いきなりですが、皆さんは『ブロリーmad』というものをご存知でしょうか?
簡単に説明をするのなら、ブロリーというキャラを愛した人達……通称『ブロリスト』と呼ばれる人達がそのブロリーが登場する映画や他の作品から音声などを集め、つぎはぎで繋ぎ合わせることでセリフを作り、ブロリーで一つの物語的な作品やギャグ動画、ゲーム実況の他にも歌を歌うなどなど……。そんな作品群をまとめて『ブロリーmad』と呼ばれています。
ちなみにブロリーってなんぞや?と思う人のために説明すると、大人気作品『ドラゴンボール』。その続編であるドラゴンボールZの映画『燃えつきろ‼︎熱戦・烈戦・超激戦』に出てくる伝説の
さて、何故わざわざそんな話をしたのかと疑問に思った人に答えますが、なんと自分はこの度転生してしまいました。
えぇ、転生なんです。死んだ理由は知り得ませんが何故か私は死んでしまい、気付けば神様らしき者の前でした。そしてあまりにも適当な手続きを経て、今世へと誕生しました。適当すぎて男性だったのに今世は女性ですよ。クソが。
女性となってしまったことはともかく、ここである程度の人は察しがついたことでしょう。神様転生をした者は大体が何かしらの力……今時の言い方ならチートを獲得します。
はい、私のチートは『ブロリーmad』だったんですよねぇ……。
「ンン……ンンンン!!ンンンンンンンン!!!出口が見つからぬぅ!!」
「へへっ、ブロリー。さっさとしろぉ!!」
「……クズがぁ。カカロット!まずお前から血祭りにあげてやる。」
「あっ、ヤベ!避難すっぞ!」
「イレイザーキャノン!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「……所詮、クズはクズなのだぁ。」
「1990、1991、1992……。」
薄暗い部屋の中、私は片手で逆立ちをしながら腕立て伏せをしています。外野ではいつものごとくコント染みた光景が広がっていますが、消し飛ばされたところで次の瞬間には復活しているので気にするだけ無駄です。
「なんて酷いことをするんだ!」
「カカロットの息子かぁ?」
「あんなやつ、もっと苦しめてやるんだ!」
「何ぃ!? な、なんてやつだ……。」
「1993、1994、1995……。」
一時的に消し飛んだ父親である悟空のことをあんなやつという息子の悟飯にブロリーがドン引きしていますが、私は引き続き腕立て伏せを続けます。するといきなり床に黒い穴が開いて私を飲み込もうとしてきましたので、空いている片手で穴に気弾をぶち込めばすぐに閉じました。これで数回目なんですが、いつになったらこの現象は収まるのでしょうか?
「はははは!いいぞぉ!ブロリー!このまま奴らを消し去ってしまえぇー!」
「親父ィ。五月蝿いです。」
「
「1996、1997、1998、1999、2000!」
ブロリーの父親であるパラガスが自身の息子にはっきりと拒絶され、部屋の片隅で泣き声をあげている中、最初に定めた数字に達したので私は腕立て伏せを終了します。
「申し上げます!ここの出口が見つかりましたぁ!」
「ダニィ!?」
しかしやることがないのでもう1セット同じことをしようかと思案していると、部屋の外であるものを探していた赤色のバイザーが付いたヘルメットを被ったパラガスの部下が私の前で膝をつき、欲しかった報告を行いました。それを聞いて反応したのは先程までずっとヘタレモードだったブロリーmadには欠かせないベジータです。
「早速出口へ向かう。ブロリー、後に続け。」
「はい。」
「モタモタするんじゃないぞ!一刻も早くフォォッ!?」
彼はブロリーを引き連れて部屋の外へ出て行きましたが、直後に先程私を飲み込もうとした黒い穴が現れてそこに落ちていきました。黒い穴はベジータを飲み込んですぐに消えてしまったので私達はベジータの行方がわからなくなりましたが、私からある程度離れたら勝手に近くでリスポーンするので無視でいいです。
「じゃあ、出口に向かいましょうか。案内をお願いしますね?」
「お任せ下さい!」
消えたベジータを無視して報告してきた彼に案内を頼むと、彼は勢いよく立ち上がり先導するように前へ出ます。それをブロリー達と共についていこうとすれば、彼と私達の間にどこからともなく現れた青年が割り込んできました。
「待ってください!もっと情報を集めてからでも……!」
「そういえばパラガスさん。あのアニメって何日に放送でしたっけ?」
「腐☆腐。今日でございます。」
「……えっ?じゃあ急がないと……!」
「ハァッ☆」
目の前に現れた青年トランクスの忠言を聞き流しながら私達が彼の横を通り過ぎると、後ろからいつもの声が聞こえてきます。何故かトランクスがこういったパターンで出てきた時はスルーしないといけない気がするんですよね。
最初に入った時とは一転して、迷路のような通路を皆さんと歩きます。ここって少年院だったはずなんですけど、いつからこんな愉快な施設になったのでしょうか?
