海化の影響が少なく、見晴らしもいいためだ。それにこの辺りの地形なら、樹海化で変わろうとも把握している。バーテックスとは違い、こちらは地の利を得て戦うことが可能となるようにした。

 配置は私が前、思いついた中央。西、東とそれぞれ1人ずつ配置し、残った1人は休憩。その前衛3人が討ち漏らした敵を遠距離攻撃と視野に長けた杏ちゃんが撃退する。

 私はどちらかと言えば遊撃戦を期待されたらしく、常に3方向を行き来していた。

 敵の多さを鑑みても長期戦になることは想定済み。切り札も使えば体力を相当に消耗する。それを防ぐためにも他の人たちに休憩してもらうために私が走り続けるのは造作でもない。

 

「丸亀城の前には私が立つ」

 

 円陣を終えた後、そう言ったのは若葉ちゃんだった。

 

「敵が1番くるよ?…大丈夫?」

 

 そんな若葉ちゃんを友奈ちゃんは心配そうに見る。だが、若葉ちゃんはそれに凛とした声で答えた。

 

「だからこそ私がやらなくてはならないだろ?それに琴音も杏もいる。1番敵が来るとはいえ、1人ではない」

 

 若葉ちゃんのその澄んだ瞳に捉えられた私は完全にお手上げになってしまった。そこまで信頼されているのなら私は全力でその信頼に答えよう。

 

「……本当に…変われた…のね…」

 

「皆のおかげでな」

 

 千景さんの言葉に若葉ちゃんは薄く笑って答えた。それを聞いた皆の表情も緩む。

 

「……後ろには私も控えてるから…。頑張って……」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「そんじゃ、正面は頼むぜ!リーダー!」

 

「無理はしないでね。若葉ちゃん」

 

 士気はこれまでで最高潮。もう誰も私たちを止められる気はしなかった。

 

「では、若葉さんを中央に。話は友奈さん。西はタマッチ先輩。千景さんはいったん待機で。琴音さんは皆のサポートを。始めましょう!」

 

 指揮官役も兼ねている杏ちゃんの声と同時に、私たちはそれぞれの配置へと跳躍したのだった。

 

 私がいるべき場所は若葉ちゃんのいる少し後方。そして3人を見渡せる位置。基本的には杏ちゃんが指示を出してくれるが自分の目で見て動くことに越したことはない。

 

「さてと……。とりあえずは【生弓矢】でいいかな」

 

 すっかり手に馴染みきったこの弓に私はすっかり信頼しきりだ。【倶利伽羅剣】の出番は乱戦になってからと今回は決めてある。

 既に3人は戦闘に入っており、次々にバーテックスを屠っていた。

 

「すまん琴音っ!そっち行った!」

 

「っ!とやっぱり数が多いと抜けてくるよね」

 

 早速私はタマちゃんの陣から漏れ出た3体を同時に相手することになった。まだ距離があるのでよく狙いを定めてからまず一体を確実に屠る。

 

「次!」

 

 縮まってしまった距離を、後方に跳躍しながら取り同時に矢を放つ。空中で放ったが、矢は見事にバーテックスへと命中した。

 空中で回避ができないと踏んだのだろう。残りの一体が私を仕留めようと一気に距離を詰めて来た。

 

「甘いね!もっと周りを見なよ!」

 

 私は飛んだ先にあった樹海の蔓を蹴って、バーテックスの進行路から自分を外す。私を手前で見失ったバーテックスは樹海に激突し、その動きを止めた。

 そのバーテックスに私は上から矢を直接突き立てた。相変わらず耳障りな呻き声を上げてバーテックスはその姿を散らす。

 

「琴音さん!若葉さんの方へお願いします!」

 

 ひとまず3体倒した私に杏ちゃんからの指示が届く。私は拳を突き上げて意思をしめすと中央に一気に跳躍する。

 その間にも【生弓矢】で若葉ちゃんの周りに纏わりつくバーテックスを撃破した。若葉ちゃんの手前で私は武器を持ち変えてから隣に着地した。増援にバーテックスは一度足を止める。

 

「さすがの腕前だな。琴音」

 

「感想戦は後々。少し押し返そう。そしたら次は東と西に分断できる。そこに私と杏ちゃんが攻撃として加わればこちらも前に出れる」

 

