【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

30 / 46

連載開始1周年&作者の誕生日(26日)記念閑話の前編です
クラウとシュタルクの合同クエストになります

今日明日で前編後編投稿、26日に掲示板回投稿するンゴ




閑話 クラウちゃんのほのぼのくえすと《前編》

 

 

勇者ヒンメルの

死から二九年後

北側諸国

キュール地方

 

 

 

 まだ朝靄が立ち込める時間帯。夜明けの日差しに照らされながら、二つの人影はオイサーストを発った。

 

 

「て、天気はいいですけど、さ、寒い、ですね」

「そうだなあ。ま、暫く歩いてれば体温上がるし、もう少し日が昇れば暖かくなるとは思うけど」

「そ、そうですよね、あはは……」

 

 

 冬が明けたとはいえまだ北側諸国の朝は冷える。二人の吐く息は白かった。

 

 一人は四級魔法使いのクラウ。全身を草臥れたローブで覆い、目元を隠すように白い髪が伸びている。残金を考えずに散財しインフレも相まって資金難に陥るというポカを今回やらかした。

 もう一人はシュタルク。勇者一行の魔法使いフリーレンの仲間であり戦士。オイサーストの町中でクラウに泣きつかれて一緒に依頼を受けることになった心優しき青年。

 

 クラウは人見知りでコミュ障な性格に"なっている"。会話デッキから切り札の天気カードを切るも微妙な結果に終わった。他人と一緒にいるのに無言はダメ、会話しないといけない、と思ってしまうタイプがクラウだった。

 

 故に、更に口を開き言葉を紡ぐ。

 

 

「あ、改めまして、今回は依頼を受けてくださりありがとうございますっ、シュタルクさん」

「いいっていいって。俺としても、臨時収入になるし助か……なんか距離遠くない?」

 

 

 シュタルクの疑問は尤もだった。

 クラウとは横並びではあるがその距離は腕を広げても余裕なほどに開いている。何かしたっけ、と内心首を傾げるが、特に思い当たることはない。

 

 

「そ、そうですよねっ!」

 

 

 クラウはその言葉に慌て、ずいと距離を詰めた。肩が触れ合いそうなほど、いや、勢い余りつんのめって少しぶつかった。シュタルクの強靭な体幹と肉体はビクともせず、逆に弾かれたが。

 

 

「大丈夫か?」

「す、すすすすみません! 他の人とパーティーを組む経験が無くて距離感が掴めなくて……」

 

 

 精神的にも物理的にも、である。

 

 

「あー、成程。ん? って事は、これまでずっとソロで活動してたのか? 戦士や僧侶の仲間無しに?」

 

 

 シュタルクはその事に思い至り驚いた。自分達や師匠であるアイゼン達がそうだからか、魔法使いは戦士らとパーティーを組み連携するものという意識があったのだ。

 隣の小柄な魔法使いはその例外らしい。

 

 

「あはは……ま、まあ、そうせざるを得なかったというか……」

 

 

 クラウはやや肩を落として弱々しく笑いながら言う。

 

 

(見た目や雰囲気はオドオドしてるけど、魔法使いとしての実力は確かなんだろうな)

 

 

 シュタルクはそんなクラウの様子を見て思った。

 これまでの旅路で北側諸国の魔物の手強さは身に沁みている。それを魔法使い一人で切り抜けてきたという事実にシュタルクは感心した。

 

 

 

 

 

 

「あの、今回の依頼についておさらいしておきましょうか」

「おう、いいぜ」

 

 

 他人がいる状況に慣れたのか、ぎこちなさが取れてきたクラウの提案にシュタルクは頷く。

 

 

「魔法協会で受けた依頼は四件、です。この先のヘルツ街道に出没して商隊等を襲う魔物の群れの討伐。街道の先にあるクノッヘン鉱山内に入り込んだ魔物の討伐。同じ鉱山内で魔道具などの材料になる紅魔水晶の採掘。鉱山近郊のムント村の畑を荒らす赤角鹿の討伐ですね」