とはいってもこの世界だとこんな現象が起こっても不思議じゃないんですよね。だって呪霊などという前世ではいなかった存在がいる世界ですし。そしてそれらを祓う呪術師という者達もいます。
さらに言えば、私はこの世界のことを物語だと知っています。『呪術廻戦』。それがこの物語の名前です。ここで概要などをペラペラ話せればいいのですが、残念ながら私は時間があった時にだけアニメを見ていた勢。原作のことを詳しくは知りません。ですが二次創作作品を一時期漁っていたので、ある程度の推測は出来ます。
しかし二次創作は所々改変があるのが常。信用しすぎるのはダメでしょう。それでも私が見てきた作品の全てが呪術師の上層部はクソと書いてあったので、これだけは確定してもいいでしょう。
さらに言えば、転生者は強力なチート……この作品に基づいて言えば術式を持っていることが多く、そのせいでこの作品の主人公である虎杖さんについていけば、転生者の力を恐れた上層部によって秘匿死刑となる確率がまぁ高いこと高いこと。
私のチート、もとい術式はすごく簡単に言えばブロリーmad関係のことが出来る術式で、私の周りにブロリー達がいるのもこの術式のおかげです。それだけを聞けばドラゴンボールのキャラと話せるなんて羨ましいと思う人もいることでしょう。しかし忘れてはいけません。私の術式はあくまでも『ブロリーmad』なんです。なので原作では優しい悟空がここではクズロットになるみたいなキャラ崩壊は当たり前のようにしていますし、彼らの話す言葉は一定のセリフ以外は他のセリフから抜き取った文字を無理矢理繋ぎ合わせた歪なものです。
それでもドラゴンボールの実力者を呼び出すだけでお釣りがくるほど強力なのは確かです。でも実を言うとデメリットもあってですね、この人達……勝手に私の呪力を使って出て来るんですよね。そしてブロリーといえば破壊の権化。術式なのである程度は私の言うことを聞いてくれますが、基本は自分の判断で動きます。そして興奮状態になってしまえば私の言葉すら届かなくなるため、物理で無理矢理止めない限り操作不可能な暴走特急となります。ちなみにパラガスが持っているブロリーを操る制御装置はここではただの飾りなようです。緑色にピカピカ光って奇麗ですよ?
そんな私の術式を知った上層部の判断なんて、どうせ死刑一択でしょう。なので関わらないのが1番です。
しかしそうと決断したとしても、呪霊というものは見つけてしまえばつい目で追ってしまうもの。自分の近くに危害を加えてくる可能性がある生物がいれば誰だって意識をそちらに向けるのは当然のことでしょう。そしてもし自分もしくは身内の誰かが餌食になってしまうなら、取るべき行動は祓う一択ですよね。二次創作ではそこで近くにいた呪術師に見られるなどしてバレることが多いです。
その点、私は安心です。常日頃からブロリーが悟空を消し飛ばしたり、ベジータを岩盤に埋め込んだり、パラガスをポッドごと潰して空の彼方に放り投げたり、トランクスをスルーしたり、ピッコロを蹴り飛ばしてから気弾で地平線の彼方まで吹き飛ばしたり、私の呪力を勝手に奪って生成したハリボテのシャモ星をデデーンしたりしているのですから。
それの何が安心だと思うでしょう?よく考えてください。そんなものが間近で起こっているのに周りに気付かれないように無視していれば、自然とスルー力は上がっていくのです。今の私のスルー力は悟空も思わず手加減しろと叫びたくなるほど高いはず。一度呪術師に呪霊が見えているのかと怪しまれて突然眼前を横切るように蝿頭を投げつけられましたが、瞬き一つせずにスルーして見せましたとも。仮にスルーを続ける私に呪霊が攻撃しようとしても、その前にブロリーが攻撃するので問題ありません。
他にも術式の行使で残る残穢を辿られたら厄介ですが、私まで辿り着けた人はいません。ですが引っ越しをする前は『窓』らしき人がちょくちょくと私の住む地域に現れていたので存在は認知されているのかもしれません。
ふぅ、ここまで長々呪術側に関わらない。そのためのスルー力はあるなどと内心ドヤ顔で語っていきましたが、実はこの状況、結構ヤバイです。これ、絶対原作展開ですよね?
