【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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不定期投稿です
今回ナーリンは出ませんスマソ








「お久しゅうございます我が王」って泣き崩れるの楽しすぎワロタ

零落の王墓、深部にて

 

 

 

 

 

「魔法によって作られた複製体だな。魔族か魔物の仕業だろう」

 

 

 デンケンは杖を手に今自身が撃破したラオフェンの複製体を冷静に分析していく。

 

 

「だが、これほど完璧な他者の複製は見たことがな……リヒターッ!」

「分かっている。『大地を操る魔法』」

 

 

 声を張り上げたデンケンに応じてリヒターが魔法を行使した。一行の背後を守るように石畳の床から岩壁が生え、そこにガガンと何か硬質なものがぶつかり岩を砕く音がダンジョン内に反響する。

 

 

「この魔力はクラウの複製か! あの攻撃に通常の防御魔法はまず通じん! リヒターは防御に専念! 他は隠れろ!」

「チッ、面倒な魔法だ」

「す、すみませぇん」

 

 

 リヒターが眉をひそめ舌打ちし、自身の複製体が現れ一行に襲いかかってきたクラウは震えた情けない声で謝罪する。

 

 

「『鉄球を操る魔法』でしたか。物理的攻撃への耐性が低い防御魔法に対して、矢のような速度で重さ数キロの鉄球が飛んでくる。前衛の戦士がいない現状、魔法で物理的防御が出来るリヒターさんがいなかったら初撃で大きなダメージを受けていたでしょう」

「大人しそうな雰囲気してるくせに殺意が高い魔法使うよね。あんなの人に当たったら弾けたトマトより酷い有り様だよ」

「エッ、いや、その……恐縮です?」

 

 

 メトーデとラオフェンが岩壁の陰から様子を窺いながら言う。クラウの複製体は少し離れた所から攻撃を繰り返していたが、リヒターの魔法により尽く阻まれている。

 

 

「お喋りは後にしろ。ラオフェン! 合図したら複製の背後に飛んでとどめを刺せ。メトーデ! 儂らは防御を砕くぞ! クラウは動くな、お前さんの鉄球までアレに操作されたらかなわん」

「りょーかい」

「分かりました」

「ハイ……う、うう、なんだか複雑です……」

 

 

 複製体が操作している鉄球は五つ。三つをデンケン達に向けて狩りをする猛禽類のような鋭さと軌道で自在に操り、残り二つを自身に向かってくる魔法の迎撃に回している。

 しかし、前者はリヒターの的確な防御により有効打にならず、後者も受験者の中で有数の実力者であるデンケンとメトーデの絶え間ない連続攻撃を捌ききれず既に防御魔法を混じえてどうにか耐えているという状態だった。

 

 

「ラオフェン!」

「ん」

 

 

 そして、限界を迎えた防御魔法が砕けた瞬間に背後に回ったラオフェンによって、特に被害もなくクラウの複製体は撃破された。

 

 

「……終わり、か」

 

 

 魔力へと還っていく複製体を囲むように一同は集まる。

 

 

「魔力も技量もラオフェンやクラウと同等、所作も変わらないとは……記憶を利用しているのか……まるで鏡写しのようだな」

「だが、幸い見た目が特徴的だ。同士討ちのリスクが無いのは救いだろう」

「しかし、これはかなりの脅威です。複製体がお二人のものだけ、というのは楽観的な考えでしょうし……同時に現れる可能性もあります」

「ゼンゼさん、フリーレンさん、デンケンさん……この人たちの複製と出遭ったら……うう、悪夢です」

「この世の地獄だね」

「相手が少数なら取れる手段の多いこちらに分がある。徒党を組んでいて正解だったな」

「おい俺の名前が無いぞ」

 

 

 複製体の分析を終えて一行は歩みを再開する。

 

 

 しかし。

 

 

「ひえっ……」

「……デンケン。あれ相手にも『分がある』のか?」

 

 

 ダンジョンの最深部と思われる広々とした空間。その奥に聳える豪奢な扉の前に立ち塞がるエルフの魔法使い、フリーレンの複製体に一同は表情を強張らせる。

 

 

「……一つだけ言えるのは、これが試験でなかったら、儂はとうに瓶を割っておる」

 

 

 一同は撤退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「複製体を操っているのは、『水鏡の悪魔』っていう神話の時代の魔物だ」

 

 