「それと、日程に余裕があれば道中で依頼を受ける、と」

 

 

 一ヶ月後には一級試験が控えている。金策にかまけて試験対策が出来ませんでした、なんて事があってはならないが、資金不足で寝床や食事の確保が出来ずコンディションが悪化して万全の状態で試験に臨めないのも論外。かといって食事を抜いても然程問題無い所から自身の事情に勘付かれるのも宜しくない。

 

 故に、クラウはシュタルクを伴って近場で複数の依頼をまとめてこなす事にした。

 

 

「五日以内にはオイサーストに戻りたいので、他の依頼をこなすのは難しいとは思いますが……」

「ま、そうだよな」

 

 

 フリーレンと一緒だったら考えられない急ぎの日程だ、とシュタルクは思った。

 

 時間の使い方が贅沢なのだ、あのエルフは。

 

 

 

 

 

 

「私の魔法は鉄球を操る魔法(ティエツダント)といいます」

 

 

 日が高くなるにつれて気温も上がってきた。

 

 やや汗ばんだクラウは、杖を手に持つとローブの隙間から鉄球を現わしてふよふよと宙に浮かせながら説明する。

 シュタルクは「へぇー……」などと感心した様子で鉄球を指先でつっついていた。

 

 つい先ほど、街道を進む途中で現れた兎型の魔物の頭部を消し飛ばした鉄球である。

 

 

「先ほどもお見せしましたが、この鉄球を操作して攻撃や防御に利用します。今は八個持ち歩いていますが、戦闘中操作するのは五個が限度ですね。それ以上は魔力探知や防御魔法に割くリソースが不足するので」

「面白い魔法使うな。鉄球飛ばして魔物ぶち抜く代物なんて初めて見た」

 

 

 仲間であるフリーレンもフェルンも、戦闘においては魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)や防御魔法を多用する魔法使いだ。それらは現代の魔法戦の流行りからはかけ離れた魔法なのだが、それをシュタルクは知らない。

 

 

「石など自然物を利用する事も考えてましたけど、それらは周囲の環境に影響されるので……ただ、この魔法は閉所だと方向転換時に大きく減速して威力が落ちてしまいます。魔力を強く込めれば補えますが、そうなると消耗が激しくなりますね」

「成程なあ……その鉄球、腰のポーチに入れてるのか? 重くない?」

 

 

 ローブの隙間からチラリと見えた、鉄球を収納しているらしいポーチにシュタルクが言及する。

 クラウはローブをめくるとそのポーチを見せた。腰のベルトに固定されたそれは革製で頑丈そうな作りをしている。

 

 

「常にポーチの中を浮遊させているので全然ですよ? この鉄球自体が浮遊や制御の魔法を組み込んだ魔道具なので普段は精神的な負荷が少ないですし、魔力操作の鍛錬にもなります」

 

 

 どこか得意げにクラウは言う。

 

 

「へぇ~、そりゃ便利だな。フリーレン、俺の仲間の魔法使いは魔法や魔道具の収集が趣味なんだけど、あんたもそんな感じなのか?」

 

 

 収集または蒐集。フリーレンが依頼の報酬として貰ったり立ち寄った村落で買い求めた魔道書や魔道具は玉石混交。石のほうが多い。

 クラウもそうなのかと思い訊ねると、フルフルと首を横に振る。

 

 

「あ、いえ。これは私の師匠(せんせい)が魔道具の制作をしていて、それで頂いた物なんです」

 

 

 そう言うことらしい。魔道具をどのようにして作るのかシュタルクは想像もできないが、普通に魔法を使うのとはまた異なる技術が求められるのだろう。

 そして、その魔道具を弟子に与える。師弟関係の良さが伺えた。

 

 

「いい師匠だな」

「はい。本当に」

 

 

 己の師であるアイゼンを思い出しながら言うと、クラウはふわりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 事態は突然動いた。

 

 街道を歩いていると、クラウが杖を取り出して構え、鉄球が五つ宙に浮かぶ。

 

