【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】 作:丹羽にわか
戦いは苦手だ。
痛いのは嫌だし苦しいのも嫌。
痛めつけるのも嫌だし苦しめるのも嫌。
そもそも、争ったところで只々気力体力魔力を消耗し、ストレスが溜まり、疲れる。
何も良いことが無い。不毛な行為だと思う。
でも、それが視線の先で今にも零れ落ちそうになっている命に対して手を伸ばさない理由にはならない。
「スゥ……ハァ……」
俺は、攻撃魔法が苦手だ。
雷撃を放ったり炎を出したり、そういった攻撃的な魔法のイメージが何故か不得手な自分にとって、魔法による攻撃は『鉄球を操る魔法』など既に実体のあるものを操る形になる事が多い。
術式構成がシンプルで魔法初心者だって使える『
けれど、何事にも例外がある。
「よし」
かつて、ここがフリーレン世界だと知る前、ソリテールともまだ出会っていない、放浪の最中。
魔法や魔力について研究する中で発見した現象がある。
「圧縮、成形、展開」
超高密度に圧縮した魔力は並の攻撃なら通さない堅固な装甲みたいになるし、それを成形して高速でぶつければ砲弾が直撃したような結果になるのだと。
これについてイメージ云々は関係無い。
水を冷やせば氷が出来る、林檎を投げれば放物線を描いて落ちる。そんな当たり前の、この世界における『法則』だ。
──ここがフリーレン世界だと気づいた後、アウラの部下相手にフリーレンが魔力の障壁で防いでいるのを思い出してまさに『車輪の再発明』だったと項垂れたけども。
いやでもたぶんこの世界線では俺が元祖だから……。
「捕捉、照準、誘導」
魔力探知に反応のある魔物は10体以上。四人の人間を包囲し、まるで嬲るように動いている。
少し離れた所で強力な魔法が放たれた気配と同時に一気に魔力反応が消えたのを感じた。ソリテールは上手くやったみたいだ。
人間は……言いつけ通り殺してないな、ヨシッ!
っと、目標の強さは……至近距離で真正面から対峙したらサクッとミンチになるくらい。俺がな。
……なんの参考にもならない。大体の相手がそうだよ。
まあ、いい。人には得意不得意があるんだ。白兵戦や不意の遭遇戦はやめてください死んでしまいます。(FPSクソザコナメクジ)
故に距離を取り、上空から観測し、圧縮した魔力の弾丸を一方的にブッパする。
勿論、今は人間の魔法使いとして振る舞っているから魔力は程々に抑えつつ、普段ならサッと済ませる圧縮も相応に段階を踏む。
引き撃ち、芋砂、ガン待ち、裏取り……私の好きな言葉です。
卑怯とは言うまいな。
「穿て」
これは、まだ幼かった
『魔法はイメージに左右される。出来ると思った事は魔法で実現出来るが、僅かでも出来ないと思えばそれは不可能だ』
お姉様は私に色々な事を教えてくれた。それは人類についてだったり、魔法についてだったり、本当に色々。
『そのイメージを補強する為に、魔法使いは物理法則等を研究し、学び、原理を術式に落とし込み、魔法を構築する』
変わり者、異端。
お姉様と別れ、多くの
『そして、人類はその知識や魔法を後世に遺し、更に発展させる。ここは魔族と大きく異なる点だ』
人類への深い理解。ただ魔族として生きてきただけなら決して身に付かないそれ。どれだけ人間を
『魔法の技術自体は現状、魔族の方が遥かに上だ。共有や継承によるシナジーがほぼ無いにも関わらずな。これは、魔族が長命な事に加え、高度な知性を持ち、此の身が魔力に由来する故に魔法自体への適性が高いのではと此方は考える』
『加えて、社会性に乏しいが故の高い自己完結性、それに起因する強固なイメージの確立だろうか』
『人類は共有や継承によって発展させると言ったが、それは「これが出来なかった」という結果も伝えてしまう』
『此方達にとって空を飛ぶことは歩く事と同然だが、人類は「翼が無ければ、この腕では飛べない」と鳥や羽虫を研究し実験して結論付け、それはイメージとして定着した。故に有史以来、飛行魔法が開発されていない』
