【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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ツイッター見てない人向けの生存報告兼ねて投稿です

タイトル通りゼンゼが主役でクラウと絡む話
ゼンゼは原作中だと年齢不詳ですが拙作ではアラサーという事でよろしく。あと捏造設定多数。公式が掘り下げないからだよーっ!!




閑話
閑話 ゼンゼめっちゃ可愛かったねアニメ最高


勇者ヒンメルの

死から29年後

北側諸国

魔法都市オイサースト

 

 

 

 

 一級魔法使いゼンゼの朝は早い。

 

 『髪は女の武器』と言うが、彼女にとって、その身の丈に迫る亜麻色の髪は文字通りの『武器』だった。類稀なる魔力操作とイメージ力によって十数万本に及ぶ髪の毛一本一本を意のままに変質させ操る攻防一体、手数と重さを併せ持つ強力な魔法を扱う事で、これまで幾多の魔族や魔物を屠ってきた。

 まだ朝日が顔も見せていない時間帯に目覚め、フカフカぬくぬくなベッドからのそりと這い出したゼンゼは屍人のような足取りで化粧台まで移動する。そして、戦士が己の得物の刃を研ぎ、油を塗り、丁寧に拭き上げるように、髪にブラシをかけ、髪油を馴染ませ、魔法で温風を当てながら櫛を入れ整える。

 

 地獄だった。

 

 北側諸国の厳しい冬が明けたとはいえまだまだ朝晩は冷え込む。加えてこの頃は、三年に一度開催される一級魔法使い試験に関連する業務に始まり、日々の魔族や魔物に対する対処、魔法の研究や鍛錬、その他雑務等々と目の回るような忙しさだった。

 特に、七崩賢『断頭台』のアウラが昨年、グラナト伯爵領への侵攻中に冒険者によって討伐された。この情報により北側諸国では物流が活発化し好景気に沸いているが、

 

 

「実際は、『狡智の大魔』ナーリンの配下と思しき『無名の大魔族』ソリテールによってアウラは討伐された。理由は不明。ナーリンも一昨年までは無名の大魔族。二体の大魔族による各地の被害情報を集めようとしても何も出てこない。何も残していないのか。無名の大魔族改め『微笑みの魔女』ソリテールが表に出てきたのは何かの予兆か……はぁ……さっさとくたばれ」

 

 

 思わず毒づいた鏡の向こうのゼンゼは、ただでさえ感情が抜け落ちたような無表情なのが目の下の隈以外の色まで抜けてしまっている。

 

 

「ははは、人形みたいだ」

 

 

 自虐。隙間風がびゅうと吹き込んだ気がした。

 

 

 

 

 

 睡魔と陰鬱になる気持ちに抗いながら髪の手入れを終え、ネグリジェから着替えを済ませたゼンゼは一級魔法使いの装束の重さを感じながら寝室を出て階段を下りる。窓から差し込む光がやけに目に染みた。

 髪を操って扉を開けリビングに入るが人の気配はない。ゼンゼは未だ独身であり、実家は所謂名家でそこの出身ではあるが使用人なども雇っていない。その実家からは見合いの話などもあったが一級魔法使いの権威でねじ伏せている。バリバリのキャリアウーマンというやつだった。行き遅れではない。無いのだ。

 

 テーブルの上に置いてある籠に盛られている林檎を一つ手に取ると宙に放り、刃のように変質させた髪を操作して一瞬で八つ切りからウサギの形に加工、食器棚から取り出していた皿にストトト…と綺麗に並ぶ。

 

 日常動作の中であっても魔法の鍛錬はできる。デメリットは髪の手入れ以外を何でもかんでも魔法で済ませてしまうせいで手先が少々不器用なことだろうか。

 

 

「一応、書類を手と髪で同時に書いたりはしてはいるんだが」

 

 

 ぼやきつつ、簡素な朝食を終え外出の支度を済ませると、大陸魔法協会が借り上げている住居(2階一戸建て)を出て北部支部へと向かう道を歩く。

 