 

「魔物か?」

「──はい。数は……三、六、いえ、全体で一三体ですね。こちらを包囲するように動いてます」

 

 

 魔力探知で魔物の数と動きを把握したクラウが、先程までとは打って変わって落ち着いた、実戦慣れした魔法使いの風格を漂わせて言う。

 

 

「一三か……多いな。どうする? 俺が前に出て引きつけるか?」

「……そう、ですね……いえ、私から付かず離れずの距離で牽制と防御をお願いできますか。対多数なので、初撃で削ります」

「分かった」

 

 

 斧を構えたシュタルクが周囲を警戒。クラウは鉄球を操作し、二人の周りを緩やかに円を描くように動かし魔力を節約しつつ徐々に加速していく。

 

 

「鉄球のスピードは十分。魔物は隠れて警戒しているのか木陰に潜んでいますね。先手を打って一撃入れます」

「おう」

鉄球を操る魔法(ティエツダント)

 

 

 矢のような勢いで飛んでいく鉄球。それらは木々の間に飛び込むと、潜んでいたらしい魔物に容赦なく襲いかかる。

 

 

 ──ギャウッ!?

 ──ガァッ!

 ──ギェッ!

 

 

 鉄球が直撃した魔物のものだろう。いくつもの悲鳴のような鳴き声が遠くから響く。

 

 

「残りは八体です。一斉に向かってきます」

「よし来た。あんたには近付かせないからな」

「頼りにしてますね」

 

 

 森から飛び出してきたのはシュタルクの背丈を優に越える大きさの、灰色の毛並みの狼のような魔物だった。額には角が生えており、目が四つついている。

 

 

「……強そうだな。あと、この魔物の見た目、依頼にあった奴か」

「そうですね。街道に沿って移動していたのでしょうか。幸先が良いです」

「(カッコ悪いとこみせらんねえぞ)……よしっ」

「?」

 

 

 会話をしながらクラウは鉄球を引き戻し魔物達に向けて操っている。狙いは頭や胴体。魔物の中には素早い身のこなしで躱す個体も居たが、その数は多くない。

 

 

「ガアァァァ──ッア」

「うわぁ、当たった頭や腹が弾け飛んでる。やっぱり威力やべー」

 

 

 シュタルクはドン引きした。あの鉄球がもし人に当たったら……かつてアイゼンが「鍛えればこんな事も出来る」とデコピン一発で爆散した岩を思い出した。

 なお、シュタルクはまだ出来ない。グーパンならワンチャンあるかもしれないが。

 

 

「っと、後ろには行かせねえぞ」

 

 

 クラウの攻撃から逃れた魔物が一体、術者が脅威だと判断したのか左右に小刻みにステップを踏み加減速を織り交ぜながら接近してくる。

 

 シュタルクはその進路に立ち塞がると、邪魔するなとばかりに振るわれた爪の一撃をしゃがんで避け、低く構えた姿勢から逆袈裟の一閃を放つ。

 

 ──光天斬!!

 

 魔物は首から頭にかけてを深々と切り裂かれその命を終えた。

 塵に帰るそれを尻目にシュタルクは他の魔物へと意識を向ける。

 

 

「……やっぱり強い、ですね」

 

 

 それを見たクラウは目を細めて呟いた。

 

 

 

 

 

 追加で更に魔物の群れが現れたりと激戦の末に戦闘は終わった。

 

 

「ふぅ……周囲に反応は無し。これで終わり、でしょうか」

 

 

 魔力探知で反応が無いことを確認したクラウは構えを解き鉄球を収納する。

 

 

「お疲れさん、"クラウ"」

 

 

 シュタルクは笑顔で労いの言葉をかけた。すると、クラウは「へ? ふひゃいっ!?」と素っ頓狂な声を上げて肩が跳ねる。

 

 シュタルクは首を傾げた。

 

 

「? どした?」

「い、いえ、なんでも」

 

 

 シュタルクは鈍感(クソボケ)であった。

 