うろ覚えですが、確か少年院で主人公が一時的に死亡するとかそんな展開だったはずです。でもまさかここがその舞台で、さらに今日だっただなんて普通は思わないじゃないですか。
こんなことになるなら来るんじゃなかったです。父がなんでか熱愛し、やっとの思いで再婚した母側の息子だからと顔合わせの意味も込めて面会に付いてきましたが、見事に呪霊の生得領域に巻き込まれてしまいました。
それで仕方なく出口を探し、やっと見つけたので皆さんで一緒に脱出しているわけですね。本当はここのヌシである呪霊を祓えればいいのですが、運が悪いことに全然会えなかったんです。探したくてもここにいるメンバーで探知に長けている者は悟空とピッコロだけですし、呪力さえ覚えればそこを目指して悟空は瞬間移動出来るので楽なのですが、肝心の呪霊が現れなければ意味がありません。
出口を探している最中に一体だけヌシっぽい白い呪霊が現れましたが、私がそちらを見る前にブロリーにぶっ飛ばされて壁に埋まってしまい、その後は出てこなくなりましたので恐らく違うでしょう。こんな生得領域を形成できるのです。あんな即落ち2コマをやらかす呪霊がここのヌシなわけないでしょう。
話が逸れかけました。つまり、何がヤバイかと言えば、主人公勢と出会う可能性があるのです。ですがまだ希望はあります。恐らく主人公勢は今も私と同じでこの中にいます。なのでここで私が先に出てしまえば彼らと出会うことはなく、この物語の舞台からおさらば出来るわけです。
最低でも補助監督とは出会うでしょうが、適当に話を濁して逃げればいいでしょう。仮に戦闘になってもブロリーに敵うとは思いません。ちなみにコトが終わるまで待機は無しです。先程も言った通り、私には見たいアニメがあります。
「申し上げます!もうそろそろです!」
「わかりました、ご苦労様です。外には私1人で出るので少しだけ皆さんを解除しますね?」
出口が近いという報告が届き、目を凝らして前を見てみると確かに出口らしきものが見つかったので、私は一度術式を解除します。理由はもちろん補助監督に私が術式などを持っていないと誤認させるためです。ちなみにここでキチンと理由を説明しておかないとブロリーは勝手に出てきます。過去に説明を怠り、何度かバレかけたことは苦い思い出です。
皆さんが消えたことを確認した後、気持ち早歩きで出口に向かいます。実は少し前に狼の遠吠えのようなものが聞こえたんですよね。恐らくあの遠吠えは主人公サイドで何かがあったサインです。私の推測では起承転結の承辺りだと思います。
きっとあの遠吠えを頼りに別々で行動していた主人公達が集まり、逃亡。その途中で主人公が誰かを庇って死ぬ感じでしょう。我ながら見事な推理ですね。惚れ惚れします。
これなら余裕を持って離脱出来るでしょう。出口を見つけてくれた彼には感謝ですね。今度トレーニングに誘ってみましょう。きっと喜んでくれます。
彼にピッタリなトレーニングも作らないと……、なんて考えながら私は出口の扉を開けて生得領域から脱出します。そして堂々と正門の方へ向かい──。
「なっ、生存者!?」
主人公サイドの1人。伏黒くんと出会ってしまいました。
んー、どうやって切り抜けましょうか……。
──────────────────────
「なっ、生存者!?」
戦えなくなった釘崎を補助監督である伊地知へ撤退させるために預け、避難区域を延ばすように要請した伏黒は1人残って生得領域で別れた虎杖を待っていた。もしもの場合の責任と覚悟を持って。
しかし待ち始めて1分ぐらいだろうか。まだ生得領域が展開されているにも関わらず、少年院のほうから1人の少女が歩いてきた。ウルフカットで童顔な黒髪黒目の少女。特に目を引くのが服装で、ぶかぶかで明らかにサイズがあっていない服とズボンを紐やベルトで縛り、無理矢理着用していた。
「こんにちわ、雨の中ご苦労様です。」