 既に街は目覚めていて通りには活気が溢れつつある。一級魔法使いであるゼンゼに対して興味や畏怖などの視線が度々向けられるが、それは彼女も慣れたもので特に気に障る事もない。

 びゅうと風が吹く。なびく髪が顔にかかるのを魔法で制御して防いでいると、チャリン、と小さな音が風に乗って耳に届いた。

 

 誰かしらが財布から硬貨を落としたんだろう。ゼンゼは気にとめず歩みを緩めることもなく──。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」

 

 

 ──絶叫だった。思わずビクッと肩を跳ねさせ立ち止まると声のした方を振り返る。

 

 

「うああぁあ……そんなぁ……」

 

 

 少し離れた所で草臥れたローブ姿の魔法使いと思しき白髪の少女が道路の隅に四つん這いになっていた。その近くには串焼きを売っている屋台があり、店主らしい中年男性や周囲の通行人は気の毒そうに彼女を見ている。

 

 異様な光景が広がっていた。

 

 

「なんなんだ、いったい」

 

 

 流石に気になってゼンゼは騒ぎの方に向かった。人の間をすり抜けていくと、件の少女は石畳に這いつくばって排水溝に空いた細い穴を覗き込んでいるようだった。

 

 

「きんかが、きんかがぁ……せいかつひがぁ……」

「……ああ、落としたのか、よりによって金貨を」

 

 

 ゼンゼの独り言に答えたわけではないのだろうが、少女のうわ言のようなそれで概ね事情は察した。

 金貨の種類にもよるがその価値は最低でも、近頃好景気でインフレ著しいオイサーストであっても一月程度は過ごせる程だ。それが排水溝に落ちたとなれば悲嘆にくれるのも納得できる。

 

 

「ああゼンゼ様。この嬢ちゃん、うちの串焼きを買おうと銅貨取り出した時に一緒に金貨が落っこちてな。コロコロ転がってあそこにホールインワンよ」

「なるほど」

 

 

 店主の説明に、まるで喜劇のワンシーンだ、とゼンゼは思う。当人からすれば悲劇なのだろうが。

 

 

「ふんっ、ぬっ、うううううううっ!!」

 

 

 そんな話をしている間に少女は排水溝の穴に手をかけ蓋を開けようとしていたが、非力なのか固定されているのかびくともしない。

 

 

「ゼェ…ハァ…こ、こうなったら……」

「ん?」

 

 

 息を切らせていた少女は立ち上がると、年季を感じる木製の杖を手に魔力を練り上げた。そして拳大程度の金属球が一つ、宙に現れる。こちらは魔道具のようだった。

 

 

「『鉄球を操る魔法(ティエツダント) 』」

 

 

 フワリ、と鉄球は建物の屋根の辺りの高さまで上がった。

 

 

「(人工物を使用した質量攻撃魔法か。操れる鉄球がアレ一つだけということは無いだろうし、周囲の環境にも左右されにくい。物理的な防御手段に乏しいタイプの相手には有効だ。魔力量はそれなりだが流れが淀み無く効率的に操っている、優秀だな。というかフタを壊す気かこの子は) 」

 

 

 それは流石に看過できない。職業柄つい分析をしていたゼンゼは髪を操って少女と鉄球を拘束する。

 

 

「ヘアッ!? な、なに、か、髪ィ?」

「君。気持ちは分かるが落ち着け。器物損壊で牢屋行きになるぞ。この時期だ、一級試験を受けに来たんだろう? 犯罪者になってしまっては、試験を受けさせる訳にはいかない」

「で、でもぉ……」

「少し待て」

 

 

 涙目の少女にそう言ってゼンゼは一部の髪を念入りに魔力でコーティングすると、排水溝の穴にするりと潜り込ませる。金貨は重い。水に流される事は無いだろうと考えながら髪を伸ばすと、下水道の底に硬質な丸い板が沈んでいるのを毛先で感知し、それを絡め取って引き上げる。

 

 

「わ、わぁ……すごい魔力コントロールで……あれ?」

「ん? 金貨では無いな。ずいぶんと古い銅貨…ふむ、君と同様に、硬貨を落としたうっかり者が昔もいたようだ」

「うぅ……」

 

