【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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サブタイトルのネタに悩むこの頃

さあドンドン行こう
前哨戦の始まりや




イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 

「どう? 楽しかったかしら?」

 

「クラウちゃんとのお友達ごっこは」

 

 

 微笑みと共に言い放ったソリテールに対して、ゼンゼの顔からは一切の感情がストンと抜け落ちた。

 

 否。

 

 その瞳だけ、確かな"意志"があった。

 

 "殺意"が。

 

 

「殺すよ。魔族(化け物)

 

 

 ゼンゼは沸き立つような殺意の迸るままに幾本もの髪をドリルのように束ねたものを複数、ソリテールの全身を全方位から串刺しにするよう差し向けた。

 

 

「あら、吠えるわね。可愛らしい」

 

 

 だが、それらは甲高い不快な音とともに防がれる。

 ソリテールは自身の命を抉り取ろうと迫る攻撃全てに対して、手の平程度の面積の防御魔法を複数枚重ねて展開していた。

 

 

「手数も重さも兼ね備えたいい攻撃ね。十数万本の毛髪に対してのイメージとコントロール。魔族でもなかなかお目にかかれない高度な魔法だわ」

 

 

 ギャリギャリと接触面が音を立てる。しかし、ソリテールは悠然とした姿勢を崩さない。

 

 

「防御魔法の多重展開。それを自身に迫る複数の攻撃に対してピンポイントに、か。膨大な魔力と迅速かつ精密な魔力操作技術、そして高い空間把握能力。面倒な」

 

 

 ゼンゼはさらに魔力を込める。ピシッ、ピシッと防御魔法にヒビが入り、割れ、2層、3層と突破していく。

 

 

「……やっぱり防御魔法は物理的な攻撃に対して脆弱ね。魔法に同調し威力を分散させる。対人を殺す魔法(ゾルトラーク)として開発された故のこの仕組みはとても素晴らしいし、それから発展を続けて今の術式がバランス良く纏まっているのは評価できるのだけれど」

 

 

 ソリテールは防御魔法を補強しつつ瞬間的に拡大してゼンゼの髪を押し返し、作り上げた隙間から後方に飛んで回避。同時に数十本の剣を空中に生み出し、それらをゼンゼ達に向けて射出する。

 

 対してゼンゼは髪が勢い余って地面を砕くような隙は晒さず、そのまま髪を振るって直撃コースにある剣を全て粉砕した。ユーベルも軽い身のこなしで回避し、一部は杖で打ち払う。

 

 

「遠近、攻防共に隙の無い良い魔法。言葉通り"髪は女の武器"かしら」

「いちいち五月蝿いよ、お前」

「ソリテールはお喋りが好きなんだね。どう? ゼンゼさんだけじゃなく、私ともちょっとお話していかない?」

 

 

 先の攻防が大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)の射程外かつ、迂闊に踏み込めば同士討ちになりかねないと手出しをしなかったユーベルが杖を構え立ち位置を調整しながら茶々を入れる。

 

 

「お誘い頂けて嬉しいわユーベル。でも、そうね。貴女とはあまり楽しいお話は出来なさそうだから、遠慮しておこうかしら」

「傷つくなー」

「ごめんなさいね? 私としては、是非ともフリーレンやその仲間達とお話をしたい所なんだけど、退いてくれる?」

「それは無理かn──」

 

 

 ユーベルが"それ"を察知出来たのは天性の勘か、偶然か。

 

 

「──ッ!?」

 

 

 背後の木々から音もなく飛び出してきた黒い影。ソリテールの生み出した剣を手に地を這うように駆け、ユーベルに対して斬り掛かった。

 

 襲い掛かる凶刃にユーベルは、瞬時の判断で防御魔法の展開や杖で受けるのではなく横に身を投げ出すような回避を選ぶ。

 

 

「危ッないなぁ!」

「新手か」

 

 

 ゼンゼはソリテールから警戒は逸らさずに、取り出した短杖で人を殺す魔法(ゾルトラーク)を放ち牽制する。

 

 それを剣で切り払い防いだ影は、その隙に体勢を立て直したユーベルに追撃はせず、砕けた剣を捨てながら猫のような軽い身のこなしで飛び退るとソリテールに合流した。

 

 

「あら、今の攻撃を察知するなんて。人間特有の"勘"というものかしら。やっぱり不思議ね。興味深いわ」

「すみません、仕留め損ないました」

「謝る必要は無いわよ。今のは私の魔力探知でも把握できない完璧な奇襲だったもの。これは対応した相手を褒めるべきね」

 