背後で悍ましい気配を放つ少年院があるというのに、その少女はニコニコと微笑みながら伏黒へ挨拶をしてくる。それがなんとも不気味で、伏黒は思わず構えをとった。突入前に読んだ巻き込まれた者のリストにはこの少女のことも記載されていたので、特級の生得領域に巻き込まれた被害者であることは間違いない。そんな彼女が恐怖などの感情を一切持っていないのがとにかく不気味だった。
「あの中にいた人で間違いないですよね?」
「はい、間違いありません。急に迷路みたいになっちゃって、困っちゃいました。」
伏黒の問いかけを彼女はあっさりと肯定した。実は少年院には入っておらず、帰る最中に伏黒と出会ってしまったと言われたほうがまだ信用出来たが、中がどうなっているかを答えられれば信じるしかないだろう。
「少年院には危険な毒物が仕掛けられたと避難勧告があったはずです。何故避難をしてないんですか?」
ひとまず伏黒は彼女のことを巻き込まれた被害者と認めたが、彼女の佇まいからまだまだ疑念が尽きず、避難をさせる前に質問をする。その伏黒の質問を聞いた途端、彼女は痛いところを突かれたと言わんばかりに目が泳ぎ、頬も恥ずかしげに紅潮し始めた。
「その……ですね。少年院へ行く前に食べたご飯で、その……あたってしまいまして……避難と乙女の尊厳を天秤にかけた結果、尊厳のほうが勝ってしまって……。」
もじもじと指を絡めながら伏黒から目を逸らし、恥ずかしそうに答える彼女の姿を見た伏黒は、思わず肩に入っていた力が抜けていくのを自覚した。ここで釘崎がいれば即座に少女のフォローに回っていただろうが、残念ながらここにいるのは伏黒のみ。フォローらしきフォローは無く、少女は少年院に取り残された理由とどうやって脱出したかまで全て話すこととなる。
しかし少女の話には当たり前のように嘘が混じっている。ご飯であたった云々は事実だが、避難勧告はブロリー達がいつも通りハッスルして騒がしかったので聞こえてなかった。そしてどうやって脱出したかについては嘘しかない。だが少女があまりにも堂々と話すことと、伏黒が消耗しているのに加えて虎杖のことに意識が割かれていたので、疑わしいがまぁ信じる程度の位置に収まった。
「話はわかりました。でもこの場所はまだ危険です。怪我がないならそのまま避難を──!」
「はい、では失礼します。」
この場が危険であることは事実であるため伏黒は彼女へ避難を促すが、その言葉は途中で途切れて彼は弾かれたように少年院の方へ振り向いた。その隣では言葉を区切った場所が場所なので少女が丁寧に頭を下げて別れの挨拶をしていたが、その姿が伏黒に見えることはない。
「(生得領域が閉じた!特級が死んだんだ!あとは虎杖が無事に戻れば……!)」
少年院の方を見たまま動かなくなった伏黒に、これ以上話すことはないだろうと少女は少年院から出ていこうとする。その表情は無事に切り抜けたと思っていそうなニコニコ顔だったが……。時間切れである。
「残念だが、奴なら戻らんぞ?」
いつの間にか伏黒の背後に現れたのは虎杖……ではなく両面宿儺。彼の出現により伏黒は硬直するが、宿儺は気にすることなく話を続けようとする。しかし──。
「そう怯えるな。今は機嫌が良い、少し話そう。だが──」
伏黒の前に移動した宿儺は途中で言葉を切り、伏黒のその更に後ろを見る。その行為に一瞬だけ伏黒は疑問を抱いた表情をしたが、直後にそこに誰がいるのかを思い出したのか宿儺を止めようと反射的に腕を伸ばす、が。
「止め──!」
「アレは要らん。不愉快だ。」
宿儺の指が振るわれた。瞬間、少女の首に飛ぶのは不可視の斬撃。
「あ、10円です。」
しかしその一撃は少女が道に落ちていたお金を拾おうとしゃがみ込んだことによって不発となった。少女に振るわれたにしては大きすぎる斬撃はそのまま飛んでいき、住宅街に長い一文字を刻み込む。
「ほぉ?なかなか運が良い奴だ。」
「待て!ぐぅ!?」
その神回避を見た宿儺は自分を止めようと駆け出してきた伏黒に裏拳を叩きつけることで退かせ、今度は少女を注視しながら縦の斬撃を放つ。
「あ、スーパーに用があるんでした。」
