隔週投稿出来れば良いな位に思っててください…
なお主人公の名前が某現役選手に似ておりますが、似せる意図は全くありません。
パワプロの栄冠ナインにて作成した自データ選手の名前を持ってきております。
プロローグ1
6月
愛知県某市--
橙色に染まった空をボーっと見ていた。
さっきまで聞こえた子供の声もどこかに行ってしまった。
偶に聞こえる水音は魚でも跳ねているのだろう。
心地よい風に目を閉じれば、浮かんでくるのはつい数時間前の事。
0の並んだスコアボード。
抜けて浮いた変化球。
軟式球と金属バットの快音と変わる数字。
「あー」
何の気なしに声が出た。
「負けたなぁ……」
中学校最後の大会が終わった。
初めて野球に触れたのは6歳の時だった。
野球経験者の父にグローブをプレゼントされ、ボールを投げた時にカチリと嵌った。
自分はこれを続けていくのだと。
だが周りの環境は、満足に野球が出来るとは言えなかった。
小学校には野球の少年団は無く、隣町の少年団に入り練習。
中学も家庭の都合でシニアリーグには入れず、地元中学校の軟式野球部へ。
弱小に毛が生えた程度の強さしかなく、3年間奮闘するも今日終わりを迎えた。
(これからどーすっかなぁ)
漠然と「プロになる」と考えてはいるが厳しいのが現状。
お金がかからなければ何とかなるはずなので、大会で活躍してスカウトを貰う事を考えていたが、3回戦で負けていれば望み薄だ。
(しばらく勉強か。この辺で強いとこって大体私立だからなぁ。でも俺あんま頭良くないからな……でもなー。
とりあえず投げてれば思いつくか?いや、試合で今日の投球数ほぼ超えてるし……うーん)
頭をひねって唸っても解決策は勉強するしかないのだが、そんなことするより投げたいと思ってしまう。
ため息をつきながら凹むしかなかった。
「ねえ君」
「ん?」
悩んでいると声をかけられた。女性だ。
とっさに振り返ればスーツをビシッと決めた眼鏡の美人が立っている。しかも
(うわ、でっか)
視線が吸い寄せられるのは男子中学生の性だろう。
「『松本 裕(まつもと はるか)』君であってるかしら?私は『高島 礼』。私立青道高等学校野球部の副部長を務めているわ」
「青道?(西東京の有名な強豪校だ)えっと、何の用でしょうか?」
「フフッ、あなたをスカウトしに来たのよ」
「スカウト!?え、本当すか?」
「ええ。今日の試合偶然見てたのよ。6回まで塁を踏ませないパーフェクトピッチング。けど最終回に四球と甘く入った変化球を打たれて3ベースヒットでサヨナラ負け。結果7回完投で、99球5奪三振3四死球被安打1。惜しかったわね」
「うっ、本当に見てたんすね。ならなんでスカウトしにきたのか俺にはわからないんですけど……」
「結果だけ見れば敗戦投手だものね。けど、勝ち負けは今はいいの。
ねえ松本君。あなた両利き、『スイッチピッチャー』なのね?」
「そうですけど」
♦高島礼side
「そうですけど」
戸惑いながら頷く松本君に私は興奮を隠せなかった。
スイッチピッチャー。NPB、MLBでも数えるほどしかいない希少な存在。
なぜ少ないのか
それは一重に両投げにする必要がないから。
投手に求められるのは抑える事。利き手でない方で投げれるようにするなら、その時間を利き手の向上に充てたほうが良いのは明らか。
スイッチピッチャーを可能にするのは幼いころからの両利きと才能。
彼の今日の投球は左右遜色なく、中学生としては非常に高い完成度を誇っていた。
「松本君。一つ質問なんだけど、君はいつから両利きなの?」
「いつからって、物心ついたときには両利きでしたけど」
物心ついたときから……まさか、
「…スカウトの件、親御さんも交えて話したいのだけど今ご在宅かしら?」
「えーと、診察時間は終わってるんで多分大丈夫っす」
「診察時間?」
「父がスポーツドクターなんで」
偶々立ち寄っただけの大会で、思わぬ掘り出し物を見つけたかもしれない。
私は高鳴る胸をごまかしながら彼の後を追ったのだった。
中途半端ですが、続きが長くなりそうなので分割します。