 

「あの、最後の方、思いっきり頭齧られてましたけどお怪我は……平気そうですね。なんでです???」

「分かんない……」

 

 

 戦士とは、そういうものだ。

 

 

 

 

 

 

 

「野宿を覚悟してましたけど、日が落ちる前にクノッヘンの鉱山町に着きましたね」

「通りかかった商隊に護衛するって言って乗せてもらえたからな。運が良かったよ」

 

 

 クノッヘン鉱山で働く労働者達の町。

 

 目的地へ予定よりスムーズに到着した二人は安堵し、最初よりも砕けた雰囲気で話しながら、依頼主である鉱山労働者組合の組合長がいるという建物へと向かう。

 

 

「ここか」

 

 

 そして組合の本部棟。受付で依頼を受けた冒険者であることを説明し、通された応接室のソファに二人並んで座っていると、ゴンゴンと強めのノックから間を置かずに人が入ってきた。

 

 

「おお!! アンタ達が依頼を受けてくれた冒険者か!! 随分と若いな!!」

 

 

 クゾデカボイスが部屋を震わせた。

 

 そして現れたのは筋肉モリモリなマッチョマン。顔の右半分には大きな傷痕が残り、無事な左側が笑顔なのにそちらは無表情というアンバランスさだった。

 

 

「ヒュッ」

「お、おいクラウ」

 

 

 肩を跳ねさせ息を呑んだクラウの脇腹をシュタルクがつつく。マッチョマンはその様子に頭を掻きながら苦笑した。

 

 

「ああ、怖がらせてしまってすまんな。昔、採掘中に事故に遭っちまって。それからこんな風になっちまったんだ」

「あ、いえ、こ、こちらこそ、すみません」

(顔よりも声に驚いてたろ今)

 

 

 ペコペコと頭を下げるクラウ。シュタルクはクラウがマッチョマン──組合長──のクソデカボイスに驚いていた事を見抜いていた。

 

 挨拶もそこそこに、依頼についての説明が始まる。

 

 

「鉱山に入り込んだのはデカいトカゲみたいな魔物だ。どうやら廃棄されて封鎖されてた坑道を強引に突破して、壁をぶち壊しながらこっちの記録に残ってないような古いルートを通って採掘中のエリアに現れた。幸い、死人は居ないが怪我人が何人か出ていてな。足止めに立ち向かった大馬鹿野郎が言うには、ツルハシやスコップでは刃が立たなかったらしい」

「ツルハシ……」

「スコップて……」

 

 

 無謀なのか勇敢なのか。二人は微妙な顔になる。

 

 

「それが大体半月前だ。で、町にいる冒険者に依頼を出して、その結果から改めて討伐依頼をオイサーストに送ったって訳だ」

「その冒険者ってのは……」

「ん? ああ、ボウズが思っているような事じゃないさ。魔物を確認して、自分達じゃ討伐には力不足だって調査だけして戻ってきたんだ。マッピングやらはちゃんとこなしてる。今は別の依頼で出てるけどな」

 

 

 シュタルクの疑問に組合長は手をひらひらと振って答える。

 それから地図の受け取りやスケジュールの確認などを済ませ、最後に滞在する場所の話になった。

 

 

「鉱山で働く連中の為の宿屋や貸家なんかは沢山あるからな。今空いてるのは……ここだな。依頼が終わるまでは自由に使ってくれていいぞ」

「ありがとうございます」

「あんがとな、おっさん」

「……まあ、四十代はおっさんだよな。そうだよな。わかってるよ……」

 

 

 自慢の筋肉がすこし萎れているように見えた。

 

 

 

 




読了謝謝茄子

そしてハッピーバースデー明々後日の私
作者ページとかTwitterに干し芋リスト貼ってるから恵んで(強欲)
Skebの依頼でもいいよ(傲慢)

一年経つ前に完結させたかったなあ(小声)

明日は午前8時03分に後編投稿するンゴ

感想評価お気に入りここすき宜しくやで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。