【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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あ゛あ゛〜
お気に入りの剥がれる音〜


過去編 僧侶ナーリンは断れない

 

 

 

 

勇者ヒンメルの

死まで1468年

統一王朝南東部

フリッシュ地方

 

 

 

 

 姫騎士幼女ちゃんに拉致られて馬車に乗っている。豪奢なお貴族様の馬車だ。この馬車自体が魔道具みたいだな……保温保湿防御防音……魔法自体はシンプルだけど堅実な術式だ。

 

 そしてシートはフカフカ内装ピカピカ。お値段は…いや、やめとこ。汗もかけなくなる。

 

 あと、引きずられてる最中に合流した従者っぽい人がすっごいゲッソリした&申し訳無さそうな顔してたところを見るに、どうも姫騎士ちゃんは猪突猛進というか無鉄砲というか、そういうタイプの子なのかね。

 

 ただ──。

 

 

「お母様の治療、ですか」

「そうだ。『癒し手』のエルフ、きさまなら……ははうえを……」

 

 

 ──悪い子、じゃなさそうなんだよなあ。

 

 膝の上でぎゅっと拳を握って肩を震わせる姫騎士幼女ちゃん。

 

 彼女の名前はリーベと言うらしい。

 

 この統一王朝で最強の矛と盾である王室親衛隊の隊長を務めるヴォルフ公爵家の娘で、つまりは公爵令嬢。はえーお偉いさんだあ。

 

 腰に提げている剣は8歳の彼女に合わせた大きさであるものの国一番の鍛冶師が打った業物であり、その剣や体術の技量は既に大人相手でも並の戦士なら蹴散らす程の強さだとかなんとか。すげえなあ。

 

 ん? 今思ったけどこの間合いだと俺普通に殺されない? ずんばらりって。

 

 ……絶対に、偽装がばれないようにしないと。

 

 あとリーベちゃん、めっちゃ目立つ髪色してるしキャラ立ちしてるし、なにかの作品の主人公かヒロインだったりしない?

 

 

 

 

 

 

 

 このフリッシュ地方は寒冷な大陸北部において比較的温暖な気候をしていて保養地として有名で、農園や宿場町のほかに貴族の別荘が立ち並ぶ区画もある。

 

 そこにヴォルフ家も別荘を持っていて時折リーベちゃん達はそこに滞在するらしい。親衛隊長の業務で多忙な父親はほぼ来れないらしいけど。お労しや。

 それで、今年も別荘にやってきた所で彼女の母親、アモルさんに異常が起きた。

 

 

「アモル夫人は眠り続けている、と。1週間もの間……」

「そうだ。医者も、薬師も、魔法使いも、みんな、わからないといった。なら、僧侶なら、女神様の魔法なら、『癒し手』なら、と」

 

 

 さっきから気になってたけどその『癒し手』って俺のこと?

 

 いや、今はそれはいい。

 

 アモルさんは病気、だろうか。脳腫瘍とか。けど突然倒れたり、目眩がするとか頭が痛いとか言っていたわけでもなく、別荘に来た日の晩、ベッドに入ったらそのまま目覚めなくなった、と。意識が無くても水や果実のペーストやらは嚥下出来ているらしい。

 

 うーん。

 

 前世で『眠り続ける病気』みたいなのを聞いた記憶はあるけど治療法は分からないなあ。

 なんちゃって僧侶としての活動だって、感染症とかへの衛生面での対処や精神魔法の応用で苦痛や不安を和らげたりとか外傷の処置とかそんなもん、今のところファンタジーな治癒魔法なんて女神様の魔法しか無い。独自に研究はしてるけども。

 

 ……正直に言うしか、ないよなあ。

 

 

「リーベ様」

「なんだ? ほかには何を話せば」

「私は、女神様の魔法を使えません」

「──え?」

 

 

 エメラルドみたいな瞳が大きく見開かれる。心が痛いな。小さな子にこんな顔させて。

 

 

「聖典を諳んじる事こそしますが、私は魔法と、少しばかり医学の心得があるだけです。女神様の加護も祝福も奇跡も、この身に授かっていないのです。申し訳ありません」

 

 

 聖典に隠された暗号、そして魔法。女神様の魔法の行使には先天的な素質が必要みたいで、俺にはそれが欠けているらしい。

 

 

「──そう、か」

 

 

 リーベちゃんはそう呟くと顔を俯かせ──ない。

 

 

