【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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マハトの記憶解析という名のグリュック達の過去編は原作そのまま故にキングクリムゾン!

というわけでソリテールとマハトの初遭遇から




突撃! 変わり者の大魔族

 

 

勇者ヒンメルの

死まで64年

中央諸国

スアーリ海峡

 

 

 

 その日、ソリテールは砂浜を訪れていた。

 

 潮流と地形の関係でこの辺りには様々なモノが流れ着く。それは瓶や木箱、流木、難破船、遭難者、そして今目の前にある海洋生物の死骸など様々だ。

 

 

「シャチかあ。骨格標本はもうあるし、わざわざ持ち帰る必要はないか」

 

 

 そう言いながらソリテールは後ろ手を組んで死骸を観察する。

 大きな個体だ。流れ着く過程でついたと思しき傷の他に目立った外傷は無い。死因は老衰だろう。

 

 

「おや?」

 

 

 そんな事を考えていると、魔力探知に反応があった。

 

 魔族だ。

 

 その魔力量は自分とほぼ互角。お姉様と呼び慕うとある大魔族には劣るが、魔族でも指折りの強者な事は確かだ。

 

 目的は自分らしい。一直線に向かってくる。

 

 

「どちら様?」

「人類について研究している変わり者の魔族が居ると聞いた。お前がそうか?」

「……ええ。ソリテールよ」

「マハトだ」

 

 

 誰から、という疑問を笑顔の仮面の裏でソリテールは飲み込み、手を差し出すが相手は応じない。

 

 その行動は「馴れ合うつもりはない」などの意図をもったものではなく、握手という人類の文化、習俗に対しての理解があまり無いことが伺えた。

 

 マハト。

 

 その名前にソリテールは聞き覚えがあった。

 

 魔王軍幹部、七崩賢と呼ばれる理外の魔法を使う七人の大魔族。

 その中において最強と名高い『黄金郷』のマハト。眼の前の男の姿をした魔族がそうらしい。

 

 相性は悪い。魔力量は互角でも話に聞く『万物を黄金に変える魔法』への対抗策を自分は持たない。

 今は中央諸国の辺境に隠れ住むかの大魔族が居れば話は別だが、この場は平和的に、穏便に、当たり障りなく済ませるのがベターだろう。

 

 そして、マハトという魔族が変わり者として知られているらしい自分に対して、態々人類について訊きに来る。

 どういうことだろうと内心訝しむ。

 

 その間、マハトは波打ち際にしゃがみ込んでシャチの死骸を興味深そうに眺めていた。

 

 

「ふむ……」

「それはシャチという海洋生物よ。見るのは初めて?」

「ああ。海にはこんなに大きな魚がいるんだな」

「そう。やっぱり魚に見えるんだ」

 

 

 ソリテールはマハトを今の拠点である元造船所に案内した。

 実験場ではない、研究所とでも言うべき場所だ。中に入ったマハトの視線は天井から吊り下げられた物体に向く。

 

 

「これは……魚の骨か?」

「片方はね。こういう物を骨格標本というのよ。見たことはある?」

「いや、似たように骨になった人間の死体くらいだ。ふむ……左右で形が随分と違うな」

「そうでしょ。ちなみに、左がさっきの死体と同種のものね」

 

 

 どこか楽しげにソリテールはマハトに語りかける。

 

 

「ねえ、マハト。貴方は『収斂進化』という言葉を知っている?」

「いいや」

 

 

 シャチとサメ。天井から吊り下げた両者の骨格標本の方を向き指差しながらソリテールは解説を始めた。

 

 

「生物は進化する。あっちの子、シャチは哺乳類。犬や猫と起源が近くて遥か昔は陸上で活動していたけれど、何かをキッカケに海に進出し、永い時を経て、右のサメ、魚類と似た見た目になった。外見や機能こそ近くても、その中身は大きく異なる、全く別の生き物なの」

 

 

 くるりとマハトの方を振り返ると胸の前で手を合わせ笑う。

 

 

「私達魔族もそう。遠い祖先は人の言葉を真似て“たすけて“と発して獲物を誘い込み捕食する魔物だと言われている。それがより効率的に人を食らうために、欺くために人に近い姿になった、というのが定説ね。ふふっ、面白いでしょ?」

