【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】 作:丹羽にわか
ナーリン過去編のはじまりはじまりー
過去編 幼女ナーリンは無表情イカっ腹ロリ
勇者ヒンメルの
死まで1480年
大陸北部
統一王朝辺境の山中
その老爺は狩猟を主な生業にしていた。
やや色がくすんだ赤髪を短く刈り上げ、口髭を蓄えている。森の中を長時間歩き上昇した体温、その暑さから袖をまくっていて、露出した前腕にはこれまでの戦歴を物語るような古傷が多々あり、同時に齢七〇という年齢を感じさせないほどに逞しい。
腰の鞘に収めたマチェットと矢をつがえ構えた弓はこれまで数多くの獲物を共に仕留めてきた相棒だ。
それは例え人食いの化け物である魔物ですら例外ではない。
老狩人の名は──ケントといった。
「ッ!」
鬱蒼とした木々が生い茂る森の中、ひょうと放たれた矢。鉄の鏃は、遥か先の獣道をのそのそと二足歩行で移動する狼頭、手に槍を持っている人型に近い魔物──ウェアウルフの意識外からその右目に飛び込み、柔らかな眼球を突き破り眼窩の骨を貫き脳に到達、その時点で鏃に込められた『小さな爆発を起こす魔法』が発動、ぱんっ、とその頭が内から弾け飛んだ。
ケントの眼は、下顎の一部を残してほぼ全ての頭部を喪ったウェアウルフがドサリと地面に倒れ込み、魔力の塵へと還る様子をしっかり捉えている。
「……」
村の同胞である木こりから「魔物のものらしい足跡を見かけた」という相談がありすぐ装備を整え出立し探索すること半日。
発見後の慎重な追跡と観察から同種の群れから逸れるなり追い出されるなりした個体であることは解っていたが、それでも万一という事はある。彼は油断なく次の矢をつがえ感覚を研ぎ澄ませる。
魔法使いの魔力探知とは違う。風、匂い、音、温度…複合的な要素を五感で感知し『気配』を探る。熟練にして一流の狩人である彼のそれは、ややもすれば魔力を完全に隠蔽した魔法使いであっても位置を看破する事が出来るだろう。
「……何か、いるな。死にかけだ」
風に煽られ明滅する蝋燭の火のように微かな命の気配を彼は感じた。まだ木々を駆け上る栗鼠の方が強い命の輝きを放っている程に小さくか弱い。
逸れのウェアウルフ。それがこんな所まで来たのはそれを追って来たからなのかも知れないと彼は推測する。
人か、動物か。いずれにせよ放置はできない。助けるか、間に合わなければ適切に『処理』をしなければ、死体に他の魔物が引き寄せられる可能性がある。
そうなれば、山の幸を得て日々慎ましく暮らしている村の者たちに暫くの間不便をかける事になってしまう。
「あっちか」
不意の遭遇からの接近戦を想定して弓と矢を収めると革製の鞘からマチェットを抜き放った。
光の反射を防ぐために灰を塗ったそれは村に住むドワーフの鍛冶職人による一品だ。彼は「竜の首だって切れる」と豪語し、それはかつてケント自身が証明した。
ただ、その話を聞いたドワーフは「は? いや、おま……まじかよ」とドン引きしていたが。
老狩人は森の中を疾駆する。時間との勝負だった。気配はどんどん薄れている。
「この辺りの筈だが…」
立ち止まり、木陰から周囲を確認する。
「tasu…kete……」
鳥のさえずりに混じって微かな声が聞こえた。聞き慣れない響きだが、それは確かに『助けを求める声』だった。
微弱な気配とその声を頼りに慎重に歩いていくと、小さなモノが倒木の陰に隠れるように横になっているのが見えた。
「まさか、子供か!?」
マチェットを鞘に収め小走りで駆け寄る。しかし。
「──いや、これは……なんだ?」
