1941(昭和16)年 4月1日
この日帝国政府は、世界へ向けてあるプレスリリースを行った。
それは帝国理化学研究所が、ゼオライト触媒を用いて工業用排ガスから排出されるメタノールから高オクタン価ガソリンの精製に成功したというものであった。
最初世界中のマスコミは、この発表を東洋風のジョークだと考えた。
なぜなら発表された日が、エイプリルフールであったからだ。
そして面白半分で集まった取材陣の前で、研究所所長が真新しい金メッキを施されたバルブを捻ると、そこから本当にガソリンが出てきた事に、取材陣は驚き、速報をもって世界に流したのであった。
「何なんだこのニュースは!?」
帝国から発されたニュースにウォレス大統領は、新聞をグシャグシャにし、顔を真っ赤にしながら怒鳴った。
「これでは禁輸措置を取った意味が無くなるではないか!」
ホワイトハウスの大統領執務室には、ウォレスの他にコーデル・ハル国務長官や他の閣僚達が同席していた。
「この新しく精製されたガソリンのオクタン価は96以上との話が出ています」
フランクリン・ノックス海軍長官がそう発言した。
「・・・・まさか日本がそこまでの技術を持っていたとはな・・・」
ヘンリー・スティムソン陸軍長官は驚いたように言葉を漏らした。
「大統領閣下、ここは帝国政府に歩み寄りを見せては如何でしょうか?帝国はドイツとの同盟関係の解消に動きつつあるようですし」
「ハル、私は太平洋を日本と分け合うなんて事は考えていないぞ」
ウォレスは厳しい目付きでそう言った。
「兎に角、日本への圧力は掛け続けろ。日本が痺れを切らして戦争を起こしたとしても我々に劣る黄色人種が勝つことは不可能だ」
ウォレスはそう言いきると、国務長官のハルに議員への根回しを命じた。
無論それは、日本との開戦決議の際に、賛成するようにというものであった。
ウォレスの中では、既に日本との戦争は確定事項であり、日本を短期間で叩き潰し、その後ゆっくり自国の生産力を使って欧州を奪回していけば良いと考えていた。
そして戦後は、合衆国を中心とした新秩序の下、大日本帝国を解体し、工業力の全てを奪い、合衆国に牙を向かないよう飼い慣らしていけばよかった。
そして当事者たる大日本帝国は、アメリカ政府との外交交渉を続けながら駐米大使 山梨 勝之進にアメリカ中を回らせ、合衆国議員達との友好関係を築かせつつあった。
この帝国政府の動きは、後に合衆国政府による開戦決議の際に、効果を発揮することになる。
戦争の足音はすぐ近くまで響き始めていた。