【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】 作:丹羽にわか
うおおおお投稿じゃー!!
勇者ヒンメルの
死から29年後
北側諸国キュール地方
オイサースト
「よろしいのですか、ゼーリエ様」
大陸魔法協会北部支部の屋内庭園。一級魔法使いレルネンは、花畑を眺める大魔法使いゼーリエの斜め後ろに控えながら小さな師の背中に問いかけた。
「それは、ゼンゼとユーベルを北部高原に送ったことか?」
「ええ。今のゼンゼは危うい。クラウ…いえ、ナーリンに絆され、揺らいでいます。魔族の命乞いにトドメを躊躇い殺される者を私は何度も見ました」
レルネンは最初の一級魔法使いであり、これまで踏んできた場数は相当のものだ。
優秀な戦士や魔法使いが、魔族の命乞いに隙を見せ、そこを突かれて殺される。ありふれた悲劇をよく知っている。
「ふん、それで?」
「再度、分身かナーリン本体がクラウとしてゼンゼ達の前に現れた際、致命的な隙になりかねません。相手は狡智の大魔。たとえ一級魔法使いの我々が万全の状態だったとしても届くか定かではない相手です」
「成る程。臆病者のレルネンらしい慎重な考えだ」
「……
ゼーリエはくるりと身体ごとレルネンに向き直る。
「レルネン、これは試練だ」
「試練……」
「ゼンゼは優秀な魔法使いだが、甘い。これまであいつが担当した試験にもその傾向は出ていたが、今回の二次試験ではそれが特に顕著だった。丁度いい機会だとは思わないか? 友だと思った相手は魔族で裏切られ、その記憶を血で洗い流そうとしている。建国祭の頃には多少マシな面構えになっているだろうさ」
「……お言葉ですが、悪趣味です」
「そうか」
ゼーリエは顔色一つ変えること無くそれだけ言うと庭園を出て行った。残されたレルネンは「はぁ…」とため息を漏らす。
「不器用な方だ。ゼンゼが無事に帰ってくると信じているのに、それを自覚しておられない……いや、それは私が言えたことじゃないね」
苦笑を浮かべ、レルネンもその場から立ち去る。
「さて、デンケンへの恩返しだ。まずはエーデルかな」
勇者ヒンメルの
死から30年後
北部高原
コーレ地方
街道近くの森の中に佇む小屋の中。
「おばあさんが病気で医者を呼ばないといけないんですっ! どうか、見逃し…」
「そうか。その病気はどんな症状? 発症はいつから?」
幼気な少女の姿をした魔族が、床に膝をつき涙目で懇願する。
それに言葉を重ねるのは一級魔法使い、ゼンゼ。ユラユラと漂う髪の毛には幾重にも魔法がかけられ、いつでも眼前の魔族にトドメを刺せるようにしている。
「そもそも、魔族のお前に他者を『想う』心なんてモノがあるのか?」
「わ、わたしはどうなってもいい! おばあさんだけでも、助けて……」
それは、美しい自己犠牲に見えた。
きっと、これで躊躇い無く相手を殺すのは立派な『人でなし』だろう。
「……はぁ。これだと私が悪者みたいだ」
ため息をつき、目線を切るゼンゼ。あわせてその髪にかけられた魔法も霧散する。
「ッ!!」
その瞬間、魔族は何か魔法を撃とうと魔力を巡らせ、ゼンゼはそれが放たれるよりも早く、杖を介さないで手の平からの『
「──助け」
「囀るな」
放っておいても何もできず死んだであろう魔族の命乞いする頭を、瞬く間に刃のように変質させた髪で切り飛ばす。
魔族が塵に還るのを見届けていると、部屋の奥の扉を開けて人影が現れ、近付いてくる。
「ま、お婆さんなんていないよね。にしても、あからさまな隙なのにあっさり食い付いたね。てっきり逃げるかあの演技を続けるのかと思ってたよ」
「ユーベル、君の魔力と殺気が漏れていたから失策を悟って一か八かに賭けたんだろう。魔族はそこらの魔法使いより遥かに鋭敏だ……というか、わざとだろう?」
「あはは、ごめんね」
「誠意の欠片もない謝罪だ。感心するよ」
ゼンゼとユーベル。共に一級魔法使いであるが、お互いが得意とする魔法の相性はユーベルに分がある。
