【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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オマタセシマシタ

完結まで書き溜めてから投稿しようと言っていましたが、どうにも途中で詰まったので同志諸君からの声を受けてのノリと勢いで執筆する方針に切り替えました

黄金郷、(たぶん)後半、始まります




愉快な遠足の始まりだ!

 

 

 

「結界の中では何が起こっているのやら……魔族(化け物)同士、殺し合ってくれていれば良いのだけどね」

「まったくじゃな」

 

 

 街道をゆく避難民の一団、その最後尾。一級魔法使いのゼンゼは殿を務める老魔法使いデンケンと言葉を交わす。

 

 狡知の大魔ナーリンと微笑みの魔女ソリテール。二人の大魔族の予期せぬ出現によって、彼らは避難を余儀なくされた。

 行く先は帝国領、その国境。いくら大陸魔法協会と帝国の仲が険悪だとしても、軍属からの叩き上げでありながら宮廷魔法使いという地位まで上り詰めたデンケンの影響力は未だ大きい。

 

 避難民達は問題なく検問を抜け、魔王軍全盛の時代ですらその脅威をはねのけ続けた国防結界と魔導特務隊による庇護を受けられるだろう。

 

 間に合えば、だが。

 

 

「それで、状況はどうかな。デンケン」

「見ての通り、今のところ避難自体に大きな問題は無い。だが、魔族どもが仕掛けてくれば……すぐ追い付かれるだろうな」

 

 

 集落には老人も多かった。足腰が悪い者は馬車に乗せるなどして対応しているが、それでも全体の速度は遅くならざるをえない。

 

 追い付かれればどうなるのか。ヴァイゼの広場に飾り立てられた不愉快なオブジェが脳裏に浮かぶ。

 

 

「オイサーストへの連絡はどうだ?」

「使い魔を飛ばしたよ。もっとも、ここからオイサーストまでの距離を考えると届くには半日はかかるし、届いて、援軍なりが来る頃には決着がついてるだろうね」

「そうか」

 

 

 デンケンは足を止めずに振り向いた。地平線の向こうに見える、城塞都市ヴァイゼを覆う大結界。

 恐らく、数ヶ月前から近郊に潜伏していたナーリンとソリテールによって解析されたそれは、何事もなかったかのようにそこにある。

 

 

「何故、儂はまだ生きているんだろうな」

「どうしたんだい急に。悲観主義にでも目覚めたのかい?」

「そうではない。黄金郷に一人で出入りする儂を、結界を解析していた奴らが捕捉していなかった事はあり得ないだろう? 老いさらばえた魔法使い程度、殺す事は容易かった筈だ」

「前にマハトが答えていただろう。理由があれば殺さない事もあるとね」

「理由か」

 

 

 二人の大魔族は、マハトと接触することを最優先で行動していたのだろうとデンケンは予想する。

 

 大結界の解析──黄金郷に侵入するには必要なことだ。

 

 デンケン達を殺さなかった──異変を察知され大陸魔法協会等の介入で状況が変わる事を嫌がったのだろう。

 

 このタイミングで魔力隠蔽を解いたのは何故か──集落の住民やフリーレンの安全の為に避難と護衛をせざるを得ない。自分達を遠ざける事が出来る。

 

 

(一つ一つの行動には理屈がある。だが、最終的な目的が見えてこない)

 

 

 マハトを始末する為? ──避難を始める際のユーベルが言っていたように、手っ取り早く破壊するのではなく手間を掛けてまで結界を維持しているという事は、ナーリン達はマハトを外に出したくないと考えている。両者は敵対関係か、少なくとも友好的ではない。だが、タイミングがおかしい。自分達が戦ったあとに漁夫の利を狙う方が合理的だ。

 

 七崩賢最強の大魔族を配下に加える為? ──可能性はある。しかし、マハトは“目立つ”。

 魔族としての習性、そして使う魔法(ディーアゴルゼ)とそれによって齎される結果、痕跡が。

 ナーリンは統一王朝滅亡後の約千年、勇者ヒンメル一行と遭遇してからの約八〇年。無名であり続けた。臆病で慎重で狡猾。それが狡智の大魔だ。

 

 勇者ヒンメル一行(全知のシュラハト)による偶然(必然)が無ければ、今も何処かで潜伏し暗躍し続けていただろうかの大魔族が、今更戦力欲しさに表舞台に姿を現したとは考えにくい。

 

 救出すること自体が目的で、配下にするつもりが無い? ──マハトという脅威が解き放たれればこの周辺にもたらす混乱と影響は大きいだろう。だが、今度こそマハトはゼーリエに始末される事になる。即座に。呆気なく。それがナーリンに分からないハズがない。

 

 

(それに、何故こんなに時間がかかっている?)