 

 ソリテールの斜め後ろに控える人影。黒い軽装に身を包んだその姿は暗殺者(アサシン)のよう。白い前髪の隙間からは感情の色が窺えない真紅の瞳が昏く輝いている。

 

 元4級魔法使いのクラウがかつてと同じ声、同じ顔でそこにいた。

 

 

「──クラウ……ッ」

 

 

 クラウを認識したゼンゼの声は何かを堪えるように震えていた。

 

 出てくるだろう、相対する事になるだろうと覚悟していた、"筈"だった。

 なのに、実際に目の当たりにすると滅茶苦茶に感情が溢れそうになる。そして、それを出力する事を一級魔法使いとしての理性が押し留める。

 隙は、晒さない。晒せない。ソリテールもそれを分かっているのか特に動きを見せなかった。

 

 

「お久しぶりですね、ゼンゼさん。ユーベルさん」

「おひさー。んー? なんか気配は薄いし魔力を感じないけど、前より強そうな雰囲気があるね? さっきも、下手に初撃を防いでたら二の太刀で仕留められてたかな」

「……やっぱり、ユーベルさんを狙ったのは正解でしたね。排除出来なかったのは痛いですが」

「褒められてるのかな? あー、君も見た者を拘束する魔法(ソルガニール)が効かないんだ。そんな気はしてたけどさ」

「勿論、対策済みです。情報は沢山頂きましたから」

「何それ嫌味? 似合わないよ」

「そうでしょうか」

 

 

 挨拶から始まり軽口を叩く二人。その様子を見ていたソリテールがぽんと手を叩く。

 

 

「ねえ、クラウちゃん。私、フリーレンのお仲間達とお話してきたいんだけど、この二人をお願いしてもいい?」

「はい。お任せ下さい」

「じゃあ頼んだわね」

 

 

 そう言って離脱しようとするソリテールの前にクラウが出る。

 

 

「行かせると思っているのか。舐めるなよ」

 

 

 それを見てゼンゼは魔力を練り上げる。この一撃で目の前の分身を片付けると、必殺の意志を取り繕って。

 

 

「……あははっ。ゼンゼさんにユーベルさん、強いですよね。私に勝ち目なんて無いです」

「そうだね。だから諦めてさっさと死んでくれ」

 

 

 そう冷徹に言うなりゼンゼの髪が幾本もの剣のように変質しクラウに襲い掛かった。

 

 それは、あの日の焼き直し。

 

 

「本来なら、ですが」

 

 

 だが。

 

 

「──っ?!」

 

 

 全て、クラウには届かなかった。

 

 

「髪が──」

 

 

 ハラハラと宙に舞う亜麻色の髪。

 

 その中を駆け抜ける彼女の両手にいつの間にか握られ、呆然とするゼンゼに向けて振り下ろされたのは──。

 

 

「おっと、やらせないよ」

「貴女は動揺も躊躇も無しですか。流石ですね」

「そりゃ、どうもっ!」

 

 

 ユーベルは防御魔法でその一撃の勢いを削ぎ、杖で打ち払う。連撃の大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)はもう片方で防がれる。クラウは後退し、その攻防の間にソリテールは離脱していた。

 

 

「抜かれちゃったか。で、それは双剣……いや、元の形は鋏かな?」

「当たりです。零落の王墓でゼンゼさんの複製体をユーベルさんが倒したのは知っていますから、参考にさせて頂いたそうです」

「ふぅん。私の大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)をコピーでもした? ……いや、違うか」

 

 

 ユーベルはゼンゼの髪を切り裂いたのが己の魔法とは別物だと直感で理解した。

 

 

「ええ。ユーベルさんの魔法とは異なります。これは『髪を綺麗に切る魔法』『理想のカットができる魔法』『刃物の切れ味を良くする魔法』など、複数の民間魔法を多重付与した魔道具です」

「へえ……」

「鋏という道具の性質、そしてこれら数多の魔法。その結果生み出されたのが、あらゆる魔法的防御を無視して髪というモノの一切合切を断ち切る……概念兵装*1と、師匠(せんせい)方は呼んでいます」

 

 

 クラウはそこまで言うとその双剣をゆらりと構えた。

 全体の長さは腕と同程度。目立った装飾もない、鈍い色を放つそれは、鋼鉄以上の強度を誇るゼンゼの髪を切ってもなお刃毀れ一つない。

 クラウの身から感じる魔力は皆無。気配も希薄。一瞬でも目を離せば消えてしまいそうだった。

 