しかしその斬撃も今度は今思いついたと言わんばかりに少女が右へ逸れたため不発。先程の一文字と同じところに斬撃は命中し、新たな文字を刻み込む。
「ケヒッ、おい小娘。」
「……はい、なんでしょうか?」
少女を注視していた宿儺は心底愉快そうに口角を吊り上げて少女に呼びかける。その呼びかけにあと少しで道から逸れて宿儺の視線からフェードアウト出来そうだった少女は止まり、にこやかな表情だが内心では面倒臭そうなのに絡まれたと思っていそうな態度で振り向いた。
「お前、名は?」
「舞戸 砕と申します。」
「舞戸 砕か。ケヒッ、お前、先程の斬撃が見えていたな?」
「なっ!」
宿儺自らが相手の名を聞き、さらに舞戸が宿儺の不可視である斬撃を視認出来ていたということに驚愕する伏黒。そのあまりの驚きに目を離すべきではない宿儺から目を離し、舞戸の方へ視線を向けてしまう。
「さぁ?斬撃とはなんのことでしょうか?」
「ほぉ?まだ惚けるのか。あぁ、そんなに身構えるな、だがそうだな……そのまま惚けるのなら──、直接確かめてやろう。」
そう呟いた宿儺の姿が掻き消え、次の瞬間には彼の姿は舞戸のすぐ隣に現れていた。伏黒は舞戸を見ていたため、いきなり宿儺が彼女の隣に現れたように見えただろう。
宿儺は拳を握り、舞戸の顔面に向かって殴打を繰り出す。その表情は笑みを浮かべており、心底愉しそうに見えた。その理由は単純で、舞戸は宿儺が隣に現れた時点で宿儺の方を見ていた。つまり彼女は宿儺の瞬間移動を正確に捉えていたこととなる。
繰り出された殴打を舞戸は首を傾けることで躱し、次に放たれた足を狙った蹴りは跳び上がることで回避。その際に身体を捻りながら跳び、蹴りを放った体勢の宿儺の顔面に向けて勢いが乗った回し蹴りを繰り出すが、それは片腕を盾にされたことで防がれる。しかし少女が放ったとは思えない威力が蹴りには込められており、それを腕で受けた宿儺はその衝撃の分だけ地面を滑らせられた。
「小僧の肉体にも関わらず身体に響くな。なかなかの威力だ。」
「日々鍛えていますから。それより帰って良いですか?楽しみにしているアニメがあるんです。」
「ケヒッ、駄目だ。もっと魅せてみろ。」
宿儺に即答で帰宅を拒否された舞戸は伏黒の方を見た。その目はこの人どうにかしてくださいよ、身内でしょ?と言いたげで、その視線を受けた伏黒は思わず視線を逸らしそうになったが、それをグッと堪えて逆に懇願するような目で見返した。伏黒からすれば虎杖が戻ってくるまで宿儺を止めていられそうな人物がいるのだ。舞戸がどんな人物かは判らないが、ここは縋るしかない。
そんな目で逆に見返されてしまった舞戸は、深いため息を吐いた。本来なら恐らくここで彼と目の前の人物の戦いが行われていたのだろうと理解してしまったからだ。既に自分のせいで原作改変が始まっているのは確実。
「ブロリーさん。」
どぉするんですかぁ!と内心でヘッドバンギングを行いつつ、舞戸は仲間の名前を呼ぶ。すると舞戸がいる真横の空間が歪み、最初からいたかのように筋骨隆々の大男が姿を現し、ついでにゾロゾロと呼んでもいない仲間が現れる。
「それがお前の術式か!」
「ブロリーさん、思う存分相手をしてきてください。でも周りにはあまり被害を出さないように。」
「出来ぬぅ!!」
「出来ぬぅじゃないです、しろ。」
「……はい。」
「そして呼んでもいないのに勝手に出てきたパラガスさん。丁度いいのであの人の『解説』をお願いします。」
「腐☆腐。お任せください。地獄に行ってもこぉんな解説は見られんぞぉ〜。……奴の名は『両面宿儺』。それは──」
舞戸の隣に現れた筋骨隆々のブロリーと呼ばれた大男。その姿を見た伏黒は思わず自身の目を疑った。ブロリーから放たれている呪力は明らかに特級クラス。一瞬だけ黒髪で細身の男になったような気がするが、瞬きをすれば元の金髪の大男に戻っていたので恐らく宿儺の裏拳を受けた時に揺れた脳が見せた錯覚だろう。
