【本編一旦完結】たすてけ勇者一行がくぁwせdrftgyふじこlp【原作更新待ち】   作:丹羽にわか

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‬|д゜)チラッ
|*・ω・)ノ シュッ≡≡[更新]


逃げ恥、役立つ、卑怯者

 北側諸国でもとりわけ辺境の小さな集落の生まれで、物心付く前に故郷が魔物に襲われ壊滅し孤児になる。廃墟と化した村で一人朽ちていくのを待つばかりの所で、偶然村を訪れた魔法使いに引き取られ弟子として魔法を学びつつ共に暮らす。

 

 研究にかかりっきりな師匠の代わりに食料の仕入れなどで時折村や町に出入りしつつ魔法でちょっとした問題を解決するなどして小金を稼いでいたがある時、資格を持たない闇魔法使いだとトラブルに巻き込まれる。それを機に大陸魔法使い協会が主催する四級魔法使い試験に挑戦。これをトップの成績で合格。

 

 この機会に経験を積むよう師匠に言われ不承不承ながら師匠の元を離れ、冒険者として活動をする事に。

 

 得意魔法である鉄球を操る魔法(ティエツダント)は防御魔法をものともしない威力を誇り、北側諸国を中心に各地を転々としながら魔物等の討伐で活躍している。

 その性格は人見知りかつ引っ込み思案で不器用。会話が苦手で他人の目を見て話せない。ぼっち。コミュ障。孤高。

 

 

 それが彼女──クラウに与えられた設定。

 

 

 クラウは、狡知の大魔ナーリンが生み出した分身を制御する為に膨大な情報を基に構築、調整された人格だ。

 ある時はふらりと集落を訪れる怪しい商人、またある時はフィールドワークに勤しむ研究者や各地を旅して路銀を稼ぐ冒険者などと、様々な姿と役割(ロール)をこなしながら、情報や物資を得るのが主な役目。

 

 

 誤算だったのは、そんな存在に心が芽生えてしまったこと。

 

 そして、その心が人間の感性を持っていたこと。

 

 

 クラウにはそれが創造主の意図したものかは分からない。自分だけでなく唯一の配下であるソリテールにも伏せた上で、そのような仕込みをしたのか否かを。

 訊けなかった。もしそうなのだとしたら、それは何故なのか。ナーリンに訊ねようとして彼女は躊躇った。もし、そうでなかったら?

 

 大量に蓄積されたデータを処理する過程で発生したバグか、ゼンゼら人間の友人たちとの関わりの結果か。どれも仮説に過ぎない。いずれにせよ、心を持つことが分かれば待っていたのは廃棄処分か、実験にでも使われるか。少なくとも、今まで通りの関係でいることは不可能だろうという事はクラウにとって自明だった。

 

 でも、彼女はどこかで期待していた。師匠(ナーリン)は、人に仇なす存在では無いのだと。

 

 そう思っていた。そう、思いたかった。

 人を殺すところも食らうところも生み出されてからの数百年で一度も見ていない。千年以上の時を生きるこの大魔族は、ただの魔族とは異なるのだと。

 

 けれど、やはりナーリンは魔族だった。

 

 ソリテールが研究の過程で幾人も人間を殺していても心を痛めた様子なんて無い。自分は必死に胸の痛みを押し殺しているというのに、彼女はただ迷惑そうに眉を顰めるだけだ。人の死を何とも思っておらず、それが自身に面倒事を持ってこないかだけを気にしている。

 オイサーストで、黄金郷で、ナーリンが見せた振る舞いは、その思想の根底にあるものは魔族の本能だと思わせるモノだった。人類だけでなく同族にも情を向けず、己の利や好奇心を満たす為に策を弄し、盤面を俯瞰し駒を動かすような様は、まさに狡智の大魔。

 

 ナーリンとソリテール。クラウはこの二人が嫌いなわけでも憎いわけでもない。いつかシュタルクらに語ったように好きだ。それはそう設定されたからではなく、その言葉が自身に経験としてインプットするための、鳴き声に過ぎないモノだと分かっていても、共に過ごす日々は楽しく、愛おしいものだった。

 

 けれど、二人は魔族だ。

 

 人類種の天敵。人を喰らう獣。

 