はっきり目視できる位置まで近付いた彼は、目を細めマチェットの柄に手をかけ警戒心を露わにする。
水に濡れたボロ布を身に纏った人型のそれ。
しかし、頭には二本の角が生え、皮膚は青く爪は黒い。耳は尖っているが紫の髪に殆ど隠れる程度の大きさ。顔立ちは整った幼女のそれだが、その身体的特徴は彼自身の種族である『人間』や彼が知る『エルフ』や『ドワーフ』といった他の人類とは似て非なるものだ。
「…人、なのか? だが、肌の色といい角といい儂等とは……」
「……dareka...tasuke...」
「──いや、そんな事は後だ」
助けを、呼んでいる。
彼は、己を突き動かす自身の善性に従って、異形の幼女の救護を開始した。
しかし。
「なんということだ……」
その場でポーション等による治療を始めた所で、幼女の腕や背中にある傷口から流れ落ちローブに付着していた血液が、魔力の塵に還ったところを見て彼は己の目を疑った。
つまり、彼女は『魔物』だと、ケントの知識は告げている。
「……」
殺す、という選択肢が脳裏をよぎり、すぐに振り払う。聞き慣れない言語だったが言葉を発していた。つまり、相手は意思の疎通が出来る存在。それも子供を見殺しにする事を、彼は選びたくなかった。
「儂が責任を取ればいい」
ケントに家族はいない。妻には先立たれ、息子や娘、孫たちは村を出て街で暮らしている。
魔物の幼女の姿が、「お爺ちゃん」と駆け寄ってくるかつての孫たちと姿が重なる。
「人に仇なす者ならば、殺す」
懸命の治療によって幼女は一命をとりとめた。
アプリリリース前のデスマーチを行軍中、オフィスの床に段ボール敷いて寝てた筈がなんか森の中で目が覚めたと思ったら、アラサー中肉中背チー牛男が襤褸切れ纏っただけの幼女になってるし角あるし肌は青いしで訳分からん。
それになんか頭痛いしフットーしそうだよぉ!(ヤケクソ)
──俺は、ナーリン。角持ち青肌人外娘にTS転生してしまった元社畜だ。名前は前世で遊んでいたオンラインゲームでの自キャラの名前から取った。由来はドイツ語の道化師。厨二病の産物だ悪いか。
転生先は剣と魔法のRPGの舞台になってそうなファンタジー世界。ドラゴン飛んでたし。ゲームとかアニメとかの世界に転生したわけじゃ無い、と思う。知らんけど。
最初の方は大変だった。人外娘でもまだ子供の俺にとって大抵の野生動物は命の脅威だし飢えもある。鳥が食べてる木の実を採取したり、前世の知識で試行錯誤して作った罠や、最初から使えた精神に作用する魔法(たぶん幻覚見せてる)とかを駆使して動物を狩ったり。捌こうとしてグロくて吐いたり、焼いて食べたら臭くて吐いたり。吐いてばかりだな……。
あと、殺した動物の死体が塵となって消えてしまう事もあった。
ファンタジー定番の魔獣的なアレだろうか。けれどドロップアイテムが無いなんて気の利かない世界だ。ステータスも見れないし。
そして、この生活にも慣れてきたなあ、と思った辺りでトラブルというのは起こるもので、狼とサーベルタイガーの合の子みたいな真っ黒な獣が現れて、泡食って逃げたら追いかけられて爪で背中は抉られるわ川に落ちるわで散々な目にあった。
これが神様転生だとしたらとんだ邪神の仕業だろう。絶対に愉悦部だ。俺が苦しむ様子を見ながら激辛麻婆豆腐食べてそう(偏見)。
しかし、捨てる邪神あれば拾う善神有り。
桃太郎のようにどんぶらこと川を流れどうにか川岸に上がり森の中を歩くも力尽き倒れうわ言を呟くだけだった俺を、猟師のお爺ちゃんが助けてくれた。
人間、いたんだ。感動したわ。
名前はたぶん『ケント』だと思う。言葉分からん。転生モノのお約束&ご都合主義の自動翻訳無しかよ。
使えねえ邪神だ、カァーッ、ペッ! ふぁ◯きゅー!
