【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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連載開始1周年&誕生日記念閑話(フライング)の後編です
昨日も投稿してます


閑話 クラウちゃんのほのぼのくえすと《後編》

勇者ヒンメルの

死から二九年後

キュール地方

鉱山町クノッヘン

 

 

 

 

 夕食は町中の食堂で摂ることにした。

 組合長から是非にと食券と町中の地図を別れ際に渡されたからだ。

 

 地図を見ながら木造の街並みを歩いて辿り着いた平屋の建物。扉を開け中に入ると、過酷な肉体労働で鍛え上げられた身体を持つマッチョマン達が各々食事や酒肴を楽しみ、喧騒に包まれていた。

 しかし、その空気は閉塞し、淀んでいるように二人は感じた。

 

 

「まだ八番坑道には入れないのか」「近くの六と七もだよ」「俺のとこは大丈夫だけどこれからどうだかなあ」「身体がなまっちまう」「クソッタレの魔物共め」「うちの嫁さんの目が日に日に冷たく……」「羨ましい」「こんなとこで酒飲んでるからだろうよ」「おい今の変態誰だ」

 

 

 赤ら顔でする会話の内容も、聞こえる限りでは魔物に関する不安や不満が多い(一部除く)。

 

 

「責任重大、だな」

「そうですね」

 

 

 席につくと給仕の店員がやってきたので食券を渡す。飲み物はお互いにジュースを頼んだ。

 まずジョッキに入れられた飲み物とサラダが届く。何となく二人共「乾杯」と言ってジョッキを掲げた。

 

 

「その、シュタルクさん。一つ、訊ねてもいいですか?」

「ん? どうした?」

 

 

 フォークでサラダをモキュモキュと食べていたクラウが手を止め、シュタルクの方を向いて口を開いた。前髪の隙間からかすかに覗く瞳はルビーのように赤い。

 

 

「街道で魔物と戦う前、手が震えてるのが見えました。戦いが、怖いんですよね……?」

 

 

 シュタルクは内心(しまった)と思った。

 

 自分がビビリでヘタレな事はフリーレンにもフェルンにもバレているので今更さほど気にしないが、臨時パーティーを組んだ仲間にそれを悟られるのは気まずい。

 しかし、誤魔化しはきかないだろうな、と悟る。そういう雰囲気がクラウにはあった。

 

 

「……ああ。怖いよ。カッコ悪いよな」

 

 

 故に、シュタルクは苦笑しながら頷いた。

 対多数の戦い。普段とは異なる仲間。自分よりも大きな魔物。鋭い爪や牙。突き刺すような殺気。それらはシュタルクを恐怖させるには十分だった。

 

 対して、クラウは慌てたように腰を微かに浮かせて身を乗り出す。

 

 

「い、いえ! 姉弟子が言っていました。“恐怖を知り、臆しても尚立ち向かう勇敢な戦士が一番強い“って。私もそう思いますっ」

「……そっか。ありがとな、クラウ」

「だ、だから、その……私はシュタルクさんの事、信頼してます。頼もしいです」

「ははっ。なら、その信頼に応えなきゃな」

 

 

 会話が途切れ、心地よい沈黙が二人の間を流れる。暫くすると、残りの料理が運ばれてきた。

 スライスされたパンにチーズ。ソーセージ。ピクルスに野菜スープという内容だ。味は全体的に塩っ気が強い。肉体労働者向けの食事だからだろう。

 

 黙々と食べる二人。シュタルクの方がペースが早く、クラウが残り半分という所で既に完食し、ジュースをちびちびと飲んでいた。

 そんなシュタルクに、口の中のパンを飲み込んだクラウが話しかける。

 

 

「シュタルクさんは、どうして戦士になったんですか?」

「どうして、か」

「その、さっき"怖い"って仰っていて、なら、なんでかなって」

 

 

 その雰囲気はこれまでとは少し異なるものだった。人見知りのキョドりとも、戦闘時の落ち着きとも違う、静かで、でも何かに迷うようなそれ。

 

 

「その赤髪。南の方の戦士の一族の出身、なんですよね? なら、“そうあれ“と望まれて生まれ、育てられたから、ですか?」

 

 

 知ってたのか、とシュタルクは内心驚いた。だが、不審等とは思わなかった。ここに来る途中で同郷の貴族の影武者をやる事になったりしたのだ。故郷の村は既に滅びたが、そういう風に各地に散っているのかも知れない。

 

 