「……」

 

 

 ソリテールは研究室にマハトを通し、テーブルにお茶菓子などを用意した。

 

 魔族にも味覚はある。甘い、苦い、しょっぱい、辛いといったそれら。他にもアルコールによる酩酊、カフェインによる覚醒などを感じ、理解はしている。

 けれどそこに大して嗜好は無い。まだそこまでソリテールは至っていない。そういう人類の習慣だからと模倣しているだけだ。

 

 手を付ける様子の無いマハトは当たり前として、ナーリン──お姉様はどうだったろう、と思いを馳せる。

 

 永い時を生きる無名の大魔族であるソリテールにとっても古い記憶。その中でナーリンは楽しそうにお茶を淹れ、料理を作り、振る舞っていた。

 

 人の言動を学習()して身に付け擬態するのが魔族だ。人間と変わらないあれらの振る舞いは、その極致にあるといえる。

 

 そのナーリンは、中央諸国の辺境の森に引きこもっている。延々と続く人類と魔族の戦争ごっこに辟易して。

 

 ソリテールも同じ気持ちだった。

 

 およそ千年前。大魔法使いフランメの働きかけにより人類が魔法の軍事転用に積極的になり魔王軍に対抗できる力を手に入れた結果、幾人もの『お友達』が殺されているのだから。

 

 けれど、ソリテール自身は時折魔王やシュラハトの命で作戦に駆り出される時がある。

 

 人類の強さ(こわさ)を知っている身としては御免被りたいところだが、シュラハトとの約束や魔王軍傘下の大魔族との魔法の相性、力量差を前には従うしか無い。

 

 

「ソリテール」

 

 

 情報収集の為に街に降りた時、気まぐれに商人から購入した茶葉で淹れた紅茶を飲むソリテールを、魔族らしい無機質な瞳で眺めていたマハトはポツリと言った。

 

 

「お前は、『悪意』と『罪悪感』を知っているか?」

「言葉とその意味なら」

「感じたことは?」

「あると思う?」

 

 

 ソリテールはナーリンと別れてからの長い年月を使い魔法や人類を研究し続けた。

 人類の心の動きや行動、習性、様々なことを知り、知識として吸収した。

 

 人間らしい振る舞いなんて幾らでも出来る。

 魔族ということを偽らずとも可憐な容姿と立ち振る舞いで相手を魅了し、精神魔法を使えずとも心を奪うことだって容易い。

 

 そして、実験として人間の男と夫婦となり共同生活の果てにその手で殺し食べた事もある。

 けれど、そこに悪意や罪悪感を覚えたことは未だに無い。だって、魔族だから。

 

 愛を囁かれた事がある。こちらから囁いた事もあっただろう。

 けれど、もう顔も名前も覚えてはいない。それが、魔族だから。

 

 

「……何故、俺達は『悪意』や『罪悪感』といった感情を持たないんだ? この姿、この言葉、着実に人へと近付く、お前の言う『進化』をしているというのに」

 

 

 マハトの声音は真剣だった。本気で考え、悩んでいる事が伝わってくる。一体その過去に何があったのか、ソリテールは若干の興味を引かれながらカップをソーサーに置く。

 

 

「ふふっ、随分とくだらない、わかり切った事を訊くのね。そんなの、生まれた瞬間から解っているでしょう? 私達は言葉で人を欺き食らう化け物。この進化はより効率よく捕食するためのもの。殺す度に心を痛めていたらとうに絶滅しているわ」

「……心を痛めるとは、どういうことだ?」

「人というのはね、己の信条や道理に反する行為や決断をした時に心を痛めるの。胸を締め付けられる、とも表現するかしら? でも、人を欺き喰らうことは私達にとって当たり前。きっと、魔族には一生味わえない感覚よ」

「……」

「私達が人の心を理解できないのは、人が虫や魚の心を理解できないのと変わらないよ。全く別の生き物なんだから。自然の摂理だ、気にする必要なんて無いんだよ、マハト」

「しかし、それでも、それらを理解できれば人類との共存への道が開けるかもしれない。どうせ俺達には無駄にして有り余るほどの時間があるんだ」

 

 