「それは、よそうがいだ。だが、きさまはエルフ。人間の魔法使いなど及びもつかない高みにいるのだろう?」

 

 

 あぁ、成長に伴う容姿の変化がほぼ無いっていう点に目をつけてエルフの姿を取り続けてたのが裏目に出たか。

 気丈に振る舞っているが、その瞳の奥には縋るような色が見える。

 

 ああ、気に入らない。気に入らないなあ。

 

 この子にそんな表情をさせてることが。

 身勝手な嘘をついて期待させている俺が。クソッタレ。

 

 

「……分かりました。ひとまず状態は見ます。何か改善の見込みや見当がつくようなら、治療に全力を尽くします。ただ、私も初めて聞く症状です。夫人がお目覚めになるとお約束は…出来ません」

「それでもいい。わたしはヴォルフ家の娘だ。戦士だ。母上も、戦士だった。かくごは、できている」

「そう、ですか……でも、女神様の魔法が使える僧侶も探しておいてくださいね。使える手は何でも使いましょう」

 

 

 そりゃ親は子供よりも早く死ぬのが定めだけどさ、こんなのはあんまりだろ。

 

 

「覚悟を決めるには、まだ早いですよ」

「──っ!! わかった」グスッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 激動の数日間だった。疲れた。

 

 まず、アモルさんについては幸いどうにかなった。ちゃんと目覚め、リーベちゃんと感動の抱擁を交わしていた。今はリハビリに励んでもらっている。

 

 彼女はどうも魔物による魔法、『呪い』とでも表現すべきものに掛かっていたらしい。

 

 強制的に眠らせ、ジワジワその生命力を奪い取るタチの悪い代物だ。

 何故アモルさんが狙われたのか。推測だが、彼女が妊娠していたからだろう。

 

 魔物からすれば『2人分でお得!』とでも思ったのだろうか。ゴミめ。

 幸い、お腹の中の赤ちゃんも無事だ。本当に良かった。

 

 魔物連中にろくな知能は無いはずなのに、魔法を使う個体のそれはやけに高度だ。

 人間の魔法使いだと相当な化け物じゃないと魔法だと判断できないだろうし解呪も難しいだろう。素材ドロップもしないしクソみたいな存在だなホントに。

 

 この魔物は『昏睡魔』と呼称する。

 

 やったことは単純。呪いのパスを辿って本体を見つけてブチ殺した。ソイツは別荘の屋根裏に潜んでいて、蜘蛛とラフレシアと触手を混ぜたような気色悪い魔物だった。

 

 あ、昏睡魔はリーベちゃんがぶった斬った。俺は後ろから援護してた。卑怯とは言うまいな…。

 

 王国や教会にも公爵家を通して報告した。対処法は『パスを辿れなければ被害者の周囲を虱潰しに探すか消し飛ばすこと。移動については要検証。解呪の魔法の開発か発見が早急に求められる』ってところか。

 

 そしてかなりの額の報酬を貰ってさあ冒険だ! って所でアモルさんに暫く滞在するよう言われた。なんでも数カ月先の出産に立ち会ってほしいらしい。

 

 まあお産って相当危険だしそれくらいなら……経過も気になるし。

 

 え? ついでにリーベちゃんの家庭教師も? 剣術体術ばかりで座学が大嫌い? ええ……。

 

 リーベちゃんは、乗り気なのね。うーん……。

 

 しょうがないにゃあ……いいよ。

 

 

 リーベ様、よろしくなぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エルフの僧侶であり魔法使いという異色の存在であるナーリンが、リーベの家庭教師となって暫しの月日が流れた。

 

 『癒し手』。

 

 各地で人々を救うエルフの僧侶の噂は、母親を救うためにフル活用した公爵家の情報網に引っ掛かった。

 疫病を鎮めた。悪魔を追い払った。たちまち怪我を癒した、等。尾鰭がついていたとしても、その僧侶としての力は確かだろうと見込んだ。

 

 実際は、僧侶ではあるものの女神様の魔法が使えない、変わり者のエルフだったわけだが。

 

 だが、その知識や技術は本物だ。王国でもかなりの腕利きだった魔法使いが分からなかった魔物の魔法、呪いを看破し、アモル公爵夫人とその腹の子を救ったのだから。

 

 故に、リーベはナーリンを尊敬し、慕っている。

 

 

「先生」

「はい、リーベ様」

 

 

 座学は聖典を使用した読み書きや計算、初歩的な医学、繕い物などを彼女から学んでいる。

 また、素質があるという事で魔法も教わるようになった。

 