「……そうだな」

 

 

 ジョッキを置いてシュタルクは天井を眺め、記憶を掘り返しながら思考をまとめる。

 

 

「最初は、そうだったと思う。戦士の村に生まれて、そのまま戦士を目指して毎日を過ごしてた。まあ、兄貴や親父、周りへの憧れとかもあったけどさ」

 

 

 それが変わったのは、あの日。

 燃える家々。嗤う魔族。立ち向かう兄を始めとした戦士達。

 

 

「村が魔族に襲われて、俺だけ逃がされて、見逃されて、逃げ出して……」

 

 

 あの時のシュタルクは戦士ではなかった。ただの弱く臆病な子供だった。

 逃げて、逃げて、ただ只管に逃げた。「生きろ」という兄の言葉に衝き動かされるように。

 

 そして戦士アイゼンに拾われ、教えを受けた。

 喧嘩別れとなり、ある村に行き着き、そこで鍍金の英雄になった。

 

 その三年後。真の英雄になった。

 

 未だ恐怖はある。この先、旅を続けてもそれはずっと変わらないだろう。

 

 だが、今のシュタルクには"覚悟"がある。

 鍍金ではない。黄金のような覚悟が。

 

 

「今はフリーレンとフェルンを、あとザインって奴もいたんだけど、あいつらを守って、一緒に戦って、旅をしたい。だから仲間を、戦士をやってるよ」

 

 

 シュタルクはジュースをちびりと飲むとクラウに笑いかけた。

 

 

「クラウはどうなんだ?」

 

 

 その問い掛けに、赤い瞳がどのようになっていたのかは前髪に遮られて分からない。

 

 

「……よく、分かりません」

「そっか。なら、いつか分かるといいな」

「そう、ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。クラウとシュタルクは問題の坑道へと足を運んだ。

 

 

「デカいトカゲみたいな魔物なあ。鉱夫の振るうツルハシ、点の攻撃が通らなかったって事は、斬撃はあまり効かなさそうだよなあ」

 

 

 先の冒険者達が残した調査資料に改めて目を通し、会話しながらの移動。絵心のあるメンバーがいたようで、簡素なスケッチも提供されていた。

 

 

「シュタルクさんの斧なら、腹部や関節の裏など柔い部分を斬り裂いてもいいですし、鱗や甲殻の上から力で叩き潰すのも有効だと思いますよ?」

「そ、そうか? まあ、やってみるよ」

 

 

 信頼に溢れたクラウの言葉に、シュタルクは少し照れながら斧を担ぎ直した。

 

 

「……ううん、想像以上に坑道が狭いです。あまりスピードを出すと壁に当たって崩落が起きるかも。そうなると魔物相手に有効打になるかどうか……すみません、私は牽制が精一杯かもです」

 

 

 クラウは坑道の広さを確認して少し肩を落とす。前回の街道での戦いではほとんどの戦果がクラウによるものだったので、今回はと思いシュタルクはニカッと笑ってみせた。

 

 

「了解。俺に任せてくれよ。あ、援護は頼むぜ?」

「はいっ。お任せください」

 

 

 そして坑道を進むと、クラウが「あれ?」と小さく声を上げた。

 

 

「どうした?」

「……この先、魔力探知の反応が複数密集してます。一〇は下らないかと」

「なんか、多くない? 一匹の筈じゃ」

「仲間を呼んで群れるタイプの魔物だった、という事なんでしょう。前回の調査から時間が空いてますし……シュタルクさんは目の前の一体に集中して倒していって下さい。他は私が邪魔してこないよう牽制します」

「おう! 頼んだぜ! クラウ!」

 

 

 

 

 トカゲ型の魔物との戦闘は、クラウが威力控えめな鉄球で群れを分断させつつ、シュタルクが一体一体を確実に仕留めるという方法でどうにか終わった。

 

 最後、破れかぶれになった魔物の突進をシュタルクが受け、そのまま坑道の壁に激突。崩壊するというトラブルもあったが。

 

 

「ふぅ、どうにか片付いたな」

「その……魔物と一緒に落盤に巻き込まれたのに何でシュタルクさんだけ無事なんです???」

「分かんない……」

 

 

 戦士とはそういう(ry

 

 

「ん? これって……」

 

 

 シュタルクが瓦礫の山から抜け出すと、斧に引っかかっていたのか赤い結晶がころりと転がり落ちた。

 拾い上げ、魔道具の照明にかざしてみると光を受けキラキラと輝いている。

 