「了解だ!来るぞ!」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 杏は後方から指示を飛ばし続けていた。敵がどこから来るか。どこに動くべきかを的確に。脳をフルスロットで回し続けるものだから、そのうち思考を占める回路が焼き切れるのではないかとすら思えた。

 とは言え、体力も体の力も強くない杏はこうして頭脳で皆に貢献する他ないと以前から自分を鼓舞して来た。臆病で、自信のない杏を否定する者はこの場には誰もいない。そんな場所だからこそ、杏は自分の才能を伸ばせた気がするし、役目を全うしようと思えるのだ。

 

(大丈夫…今の所は優勢だ。前衛に4人しかいなくても戦える…)

 

 果たして自分に琴音のように3手先まで読む力はあるだろうか。試してみたい衝動にかられたが、今は自分を抑え込む。

 

(3手先とまでは言わずとも、2手先を読むことぐらいはやってみせる!)

 

 そして更に杏は思考を加速させた。同じく城郭で待機をしながら4人を見つめる千景は、どこか落ち着いていた。

 以前までならバーテックスを倒すことで自身の価値を世間に見出させようとしていただろう。だが、数日前の琴音との会話があったからだろうか。そんな気持ちは自然と消えていた。

 

「……高嶋さんの方に二体行ってるわ……」

 

 冷静に自分の番を待ちながら、必死で指示を飛ばし続ける杏に助言をパスする。

 

「っ!琴音さん!友奈さんの方にーーー。ってなんでいるのあの人!?」

 

「………今のは私でも…気持ち悪いと思うわ……」

 

 突然友奈の陣に現れた琴音を見て、杏と千景は絶句した。杏は気を取り直して指示を出し始めるが、千景は一つだけ疑問に思ったことがある。

 

(なぜあれだけの人が…左眼を失うほどの…大怪我をするわけ……?)

 

 そんなことを考えている間に杏から声をかけられた。

 

「千景さん!中央の若葉さんと交代です!」

 

 杏でなければ気がつかなさそうなほどの僅かな鈍りを、彼女は見逃さなかった。

 千景は頷くと大鎌を担いで下に降りる。

 

「琴音さんはそのまま友奈さんと一緒に行動してください!」

 

 琴音を付けておけば友奈の疲労も分散される。とは言え、先程から琴音は動きっぱなし。疲労も俄然溜まってきているはず。しかし、戦線を保つには杏はこうせざるを得なかった。 

 

「琴音さん……。すみません。少しの間だけ、無理を承知でお願いします」

 

 杏が小さく呟いたのと同時に若葉が城郭へと上がって来る。入れ替わりで戦場に入った千景はこれまで溜め続けた力を一気に解放するかの如く勢いでバーテックスを屠っていた。

 

「お疲れ様です。若葉さん」

 

「杏も見事な采配だ。おかげで私たちも戦えてる」

 

 若葉の言葉には淀みがない。純粋な言葉だからこそ、その褒め言葉を杏は素直に受け取った。

 

「前に出た時は少し驚きました」

 

「あ、あれは琴音の指示でだな」

 

「ふふっ。大丈夫です。元からそう言う話はしていましたから」

 

 大規模侵攻が始まる前日の作戦会議で、この陣形を敷くという判断を決めた時点で杏は琴音にお願いしていたことだった。

 

「それにしても……少し私たちは琴音に頼りすぎか?」

 

 若葉の何気ない一言は杏も先程から薄々勘づいていることではあった。常に誰かを庇っているのは琴音だ。そのおかげでこの場にいる全員が大怪我をすることなくここまで来たと言っても良かった。それは非常に危ういことでもある。

 しかし、今だけはその考えを杏は片隅に避けた。

 

「若葉さん。しばらくは私もタマッチ先輩の方を援護します。ゆっくりと休んでください」

 

「ありがとう。そうさせてもらう」

 

 若葉は杏にお礼を言い、改めて戦場を見渡した。

 小さな身体で果敢に立ち向かう球子。リーチという不利を背負いながらも一切引かない友奈。その友奈を左眼を損傷しながらも見事に援護しきる琴音。若葉と入れ替わりで最も攻撃が苛烈な中央に立つ千景。そして、最終防衛ラインと戦いのブレインを任された杏。

