1939(昭和15)年 9月
ドイツは遂にポーランドに宣戦布告と同時に、同地に対して侵攻を開始した。
これを受け、英仏は同月ドイツへ宣戦布告したのであった。
十分な準備期間を経て侵攻を開始したドイツ軍は、各所でポーランド軍による抵抗を粉砕すると翌月にはポーランドをソ連と共に占領下に置いた。
そして1940年から始まった西方戦役で、英仏軍は各所で粉砕、細切れにされつつあった。
これを受け、イギリスのウィンストン・チャーチルは、イギリス海外派遣軍とフランス軍からなる四〇万人をダンケルクから救出する事を命じ、あらゆる船舶を総動員した撤退作戦、ダイナモ作戦が発動された。
しかしこの作戦は、上手くいかなかった。
ドイツ軍はアラスの戦いでの連合軍の反撃を、近く行われる連合軍の本格的な反攻作戦の端緒と誤認し、機甲部隊の温存を図ろうとしたが、ドイツ総統アドルフ・ヒトラーからのダンケルクに集結しつつある英仏軍を完全に撃滅せよ、との命令を受け、ダンケルクへ向け急進し、英仏軍との距離を詰めつつあった。
この時ヒトラーは、空軍大臣ヘルマン・ゲーリングから空軍のみで英仏軍を撃滅できると言われたが、それを信用せず海軍艦艇をも動員させ、英仏軍の撃滅を命じていた。
この結果、ダンケルクから無事に脱出できたのは、僅か一〇万人程度であり、残りは捕虜になるか戦死した。
連合軍の被害はそれだけでなく、撤退の最中に装備の多くを放棄していたため、自国防衛すらままらなくなっていた。
そして同年6月遂にパリが陥落し、フランスは降伏したのであった。
祖国降伏を受け、フランスから脱出を図ったフランス海軍艦隊も洋上で封鎖態勢を整いていたドイツ海軍の前に一部の艦艇を除いて降伏し、ドイツに艦艇を接収されてしまった。
更にフランス各所で建造途中であったリシュリュー級戦艦3隻、ジョッフル級空母2隻の確保に成功したのであった。
これらの建造途中の艦艇は全て港の外で自沈処分する予定であったが、ドイツの侵攻速度が速く自沈する前に確保されてしまったのであった。
この予想外の報せにドイツ海軍司令部は狂喜乱舞した。
第二次世界大戦勃発により、Z計画が軒並み凍結されてしまった。
そのためドイツ海軍は開戦時保有していた戦力は、ビスマルク級戦艦2隻、シャルンホルスト級戦艦2隻、装甲艦5隻、ミュウヘン級軽巡洋艦5隻、ライプツィヒ級軽巡洋艦2隻、商船改造空母2隻、駆逐艦25隻であった。
そこに鹵獲艦とはいえ、多数の艦艇が手に入ったのは嬉しい誤算であった。
しかしこれに頭を痛めている人物がいた。
ドイツ海軍総司令官 エーリヒ・レーダー元帥であった。
「新たに戦艦や空母が手に入ったのは嬉しいが・・・・空母の航空隊をどう手配すれば良いんだ?」
レーダーが悩んでいたのは空母に載せるための、空母航空団であった。
現在ドイツが保有する空母には、空軍から派遣されている航空隊が展開しているが、この航空隊の指揮権は海軍ではなく空軍にあった。
無論当初は、海軍が指揮権を持つ予定であったが、空飛ぶ物は全て自分の指揮下に置いておきたいヘルマン・ゲーリングの横槍を受けた結果、今の状況であった。
「・・・・総統の威光を借りるしかないか・・・」
レーダーはそう判断すると、総統官邸へと向かうのであった。
「ハイル・ヒトラー!」
総統官邸に赴いたレーダーは、ヒトラーの目の前にいた。
「レーダー元帥か、西方戦役での海軍の働きに余は満足している。これで連合軍の連中もすぐには次の動きが出来ないだろう」
「総統閣下にお褒め頂き感謝しております。そこで1つお願いがあります」
「うむ、良かろう。余で力になれるのなら聞こう」
「ありがとうございます。今回フランスから鹵獲した艦艇の中に空母が含まれていますが、それに載せる航空隊を空軍から海軍へ移管させて頂きたいのです」
「その話か・・・・確か今ある空母には空軍から派遣された航空隊が使用されていたな・・・分かった、ゲーリングには此方から話をつけておこう」
「総統の寛大な御心に感謝します。つきましては、今後海軍で使用する航空機に関しても此方で採用できるようにしたいと思っております」
「分かった、今後も海軍には期待している」
レーダー元帥の要望が通った事により、ドイツ海軍は漸く自前で空母航空団が整備出来るようになったのである。