 

 

 デンケンの中で疑問が大きくなっていく。

 

 あの魔力量。間違いなくマハトよりも格上。加えてナーリンはマハトに対して相性が良いと予想される精神魔法の使い手らしい。交渉等という迂遠な手段を用いずとも、マハトを従わせることは容易いだろう。

 

 魔王軍。そして、それを率いた“魔王”のように。

 

 それなのに、大魔族達は黄金郷から未だ動かない。不気味な程に避難はスムーズに進んでいる。

 

 

(マハトと接触して何を得ようとしている。何を企んでいる)

 

 

 デンケンは無自覚に杖の柄を握る手に力を込める。

 

 まさか、かの狡智の大魔が、好奇心旺盛な妹分のワガママに内心溜息をつき、懐古に浸り、勘違いに振り回されながらも付き合っているのだとはデンケンも誰も思いはしない。そんな習性は魔族に無い筈なのだから。

 

 


 

 

「あーあ、つまんないなあ」

 

 

 ユーベルは頭の後ろで手を組みながら退屈そうに呟いた。その呟きを傍で聞いていたのは、解析にリソースを全て注ぎ込んだ結果、意識を失ったフリーレンが乗る馬車を護衛するシュタルクとフェルン。彼らの視線がユーベルに向かう。

 

 

「つまんないって……ユーベルお前、あの連中相手に戦うつもりかよ」

「シュタルクは本当にビビりだよねえ。もう少し自信を持ってもいいと思うんだけど」

「うっせ」

 

 

 薄ら笑いを浮かべながら話すユーベル。貶しているのか褒めているのか微妙なその言葉にシュタルクは唇を尖らせる。

 

 

「……ユーベル様は、あの大魔族達に『勝つイメージ』が出来るのですか? 七崩賢最強の黄金郷に加えて、それと同格以上である狡智の大魔と微笑みの魔女。それらを、今の戦力だけで」

 

 

 ゼーリエの魔力制限を看破出来るほどに魔力探知に優れるフェルンはナーリンとソリテールが放った魔力を正確に感じ取っていた。

 ソリテールの魔力量は制限を解除した全力のフリーレンに匹敵し、ナーリンはそれを凌駕している。

 

 魔力量で勝敗が決まる訳ではない事は知っているが、基礎的な能力の差が大きすぎると感じていた。魔法自体の造詣も相手のほうが深いだろうとも。

 

 フェルンは己の手の中にある杖をじっと見つめる。

 思い出すのは、いつかの夜に交わしたフリーレンとの会話。

 

『──そして、狡智の大魔ナーリン、微笑みの魔女ソリテール。今、人類に知られている大魔族はこれで全部かな』

 

『フェルンは確かに優秀な魔法使いだ。だけど、大魔族と戦おうなんて考えたら駄目だよ。こいつらと渡り合えるのは……早くて四半世紀は先だ』

 

 師であるフリーレンは以前そう言った。その見立ては間違い無いだろう。それなのに、今はフリーレンを欠いた状態で、複数の大魔族達の襲撃に備えなければならない。

 シュタルクやフリーレン、デンケン達に避難民、彼らが血の海に沈む光景が脳裏をよぎる。

 自然と視線が険しくなり、冷や汗が滲み頬を伝った。

 そんなフェルンの事をシュタルクが心配そうに、ユーベルは面白そうな目で見ていた。

 

 

「フェルンも焦る事があるんだね。零落の王墓ではフリーレンを殺せると平然と言い放った君が。ふふっ、やっぱり頼りになるお師匠様が行動不能な現状は不安にもなるよね。フェルンのことがまた一つ知れて嬉しいな」

「……そうでございますか」

「あら、ご機嫌斜めだ。ごめんね? それで、勝つイメージ……だっけ? んー、ちょっと違うかな」

 

 

 顎に人差し指をあて、視線が空を向く。

 

 

「連中はさ、私よりずーっと永く生きていて、魔力も魔法も凄いんだろうね。知恵も回るだろうし、私がどこか勝っている所を探す方が難しい。でもさ、生きてるなら死ぬし、死ぬなら殺せるでしょ?」

 

 

 ユーベルは片手でくるりと杖を回し、構えた杖にツーっと指を滑らせる。

 

 

「私の魔法(レイルザイデン)に斬れないものは、まあ結構あるけどさ」

「あるのかよ」

 