『翼を魔法で生やしたとしても、「揚力や重量の問題がある」というイメージが邪魔をするだろう』
『先に述べたように、魔族は社会性を持たない。だからこそ、他者のイメージに左右されずに己の望むままに魔法を突き詰め、行使する事が出来る』
『しかし、仮に魔族の魔法をそのまま行使できる程に人類の魔法技術が発展したのならば、不可能は可能になる。従来のイメージが覆され、飛躍的な発展を遂げるだろう』
『まあ、これらはあくまで推測に過ぎないが』
あの時から、お姉様は人間が魔族やエルフに追いつくことを見通してたんだと思う。
『……ん? これか?』
『術式を介さずとも、魔力を操作し圧縮するだけで障壁のようになるようだ。先程まで話していたイメージの前段階、この世における魔力の普遍的な法則、現象といえる』
幼い私も見様見真似で魔力を操作するけど、上手く圧縮出来ずに弾けて霧散していく魔力。
『クハッ、今の其方の技術では難しいだろうよ。精進することだな、ソリテール』
そう言って頭を撫でてくれた。
人間が幼子にするように。
とても、大切な記憶。
「魔力を圧縮して射出する、とても魔法とは言えないようなそれが現代の魔法戦における最適解の一つになるなんて、皮肉なものだわ」
「防御魔法と攻撃魔法は鏡と光のような関係。そこに魔力の塊、石ころをぶつければ鏡は簡単にヒビ割れる」
「最近は自然物とかを利用した質量攻撃を用いる魔法使いが増えてきたけど、周囲の環境や相手との相性に大きく左右されやすいのが欠点」
「うーん、人間の魔法使いとして不自然じゃない程度の魔力であれを実現するのは私にはまだ難しいかな……流石ね」
「こんな傷唾つけときゃ治るっての!」
「何いってるんですか!? 大人しく治療を受けなさい!!」
「あっやめっ、うごおぉぉぉ! しみるぅぅぅ!!」
私が助けた薬師の男が、彼の仲間の治療を行っているのを少し離れた所の切り株に腰掛けて眺める。
中々愉快そうな人間達だ。お姉様からのお願いが無ければお話や研究をしてみたいところだけど……仕方無いか。
「だ、大丈夫ですか……?」
「お、おうっ、こんなもんあぎゃぁぁっ!!」
「ひえっ」
その賑やかな一団の近くにいるオドオドした雰囲気を放つブラウンの髪の少女に視線を向ける。
ショートパンツにシャツにケープ、ブーツ等と動きやすそうな格好をしていて、新緑を思わせる瞳は悲鳴をあげる男を見て心配の色が滲んでいる。
「(クラウ……今はカッツェちゃんか。現代の魔法使いの力量を測る為、四級魔法使いの身分を得ていた彼女を一級試験に参加させて、それが本来来るはずのなかった大魔法使いゼーリエの来訪、看破されて消された……お姉様も異端とはいえ魔族。捕食者の驕りがあったという事)」
それでも、ゼーリエの探査魔法は妨害しているし念の為拠点も移動したりと詰みは避けている辺り流石だった。
「(予想外だったのは、今ここにいるのが分身じゃなくお姉様自身なこと。それで『妹弟子のカッツェ』としての人格を普段は表に出しているのが……うーん)」
私と行動するならば、こちらが年長者として振る舞う方が自然だということも。
でも、人格持ちで自立させた分身相手なら特に気にならないけれど、あれは本体。
あの裏に普段のお姉様がいると思うと、何だか背中がヒヤリとする。
治療を終え、彼らの拠点である集落に向かう。
魔物の侵入を防ぐためか高台に作られたそこで、リティア達は大きな歓待を受けた。
彼女達が助けた薬師たちはこの集落の守護者のような立場であり、魔物が跋扈する村の外に出たのは流行り始めた病に対処するための魔法薬の原料を採取するために已む無くで、それが運悪く魔物の大群に襲われ全滅しかけたという背景があったらしい。
この地方の伝統料理だという鹿肉料理が振る舞われた宴会の後、二人は村長を名乗る老齢の男に案内される。
「こちらの空き家は自由に使っていただいて構いません。この度は、誠に感謝いたします。リティア殿、カッツェ殿」