 若葉の心は熱く震えた。

 

(こんなにも頼りになる仲間たちが私にはいたんだな……。もっとはやく気がつけていればーーーー)

 

 若葉は地面に刀を突き立て、その柄を力強く握った。

 喜ぶのはまだ先だ。一進一退の攻防が続いている。球子もいつ限界が来るかわからない。しかしそれまでは仲間を信じて身体を休めよう。そう思って若葉はじっとその場から戦場を見渡し続ける。

 しかし若葉の読み通り、案外早く球子の限界は来てしまった。

 

「若葉さん、たまっち先輩と交代で!」

 

「了解だ!待て、あの奥の影はなんだ」

 

 若葉が捉えたものを杏もすぐにその視界に捉える。

 

「いつの間に進化体が!?」

 

 見逃していたわけではない。何故ならそこにはこれまで何もいなかったのだから。

 

「まさか、隠れていたというのか!」

 

 勇者達の長丁場の戦いはまだ終わりそうもなかったーーー。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ったく、これなら進化体が来てくれた方が気持ち楽に……って、マジ!?」

 

「じょ、冗談言って本当に来ちゃうなんて……。すごいなあ。バーテックス」

 

「そんな素直に関してしてなくていいから!」

 

 突然の事態に今まで聞いたことのないほどの呑気な友奈ちゃんの声で逆に私はずっと現実世界に置かれっぱなしだ。

 進化体は大きな身体に合わせて、それに不釣り合いな鐘のようなものを持っていた。

 

(どうしてその図体を持ちながら見逃してたんだ私たちは!!)

 

 考えられるのは2つ。海の中にいたか、樹海の影で密かにその形を練り上げていたか。

 

「そんなことはどうでも良い!杏ちゃん、どうする!」

 

 私は城郭にいる杏ちゃんに指示を求めた。その時だった。

 がらーん。がらーん。と進化体の鐘がなり始めた。最初はなんて事のない音だった。しかし、音と音が重なり合い続けた結果ーーーー。

 

「気持ち悪っ!?」

 

「なに、この音!」

 

 凄まじいまでの不協和音が樹海に轟く。その音は聞くに絶えず、耳を塞がなければ立つことすらできなかった。それは皆も同じようで優勢だった千景さん、タマちゃんもその場には踏みとどまっていたがすぐにもその戦線を突破されるだろう。

 私たちは完全に動きを封じられたと言っても過言ではない。それがバーテックス達の狙いだとすぐに気がつく。

 

「さいっ、あく!!」

 

 おそらくこの音では杏ちゃんの声も私たちには届かない。

 

(こりゃ、覚悟決めときます?)

 

 大量のバーテックスが一気に目の前に出現したのを引き金に、私は力の出し惜しみを辞めた。

 

(ごめん。みんな。私はやるよ!!)

 

 何よりこんな音、私の聴きたい音ではない。私の聴きたい音は、情熱的で。それでも優しく隣に寄り添うようなあの音色だけだ。

 私は思いっきり息を吸い込むと、身体のうちからみなぎる力にこの身を委ねた。

 

「勝利をここに!上杉謙信!!」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 杏がこの戦いにおいて最も警戒していた琴音の行動。それは何の躊躇いもなく精霊をその身に宿すことだった。

 それも今、この危機的状況において止めることができないのはわかっている。だとしても琴音にこれ以上の負担はかけられないと杏は判断した。

 自分が精霊を纏う。そんな時だった。西の前線で戦っていたはずの球子の下から恐ろしく大きい旋刀盤が進化体めがけて放り投げられる。その旋刀盤は炎を纏い、外縁部の刃を凄まじい勢いで回転させながら進化体めがけて飛行した。

 その凄まじい威力から、2人はすぐに球子が精霊を使用したのだと気がつく。

 

「たまっち先輩!?精霊を!?」

 

「なんだあれは、無茶苦茶ではないか」

 

 旋刀盤は周りにいる個体のバーテックスをも飲み込みながら、その勢いを更に増した状態で進化体にぶつかった。するとなんと言うことか。鐘を丸ごと吹き飛ばしたではないか。

 その威力に圧倒され、杏と若葉が再度球子の陣を見るとその直線上にいた敵は砂塵と化していた。

 