 今までどれだけの人類が犠牲になってきたのか。

 その魔族に生み出され、唯々諾々と指示通りに行動してきた自分はどれだけ罪深いのか。

 

 はっきりと目に焼き付いている。自分の振るった刃によって傷ついたゼンゼとユーベルの二人の姿を。自身を未だに友だと言い、それでも殺すと言い放ったゼンゼの凍てつくような視線と、その内の激情を覚えている。

 黄金へと変わった友人や住人たち。フリーレンがデンケンの解呪に成功しているのなら、無事に回復する可能性は高い。

 ナーリンが居なければ。

 もし、フリーレンが倒されてしまったら、今黄金と化している人たちはどうなるのか。そんなの分かりきっている。

 

 

「──……っ」

 

 

 剣の柄を握る手に力がこもる。

 

 前を歩くソリテールはこれまで見たことがないほどに深い傷を負っている。魔力探知の精度は下がり、その動きは精彩を欠いていた。

 けれど、相手の実力はクラウ自身よく知っている。微笑みの魔女。魔法使いとしてだけでなく、戦士としても一流、そこらの武にすべてを捧げた将軍クラスの魔族に勝るとも劣らない。そんな彼女には、指導と称した戦闘で斬り刻まれたり吹き飛ばされた事もある。

 

 

「ソリテール様」

「ん? クラウちゃん、どうしたの?」

 

 

 声をかけられ立ち止まり振り向いたソリテールの瞳と視線が交錯する。

 

 

「その、師匠(せんせい)の加勢に向かいたくて」

「加勢?」

「はい。結界を抜けて追撃の心配も少ないですし、それならあちらの援護を行い勝利を盤石な物に、と」

 

 

 状況に応じて適切な行動をとること。自分は『クラウ』であり、役割こそ変われどそのパーソナリティは更新されていない。師匠であるナーリンを案じて提案する、というのは心を持たない存在だとしてもおかしな行動ではない。

 

 

「成る程ね。うーん、どうしようかしら。お姉様からは一緒に離脱するよう言われているし」

 

 

 ソリテールは何を考えているのかわからない、薄い笑みを貼り付けながら言った。

 魔族にも人と比べて歪ではあるが心や意思はある。だが、それ以上に本能に支配されている獣のような存在だ。ソリテールがナーリンに従うのは魔力量の差で屈服しているからであり、お姉様と呼び慕う言動は表面だけの見せかけに過ぎない。人を殺さないナーリンにしても、それは生存本能が人殺しの本能よりも優先されているだけ。クラウはそう認識していた。

 

 

「フリーレンは万物を黄金に変える魔法(ディーアコ゚ルゼ)を解呪できます。先程はデンケンだけでしたが、戦闘中に他の魔法使いを戦線に復帰させる可能性は高いです」

「それは、あり得るでしょうね。連携は人類が得意とする所だから」

 

 

 復帰して戦闘に加わり、そこで殺されたら? ナーリンの戦闘は魔力量と操作技術のスペックに物を言わせた蹂躙だ。いかに優れた魔法使いであっても、人間では届かない領域から一方的に押し付けてくる。勝てる見込みは薄いだろう。

 けれど、自分なら。一手、不意をつけるはず。その隙を見逃すような人たちではないと、クラウはよく知っている。

 

 

「んー……でも、駄目ね。お姉様の指示を破るのは。これ以上は怒られちゃうかも」

 

 

 まるで姉の言いつけを守ろうとする妹のような事を言うソリテールに、クラウは頭を下げて応える。

 

 

「……はい。分かりました」

 

 

 それは微かに、ほんの微かに滲んでしまった。

 この状況下において、作られた存在であり自己を律することに長けている筈のクラウから、心を持たないのならば溢れるはずのないモノ。

 

 

「へぇ」

 

 

 ソリテールは瞬く間に距離を詰めると、剣を握るクラウの腕を蹴り砕いて剣を落とさせ、その細首を無事な方の手でがしりと掴み持ち上げる。

 

 

「──がっ、ぐっ、何、を」

「少し不思議だったの。どうして、ユーベルが貴女の奇襲を察知できたのか。でも納得したわ。心を、意志を持つが故に、『殺意』を向ける事が出来たのね。器用なことを」

 