「こちらこそ、宴会でのご馳走に、貴重な物資を頂いてしまって…こんな寝床まで…ありがとうございます、村長さん」
「いいえ、いいえ。貴方がたに救われた彼らの命、そしてこれから救われる命と比べればなんて事はありません。では、おやすみなさいませ」
村長は頭を深々と下げてから立ち去った。
部屋の中には見目麗しい少女が二人。リティアとカッツェと呼ばれた彼女達はテーブルを挟んでそれぞれ椅子に腰掛けた。
「さて、と」
おもむろにリティアが腕を振るうと魔法が発動し家全体を結界が覆った。音や魔力を遮断する効果を持つ人類の複合結界魔法だ。
「んー、これだと厳重すぎるかしら? 怪しまれる?」
「傍から見れば女の子だけの二人旅ですし……問題無いかと」
「……やっぱり、慣れないわ」
「わ、私はカッツェ、貴女の妹弟子ですから。リティアさん」
そう返された彼女は唇を尖らせる。
「あまり意地悪しないで頂戴」
「たぶん、意地悪してるつもりは無いと思いますけど……」
「ふーん」
「うぅ」
年頃の少女同士が交わすような他愛もないやり取り。それを成しているのが『狡智の大魔』と『微笑みの魔女』という二人の大魔族だと誰が信じられるだろうか。
ナーリンはカッツェと名乗り、その姿を茶髪に翠眼、自信無さげな顔立ちの少女に。
ソリテールはリティアと名乗り、髪は薄桃色で瞳は鳶色、儚げな顔立ちの少女に。
それぞれナーリンの『まやかしの魔法』によって変身していた。
「せ、
カッツェとしての姿形はそのままに、その表情から弱々しさが消え、冬の夜風のような冷たさが宿る。
「ほんと、慎重ね。一緒にあちこち旅をしていた時もそうだったけれど」
「此方は臆病者だ。それはこれまでも、これからも変わらない」
「知っているわ、それがお姉様だもの。今日、あの人間達を助けたのは、この村に入る時に不信や不満を抱かれない為、信用される為。道中で人間を殺さないのは、人間同士の繋がりを断った結果として私達の存在が気取られる可能性を下げる為……うん、理屈は分かるわ。人間の感情や生態、社会性等といった特徴はお姉様から教わったし、私自身研究してきた。無闇矢鱈に人間を襲うなんて馬鹿馬鹿しい、人類側に戦力の天秤が傾いている現状、デメリットしかない。でも」
ソリテールはそこで言葉を切り、自身の手を見つめる。
「理由もなく、殺意もなく、ただなんとなく、人間を殺そうって、ふと思ってしまうの」
「……魔族とは、そういうものだ」
「そうね。あの魔王サマも、マハトも、共存を望みながら沢山の死を振りまいていた。魔族の本能、習性に従って、ね。お姉様はどう?」
「人間を殺す事に理由は無い。だが同時に、殺さない理由は幾らでも有る。此方は普通の魔族よりも多少永く生き、人類の可能性と脅威を身に沁みて知っている。生き汚いのだろうな」
「成る程。年の功というものね」
ソリテールの言葉に口角を上げたナーリンは「そうだな」と言って席を立つ。そのままかまどへ向かうと火を熾し、湯を沸かしてお茶を淹れ戻って来る。
「ねえ」
「ん?」
「お姉様がこうやって習慣的にお茶を淹れたりする事を、人類は趣味と言うわ」
「そうだな」
「他にも料理をしたり花を育てたり……なら、私はどうかしら?」
「ソリテールの趣味?」
お互いマグカップに時折口をつけながらの会話。ランプに灯る光が生み出す二人の影がゆらゆらと揺れる。
「ふむ……研究、か? 魔法について、人類について、何百年と続けている事だろう?」
「そうね。それも、私の趣味。でも他にもあるわ」
「ん?」
「お姉様」
「……???」
彼女がピンと伸ばした指の先にいるナーリンは宇宙を背負う。
「お姉様と出会ってから、貴女について考えなかった日なんて無かったもの。だから、これも趣味ね」
「そ、そうか……」
「ふふっ」
困惑した様子のナーリンを見て、ソリテールはしてやったりとでも言うように、楽しげに笑った。
まるで訳がわからんぞ?!