 

「私達への対抗策はバッチリ、か。それに、気配や魔力もそうだけど、前はどん臭そうな動きだったのが今はまるで熟練の戦士みたいだ。そっちが本気?」

「私はナーリン様に作られた存在です。この剣技は、あの方が知る過去の英傑達の武勇そのもの」

「君のご主人様はそっちもイケるんだ。ますますもって、厄介な相手だね」

 

 

 ユーベルは不敵な笑顔を浮かべつつも杖を油断なく構える。

 

 

「まったく、楽しい戦いになりそうだ。ゼンゼさん、私が前衛をやる。呆けてないで援護お願い」

「っ、分かった」

「参ります」

「アハハッ! おいで!!」

 

 

 

 


 

 

 

 

 バッ、とフェルンは身構えた。

 

 

「ソリテールが近付いて来ます。ナーリンは未だ動きませんが」

「マジかよ。ゼンゼさんとユーベルは? やられちまったのか?」

「魔力の動きからすると交戦中のようです。ですが、その相手は魔力探知に反応がありません……追加の敵勢力、ナーリンの分身かと」

「分身って事は……いや。そんな事より」

 

 

 パチリ、とシュタルクはフェルンと視線を合わせ、避難民達の方を向く。

 

 

「俺たちはソリテールを倒しに行くぜ」

「フリーレン様をどうか、お願いします」

 

 

 そう告げて、二人はその場を離れた。

 

 

「シュタルク様。魔力探知に反応しない敵が存在します。警戒を」

「ああ」

 

 

 


 

 

 

 

 ソリテールは、その膨大な魔力を垂れ流しながら散歩でもするようにフェルン達に向かって来た。

 街道の真ん中に身構えて立ち塞がる二人に、足を止めると嬉しげに顔を綻ばせる。

 

 

「君達の方から来てくれるなんて嬉しいわ。そうだ。まずは自己紹介を」

「ソリテール、微笑みの魔女……あのナーリンは本体なのですか? なぜ動かないのです?」

「……話の腰を折るのは感心しないね。まあ、子どもだから仕方ないか。私はお姉さんだもの、大目に見てあげる」

 

 

 ピクリ、と一瞬眉をひそめたソリテールは咎めるように言った。

 

 

「察していると思うけど、私達魔族は一枚岩じゃないんだ。各々目的があってね」

「目的ってなんだよ」

 

 

 フェルン達は相手がマトモに質問に答えるかどうかは期待していない。フリーレンが目覚める迄の時間稼ぎ、その為に会話を続ける。

 

 

「私は君達と"お話"を。マハトは"決着"を。お姉様は……何かしら? 私の我儘で協力して貰っているから、分からないわね」

 

("お姉様"? 魔族に家族の概念は無い筈……いえ、今は置いておきましょう)

 

「思ったより強くなさそうだな」

「そうでしょうか。私にはそうは見えません」

 

 

 シュタルクはソリテールの言動や佇まいからポツリと呟き、フェルンは即座に否定する。

 

 

「短命な人間では到達不可能な域にある膨大な魔力。それに、今でこそ微笑みの魔女と呼ばれていますが、グラナト領でフリーレン様の前に姿を現す迄は無名の大魔族でした」

「無名の大魔族ってあれか、出会った連中を皆殺しにしてるっていう……怖えな」

 

『長い時を生きた大魔族はそれだけ人を喰らっている。殺している。それなのに、無名の大魔族と呼ばれる奴らは名前や容姿、何もかもが伝わっていない。それは何故か。皆、殺されてるんだよ。歴戦の戦士も魔法使いも誰もかも、ね』

 

 旅のさなかでフリーレンから聞いた話を思い出し、シュタルクは警戒を強める。

 

 

「それは誤解よ? 私は人里離れた所でひっそりと穏やかに暮らしていたもの。人を殺したことなんて無いわ」

 

(嘘だ。薄いけれど死臭がする。染み付いて、こびり付いて、決して拭い切れない血と死の気配が漂ってる)

 

「私、こう見えてお菓子作りが得意なの。どうかしら? 一緒にお茶をしながらお話なんて。って、これじゃナンパみたいね?」

 

 

 それはこれまで出会ってきた魔族とは種類の異なる死臭だった。濃厚で突き刺すような強い刺激は無い。けれど、怖気の走るような感覚はより強い。

 