 

 種明かしをされ合点がいった、とばかりに頷くソリテール。

 

 

「──とても、とても興味深いわ」

 

 

 ソリテールはそう言って笑みを浮かべた。

 

 

「意思なんて貴女には無かったのに。生まれるはずが無いのに。逆らえる筈が無いのに……嗚呼、なんて事」

 

 

 彼女の細い指が、まるで玩具でも扱うかのように相手の首を掴み、そのまま軽々と持ち上げる。

 

 

「私に殺意を向けた。私達に叛意を抱いた。有り得ない事だわ。お姉様は人工的な生命、いえ──魂の創造、神域に至ったのかしら? どう思う?」

 

 

「──っ、ぁ……」

「ねえ」

 

 

「クラウちゃん」

 

 

 危機的状況だった。クラウに命という概念は無いが、そのデータや人格を消去されることは実質的な死を意味する。もし、今の状況がナーリンに伝われば自分は『死ぬ』事になるだろう。

 

 

「ち、ちがいます。私は、逆らうだなんて……」

「あら、命乞い? ふふっ、とても魔族らしいわね」

 

 

 クラウが人間の心を持つことを知らないソリテールは愉しげに言う。

 

 

「私が傷を負って弱ったからと言って、別に君が強くなったわけでは無いのよ? 浅慮短慮無理無茶無謀。身の程を弁えなさいな」

「……師匠が、貴女の事をどう思っているのか、考えた事はありますか」

「そうねえ、いったい何を考えているのかしら。困ったものよね」

 

 

 困ったものと言うが、その声音は明るい。まるで惚気ているようだった。

 クラウは思考を回す。

 ここからの離脱は困難。『お話』が終わればこの身体は消し飛ばされる事になる。この意識はナーリンの元に戻り、記憶が読み取られるだろう。ならば、即座に処分されないように振る舞うしか無い。

 心を獲得し、あくまでナーリンの為に動いた、と。

 

 

「あの方の求める平穏を乱す貴女の数々の行動、看過出来ません。これ以上、好き勝手動かれるのならば処分が必要。そう思われませんか」

「君の言う通りね。耳が痛いわ。それで、そんな私を処分するために貴女が動いたの? 勇み足が過ぎるわね」

「……私の独断だとお思いですか?」

「それはそうでしょう? 私を殺すのにクラウちゃんじゃ荷が重いもの。技術も、力も、何もかもが足りていないわ。それに、お姉様が私を殺すなんていつでも出来る。私とあの人には、それだけの差がある」

 

 

 断言するソリテール。首を掴む手に魔力が集まるのを感じながら、クラウは口を開いた。

 

 

「──此方に其方は不要だ。ソリテール」

 

「面白くないわ、その冗談」

 

 

 バスン。

 手の平から魔力が放たれ、クラウの意識は途絶えた。

 

 

 

 


 

 

 

(……そうだね。ヒンメルならきっと仲間を信じて背中を預ける。たまには、こんな賭けに出てみるのもいいか)

 

 

 黄金の呪いは祓われた。

 金色に輝いていた木々はその鮮やかな色彩を取り戻し、小鳥のさえずりや風に揺れる枝葉のさざめきが、生命の気配となって周囲を満たす。

 

 

(戦闘と並行しての解析…大変だったけど、これで黄金郷は元通りだ)

 

 

 フリーレンは自身の魔法の効果を確認しながらも盾としての効果を無くした木陰から即座に離れ、飛行魔法を使って空に上った。

 刹那、轟音と共に先程まで居た場所が吹き飛ばされた。ナーリンの魔力弾は、大人でも抱えきれないような太い幹を持つ木々を簡単になぎ倒している。

 フリーレンがいくら膨大な魔力を持ち高い防御力を誇るとはいえ、一発一発が大きな脅威だ。飛行魔法、ゾルトラーク、防御魔法を使いながら巧みに弾幕を捌いていく。

 

 

「……ッ」

 

 

 ふと、ナーリンがその動きを鈍らせた。理由はフリーレンからは分からない。けれど、それは明確な隙であり、歴戦の魔法使いである彼女が見逃すことは無い。

 

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 

 弾幕の隙間を縫うように、自分に向けて飛来する魔力弾を敢えて無視してフリーレンが放った捨て身の高圧縮ゾルトラークは、しかし分厚い魔力障壁に阻まれる。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

 そして、クロスカウンターのようにフリーレンやその周囲に着弾する魔力弾。

 

 

(──でもッ!)