『趣味:俺』ってなんだよ(困惑)
これが人間の美少女からだったら嬉しい……嬉しいか? ちょっと怖……たぶん嬉しいと思う……けど相手は魔族、どんな思考回路なのか分かったもんじゃない。
研究と称してモツヌキしてきたり……無いよな? 魔力では俺の方が上だし、そんな下剋上なんて……。
「さっき私の事をイジメたお返しよ」
可愛い顔で楽しそうに笑っちゃってさあ! 許せる!!(チョロい)
「戯れが過ぎるぞ、ソリテール」
「ごめんなさい……怒った?」
怒ってないよ。じゃない。
あざとく首傾げやがって! 許せる!!(天丼)
「……いいや、些末な事だ」
「そう? なら良かったわ」
ほんと、魔族って分からん。
いや、前世も心が読めるとか無かったし他人に『何考えてんだコイツ』なんて思う事もよくあった。別に変わらないか。
それはそれとして人喰いの猛獣が近くにいるのはあれだけど……最近は慣れてきたなあ。きちゃったなあ。まあ人間(精神的に)そんなもんか。
はぁ……。
昔はなあ、ちっちゃくて可愛かったなあソリテール。俺の方が大きくて歩幅が広かったからトテトテついてきて、手を引いたり時々おぶったりしたし……フリーレン世界じゃなければなあ。
嗚呼諸行無常。ファッキン存在X。
「もう少しで黄金郷、城塞都市ヴァイゼね」
「そうだな。このペースならばあと一週間程度だろう」
そう。今俺たちが向かっているのは黄金郷だ。隠れ家が魔法協会とかにバレて逃亡してる訳じゃない。というかバレてたらゼーリエがやってきて二人共お陀仏だ。
理由はいくつかある。
放っておくとソリテールが一人で突っ込んで行き、そのせいで余計な火種を増やす可能性。アウラの時とかみたいに。
もしメタ読み通りにフリーレン達が来た場合、ソリテールが殺される可能性。
逆に、フリーレン達が殺される可能性。
あとは、話に聞くマハトが余りにも『強すぎる』事。
マハトの『
ソリテールが研究用にと持っていた黄金の林檎を調べてみたけども、『傷付かず破壊も不可能なただの黄金の塊』という事しか分からないやべー代物だった。
普通の黄金じゃない事は明らかなのに、術式を解析しようにも魔法による産物と認識が出来ないんじゃどうしようもない。お手上げです。
魔法を行使している所を見たり、直接魔法かけられたりすれば何か掴める……とは思う……思いたい。でも、そんな場面に居合わせたくはない。確実に死ゾ。
精神魔法で五感や魔力探知を乱して認識を妨げる事で黄金化の対象から逃れられる筈とはソリテールの見解だが、俺はともかくそれを人類であるデンケン爺さんやフリーレン達が可能だとは思えない。魔族と人類は見た目こそ近いが中身は別物だ。人類の精神魔法はまず通じない。
いや、爺さんはゼーリエの与える『特権』で何か対抗策を得ているかも知れない。
だけど、その程度で人間が七崩賢最強の大魔族に勝って生き残るとは思えなかった。良くて相討ちだろう。ビターエンドというやつだ。
フリーレンはどうだろう。
1次試験ではゼーリエの結界を解析して破壊していたし、アニメでは断頭台のアウラの『
解析する機会と時間があれば対抗できるかもしれない。けれど、彼女達が黄金郷に来るのかは分からない。メタ読みするなら来るだろうけど、確定ではない。
俺のことを追っているみたいだから目撃情報を意図的に流す……なんて手段で誘導しようとも考えたけど、それでゼーリエが来たらナーリンはおしまい! ゴウランガ! だから出来ない。
適当な名義で依頼でも出してみるか? ……現在地が分からないから使い魔を送れないな。ボツだ。
……同期してクラウとしての記憶、経験を得たからかデンケン爺さんたちに入れ込んでる自覚はある。
つまるところ、俺は爺さん達に助力するつもりだった。陰ながら、こっそりと、バレないように。
協力? 共闘? 無理無理カタツムリ。俺は魔族。見敵必殺されるわ。
「ソリテール、以前も言ったが」
「まずは分析のためにマハトと会って話す、でしょ? ちゃんと覚えているわ」
「なら、いい」
あと、理由はもう一つ。ソリテールに話したことは間違いではないが、建前に近い。
俺とソリテールが不可能と断じた『人魔共存』を目指し、その結果一つの都市を滅ぼしたらしいマハトと話してみたい、そんな興味、好奇心だ。
もう一人、共存を目指していたらしい魔王と、その腹心のシュラハトは死んでるし。
好奇心は猫を殺す……だから、死なない為に手は尽くすけど、さて、どうなるかな。
読了謝謝茄子!
ナーリンは芋砂。フリーレン世界って魔法使いの交戦距離近くない? って思ったらこうなった。
ナーリン(本体)とソリテール、いざ黄金郷へ
感想評価お気に入りここすきクレメンス