でも、ケントさんが俺に言葉を始めとした色々な事を教えてくれたから助かった。
子供向けの絵本とかが無いからって聖典が教本代わりなのはどうかと思うけど、この人外娘ボディのスペックはかなり高いようで、スポンジが水を吸うように学習することが出来た。
異世界言葉もペラペラですよ。小中高12年英語勉強したのに外国人に道を尋ねられても「アイキャントスピークイングリッシュ、ソーリー」がやっとな俺がだぞ。凄くない?
俺は村にいるケントさんたち人間やドワーフとも違う謎の種族らしい。魔物とかいうファンタジー生物に近いけれど、そいつらは言葉を話したりなんてしない。
そも魔物ってのは人を殺し人を食らう化け物。死ぬと魔力の塵に還るとのこと。魔獣だと思っていた役に立たないクソゴミカス害悪なアレは魔物だったというわけだ。
新種とはいえよくそんな魔物な俺を育てたなこの爺さん!? え、まだまだ未熟? 寝込みを襲われても返り討ちにできる?
はい、仰る通りです。幻覚を見せる俺の精神魔法も検証だって言われて渋々かけてみたら効いたけど気配だかを察知されて普通に捉えられたし。そんで攻撃魔法はろくに使えないし。俺はクソザコナメクジです。
しかし、そうなるとこの世界にはファンタジー物定番の人型の人外キャラは居ないのか? ほら、前世の人気作でアニメ見てた『葬送のフリーレン』の『魔族』みたいな。それとも数が少なかったり生活圏が違ったりでまだ人類に知られてないだけ? 分からん。
ヒト型、というより二足歩行、そして武器や魔法を使う魔物というのも居るらしいけれどそれらはやっぱり人外、ウェアウルフとかオークとかリザードマンとか、どれもモンスターな感じが強い見た目で、人類の言葉なんて喋らないし理解もしない。
オークやゴブリンが人を犯して繁殖するようなエロゲ世界じゃないのは安心かな。その代わり魔物は人間絶対殺すマンという。死体も漁って食うからこの辺りは土葬の習慣が無くて火葬が主流とかなんとか。
俺は、何だろう。特に人を食いたいとか殺したいとか無いしなあ。
俺自身は人外ではあるけれど『人に近すぎる』気がする。それこそファンタジー物にありがちな『魔族』とか『魔人』とか そんなん。
神様転生物で見かける『ゲームの自キャラの姿で〜』的なのだろうか。でもこんな姿のアバター作ったかな…性癖的にはマッチしてる見た目で、オンラインゲームは色々やってたけど覚えがない。分からん。
そして、この世界の人類は三種類。丸耳のホモサピつまり『人間』。クソ長三角耳で美形揃いでめっちゃ長生きな『エルフ』。小柄で頑丈で手先が器用でそこそこ長生きな『ドワーフ』といった感じ。竜人とか獣人はいないっぽい。ケモミミ娘……無念。
ケントさんは人間だ。齢七〇。眼光鋭く背筋はしゃんとしていてとっても元気なナイスシルバー。
彼からは弓やマチェットの扱いや狩りの仕方とかも教わったけど、俺には潜伏以外に才能は無いらしい。トホホ。
しかし……なんか地味だ。俺の異世界転生生活。でも、この世界って今の所平和だしなあ。魔王とかそんなんもいないし。
ああでも、何十年か前に女神様が『聖典』と『聖剣』を齎したらしいから、将来何かあるのかもしれない。
平和が一番。だけどちょっとワクワクするのは、心の男子中学生がまだ生きてるからか。
いつか冒険とか、してみたいなあ。
読了謝謝茄子!
完結まで書き上げてから投稿したかったけど、いつになるか分からんからツイッター見てない人への生存報告兼ねて投稿
皆、車で右左折する時は徐行しつつブレーキに足を置いとくんやで
ワイとの約束や
感想評価ここすきお気に入りクレメンス