 

 

 全身を襲う痛みに気が遠くなりながらも、意識は途絶えさせない。光芒がまだ空に残っている程の微かな時間差で放たれた、もう一条の閃光。

 

 魔族を滅殺する光にナーリンは貫か──。

 

 

「…っ…躱された。重傷だけど、仕留めきれてない」

 

 

 右腕を肩の付け根から吹き飛ばすに留まった。

 

 

(私の攻撃へ意識を割いて、凌いだ瞬間の気の緩みを突く、魔力探知範囲外からのフェルンによる超長距離射撃。これを察知、いや反応した? どうやって)

 

 

 吹き飛ばされ、ボロボロの身体で地面に這いつくばり、顔だけどうにか持ち上げていたフリーレンは上空のナーリンを睨みつける。

 

 重傷を負ったナーリンは、血と魔力の溢れる右肩を残った腕で押さえながら宙に佇んでいたが、黒い塵が溢れその身を覆うと、欠損した腕は元通りになっていた。

 

 

(治癒魔法なんてレベルじゃない。回復、再生……いや、補填かな。魔力量は明らかに減衰してる。それに、態々そんな事をするなんて、アレが本体の可能性も出てきた)

 

 

 フリーレンは杖に体重をかけながらどうにか立ち上がった。

 あれを仕留めればこの旅での目的が、ヒンメル達勇者一行としてのやり残しが一つ終える事になる。ほぼ気力だけで自分を奮い立たせ、杖を構える。

 

 

(マハトはデンケンが仕留めたみたいだ。ゼンゼ達も復帰してこっちに向かっている。勝機は、ある)

 

 

 フリーレンとナーリンの視線が交わった。

 

 

(お前を殺す)デデン!

 

 

 決意と殺意。フリーレンは杖を強く握りしめ魔力を高める。

 

 

「────」

 

 

 だが、ナーリンは何言かを呟くと、その背を向け飛び去っていく。

 

 

「なっ!?」

 

 

 咄嗟にゾルトラークを放つが、魔力の収束が甘く届かない。その間に、ナーリンは魔力探知の範囲外に出てしまう。フリーレンには長距離の飛行魔法を行える程の魔力は残っていないし、大魔族の飛行魔法に追随できる魔法使いはこの場に自分以外に居ない。

 

 いっそ清々しいほどの逃げ足だった。

 

 

「逃げ、るな」

 

 

「逃げるな、卑怯者ッ」

 

 

 

「卑怯だぞッ!! ナーリン!!!!」

 

 

 

 茜色の空に、フリーレンの咆哮が消えていった。

 

 

 

 




読了謝謝茄子!

久方ぶりの本編更新。実は一箇所ネタで透明文字を仕込んだので探してみてください(なおただのオノマトペ)
あと1、2話で本編完結予定です

TIPS:評価コメントは作者と投票者しか見れないぞ!!

それと、作中で描写できなかったので、クラウに心が芽生えた理由(こじつけ)を透明にして下に書いておきます
クラウに人の心があった理由:ナーリンが運用しているのは血肉まで精密に再現した複製体。細胞分裂というプロセスを踏んでいないものの実質的には人間のクローン。(元の水鏡の悪魔の複製体は血肉までは再現してない※独自解釈)
 心とされるものは脳内の化学反応で引き起こされるものであり、それは現代日本人のナーリンの意識にも根付いている。ナーリン自身は「ファンタジーな分身だー」と考えていたが、イメージが全ての魔法において、前世由来の科学的なイメージが認識の外で適用されている。
 ほぼ人間の体に、ナーリンの人としての感性やらをインプットした人格を積んだら、うまいこと噛み合って心を自覚した、という感じ。人格を入れずにそのまま経験を積ませたら独自の自我が芽生える可能性もあるが上書きされるので毎度リスキルされてる。クラウのキルスコアは高い。お労しやクラ上。


感想評価お気に入りここすきクレメンス〜
小説Skebも受け付けてるやで〜(強欲)

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