 

「あっ、依頼にあった紅魔水晶ですよ! ちょうど鉱脈があったんですねっ」

「これはオイサーストに持ち帰るんだっけか」

「はい。材料の不足を補う為の依頼なので」

「よし、なら暫くこの辺りを掘り返してみるか」

「崩落には気をつけてくださいよ?」

 

 

 

 

 

 必要数以上の紅魔水晶を手に入れ、魔物討伐の報告とその確認を済ませ依頼を達成した二人は、休むまもなく近郊のムント村に赴き、そこで畑を荒らす赤角鹿という害獣の討伐を行った。

 その後は壊された柵の修理や荷物の運搬など、余った時間でいくつかの依頼を二人でこなし、空き家を借り一泊した際にはクラウが夕食を用意した。

 赤角鹿の肉のローストという手の込んだモノで、柔らかくジューシーで非常に美味だった。

 

 

(いい嫁さんになりそうだな……)

 

 

 エプロン姿のクラウにシュタルクはふと思った。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえフェルン、なんで私三つ編みにされてるの?」

「何となくです」ムスー

 

 

 

 

 

 

 

 どこかでそんな一幕があった事もつゆ知らず、夜が明けると同時に二人は村を発った。

 

 

「そういや、こないだ姉弟子がいるって話してたけどどんな人なんだ?」

 

 

 道中、ふと、これまでの会話で何度か出てきた"姉弟子"というワードを思い出したシュタルクは隣を歩くクラウに訊ねた。

 

 

「えっと……いい人、だと思いますよ? ちょっといじわるな所と、探究心と好奇心が高すぎるところがあるのが玉に瑕ですけど」

 

 

 シュタルクの知らないタイプの人物像に、上手く想像が出来ず首を傾げる。

 

 

「よくわかんないけど、なんか一癖ありそうだなあ」

「あはは……でも、姉弟子は師匠のことが本当に大好きで、お二人の事を見てると自分も胸がこう、ポカポカしてきて……」

「……そっか。クラウも、その二人の事が好きなんだな」

「──はい、そうですね。好きです。好きなんです。師匠達も、皆も」

 

 

 

 

 行きは商隊に同乗させて貰い時間短縮が出来たが、帰りは魔物や野盗によって足止めを食らったりと時間がかかり、野営をして一晩過ごすことになった。

 

 

「シュタルクさん達はどうして旅を?」

 

 

 夕食を終え、パチパチと薪が爆ぜる音の中、クラウが訊ねる。

 

 

「ん? ああ、いくつか目的があるんだよ」

「目的?」

「そうそう。一つは大陸の最北端にあるっている魂の眠る地に行くこと」

「魂の眠る地?」

「なんでも、死者の魂と対話できる天国みたいな場所らしいぜ」

「そんな場所が……」

「んで、もう一つがナーリンっていう大魔族の討伐」

「──へ? そ、それって狡智の大魔ですか?」

「そ。俺の仲間、フリーレンが一杯食わされた相手らしいぜ。何でも、魔族が間接的に人間を支配する町を作ろうとしてたとか」

「へ、へぇ〜……」

「ぞっとしない話だよな」

 

 

 クラウの引き攣った口元に、それもそうかと納得するシュタルク。

 

 

「で、俺個人としてはこの旅を楽しんで、その土産話を師匠にたっぷりもって帰る事、だな」

「……いい、目的ですね。私がその師匠だったらきっと嬉しくて泣いちゃいますよ」

「そ、そうかな? あの師匠が泣くところとか想像できないけど」

 

 

 照れ笑いを浮かべるシュタルク。

 

 

「さてと、そろそろ寝るか。見張りは俺が先にやるからクラウは寝てていいぞ」

 

 

 提案すると、クラウはフルフルと首を横に振り、おもむろに分厚い本を取り出した。物語か魔導書だろう。

 

 

「いえ。私、寝付くのが昔から遅いんです。なのでシュタルクさんが先に寝て下さい」

「そうか? ……分かった。何かあったら呼んでくれよ? 遠慮とかすんなよ? ちゃんと交代しろよ?」

「ふふっ、はい。おやすみなさい」

「おう。おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 翌日。二人はオイサーストに帰ってきた。

 

 