 フリーレン達と合流し、攻略のための作戦会議の最中、遅れて最深部まで辿り着いたラヴィーネが持っていた情報はまさに最後のピースと言っていいだろう。

 

 水鏡の悪魔。宮廷の書庫の奥でホコリを被っている古文書で名前を見たことがある。あくまで英雄譚の中で『水鏡の悪魔が作り出した己の影と戦い、これを打ち破った』という英雄に主軸を置いた書かれ方をしていて、複製体やその習性の事については記されていなかったが。

 

 この『零落の王墓』は人造の迷宮だ。統一王朝期において最も偉大な名君として歴史に名を残す『賢王ヘーロス』の為に築かれた王墓。水鏡の悪魔はここを造った時に番人として態々設置したということになるのだろう。道中のトラップからして設計者は性格の悪いクソ野郎に違いない。

 

 

「魔法同士の相性、そして数の利が重要になる。勝てない相手なら逃げろ。そして隠れろ。不意をついて倒せればいいが、無理なら味方と合流、連携しろ」

 

 

 フリーレンの弱点などが明らかになり、作戦会議は進んだ。フリーレンとその弟子フェルンがフリーレンの複製体と奥の水鏡の悪魔を打ち倒すまで、儂らが最深部に集まってくる他の複製体を足止めする。

 

 

「よし、攻略を開始しようか」

 

 

 

 

 

 

 作戦は上手く行った。

 

 リヒターなど一部の面々が負傷離脱し失格となってしまったが、それでも儂やラオフェン、クラウを含めた一三名が合格、第三次試験へと駒を進める事になる。

 

 

「……ふむ、少しいいだろうか」

 

 

 この後、零落の王墓には大陸魔法協会の調査隊が入るとの事だが、儂はゼンゼに申し入れ中を見せてもらうことにした。ラオフェンとクラウもついてきたが。

 先程ミミックに引っ掛かっていたフリーレンも同じらしい。後ろのフェルンは……師匠が変な行動をしないか監視している弟子いや保護者の目だな、あれは。

 

 

「フリーレン。お前はエルフだろう? 統一王朝は直接見聞きした事はあるか?」

「いや、統一王朝は私が生まれるより前だからね。それに、千年前まではエルフの村でずっと暮らしてたから、それより昔のことはよく知らない」

「そうか」

 

 

 千年以上を生きた魔法使いが歴史の表舞台に現れたのは八十年前のこと。色々な事があったんだろう。

 

 

「お爺ちゃん、ちょっとデリカシーが無いんじゃない」

 

 

 ラオフェンがそんな事を言ってくる。ふむ、確かに配慮に欠けていたか。いかんな、宮廷を離れてから少し気が緩んでいるかもしれん。

 

 

「……っ! フリーレン様、これは」

「どうしたのフェル……ン……」

 

 

 声を上げ立ち止まったフェルンが指差し、その方向に視線を向けたフリーレンが言葉を失う。

 壁画だ。何かしらの儀式を描いた物なのだろう。王冠を被り玉座に腰掛けているのは賢王ヘーロスか。写実的ではないが鮮やかな色使いと特徴をよく捉えたデフォルメがされている。

 それだけならば特に気にすることはない、歴史的、美術的な価値はあるが、フリーレンやフェルンのような魔法使いが戦慄などするはずが無い。だが、これは。

 

 

「賢王の隣に描かれているのは、魔族……か?」

 

 

 紫の髪、青い肌、二本の角。ローブに身を包み王の傍に膝をつき控えているその姿は、人類に近しいが紛れもなく人外、魔族のものだ。

 

 敗北し王に屈したという見方は、出来ない。ならば王は武器を持つか、魔族は傷付くか枷をはめられるかして『分かりやすく』描くはずだ。壁画というのは文字を読めない者に教典の内容などを伝えるためにあるのだから。

 

 つまり、まさか、王に仕えていたというのか、魔族が。

 

 心臓が跳ねる。脳裏をよぎるのは故郷のこと。今はもう黄金に飲まれてしまった遥か遠き思い出。

 

 

「ナーリン……」

 

 

 フリーレンの呟きが耳に入る。

 ナーリン。それはここ一、二年で耳にする機会が増えたとある魔族の名前だ。

 

 

「それ、狡智の大魔だっけ? 新しく見つかった大魔族だって聞いてるけど、これって大昔の壁画なんだよね。別人じゃないの? エルフじゃあるまいし」

 

 