 

「魔法は魔物の技術だと王都では言われていたが」

 

 

 魔法を教わることになった日の始め、自身の母親が魔物の魔法によって危険な状態になった事を思い微かに眉を顰めながらリーベが訊ねると、ナーリンは碧玉を思わせる瞳を細めて苦笑いを浮かべた。

 

 

「人類の魔法も魔物の魔法も女神さまの魔法も、原動力はどれも同じ、魔力です。同じ理によって成り立つ世界に存在しているのなら、それぞれが似たような技術を身につけ発展させても何ら不思議ではありません。陸の生物は殆どが足を持ち歩きますね。それと似たようなものです」

「それは、たしかに……なら、なぜ?」

「権力争いでしょう。女神様の魔法は魔物相手に非常に有効です。そして治癒も可能となれば対人類の戦争においてもこれまで以上に活躍するでしょう。宗教的な権威だけでなく、戦士や魔法使いが占めていた地位と権力を削り取り、拡大したいのです」

「……なるほど」

「僧侶の多くは清貧を心がけ女神様への信仰に篤く民衆に寄り添う人格者ですが……様々な『力』はそんな彼らをも歪ませます。リーベ様も、ゆめお忘れなきよう」

「わかった」

 

 

 そんなやり取りがあった。

 

 

「『斬撃を飛ばす魔法』」

 

 

 リーベが剣を振るうと10メートルほど先にあった巻藁がザン! と切断される。

 

 

「どうだ」

「……才能があると思っていましたが、まさかこれ程とは」

 

 

 剣を鞘に収め平らな胸を張るリーベに対してナーリンは笑顔のまま頬を引きつらせていた。

 

 

「(魔法剣士ってロマンだよな! って思って魔法の基礎教えたけど、それで不可視の斬撃を飛ばすのは大分殺意高くない? これ将来的に見えない斬撃を『置く』とかしてこない?)」

 

 

 未来予想図に戦慄するナーリン。

 

 こんな子供に持たせていい力なのか悩み、授業が終わったあとに彼女の母親であるアモルに訊ねたが、

 

 

「私は9つの時に暗殺者を切り捨てたし、いいんじゃないかしら? 剣の振り方と振るうべき相手は叩き込んでありますわ」

 

 

 と自身の大きくなったお腹を愛おしそうに撫でながら言われ、「(そうかな……そうかも)」とナーリンは考えることをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーベ様には婚約者がいる。

 

 なんと、この統一王朝の王太子であるヘーロス殿下だという。歳はあっちが4つ上らしい。つまり12歳だ。

 

 未来の王妃であるリーベ様は殿下と面識があるらしく、彼について「アスパラガスみたいなやつ」と評していた。木偶の坊的な意味だろうか。好感度は……俺に女心なんて分からんよ。

 

 リーベ様は昔の俺みたいに表情が変わらず感情が分かりにくい。言動には漏れ出てくるが、俺を拉致した時が特別荒ぶっていたようで、大体無表情で突き進む。

 

 彼女には8つ歳上の兄が居て、彼が次期当主になる。前に会ったが見事な赤髪の感情豊かで利発そうな少年だった。あとシスコンだ、相当のな。

 リーベ様に施される教育に武術が含まれるのは武門であるヴォルフ家の伝統とのこと。ほとんどの家では違うらしい。一部はやるのか…と思った。

 

 さて、話をヘーロス殿下に戻そう。

 

 殿下がこの別荘を訪れるという連絡があった。

 時折あることらしく多少使用人の方々が忙しくしてるくらいで特に変化はない。

 

 政略結婚とはいえ殿下の方はリーベ様を気にかけている、ということだろうか。スケベなクソガキじゃないのは殿下がちゃんと五体満足な事が証明している。

 

 流石に殿下が来ているとなると授業は無しだ。俺は屋敷の中か街に出て適当に過ごそうかなんて考えていた。

 

 そのつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、ぐすっ、ひぐっ、えぐっ、うぅっ」

 

 

 なんか空色の髪の少年が庭の隅っこで声押し殺して泣いてるんだけど……。

 

 え、もしかしなくてもヘーロス殿下だよな?

 

 

 

 

 

 どうしよ……。

 

 

 





読了謝謝茄子!

察してると思うけどリーベはシュタルクの遠い先祖。ここから戦乱とかで南下していったと捏造。


感想評価ここすきお気に入りクレメンス
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