 

「……なあ、何分保つと思う?」

「…………」

「ハハッ、なら、仕方ねーな。精一杯足掻いて、藻掻いて、時間を稼ぐか」

 

 

 震える手で斧を握り直す。信頼する仲間を守る為、恐怖を踏み越え"敵"を迎え撃つ覚悟を決める。

 

 

「そんな悲壮な覚悟を決めなくていいのよ? 大丈夫、お姉さんと一緒にお話をして、色々聞かせてくれれば生きて帰してあげるから」

 

 

 そんな人間を見てソリテールは優しげに微笑んだ。

 

 

「君達のことを、たくさん教えて?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 戦いの始まりの号砲は、フェルンの放った一条の魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)だった。

 

 

「戦うの? 私はただお話するだけで十分なのに」

 

 

 ソリテールはピンポイントに防御魔法を展開し完璧に防いでみせた。

 

 

(防御魔法、やっぱり人類の魔法を……それに、硬い)

 

 

 連続して放つ。けれど、どれも的確に防御される。

 

 

「躊躇いが全く無い。凄いね。よく訓練されてる」

 

(でも、防御魔法の展開と着弾のタイミングに僅かなズレがある。長命種特有の一般攻撃魔法(ゾルトラーク)への対応の遅れ……これなら)

 

 

 フェルンは更にギアを上げようと魔力を練り上げ──。

 

 

「そうだ。遅ればせながら、一級試験の合格おめでとう、フェルンちゃん。シュタルク君も、オイサーストではクラウちゃんがお世話になったみたいね。お礼を言わせて頂戴?」

 

「はっ、──え?」

 

 

 一瞬の動揺の隙に生成され射出された剣が、フェルンの肩をかすめるように切り裂いた。

 

 

「くっ!?」

「フェルン!?」

 

 

 前に出てフェルンを庇うシュタルク。ソリテールは自身の周囲に剣を生成し、その切っ先を二人に向ける。

 

 

「んー、対魔族戦に関してはまだ経験不足かな。たぶん対人戦も同様。言葉を聞いて脳で処理するのは仕方ないにしても、それで感情が揺らいで隙を見せるのは良くないね。フリーレンが居ないっていう状況も動揺に繋がったかな? フェルンちゃん自身は今の反省点をどう考える?」

 

 

 指導試合のような態度のソリテールにフェルンはその表情を歪める。

 

 

「……攻撃をわざと掠める程度に外しましたね。あれは致命的な隙でした」

「死人に口なしって言うでしょう? まだ話し足りないもの」

「……舐められてるって事は分かるぜ。フェルン、大丈夫か?」

「ええ。問題ありません」

 

 

 陰りのない闘志を見せる二人にソリテールの笑みは深くなる。

 

 

「シュタルク君は勇敢だね。その手の震え、今すぐにでも背を向けて逃げ出したいだろうに、やっぱり、強い戦士だね」

「テメェに言われても嬉しくねえよ」

「そう? ならクラウちゃんに言われる方が嬉しいかしら?」

「──ッ」

 

 

「──魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 

 表情を強張らせたシュタルクの脇を通り過ぎ、閃光がソリテールに向かう。

 それは構築途中の防御魔法をすり抜けソリテールの肌を灼いた。

 

 

「ん? 今のは……」

 

(よし、タイミングを外した。ここで畳み掛ける)

 

 

 フェルンは連続で魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)を放つ。

 

 

「成る程。私の知ってる人を殺す魔法(ゾルトラーク)とは別物だね。構築も弾速も段違いだ。フリーレンによる改良型かな」

 

 

 しかし、防御魔法に阻まれなかった筈の攻撃は、微かにソリテールの肌や服を傷つけただけ。フェルンはその結果に内心で動揺する。

 

 

(確かに全弾直撃した。なのにダメージはごく僅か。これは……)

 

「魔力そのもの、ですか」

「正解。魔力の持つ普遍的な性質を利用した防御方法よ。見るのは初めてなのかな? 防御魔法は便利だけど慣れの問題で発動までラグがあるから、君相手にはこっちの方がよさそうね」

 

 

 膨大な魔力がソリテールを覆うように集められる。

 

 

「フリーレンも、これと同じ事が出来るくらいの魔力と技量を持つ魔法使いなのだけれど……っと、そういえば魔力制限をしていたね。なら使う事はまず無いか」

 