 

 ゼンゼの言葉に少女は顔を真っ赤にして俯かせてしまう。その様子に口元を僅かに綻ばせながら再度捜索。暫くして無事金貨を発見した。

 

 

 

 

 

 

 

「ん、綺麗になったね。これからは気を付けるように」

「ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」

 

 

 魔法で洗われた金貨を手渡された少女はそれを慎重に財布にしまい、ゼンゼに対してブンブンと音がなるほどに頭を下げる。

 

 

「ど、どうかお礼させて下さい!! 何でもしますから!!」

「何でもって……私は別に…」

 

 

 ゼンゼは昔読んだ勇者ヒンメル一行の冒険譚を思い出した。

 

 勇者ヒンメルは旅のさなかの人助けの時、特別な事情が無い限りは報酬を貰うのだという。無償の奉仕は相手に『貸し』が出来てしまう。それでは本当の意味で助けたことにならないと。

 

 ここで「大したことじゃない」と断って立ち去るのは簡単だが、それでは相手の心にしこりを残すことになる。ゼンゼはふむと思考を巡らせると、店主の接客の声が耳に入ってきた。

 

 

「なら、そうだな。そこの串焼きを奢って貰おうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君が朝から買い食いだなんて珍しいじゃないか、ゼンゼ」

 

 

 レルネン一級魔法使いは目を丸くして言った。

 同僚であるゼンゼが肉の串焼きをパンパンに詰め込んだ紙袋を抱えて北部支部に入ってきた事。それに、ここの所の激務で顔色が悪いのは変わらないが、表情や足取りがやや軽いように感じた。

 

 

「何か良いことでもあったのかい?」

 

 

 訊ねると彼女は「まあ、そんなところだよ」と答え「お裾分けだ。流石にこの量は食べ切れない」と串焼きを一本浮遊魔法でレルネンに渡す。

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

 戸惑いながら受け取ったレルネン。掴んだ串焼きと立ち去るゼンゼの背中を交互に見て苦笑を漏らす。

 

 

「この歳になると少し重いんだけどね。でも、とても美味しそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2ヶ月後

一級魔法使い試験当日

 

 

 

 第一次試験開始前、参加者が集められた講堂の端にゼンゼも居た。

 

 

「今年は中々粒揃いですな」

 

 

 丸眼鏡をかけているファルシュ一級魔法使いは参加者達の顔ぶれを見て言った。

 ヴィアベル、デンケン、フェルン、ユーベルなど。有力な参加者の顔やプロフィールはゼンゼも目を通した。その中に、あの時の少女の名前もあった。

 

 

「クラウ四級魔法使い。一昨年の四級試験をトップの成績で合格。北側諸国を中心に活動し魔物等の討伐で戦果を上げている実力派です」

 

 

 彼女、クラウは講堂の隅っこにポツンと立っている。前髪で表情は伺えないが、不安そうにしているのが透けて見えるようだった。

 

 金貨事件から2ヶ月近く。その間、街中や図書館など施設の中で顔を合わせる事が度々あった。「(あっ、この子コミュ障だ) 」と察したのはすぐだ。距離の詰め方が分からず怯え戸惑い誤魔化し、何かのきっかけでぐんと縮めて逆に引かれるタイプ。

 壇上のゲナウがこの一次試験で行うのがパーティー同士の争奪戦──に見せかけた対人戦であることは知っている。

 

 

「(大丈夫だろうか、あの子が赤の他人と即席パーティーを組むだなんて)」

 

 

 試験官として公私混同して情けをかけるなんてことはしないが、それでも危なっかしい知人の事は心配だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一次試験が終わりゼンゼが担当する二次試験に、クラウの姿があった。

 

 『零落の王墓』攻略にあたって全員での協力を図ったデンケンだが協力体制は構築できず一次試験のパーティーや試験前の仲間などで組んで各々攻略するような形になってしまう。

 