 シュタルクの呆れ混じりのツッコミに、ユーベルは愉快そうに口角を持ち上げる。

 その魔法の原点は“姉が鋏で布を裂く姿“。

 防御魔法に金属等と、斬れないイメージを抱いているモノはそれなりにある。

 

 だが。

 

 

「でもね、大魔族は斬れるよ」

 

 

 大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)

 

 杖を振るう。風に煽られ舞い落ちた葉が、二つに別れてはらりと落ちる。

 

 

「こう、スパッとね」

 

 

 

 


 

 

 

「──ユーベル。格好つけて魔法を使うんじゃない。こんな状況で、紛らわしい」

「はぁい。反省してまーす」

「……はぁ」

 

 

 魔法の発動を感じ、すわ襲撃かと即座に様子を見に来たゼンゼだが、何事もない様子に首を傾げ、フェルン達から一部始終を聞いてユーベルに注意し、そしてため息混じりに肩を落とした。

 

 

「あの、ゼンゼ様。少し休まれては……」

 

 

 気を遣ったフェルンが申し出るが、ゼンゼは首を横に振る。

 

 

「ありがとう。だけど大丈夫だよ。これはそこの問題児(ユーベル)への気疲れだからね」

「その……悪い方では、無いのですが」

「良い人でも無いだろう」

「流石の私も傷つくよ?」

 

 

 程よく弛緩した空気の中、人馬達はのろのろと街道を進む。

 

 

「そういやさ」

 

 

 シュタルクがふと目線を背後に向けて言う。

 

 

「今結界の中にいるナーリンって、本体なのか? 分身なのか? ……すげえ魔力を感じたって事は本体か?」

「どうでしょう。ヴォーボの分身はフリーレン様が策を弄して封印を選ぶ……選ばざるを得なかった程と聞いています」

 

 

 フェルンが記憶を思い返しながら答えた。魔族を欺いて滅ぼしてきたフリーレンが欺かれたというあの出来事、小さな背中から放たれる激情はハッキリと覚えている。

 

 

「ゼーリエの逆探知も妨害されたんでしょ? 軽く見積もってもメガネ君以上の分身魔法の使い手なんだし、今頃どこかでお茶でもしてるんじゃないかな」

「……そのメガネ君って誰だ?」

「ラント一級魔法使い。一級試験を分身を使って遠方の故郷から遠隔で受験した変わり者さ」

「ヤベえやつだな……」

「興味深い人だよ。また会いたいなあ」

 

 

 いかにも楽しみと言いたげにユーベルの瞳が細められる。

 

 シュタルクはそれが舌なめずりをする肉食獣に見え、少し引いた。

 

 

 

 


 

 

 

 

「大結界の制御を掌握。範囲拡大……さて、フリーレン達は何処まで逃げたのかしら」

 

 

 

 


 

 

 

 

「!! ──ゼンゼ様」

「……ああ」

「お、やっとか」

 

 

 魔力探知の異常な反応に、フェルンとゼンゼ、ユーベルは戦闘態勢をとって後方を向いた。

 一拍遅れてシュタルクも斧を構え、目を見開く。

 

 

「……なあ、フェルン。結界がデカくなってないか?」

「魔力探知でも同様です。見間違いでは無さそうですね」

「大結界を利用して檻にするつもりか、意趣返し? 小賢しい真似を。誰かがフリーレンを連れて離脱……は悪手だ。分断からの撃破が待っているだろう」

「フリーレン以外にもお爺ちゃんお婆ちゃん達だっているし、私達だけ逃げるって訳にもいかないしね。迎え撃つしかないんじゃない?」

「……そうだね」

 

 

 ゼンゼは普段の無表情を歪め歯を噛み締めた。

 

 

「来るよ、化け物共が」

 

 

 

 


 

 

 

 

「──捉えた。おや、これはまた随分離れている……長話をしすぎたわね。お姉様、お願いできる?」

「ああ。……術式の識別機構を改変。解析に対しての速成防壁を構築。こんなものだろう」

「ありがとう。さて、どうなるかしら」

 

 

 

 


 

 

 

 

(面倒事ばかり起こす連中だ)

 

 

 魔法の発動と結界の変化を感知したマハトは、その発生源にやって来た。

 ヴァイゼの城壁の外、黄金の街道の真ん中で二人の大魔族がマハトの方を向いている。

 疑問、呆れ、怒り、困惑。様々な感情が薄っすらとマハトの心を満たしていた。

 

 

「帰ったと思ったら、どういうつもりだ。ナーリン、ソリテール」

「さっきぶりね、マハト。手を貸そうと思ったの。余計なお世話かもしれないけどね」

「……何を企んでいる」

「企んでいるなんて酷い言い草。傷付いちゃうわ。心がね」

 