「どうしたら球子のやつ、あんなデカいものをあそこまでコントロールよく投げれるのだ」

 

「か、感動してる場合ですかっ!」

 

 不協和音も無くなり、行動の制限がされなくなった所に球子が持ち場を離れて若葉と杏の下に駆け寄った。

 

「ええぇ!?たまっち先輩!?いくらなんでも持ち場を離れるのは」

 

「すまん。若葉、ちょっと交代してくれ……。こりゃ、タマでもきついぞ」

 

 球子は精霊の力を使ったからか、肩で息をしながらその場に倒れ込んだ。元々援護もなしに1人で戦っていた。それに加えて、先程の切り札。球子がいかに獅子奮迅の活躍であったかを2人は思い知らされた。

 気が動転していた杏からすれば自分の判断で撤退を選んだ球子はありがたかった。まだ敵は体制を整え切れておらず、こちらも余裕があったからだ。

 

「若葉さん」

 

「わかってる。球子、よくやってくれた」

 

 若葉は入れ替わりで戦線に立つ前に、球子にグッと親指を立てると球子は口元に笑みを浮かべて親指を立てて返す。

 しかし、これで一件落着とはいかない。てっきり球子の攻撃で終わったと錯覚していたが、まだあの巨大な胴体は停止する気配を見せていない。

 再び進化体が再生能力でその鐘を取り戻しかけたその瞬間だった。

 26の閃光が進化体を覆うようにして煌めき、その身体は閃光と同じ数に切り裂かれた。元の身体の形もわからないほどに分散させられ、遂に進化体はその姿を消す。

 進化体の散り行く光の中に立つ1人の少女は杏の知っている人物とは思えなかった。狂気的に笑い、何者を殺すことを躊躇わぬほどの眼光。その様子を見た杏は息を呑んだ。

 

 魔女だ、と。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 進化体を倒してからは簡単な殲滅戦となった。集合体を先に撃退されたバーテックス達は散り散りになって撤退を開始。

 後世に『丸亀城の戦い』と呼ばれることになる激戦は趨勢を決した。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 樹海化が解け、世界が元の風景を取り戻した後。

 希望とひなたは丸亀城内の桜の木が植えられた辺りを何かを探しながら早足で歩いていた。

 春になれば桜の名所となるこの場所も今は枯れてしまっている。その桜の木の下に1人の少女がその身を横たわらせている。

 

「起きてください。琴音さん」

 

 ひなたは琴音に声をかける。すると、琴音はゆっくりとその閉じていた瞼を開ける。

 

「……まぶしい…」

 

「起きないと風邪引くよ」

 

 優しいひなたとは対照的に、希望は琴音の頬を軽く叩いた。よっぽど嫌だったのか琴音は希望の手を払い除けると、その身体を起こした。

 ひなたと希望は神託で琴音が丸亀城のどこかにいると神託で聞き、探しに来たのだった。

 琴音は虚な目で希望に尋ねる。

 

「……終わった?」

 

「うん。終わったよ。大勝利!」

 

 指でVサインを作って琴音に伝えると、琴音はそっか。と胸を撫で下ろした。しかし、希望とひなたの表情は浮かない。虚勢を張った希望のVサインも次第に勢いがなくなっていってしまう。

 耐え切れなくなった希望は遂に聞いてしまった。

 

「……痛くない?」

 

 琴音はその白い戦装束を身体中にできた切り傷から流れ出る血によって真っ赤に染めている。それが琴音が今回切り札を使った影響だった。

 それよりも、琴音の目はどこか虚で、その視線の先には希望やひなたはいない。

 

「わからない……。でも、一つだけ、わかる…」

 

 そして最後に琴音が放った一言はひなたと希望を戦慄させた。

 

「戦わないと…」

 

「こ、琴音?」

 

「ことね、さん?」

 

 琴音は虚ろな目でただひたすらに呟き続ける。

 

「……殺さないと。私を苦しめた、モノたちを。でないと、私は、またーーーーーーーーー」

 

 そして琴音は手元にあった【倶利伽羅剣】の柄を握りしめる。そのまま刀身を抜き出そうとしたところで、琴音は立ち上がることもままならずにその場に倒れ込んだ。

 今目の前で起きた事を、希望とひなたはにわかにも信じ切ることができなかったのだった。

 

 

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