だが、ゼンゼは髪を操るだけの魔法使いではない。
いざとなれば一般攻撃魔法と防御魔法で死なないよう抵抗する事も可能だろうと、人殺しの目をしている同僚を仮想敵としてシミュレーションしていた。
「それで、ゼンゼさん。どう思った?」
ユーベルが問い掛けてくる。曖昧な問いだが、そこに含まれる意味を察してゼンゼは眉をひそめ、口を開く。
「……魔族は魔族だ。人の真似をして欺いてくる二本足の獣でしかない事が改めてよく分かったよ」
魔族の襲撃を受けたとある集落に派遣されたゲナウとメトーデのペアとはまた別に、ゼンゼとユーベルは北部高原全域を対象として旅をしながら魔物や魔族の討伐を行っていた。
「ただ、帝都での建国祭の件もある。そろそろこの任務も切り上げて北部支部へ帰還を──」
「ウソは良くないなぁ。私、なんとなくそういうの分かるよ? まだ吹っ切れてないでしょ、クラウの事」
「……」
「ほんと、ビックリだよねえ。魔族の分身が一級試験を受けて、ゼーリエ以外どの一級魔法使いも、デンケンやメトーデ、フェルンにかの勇者一行の魔法使い、フリーレンですら、誰も彼もが気付かなかったんだから。ゼンゼさんに至っては試験前から交流があったんでしょ? ねえ、どんな気持ち?」
愉しげな笑みを浮かべながらユーベルはゼンゼの顔を見つめてくる。その菫色の瞳は研究者が観察対象を見る時のそれだ。
「……全く以て最悪の気分だよ。だからやめてくれないか。ストレスは髪にも肌にも良くない」
微かに殺気を込めるが動じた様子はない。むしろより笑みを深め愉しそうにするばかり。
「(イカれ女め)」ゼンゼは内心毒づいた。
「友達だったんだよね? 親しい人を手にかけたらやっぱり心が痛むものなのかな? ゼンゼさんは常に一定の距離を保つけど何かきっかけがあって懐に入れた相手にはかなり甘いタイプだよね」
「魔族に友人なんていない」
「うーん。なら、クラウの最期はどうだった? やっぱりみっともなく命乞いをしたのかな? それとも破れかぶれに攻撃してきた?」
人は、思考する生き物だ。
無視しようとしても、耳から入ってきたその言葉は、否応なしにゼンゼの記憶の引き出しに手を掛ける。
友人だと思っていたソレは、両腕を断たれ致命傷を負いその身を塵と化しつつあった。
その首を断った時、自分を見る瞳には未だに親しみと寂しさが残っていた。
『──、───』
音の無いその呟きは、何と言っていたのか。
もう、分からない。
「……あれは分身だ。命乞いをする意味が無い」
「もう、そんなに殺気を振りまかないでよ。思わず斬りたくなっちゃうじゃん」
尋常ではない雰囲気を漂わせるゼンゼが踵を返して歩いていくのを追いかけながら、ユーベルは思案する。
「(うーん、思ったより重症というか拗らせてるなあ。ゼーリエは駄目そうなら半殺しにしてでも連れ帰れって魔法の相性がいい私がペアに選ばれたけど、どうしようか)」
ゼンゼがこの討伐任務に志願したのは『魔族というものを再確認する為』とユーベルは聞いている。その原因が魔族の分身だったらしいクラウにあるのは明らかだ。
「(魔族を殺すことに迷いは欠片も無い。でも、クラウの事を吹っ切れてもいない。それだけクラウが特別だったんだろうけど、これ解決するのかな?)」
そもそものアプローチの仕方に疑問を抱くが、闘争に彩られた日々は充実しているのでまあいいかと脇に置く。
「ん?」
バサバサと、翼が羽ばたく音が近付いてくる。一羽の空色をした鳥だ。
鳥はゼンゼの差し出した手に止まった。その脚には小さな金属製の筒が取り付けられている。
「使い魔か。手紙……協会じゃなくてレルネン個人からだね」
筒の蓋を開き、中から取り出した手紙に目を通す。
「黄金郷の大結界の管理者の手伝い? 今の管理者は確かレルネン、いや、デンケンに代わったか」
「報酬は……うわ、随分大盤振る舞いだね。あの人の老後が心配になるよ。ここ、何かあるの? 曰く付き?」