 マハトはソリテールの瞳を真っ直ぐに見つめて言う。そんな世迷言を大真面目に言ったのは、ソリテールの知る限り二人目だった。

 

 

「共存、か。魔王サマも昔、同じ事を言っていた。その結果がこの千年以上続く戦争ごっこだ」

「……」

「なんて無駄で無益な争いなんだろうね。人類を滅ぼす事が、もしくは魔族の繁栄の糧にする事が目的なら、フランメによって魔法が普及する千年前に出来ただろうに。魔王サマの掲げる人魔共存なんてもののために私達は未だにダラダラと殺し合いを続けている。挙げ句、その間に人間は強くなった。今では歴戦の大魔族や将軍が討たれる事だって少なくない」

「……」

「まあ、気が済むまでやってみると良いよ。マハト。応援はしないけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、記憶を読まれているぞ」

 

 

 その魔族はどこか呆れた様子で言った。

 

 未来予知という理外の魔法を使う大魔族。魔王軍幹部、全知のシュラハト。その傍に控えるのは七崩賢『奇跡』のグラオザーム。

 

 

「まったく、らしくないミスだ。マハト」

 

 

 階段に腰掛けるマハトの前に立つと、その肩に手を置いて視線を合わせる。

 

 その瞳に映るのは、マハトではない。およそ80年後の未来そのもの。

 

 

「悪いなフリーレン。お前に南の勇者との戦いを見せる訳にはいかん。これは魔族の存亡を賭けた戦いであり、敗戦処理であり、千年後の魔族の為の戦いだ」

 

 

 そこにどのような意図があるのか、何に繋がっているのか。シュラハトの手の上で踊るしかないマハトには解らない。

 

 

「フリーレン?」

「未来の話さ。じゃあ、戦場で」

 

 

 シュラハトはグラオザームを伴ってその場から離れる。

 

 

「生きて帰れるといいな。シュラハト」

「お前のその最初で最後の気遣いも、予知した未来で数え切れないほど聞いた」

 

 

 その背中は、確かな覚悟を背負っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまないな、ナーリン」

 

 

 謝罪を口にし、シュラハトは目を伏せた。

 

 いくつもの枝分かれした未来の中で、最善と判断した一枝を選び、その為の道筋を整えることに注力する。

 

 ナーリンという魔族の能力は、その自己評価や臆病さに反して確かなものがあるとシュラハトは評価している。

 多少強引に魔王軍に加入させた未来では、悪態を吐きながらも自分と共に魔王軍を支えていた。

 南の勇者にとどまらず勇者ヒンメル一行を討ち取った未来すらある。マハトは封印されず、魔王は健在で、戦争は続く。

 

 それでは、駄目だった。その先に、魔族の未来は無い。

 

 故の、敗戦処理。

 

 この千年以上続いた戦争は、魔王の死、魔王軍の敗北で終わる。終わらせる。

 

 シュラハトが南の勇者と相打ちとなり、勇者ヒンメル一行が魔王を討ち取る。

 勇者ヒンメルの死をきっかけに、葬送のフリーレンが旅を始める。

 

 クヴァール、アウラ、レヴォルテ、マハト──多くの魔族が討ち倒されるだろう。

 

 

「魔王様を倒し、王都へと凱旋する勇者ヒンメル達の経路。これを敗残した魔王軍残党の配置で操作する。その先にあるのは、ヴォーボだ」

 

 

 そして、更なる一手をシュラハトは打つ事を決めた。

 

 

「俺はお前を、巻き込む事を選んだ。お前の望む平穏を乱して、お前の嫌いな闘争に」

 

 

 全ては、千年後の魔族の為に。

 

 

「これで──」

 

 

 

 

 

 




読了謝謝茄子!

シュラハトに何が見えているのか……私にも分からん
ナーリンの魔族ロールプレイは一人の時も徹底しているので、シュラハトの未来予知で盗視されてても転生者とはバレてない……筈
魔王軍(全知さんの副官)ルートでは、なんだかんだシュラハトやソリテールに絆されしっかり幹部してると思う。見知らぬ人の死は統計上の数字でしか無い

シュラハトとか南の勇者とかトートとかの思惑が原作で明かされるのはいつになるのやら……明かされるより先に完結させるね


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