そしてもう1人、褐色の男。彼は呪力こそ大男には劣っているが、宿儺を見るなりベラベラと伏黒から見ても無駄な動きを交えつつ情報を話していく。その中には伏黒も知らない情報が混ざっており、そのことから情報収集のような術式を持っているのかもしれない。
「イェイ!」
「ケヒッ!」
伏黒が現れた舞戸の式神であろう2人の情報を収集しているうちにブロリーが動き出し、剛腕を宿儺に向けて振るう。その殴打に宿儺も殴打で応え、二つの拳が激突。辺りに衝撃波を撒き散らしたあと、宿儺が押し負けて吹き飛んだ。
吹き飛んだ宿儺だったが、追い付いたブロリーが蹴り上げたことで行き先を空へと変更。しかしその脚をまた追いかけてきたブロリーが掴んだため、強制的に空の旅は終える。代わりにブロリーのパワーで地面へ投げられたため、今度は地面に行き先が変わるだけだが。
そのまま着弾すれば犬神家待ったなしだが、宿儺は両手だけで身体を支え、更に衝撃を地面に逃す。衝撃を逃し終えたら即座にバク転でその場を離れ、直後に宿儺がいた場所へブロリーの踏みつけが襲いかかった。
「アハハハハハァ!!!!」
「良い!良いぞ!!もっと俺を愉しませろ!!」
踏みつけの勢いで道路に太もも辺りまで埋まったブロリーだったが、次の行動がまさかの前進。高笑いをしながら道路を割って強引に突き進んでくるブロリーに宿儺は心底愉しそうな笑みを浮かべながらもこのままだと不利だと悟り、まだまだ戦闘を愉しむために少年院にいた特級呪霊から取り返した指を飲み込んだ。
「これ修理代こっちに来ないですよね?」
「心配することはない。そうなる前にとんずらすれば良いのだからなぁ!ふふ、ふははははは。」
どんどん勢いを増す2人の戦闘、それと比例して飛ぶ斬撃や気弾によって拡大していく周りの損害に舞戸は遠い目をしながらパラガスへ問いかけ、答えになっていない答えをパラガスは返す。
「ところでパラガスさん。アニメまであと1時間ぐらいなんですけど、今から帰っても間に合いますよね?」
「腐☆腐、既にアニメは始まっております。」
「……え?だってまだ時間は……。」
「よぉく見てみろ。時計の針が動いて、ない!」
そんな中、ここ辺りの地理を詳しく知らない舞戸がここからでも間に合うかを確かめるようにパラガスに聞けば、アニメは既に始まっているという無慈悲な現実を突き付けられた。舞戸はあり得ないと時計を確認するが、パラガスの言う通りに時計の針が動いておらず、壊れていることがわかる。それを理解した舞戸は思わずといったふうに膝から崩れ落ちた。
「リ、リアルタイムで見る楽しみが……!」
「リアルタイムで見れるなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。」
「……はぁ?」
「
「ねぇ、パラガス。今・私に・なんて言ったか・もう一度教えてくれませんか?」
「ひ、避難だぁ!」
伏黒が膝をついた舞戸のことを呪力切れでも起こしたのかと心配するなか、舞戸に睨まれたことで自らの失言に気付いたパラガスは彼女から逃げるように走り出し、近くに何故か置いてあった1人用のポッドへ乗り込んだ。が、パラガスがポッドへ乗り込むと、ほぼ確定でとあるお約束が発生する。
「ブ、ブロリー……。」
「親父ィ、どこへ行くんだぁ?」
ポッドへ乗り込んだパラガスは、ポッドの目の前まで歩いてきたブロリーを恐怖の目で見つめる。それに対してブロリーがしたのはただの問いかけ。しかしこれで彼の求む答えを出さなければ、どうなるかなんて明らかだ。
「お、お前と一緒にアニメを録画する準備だぁ!!」
パラガスの言葉に、ブロリーは反応しない。1秒、2秒と時間が流れ、パラガスの頬から冷や汗が垂れる。ちなみにブロリーがここに来ているということは宿儺はフリーとなっているのだが、彼は現在やる気が溢れたベジータと戯れている。
やがてブロリーはニヤリと口角を上げた。それを見たパラガスは自身の勝ちを確信し、ブロリーと同じように笑みを浮かべたが……。
「1人用のポッドでかぁ?」
「あ〜う☆」