 ラオフェンが壁画を眺めながら言う。確かに、魔族は長命だがその『寿命』はエルフ程では無い。人で言うところの老衰で死んでいると考えるのが自然だ。

 だが、フリーレンは首を横に振った。

 

 

「私の知識でもその筈なんだけど……もしかすると、定説がひっくり返るかも知れない。人物の周りの模様があるよね、あれはこの時代の文字を装飾に落とし込んだものなんだ。デンケンとゼンゼはどう? 読める?」

 

 

 フリーレンに言われ模様を眺める。この時代の魔導書なら読めるし何らかの規則性があることは分かるが、ここまで崩されていると難しいな。

 

 

「いや、儂は分からん」

「私も読めないね」

「あそこにはこう書いてある。『賢王ヘーロスと王室顧問官ナーリン』。王室顧問官がどういうものかは、デンケンなら分かるよね」

「今と同じなら、王や王族の求めに応じて助言を行う名誉職の一つだな。だが、壁画を見るにナーリンとやらはかなり高い地位に居たようだ。王の意思決定に大きく関与していた可能性がある」

「そそそそれって、魔族が支配する国があったって事ですか?」

「間接的に、だけどね」

 

 

 クラウ、儂の背中に隠れたって意味はないぞ。

 一同はじっと壁画を見つめる。零落の王墓。名君の死。滅びた王朝。その裏に潜む大魔族の影。狡智の大魔。

 

 この賢王ヘーロスと狡智の大魔ナーリンの間にはどのような関係があったのか。友か、師か、共犯者か。

 

 

「…………」

 

 

 沈黙を打ち破ったのはゼンゼが手を打ち鳴らした音だった。

 

 

「……非常に興味深い話だったよ。だけど、ここまでだ。それに、見聞きしたことは他言無用で頼むよ。君たちの手に負えるものではないし、取り扱いには注意を要する情報だからね、後は調査隊と学者連中に任せるべきだ」

 

 

 ゼンゼに促され儂らは最奥部を後にする。

 道中、皆無言だった。それは当然だ。見事合格、三次試験だと喜びに浸っていた中での人類史を揺るがすような発見。それもとびきりに悪いものだ。

 

 

「じ、人類と魔族の共存を成し遂げたのが統一王朝だったんでしょうか……」

「そんなわけがない。共存は不可能だよ」

「で、でも、ナーリンっていう魔族は王様に仕えて」

「業腹だけどあいつ等にも知能はある。目的のために上手く取り入ったんだろうね。クラウ、魔族の言葉は人を欺く為のもので、人を欺き食らうのが本質の獣だ。覚えておくといいよ」

「……はい」

 

 

 ぴしゃりと言われクラウはしゅんと肩を落としてしまう。すると、それを見たフェルンがフリーレンの脇腹を突っ突いて咎めている。そうだもっとやれフェルン。しかし。

 

 

「クラウ。フリーレンはちと言い方がキツかったが、あの考えは大事なものだ。魔族は言葉でこちらを乱してくる。子どもの見た目だとしてもだ。努々、用心することだ」

「デンケンさん……ありがとうございます」

 

 

 そして王墓を出て外で待機していたリヒター達と合流した。どうもあのゴーレムは治癒魔法まで使えるようで皆元気そうだった。

 

 

「どうした、デンケン。二次試験を突破したんだろう、もっと喜んだらどうだ?」

「……まだ三次試験が控えている。合格までとっておくさ」

「そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 第三次試験は大陸魔法協会の創設者である大魔法使いゼーリエによる面接らしい。

 フリーレンは落ちたようだ。旧知の仲のようで「私とフェルンを合格させる気が無い」と言っていたが、弟子のフェルンは合格し一級魔法使いになった。ラオフェンは不合格だったが、ゼーリエは『直感』で選ぶとフリーレンは言っていた。神話の時代から生きるエルフの直感か。それはある種の未来予知といってもいいのか?

 

 ……まあいい。

 

 扉に手をかける。……結界魔法か。音や魔力の遮断とは、ここは密談をするための空間なのか?