(フリーレン様の魔力制限を……いや、ナーリンの配下で、アウラとの戦いを観ていたというのなら知っていてもおかしくない)

 

「さあ、これで君の攻撃は通用しな──ッ」

 

 

 言葉の途中でソリテールは表情を強張らせ回避を試みた。フェルンの放った魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)はソリテールの肩を掠め、薄くだがその肉を抉った。

 

 

「──やっぱり、魔力の密度を上げれば通る。次は、外しません」

「頼もしいな。援護は任せてくれ」

 

 

 

 


 

 

 

 

「……凄いね、お姉さん驚いちゃった。今のは私を殺せる一撃だ」

 

 

 ソリテールは初めてその笑みを消し、真剣な面持ちで目の前の"敵"を見据えた。

 

 

(そんな簡単に出来る事じゃないよ。密度の向上と速度の維持を同時にこなすなんて芸当は)

 

 

 傷口を指でなぞり血をペロリと舐める。

 

 

(今、改めて実感した。お姉様が言っていた“人間の時代“というのはこの事か。魔族も、エルフも、彼らの進化の歩みに追い付けなくなる。取り残される。でも──まだだ)

 

「生物としての基礎性能は魔族のほうが遥かに上。魔力量、膂力、反応速度、身体強度、これらは人間がどれだけ世代を重ねても辿り着けないもの」

 

 

 シュタルクが斧を構えジリジリと距離を詰めてくる。フェルンは飛行魔法で射線を確保し魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)を放とうとしている。

 

 

「だから、ごめんね?」

「ッ!! フェルン!!」

「くっ!? ──がっ!?」

 

 

 ソリテールは地面が割れんばかりに踏み込むと空中のフェルンに飛び掛かった。

 あまりの速さ、そして空という間合いの外での攻撃にシュタルクはカバーに入れない。

 咄嗟に展開された防御魔法ごと右足の蹴りで粉砕し、フェルンの左肩にそのまま直撃。斜め下に振り抜き地面に叩きつける。

 

 

「加減はしたよ。剣で手足を斬り落としてもよかったんだから」

「クソッ!! フェルン!!」

「う……あ……ぅ」

 

 

 地面に転がりうめき声を上げるフェルン。その傍に降り立ったソリテールにシュタルクは斬り掛かる。

 

 

「君は(こっち)で相手するね」

 

 

 生成した剣で斧を迎え撃つ。

 

 

「ぐッ!? クソ重え!! 魔法使いのくせに戦士としても強えのかよ!?」

 

 

 その細腕からは想像もつかない剛力によって弾き、生まれた隙に蹴りを叩き込む。

 

 しかし、それは斧の柄を差し込む事によって防がれた。

 

 

「おー、よく防いだね君。この速度に対応出来るなんて、将軍クラスとの戦闘経験があるのかしら?」

「生憎死にかけたけどな、っと!!」

 

 

 斧の振り下ろし。再度剣で迎え撃つが耐え切れず砕け散り、新たに剣を生成しながら飛び退く。

 

 

「あら、壊れちゃった。あと、女性に向かって重いは失礼じゃない?」

「戦士としちゃ褒め言葉だぜ」

「そう? でも、普段は気を付けたほうがいいかもね。女所帯で旅をしているんでしょう?」

「お気遣いどーも」

「シュタルク様……」

「! 大丈夫かフェルン」

「ごほっ、ええ、なんとか」

 

 

 杖を支えにフェルンが立ち上がる。足元はふらついているが、視線はしっかりとソリテールを捉えていた。

 

 

「いいね。ガッツのある子も好きよ」

「フェルン、出来る限りでいい、援護頼む」

「分かりました」

「ふふっ、おいで? たまにはこういう"お話"もいいものね?」

 

 

 懸命に足掻く少女達に、ソリテールはくいと手招きをした。

 

 

 

 

*1
独自設定。シン◯ォギアのソードブレイカー的な物。対抗魔法の開発中に作った。研究は前からしていた。




読了謝謝茄子!

どこかの誰かさんのせいでソリテールは魔法戦士ビルドです。お話(物理)も嗜みます。
クラウの記憶を閲覧できるのは同期した時のナーリンだけ。口頭での報告会的なのはありますが、活動中のやり取りを事細かくソリテールに伝えたりはしてません。ソリテールが戦士云々でシュタルクを煽ったのはその場のノリ。性格が悪いよ君。

次はレスバ回のつもり。

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