ブロリーから放たれた言葉で失敗を悟った。大体ブロリーがこのセリフを言った場合の末路なんてわかっているのだ。現にブロリーはパラガスが搭乗するポッドを両腕で掴み上げている。
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
「おぉ!?うおおお!?自分の子供に殺されるとは、これもサイヤ人の定め、か……。」
掴み上げたパラガス入りのポッドをブロリーは頭上に掲げた状態で潰し始める。突然味方殺しを始めたブロリーを伏黒は訳がわからない表情で見つめているが、そうこうしているうちにペチャンコになったポッドが出来上がり──。
「うぉおおおああああ!!!」
「貴様はこの俺、サイヤ人の王子ベジータが──ふぉおお!?」
思いっきりぶん投げた。ポッドが飛んでいったその先にいるのは敵対している宿儺……ではなく彼と戦っているベジータ。ベジータがカッコよく親指で自身を指差したと同時にポッドが彼の胴体に直撃。共に飛んでいき、何故か生成されていた岩盤にめり込んで巨大なクレーターを形成した。
「はぁ、悟空さん。帰りましょうか。瞬間移動をお願いします。」
「えぇ?しょうがねぇなぁ。オラも腹が減ってきたし、いっちょやってやっか!」
遠くに見える巨大なクレーターが出来た岩盤が役目を果たして呪力となって消えていくのを見届けたあと、舞戸は疲れた様子で呟くと悟空を呼び出した。彼女の言い方的にこの場から一瞬で離れることが出来るのは確実で、伏黒はそれを止めようとしたが、それよりも早く止める者がいる。
「ならぬ。お前がこの場から離れるのを禁ずる。破ればそうだな。ここら一帯の生物を鏖殺しようか。」
「どうぞお好きに。というか、これだけ騒いだのですからそろそろ増援が来るはずです。その方達と遊べば良いじゃないですか。」
宿儺の静止を舞戸は容易く無視した。その言い方は自分に関係のないことなどどうでも良さげなようで、呪術を扱う者として彼女もしっかりとイカれていた。
「ふむ、ならこのまま消えた場合、お前が先程から気にしているアニメとやらを作っている場所を潰しにいくとしよう。」
「………。」
「ケヒッ、人を人として見ていないお前でもそれは困るのだろう?」
呪術師の大半は宿儺の鏖殺発言には眉を顰めるなりの何らかの反応を示す。が、勿論中には別に気にしない者やむしろやってほしいという者もいる。しかし舞戸はそのどれとも違う別の反応を示した。それは無関心。生きとし生きるものに何らかのフィルターをかけ、それを通して人を見ている。なので何が原因でも死ねばそこまでだと、それがこの人物に定められたものなのだと本気で考えている。故に例え親しい者を殺されても気にしない。
だから宿儺はお気に入りを破壊すると言った。誰だって気に入っているものや楽しみにしていたものを潰されると少なくないショックや苛立ちを覚える。それを狙っての発言だったが、どうやら舞戸にもそれは刺さったようだ。
「……はぁ、わかりました。戦いますよ、戦えば良いんでしょう?」
髪をグシャっと握ったあと苛立ち気な声を漏らしながら舞戸は一歩踏み出した。その身体からは青白い呪力が溢れ始める。
見たかったアニメはリアタイで見れなくなり、さらに初対面の宿儺には周りに隠していた転生者故の価値観を見抜かれた上で暴露され、舞戸は少なからず苛立っていた。
「むしゃくしゃします。どうせなら全力で暴れてやる!」
「ゑゑッ!?」「ヘェアァ!?」「ダニィ!?」「避難すっぞ!」
そんな舞戸の発言に驚くのは彼女の仲間達。彼らは舞戸の発言を聞くなりそれぞれの方法で舞戸から距離を取り始めた。
どんどん彼女の身体から呪力が溢れ始め、止まる気配はない。そんなことをすればすぐにガス欠になるはずだが、舞戸の場合は更に量と質が向上していく。
さて、彼女の術式で呼び出されるキャラクターは大抵が戦闘民族であるサイヤ人だ。そして舞戸はそんな彼らに任せっきりにするのを良しとせず、自らも強くなって戦闘に参加するために彼らに教えを乞うた。
