ダイヤのA~スイッチピッチャーの軌跡~   作:とくまる

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調子よく書けたので投稿します。
ちなみに書き貯めとかは全くありませんので、今後も完成次第投稿になります。


話は変わりますが、評価にまさかの☆10を頂きました。
貴重な評価を押して頂きありがとうございます。マジで嬉しいです。
それ以外に評価をくださった方、感想を書いてくださる方、執筆の励みになっております。
この場を借りて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。


不定期更新な本作ですが、今後もどうぞよろしくお願いします。


第3話

 

「今日はここまで。明日は同じ時間から通常通りの練習になる。疲れを残さないようケアを怠るな。以上!」

 

「「「「ありがとうございました」」」」

 

 

最後に守備の確認を行い初日の練習は終わった。

実力テストで今日の主役だった新入生は、揃って疲れた顔をしながら寮へ引き上げていった。しかし、流れとは逆の方向へ進む人影を御幸は見つけた。

 

 

「松本、どこ行くんだ?」

 

「ん?走ってくる。練習の最後はいつも走り込みしてるから」

 

「え、疲れてねぇの?」

 

「疲れてるけどルーティーンみたいなもんだから。それじゃ」

 

 

裕は早々に話を切り上げ、その場を去っていった。

夕飯までには戻れよー、と背中にかける事しか御幸には出来なかった。

と、流れてくる人の中に見知った顔を見つけた。

ハーフ特有の彫りの深い顔にしっかりとした上背。

 

 

「滝川先輩!」

 

「ん?あぁ江戸川シニアの」

 

「御幸一也です」

 

「よろしく。話にはよく聞いていたよ。滝川・クリス・優だ。クリスでいい」

 

「よろしくお願いします。直接話したことは無かったですけど、丸亀シニアと対戦した時のクリス先輩のプレーはよく覚えてます」

 

御幸は一呼吸置いて、目を合わせる。

 

 

「俺、正捕手狙ってるんで。油断して奪われないでくださいねクリス先輩」

 

「望むところだ。簡単には譲らんよ」

 

 

ふてぶてしさの中に激しく燃える熱を見たクリスは微笑みを浮かべる。

この時の宣言が後にあっさりと終結してしまうことに、今の二人には考えることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう伊藤!」

 

「東か。おつかれ」

 

本日の業務のまとめをしていた伊藤という青年に、恰幅の良い青年が話しかけた。

(あずま) 清国(きよくに)。青道高校を牽引する高校生屈指のパワーヒッターであり、打の青道の象徴。

 

「おつかれさん。お前、今年は新入生実力テストの担当やったろ?どうや?今年の1年坊主は」

 

「全体的に粒ぞろいじゃないか?スカウト組は言わずもがな、それ以外にもしっかり飛ばせそうなスイングしてるのも何人かいた。例年通りシニアやボーイズ上りも沢山入ってきてるし良い感じだ」

 

「ええな!去年より期待持てそうや」

 

「バカ言え、その分伸びは凄かったろ?結城なんか今や青道のクリーンナップだ。大事なのは入ってからだよ」

 

「まぁ、そやなぁ。…んで、投手の方はどうや?急ぎ大事なんはこっちやろ」

 

 

東は冗談交じりに話していた顔を真面目にして尋ねる。

 

 

「シニアでの有力な奴は大体別に進学したみたいだな。入学前に目を付けてた人はいなかったよ。ボーイズ上りの川上は良いな、実績もある。ただ、多分直ぐに公式戦で登板ってタイプじゃないと思う」

 

「ほうかぁ、どうしても今は「打の青道」のイメージがついたからのぉ。入学するんも打撃に強いやつが偏るんは仕方ないか」

 

「ただ高島さんが声かけた県外の子だけど、かけられただけあって随分面白い。クリスの言ってた奴だ」

 

「あぁ、あいつか!夏に練習見に来とった。クリスが苦々しい顔しとったけど面白い言うとったなぁ。

 お前も面白(おもろ)い言う奴か。期待持てそうやんけ、な?()()()()()()殿()?」

 

「元、だよ。今はマネージャーとして支えることしか出来ない」

 

「はん!俺ら三年のエースは誰が何を言おうとお前や。そこは揺るがん。

 そんなお前の後を背負うんや。半端な奴なら許さへん」

 

伊藤は東のあまり見せない真剣な顔に思わず苦笑した。

緩んだ空気が流れる。

 

「愛されてるなぁ僕」

 

「なにを今更。ま、実際は登録枠もあるから一番(エースナンバー)は渡さん!とかは無理やけど、3年全員心の中ではそう思っとる。」

 

「そっか。なら、もしかしたら夏までには無理かもなぁ」

 

「なんでや?期待持てるんやろ?」

 

「多分なんだけど、あいつは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チームプレイの本質、ですか?」

 

「ああ。松本は恐らくそれが表面的にしかわかっていない。それがきちんと自覚できるまでは、どれだけ有望株であろうと1軍のマウンドに上げる気はありません」

 

 

所変わって監督室。片岡監督、太田部長、高島副部長は新入生の話題で盛り上がっていた。

そして裕の話題に移り、高島副部長が早速戦力になってくれるのでは?という発言に対して片岡監督が答えた。

 

 

「それに、そんな1年生をマウンドに上げることはプラスにならないと思っていますし、何より3年生達も納得しないでしょう」

 

「そうですね。伊藤の件があってから3年生の結束力は強いですから」

 

「とはいえどうするんですか?夏まであと3か月もありません」

 

「その3か月間で最も成長した者に1番を渡します。2、3年は実力を高めれるか、1年はどれだけ信頼を得られるか。それが今年の夏の分水嶺でしょう」

 

 

片岡監督はぬるくなったお茶を飲み、1呼吸置く。

 

 

「お二方とも、この事は部員たちに漏らさないようにお願いします」

 

「わかりました」

 

「しかし、たった3か月ですか。1年生にとってはなかなか大変な試練になりそうですな」

 

「されど3か月ですよ太田部長。大人にとってあっという間でも、高校生にとっては飛躍する時間としては十分です。もしかすれば我々の想像を超える成長を見せてくれるかもしれません」

 

 

様々な期待と思惑が入り交じり、新生青道高校野球部の初日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハァ、…ハァ、…ラス1!」

 

春とはいえ日が落ちればまだ肌寒い。

完全に日も暮れたグラウンドで裕は肩で息をしており、その体からは熱が立ち上っていた。

 

「…っし終わり」

 

いつもの自主メニューをこなしクールダウンに入る。

 

(今日はなんか投げたりない。どこか使えるところ無いかな)

 

辺りを見回しながら歩いていた時だった。

 

 

「おーい新入生、もう時間だ」

 

 

少し離れたグラウンドの出入口から上級生に声をかけられた。

よく見れば今日の実力テストの時に取り仕切っていた人だと裕は思い出していた。

ただ、ストップがかかってしまえばしょうがない。裕は仕方なしに上がることにした。

 

 

「初日だろうに精が出るね。オーバーワークは禁物だぞ?」

 

「すみません、ルーティーンみたいなもので」

 

「だとしても今までの温い環境とは違う。明日からはもっと厳しくなっていくんだから、少し調整した方が良いよ。

 はいこれ」

 

手に持っていたスポーツドリンクを渡してくれた。

 

「ありがとうございます、…」

 

「あぁ、マネージャーの伊藤(いとう) (さとる)だ。よろしく松本君」

 

 

後に裕は振り返った時にこう語る。

 

自分がここまで成長できたのは間違いなくこの人との出会いがあったからだと。

 

 

 

 

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