ダイヤのA~スイッチピッチャーの軌跡~   作:とくまる

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めちゃくちゃ期間空いてしまった。
本当にすみません。



第2話

 

♦御幸一也side

 

「…ぅっぷ」

 

 

朝からひどい目にあった。

いや、遅刻して無断で列に加わろうとしたのは悪いけど、その後午前中全部ランニングは厳しいって。

加えて直後に昼は丼ぶり3杯はキツすぎる。

まあ素直に謝ったら午後から参加は認めてくれたから良しとするか。

 

「さて、午後はポジションに分かれての実力テストだったか。面白いやついるかな~っと」

 

どんな投手がいるのかワクワクしながら室内投球場に向かった。

 

 

 

 

 

投球場に集まったのは10人。

 

「捕手はこっち来て防具を着用。投手は肩作って準備を」

 

誘導された場所で防具を着用しながら回りを見渡す。

 

(捕手は俺入れて3人、投手は7人か。ん?)

 

見慣れないグローブをはめた奴がいた。

 

(あの形状、両利き用?いやまさか。間違えて買ったとかそんなのだろ)

 

そう思っていたが、「悪い、ちょっと」とキャッチボールを少し止めるとグローブを右から左へ付け替える。

その異様な光景に俺を含め全員が手を止めてそっちを見ていた。

 

両投げ(スイッチ)!?マジかよおい、レアケースなんてもんじゃねーぞ。浪漫すぎるだろ)

 

ただの目立ちたがりなのかそれとも、といった期待が湧き上がってくる。

何にせよ3年間は退屈しなくて済みそうだと思い準備を急いだ。

 

 

 

 

 

準備が終わり実力テストが始まる。

 

「松本裕。よろしく、えっと」

 

「御幸一也だ、よろしく(ラッキー)」

 

テスト内容はブルペンを使ってのピッチング。

早速こいつの球を受けれるとは思ってなかった。物珍しさが先行して期待を抑えきれない。

 

キャッチャーボックスに座りピッチングが開始される。

予想より高い実力に目を丸くしながら、右でのピッチングは続いて行った。

 

 

「ナイピ!すげーな、ウチのシニアにいたらレギュラー候補だ」

 

「本当かよ。けどこっち()はまだボールが滑るように感じるときが偶にあってさ」

 

「数こなしてりゃそのうち慣れるさ」

(とはいえ、このコントロールの良さはいいな。タッパが伸びたら球速はまだ上がるだろうし、トレーニング次第では球質も改善されるはず。強いて言うなら決め球が弱いか?カーブは悪くないから、この緩急と小さく動く球があればある程度の奴らなら抑えれるけど、強豪以上の打者相手には後半になると見切られそうだ。もう一つ空振りが狙える何かがあれば万々歳だな。投げ方的にクイックもそこそこ早いだろうし。ただ、)

 

「じゃ、次左」

 

「オッケー」

 

(こいつの場合これがある)

 

初めて受ける両投げ投手。左右でどんな差があるのか、もしくは大きくは違わないのか。

 

(シニアでも技巧派右腕でエース張れそうな奴だ。さぁ、左はどんなもんかな?)

 

ワクワクしながら真ん中へ構える。

構えたのを確認してセットポジションへ、

 

(ん?体が横向き?右投げの時は正面だったのに)

 

そのまま右足と腕を上げ、身体を開きながら踏み込んで左腕を振り下ろす。

 

 

パァン!

 

 

鋭く空気を切り裂く音の後快音を響かせた。

 

(…あいつ()程じゃないが球質はこっちのが上。右の時より10キロ位早く感じる。投げ方もスリークォーター気味の右と違って純粋な縦振り(オーバースロー)。おいおい、左は完全にパワーピッチャーかよ。同一人物か?)

 

ポケットで取ったはずなのにジーンとした痺れを感じる。キャッチングは自信があるだけにその球威が実感できる。

 

 

「(は、ははは!面白れぇ!イロモノだなんてとんでもねぇやコイツ!)ナイボ!もう1球!」

 

 

もう俺は、この投手ををどう生かしていくかで頭が一杯だった。

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

(なんか急にイキイキし始めたけど大丈夫かあいつ?)

 

見るからににテンションの変わった御幸に裕は少し引きながら投球を重ねる。

 

(やっぱ左の時の硬球はいいな。指にかかるから投げやすい)

 

鋭く風を裂く音をなびかせ、快音と共にミットに収まる。

軟式の時とは違う音に心地よさにを感じ、裕は無意識に高揚していった。

と、

 

 

「うぉっと」

 

「あ、悪ぃ逆玉」

 

「大丈夫。右に比べると大分散るな」

 

「こっちはあんまり定まんなくてね。ストライクゾーンに出し入れが今の限界」

 

「なるほど…。変化球ある?球種は?」

 

「フォークとチェンジアップ」

 

「いいね、投げてよ」

 

「ん、じゃあフォークから」

 

 

御幸の構えを見てセットポジションに入る。

ボールの縫い目の外側に人差し指と中指をかけ握り込み、同じフォームでリリースし、

 

パシン!

 

さっきまでのストレートとは違う音を立ててミットに収まった。

と、取り損ねたのか少し痛そうな顔をしている。

 

実際、それほどの落差。

コントロールは変わらずアバウトだが、このフォークとストレートがあればアウトをとれる。

そう思えるだけの球質だった。

 

 

「ナイスボール。いや、良いフォークだ」

 

「ありがと」

 

「…何球か投げてもらってもいいか?」

 

「なんかちょっと拗ねてる?」

 

「いいから!ほら、来い」

 

 

ミットのポケットを叩いて要求される。

疑問に思いながら何球か投げていけば、キャッチングの音は心地よいものへ変わっていく。

それに比例して笑顔になっていく御幸の表情から、裕は拗ねていた理由をなんとなく察して少し笑った。

 

キャッチングに満足したのかチェンジアップの投球へ移る。

 

縫い目に指がかからないように握り、同じフォームからリリース。

変化はほぼ無く、しかしストレートより少し遅い球速でミットまで到達した。

 

 

「球速差はそこそこ?120km/hくらいか」

 

「今の所タイミングをズラすのに使ってる」

 

「ふーん…ストレートと交互に投げてもらっていいか?」

 

 

首肯して何球か投げ込む。10球も満たない数を投げて御幸が一言。

 

 

「贅沢言うならもう少し球速差か変化が欲しいな」

 

「まじ?」

 

「今の時点で直球と球速差は出てるけど制球定まんないだろ?強豪校相手、それこそ市大三高とかには投げづらい。多投できるような球なら尚良いから、もう少し何かしらあれば」

 

「んー…」

 

 

中学までは速球で目付させた後に投げれば、大体空振りがとれていた。

それだけに御幸の言っていることに実感は持てなかった。しかし、

 

(強豪相手、か…そうだよな。今俺はそれを考える環境にいるんだ。)

 

楽しい。

まだまだ上手くなれる自分が、この環境が。

改めての実感と共に、裕はピッチングを続けていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ブルペンでの投球が終わるとフリーバッティング。

倉持と合流し打席に立ったのだが、

 

 スカッ! スカッ! スカッ! スカッ!

 

 

「…見事に当たらねぇな」

 

「ファウルチップすら無いってどうやってんだ」

 

「…逆にお前らどうやって当ててんだよ」

 

「ボール見てから振れば当たりはするだろ」

 

「見えてるはずなんだけどなぁ…」

 

「バット振ってる位置は見当違いだぞ」

 

「ちくしょう!」

 

 

ラスト1球も見事に空振り、フリーバッティングは一度もバットに当てられないまま終わったのだった。

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