 

 

「宮廷魔法使いのデンケン。お前の事はよく知っている」

「それは、光栄だな」

 

 

 扉の向こうには花畑が広がっていた。それを眺めるのは少女にしか見えない小柄なエルフの女性。しかしその身から放つ魔力は絶大だ。フリーレンを遥かに超えるそれはもはや天災と言っていいだろう。

 超高圧縮の『人を殺す魔法』の早撃ちが最適解か? フリーレン曰く「長命種にとって新しい魔法はどうしても反応が遅れる」らしいが、ここまで魔力量と技術に差があると難しいか。一般防御魔法以外にも手札を持っているだろうしな。反射される可能性もある。

 

 

「私は燃え滓に興味はない」

 

 

 ……燃え滓、か。確かにそうかも知れん。妻のためにと地位を求め、死に目に立ち会えず、故郷に帰ることを恐れ、今更になって取り戻そうとする。滑稽な話だ。

 

 

「そう、思っていたのだがな」

 

 

 ゼーリエの視線が儂とかち合った。精神防御は機能しているが、天と地ほどの実力差を前にどれほどの意味があるのか。

 

 

「今は違うのか」

「お前、私を見た時どう戦うか考えただろう?」

 

 

 ……なるほど。ゼーリエという絶対的な困難を前に己を保てるのか測っていた訳か。他にも基準はありそうだが。

 

 

「……ほんの一瞬だけだ。すぐに、諦めた」

「合格」

 

 

  ……なんと?

 

 

「まだ燃えている。普通は戦うだなんて発想は湧かない。次」

 

 

 扉を出る。

 

 

「ど、どうでしたか……?」

 

 

 クラウがおずおずと訊いてくる。それに儂は何と答えただろうか。

 

 

 儂は、なったのか。一級魔法使いに。

 

 帰れるのか、故郷に。

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ、行ってきますね」

 

 

 最後に呼ばれたのはクラウだった。

 

 あの子はどうだろうか。……性格的に難しいかもしれん。もしやゼーリエを前に泣いてしまうかも……甘い物を用意しておくか?

 

 そう思っていたのだが、暫く経って出て来たクラウは「あはは……駄目でした……」と肩を落としながらも平気そうだった。

 

 

「そのっ、デンケンさん、ラオフェンさん、メトーデさん、ありがとうございました。お陰で、いい経験が出来ました。ではまた、何処かで」

 

 

 リヒターさん達にもありがとうとお伝え下さい。そう言ってクラウは去っていった。

 

 まあ、また会えるだろう。クラウはまだまだ青いが優秀な魔法使いだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オイサースト郊外の街道にて。

 

 

 

 

 

「あれ? ゼンゼさんに、ゲナウさん? どうかされましたか?」

「虚仮にされたものだな、魔族が」

「……あはっ、ゼーリエさんから教えて貰ったんですか? そして、デンケンさんたちに知られないよう秘密裏に始末しに来たと」

「否定、しないんだね。クラウ」

「……ゼンゼさんはお優しいんで……ぁっ!?」

「いや、一級魔法使いとして本当に情けない話だが、私にもゲナウにも君は未だに人間にしか見えてないからね。まあ、仮に人間でも魔族を自称するなら腕の一本くらいはいいだろう」

 

 

 ゼンゼの髪が閃きクラウの左腕が切り落とされ、地面に落ちたそれは魔力の粒子に還っていく。

 

 

「魔族、いや…正しくは狡智の大魔の分身体、だったか。今度から魔法使い試験では指一本切り落とすなりして識別したほうがいいかもしれん」

「体毛で十分だよ、発想が物騒だねゲナウは。それに、対魔族結界を張ったゲートを通り抜けられるか、でもいい」

「その手があるか。しかし、まさか街の正門を堂々と魔族の分身が通り抜けるとはな。研究用の魔物や魔族の搬入のために、そこだけは結界を張ってなかったのが仇になったか」

「ゼーリエ様唯一人を除いて、私達やあのフリーレンが認識できないほどの精神魔法だからね。警備が気付かないのも無理はない。しかし、腕を一本切り飛ばしても揺るがないとは強固な精神魔法だね」

「……『鉄球を操る魔法』」

「さようなら、クラウ」

 

 

 

 風に溶ける魔力の粒子をゼンゼは見つめる。

 

 

 

「命乞いを、しなかったね」

「当たり前だろう。ゼンゼ、あれは分身に宿った仮初の人格だ」

「そう、だったね……でも…いや、何でもない。戻ろう」

 

 

 

 




読了謝謝茄子!

試験編駆け足になってしまってスマソ。そしてクラウのネタばらしやゼーリエとのやり取りや王室顧問官ナーリンはたぶん次回




感想評価お気に入りここすきクレメンス



高評価もありがとナス!!(敬称略)
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ヌル
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