 

 とても傷付いているとは思えない、人当たりの良さそうな笑みをソリテールは浮かべている。

 それを無視してマハトは一瞬ナーリンに視線を向けた。

 ナーリンは会話に口出しする気はないのか、無表情でジッと二人のやり取りを眺めている。

 

 

(厄介な奴だ。ソリテールだけならどうとでも出来るのにな)

 

 

 魔力量も魔法の相性も相手が上回る現状に、マハトの変化に乏しい表情が微かに険しくなる。

 

 

「先程は話をしに来た、等と言っていたが、俺を殺せるか確認しに来たんだろう? お前達は人魔共存に否定的だからな。そして、殺せると確信した。違うか?」

「そうね。殺せるわ。私一人では無理だけれど、お姉様と一緒ならね」

「結界を破壊するのではなく拡張してデンケン様達を取り込んだな。出入りできないよう改変も加えたか? 人類を始末した後、俺をここから出すつもりは無いと?」

「まさか。人類の叡智の結晶と言える素晴らしい結界だったから、舞台として有効活用しただけよ?」

「どうだかな」

 

 

 ソリテールの答え、そして二人の行動。

 あの結界はマハト自身ではどうにもできなかった代物だ。人類の叡智の結晶という表現は正しい。

 

 それを解析し、対抗魔法を開発し、檻として利用する。

 

 デンケン達人類、そしてマハトに対しての意趣返し。"自分達は魔法使いとして格上だ"という魔族らしいアピールなのだろう。

 

 

「さっきまで色々と話してね、気が変わったのよ。(魔族)と人類、それぞれの可能性を見てみたいと思った」

「悪趣味だな。観客気取りか」

「いいえ、それは違うわ。私は観客じゃなくて研究者。だから、ちゃんと実験場(舞台)にも上がるわよ? 今回は観るだけじゃなく、お話(実験)も必要そうだもの」

「……癪に障る目だ。この俺を実験動物扱いか」

「目は口ほどに物を言うらしいわよ」

「確かに、そうみたいだな」

 

 

 同格の大魔族を籠の中の虫程度にしか見ていない、観察者の瞳をソリテールはしていた。

 

 

「さて、マハト。君はデンケンと決着をつけてくるといいよ。他の戦力は私とクラウちゃんで引き付けてあげる」

 

 

 ソリテールがそう言うと、ナーリンの背後から人影が現れる。目元まで白い髪で隠れ、隙間から覗く赤い瞳。身軽そうな装備に身を包んだ少女。

 

 

「それは分身か? だが、魔力を感じない……魔力隠蔽に特化しているのか。帝国に似たような事をする連中がいたな」

「影なる戦士の事かしら? 興味深い組織……組織なのかしら、今のアレは」

「知らん」

 

 

 マハトは半世紀以上前からヴァイゼに封印されている。今の帝国の情勢など知るはずもなかった。

 

 

「……それで、ナーリンは呑気に観戦か?」

「ええ。だから、隙をついて私達を黄金に変えようとしても無駄よ?」

「成る程。用心深いな」

 

 

 もしナーリンが戦い、何かしらの要因で精神魔法が途切れるような事があれば、マハトは即座にナーリンを黄金に変えた後にソリテールを脅して結界を破壊させるつもりだった。

 

 

(デンケン様は私を迎え撃とうとするだろう。人類がナーリンに辿り着けるかは……難しいだろうな)

 

 

 戦況を予想しマハトは内心で嘆息する。

 情に訴えて共闘を申し出ても却下されるだろう。そういう優秀な魔法使いに育てたのはマハト自身なのだから。

 

 

「話は済んだかな、ソリテール、マハト」

「ええ」「……ああ」

 

 

 沈黙していたナーリンが口を開いた。

 

 

「さて、急拵えで申し訳ないが舞台は整った。各々、好きにするといい」

 

 

 腕を掲げ、振るう。まるで指揮者のように。

 

 

「魔族らしく、な」

 

 

 

 

 




読了謝謝茄子!

出来れば連載開始時くらいのノリと勢いで書いていきたい(願望)

感想妄想評価お気に入りここすき宜しくやで〜
幻覚考察とかも! それらが燃料になってワイの筆を月までブッ飛ばす筈!!

P.S.
K-00ta.wa氏よりナーリンのファンアートを頂きました! ありがとナス!(Twitterでは紹介したけどこっちに載せるの忘れてましたごめんなさい何でもしまむら!!)

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