横から覗き込んでそんな事を言ったユーベルに、ゼンゼはジト目を向ける。
「……黄金郷についての資料は閲覧権限が与えられているはずだが? ユーベル一級魔法使い」
「あー、うん。読んだ読んだ。アレでしょアレ。えっと、なんだっけな、ど忘れしちゃったかも」
「今度から試験には座学も取り入れた方がいいか……?」
「そんな物騒な。穏便に殺し合いで決めた方がいいよ」
「どこが穏便なんだそれは」
ゼンゼは頭が痛いとばかりに額に手を当てる。
「……城塞都市ヴァイゼ。ここにはかの七崩賢、黄金郷のマハトが封印されている。かつてここの領主はマハトをある魔道具によって支配し、操り、巨万の富と権勢を得ようと企んだが裏切られ、総てが黄金と化し滅んだ都市……と言われているが、いくつか不審な点が──」
「ふーん。まあ経緯はどうでもいいや。多分これ、そのマハトと戦うことが前提の依頼だよね。面白そうじゃん」
「……」
ユーベルはずいと顔を寄せ、視線を重ねる。
「ゼンゼさんはどうする?」
勇者ヒンメルの
死から30年後
北部高原
ヴァイゼ地方
林道を進む幌馬車にレルネンとエーデルは揺られていた。
黄金郷の大結界内へと侵入し、マハトとの遭遇を切り抜け、管理者の任を引き継いだデンケンに記憶を渡し、オイサーストへの帰り道。
マハト相手に時間稼ぎをして斬撃を受けたレルネンも、魔族の記憶を読んだエーデルも互いに疲労の色が滲んでいる。
「のう、レルネン」
「なにかなエーデル」
「フェルン達だけでなく、ゼンゼ達にも依頼を出したのは何故じゃ?」
「何故、とは?」
「“あれ“とゼンゼは親しかった。その位、二人を見ていれば分かるしゼンゼの記憶を読んで知っておる。そして魔族、狡智の大魔の分身だった“あれ“を仕留めたのはゼンゼなんじゃろう? それが今は魔族狩りの任務に出ていてどんな精神状態になっているのか、想像するだけで儂は怖気が走るぞ」
エーデルは精神魔法の専門家であり、クラウの一件についての調査にも加わり、二級魔法使いながら事情を知る唯一の人物だった。
「ユーベルからは『平気そう』と報告があったよ。あの子の感覚は並大抵のものじゃない、信じてもいいと私は思っている」
「……あやつは苦手じゃ」
「はは、まあ君からしたらそうだろうね。随分と興味深い精神の持ち主だし」
「興味深いで済ませるレルネンもマトモではないのう」
「そうだね、自覚はあるよ。おっと」
ガタリ、と石を踏んだのか馬車が揺れる。
ふらついたエーデルの手をレルネンは掴み、支える。
「……レルネン、おぬしは人間じゃな」
エーデルは繋いだ手をじっと見ながら確かめるように言った。
「どうしたんだい急に」
「いや、“あれ“の事を思い出すとどうしても不安になるのじゃ。あのような人と変わらぬ振る舞いをする分身が、それを可能とする魔族が存在すると知ってしまったからの」
「君は精神魔法で判別できるだろう? 私達はそうはいかないんだよ?」
「……相手が人だろうが魔族だろうが躊躇いなんて無いじゃろうに」
「臆病だからね、常に備えておかないと」
手を離し、座り直す。
「“あれ“とは一度も目が合わず、手が触れることもなかった。言葉も交わしておらん。人見知りな性格のように見えた故にあの時は気にしておらなんだが、精神魔法を警戒されたのじゃろうな。記憶が読めていれば、ナーリンについて何か分かったのかも知れんが」
「過ぎたことは仕方ないさ。ゼーリエ様曰く、ナーリンは自身が『弱い』と認め『逃げる』と宣言したそうだよ。かの勇者ヒンメル一行からも逃げ出しているし、ゼーリエ様やフリーレン様が生きている間は大人しくしてるかもしれない」
「そうだったらいいのう」
読了謝謝茄子!
ゼンゼ&ユーベル参戦!(ス◯ブラ)
この世界線での帝国編の建国祭周りはファルシュとレルネン辺りが準備を頑張ってるという事で
感想評価お気に入りここすきクレメンス
もっと妄想と幻覚視て(はぁと)
skebリクも受け付けてるやで〜