「予定通り、オイサーストに戻れたな」

「ありがとうございました。お陰様で、後顧の憂い無く一級試験に挑めそうです」

「おう! あ、クラウの魔法の事とかは仲間にも言わないから安心してくれよ? もし試験が対人戦だった時にフェアじゃないからな」

「え? ……ふふっ。本当に、いい人ですね、シュタルクさんって」

「そ、そうか?」

「ええ」

 

 

 クラウは柔らかい笑みを浮かべ、髪の隙間から見えた笑顔にシュタルクは頬をかいた。

 

 

 

 

 

「はい、確かに依頼達成を確認しました。こちらが報酬となります」

 

 

 大陸魔法協会北部支部。その受付で依頼の達成報告の手続きを済ませた二人の所に近づいてくる人影があった。

 

 

「シュタルク様、お戻りになったんですね」

「おかえりシュタルク。その子が例の?」

 

 

 フェルンとフリーレン。シュタルクの仲間であり、今回の一級試験を受ける魔法使い。クラウからすればライバルになる。

 

 

「ああ。一緒に依頼をこなしたクラウだ。面白い魔法を使うし、結構やるんだぜ? クラウ、このエルフがフリーレンで、こっちがフェルンだ」

「よ、よよよよろしくおねひゃいひみゃす!」

「落ち着けって、別に取って食われたりしないよ」

 

 

 シュタルク相手には慣れたようだが他はまだ駄目らしい。ぐるぐる目になってそうなクラウを連れて、四人は支部の広間にある談話スペースに移動する。

 

 

「大丈夫か? クラウ」

「え、ええ。どうにか。あっ! こ、これ! 報酬金の分け前と、私からの報酬の魔道具です」

「お、おう。ありが「魔道具!!」おいフリーレン」

 

 

 硬貨が詰まっている革袋と壺のような魔道具。両方をテーブルの上に差し出すと、早速フリーレンが魔道具に飛びついた。

 

 

「見た目は素焼きの壺……装飾はシンプルな模様の彫刻だけ。これ、何の魔法が使えるの?」

「え、えっと、『生枝を乾燥させる魔法』です。生枝を入れて暫く待てば焚き木に適した状態になります」

「初めて聞く魔法だね。どこかの民間魔法なのかな」

「旅に出るときに師匠から渡された物なのですけど、そこまでは……すみません」

「クラウ様」

「ひゃいっ!?」

「いいのですか? かなり便利で貴重な品かと思いますが」

 

 

 フェルンは真剣な表情で問い掛けた。旅の中、焚き木の確保は特に雨の後などは苦労することが多かった。その手間を軽減できる、非常に価値のあるモノだった。

 

 

「フェルンさん……はい、いいんです。一級試験が終わったら一度地元に帰る予定でしたし、皆さんはこれから旅を続けられるんですよね? シュタルクさんから聞きました。その助けになってくれれば本望です」

「──ありがとうございます。クラウさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? その魔道具を売れば結構な金額になったんじゃ。それこそ今回の報酬金くらいなら余裕で……あっ……」

「…………」「…………」「…………」

 

 

 フリーレンの一言で空気が凍った。

 

 

「フリーレン様」「フリーレン」

「……」ギュッ

 

 

 結局、その件はクラウが「や、約束を破るわけにはいきません!」と顔を真っ赤にしながら魔道具を押し付け、風のようにその場を後にしたことで話は流れた。

 

 

「いいのかなあ……」「いいのでしょうか……」

「うひょー。早速外に出て使ってみよう」

 

 

 鼻歌交じりにスキップしながら移動するフリーレンを、シュタルクとフェルンは微妙な表情で追い掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや? クラウじゃないか。最近姿を見なかったけれど、試験に向けて外で修行でもしていたのか?」

「ゼンゼさん……その、滞在費と旅費が足りなくなって急遽依頼をこなして資金調達を……調達を……あはは……」

「……ああ、ここの所かなり物価が上がっているからね。断頭台のアウラが討伐されて以降、人や物の流れが活発化、景気は良くなったけれど需要と供給のバランスが崩れている。困ったものだよ」

「……顔色があまり良くありませんけど……ちゃんと寝てます? ご飯食べてます?」

「……ノーコメントだ」

「もう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あははっ。ゼンゼさんにユーベルさん、強いですよね。私に勝ち目なんて無いです」

「そうだね。だから諦めてさっさと死んでくれないか」

 

 

 

 

 

 

 

「本来なら、ですが」

 

 





Why were you born?
How are you going to live your life?


読了謝謝茄子

次の掲示板回は26日0時03分に投稿するンゴ

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