 クラウの元パーティーメンバー二人がさっさと中に入ってしまい彼女が一人取り残される。

 ゼンゼはどのパーティーに同行しようかと悩み、結局は一番攻略の可能性が高そうなフリーレンとフェルンについていくことにした。

 

 呆然とした様子で遺跡を眺めるクラウの様子に後ろ髪を引かれながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『水鏡の悪魔』が作り出す複製体との激戦を乗り越え迷宮は攻略された。最深部の王墓ではかつての統一王朝に『狡智の大魔』が関与していた可能性を示す壁画が発見されたりと順風満帆とはいかなかったが、合格者の中にクラウの名前もあった。

 

 

「(攻略を通じてデンケン達と随分仲を深めたようだ。安心と、少し寂しさを感じてしまう) 」

 

 

 クラウは戦闘において優秀な魔法使いだった。強力な物理的防御が可能な魔法を扱うリヒターとゼンゼ、手数でさばき切れるフリーレンとデンケンとフェルン以外なら、その鉄球は防御魔法を容易く貫通し人体を粉砕する。胴体に大穴が空いたり頭部が吹き飛んだりした複製体を見た参加者達は『うわぁ……』とドン引きしていた。ゼンゼも流石に引いた。

 

 三次試験は異例の事だが、大陸魔法協会の創設者である大魔法使いゼーリエによる面接になった。

 クラウはどうだろう、泣いたりしないだろうか、と心配に思いながら廊下で待っていたゼンゼの方に、面接を終えたゼーリエが歩いてくる。

 

 

「──っ、なにか、ありましたか」

 

 

 ゼーリエの絶大な魔力は常日頃から浴びていたが、今はそれに明確な怒気と殺気が乗っていた。膝をつかなかったのは一級魔法使いとしての意地だ。

 

 

「今年は確かに豊作だった。しかし、害虫が一匹紛れ込んでいた。不愉快極まりない事にな」

「害虫ですか」

「受験者の内一人が魔族、その分身体だった。その様子だとお前達は誰も気付けなかったか」

「……」

 

 

 ゼンゼは思考を巡らせる。分身と言われ思い当たるのはラント二級魔法使いだが、彼含めて各参加者の魔力や言動に魔族だと思い当たるようなものはなかった。

 

 

「いったい誰が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラウ。あの白髪のガキだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────は?」

 

 

 今、眼の前の大魔法使いはなんと言ったのか。

 

 

「あれは『狡智の大魔』ナーリンの分身体だった。あの姿は精神魔法によるまやかしだ。この私の精神防御すら破り得る程のな 」

 

 

 『狡智の大魔』ナーリン。『微笑みの魔女』ソリテールを配下に置くと言われ、かつては勇者ヒンメル一行を欺き出し抜いた大魔族。

 

 

「(その分身が、クラウ? そんな、でもゼーリエ様は) 」

 

 

 混乱するゼンゼの様子に気付いているのかいないのか、ゼーリエは「フン」と鼻を鳴らす。

 

 

「今の魔法使いの戦力調査、そして私への警告だろう。あの精神魔法、あれは埒外の『呪い』だ。加えて『学習』によるものか人と大差ない振る舞いをする人工人格。人里に潜り込まれたら、砂漠から一粒の砂金を見つけるのと変わらない、公にして探すことも出来ない。疑心暗鬼によって社会が機能しなくなる。まったく腹立たしい」

 

 

 一息にまくし立て、ふぅと息をついたゼーリエはまた歩き出す。

 

 

「ゲナウをつける。分身は街の外で秘密裏に処理しろ」

「……」

「ゼンゼ」

「…はっ、承知しました」

 

 

 

 

 




読了謝謝茄子!

今転職活動しながら黄金郷編とか書いてるから何卒お待ちを……赦して亭赦して……

skebでナーリンを描いて頂きました。うお、すっげえ狡智……ワイは特に指が好き
https://twitter.com/g3a3gene/status/1743635555445871053?t=bw6kzyGI-EfH-JPORdxi5Q&s=19


感想評価お気に入りここすきクレメンス

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