舞戸の身体は刻まれた術式によって、ドラゴンボール世界の彼らに似通った構造をしている。流石に種族が違うため超サイヤ人などにはなれないが、それ以外はほぼ同じだと言ってもいい。
「ふぅ〜。」
溢れ続ける呪力。彼女の髪が逆立ち始め、呪力の出力に舞戸の足がついている道路が砕けてコンクリートの破片が宙に浮かんでいく。
「はぁぁぁああああ!!!」
叫び声をあげた舞戸からさらに溢れんばかりの呪力が解放された。その際に発生した光に伏黒と宿儺は目を覆い、光が収まってから見えたものに思わず目を見開いた。
そこにいたのは筋骨隆々の姿となった舞戸。筋肉の膨張によって背がかなり伸び、服はピッタリのサイズとなった。巻いていた紐やベルトなどは一部を除いて弾け飛んでいることから、舞戸の服装はこの姿を基準としていることがわかる。
「おおぉぉぉあああああ!!!!」
舞戸が吼えると彼女から際限なく呪力が溢れ出し、彼女自身も浮かび始める。感じられる威圧感は先程までの生優しいものではなく、油断してしまうと次の瞬間には叩き潰されていそうな鋭いものとなっている。
そんな舞戸の姿を見た宿儺は両手を思わず震わせ、ゲラゲラと笑い始めた。そして今すぐ味見をしたいと彼女の下へ歩き始め、直後に別の何かが原因で手が震え始めていることに気付く。
「……小僧め!つくづく不愉快だ!」
こんな良い時に邪魔をするんじゃないとなんとか操作権を奪おうと抵抗してみるが、どうしようもない。ならばと宿儺は伏黒の方へ向き、伝言を残す。
「奴は必ず引き込め。このまま姿を消されてはつまらんからな。出来なければ、わかっているな?」
舞戸の変貌に未だに思考が戻っていなかった伏黒へ向けて、自身が今出せる最大の殺気と共に宿儺は命令する。その殺意に硬直し、返答を言えないでいる伏黒がなんとか口を開く前に、宿儺は虎杖に身体の操作権を取り戻されて奥へと引っ込んでいった。
「なぁ、伏黒。戻って早々で悪いんだけどさ……。あれ、どうにか出来ない?」
戻ってきた虎杖は頬をひくつかせながらとあるものを指差した。その指の先にいるのは勿論舞戸。彼女の目はブロリーと同じように白目のみとなっており、どう見ても正気を保っているようには見えなかった。
「……悪いが無理だ。逃げるぞ虎杖。」
「ですよね〜。」
2人は未だに叫んでいる舞戸に捕捉されないように徐々に距離を離していく。しかしある程度距離を離したところで舞戸が2人の方を向き、虎杖をゆっくりと指差した。
「両面宿儺、お前を血祭りにあげてやる。」
「ちょっと待て!俺は虎杖!宿儺じゃねぇって!さっき戻ったんだ!信じてくれ!うぉぉぉぉおお!?」
虎杖の弁明を聞く耳持たずに突っ込んできた舞戸の拳による振り下ろしを虎杖は全力で避け、拳が地面に当たって巨大なクレーターを形成したのを合図として虎杖と伏黒の逃亡が始まった。
オリ主……実は白目になるかどうかは自由だし、フルパワー形態でも理性はある。ある程度暴れたら悟空の瞬間移動で逃走。
虎杖……逃走中に意を決して攻撃。一撃でダウンさせたいため顎を狙ったものの、ノーガードで受けられ更にノーダメージ。それに思わず呆然としてしまい、その隙に髪を掴まれて持ち上げられて強烈な腹パンをもらって吹き飛ぶハメになる。
伏黒……逃走中に大蛇を壊された。
宿儺……邪魔なものを排除しようとしたらまさかの展開だった。オリ主は歯応え抜群の肉料理群。軽く味見をした時点で楽しめると確信したのでいざ実食!って時に邪魔が入った。自分の生得領域でブロリー以外の奴はどんな感じだろうと考えている。
簡単オリ主プロフィール。
名前:舞戸 砕
身長:166センチ(フルパワー形態時:182センチ)
趣味:筋トレや特訓(少年漫画風の無茶なもの)
術式:ブロリーmad
縛り:一定以上の出力で決められた量の呪力を放出しないとフルパワー形態になれない。(この縛りのおかげで普段は細身の女性の姿になっている)
天与呪縛:無し
最近の一言:重力特訓場が欲しいです。
概要:誰が相手でも丁寧語で喋るが、フルパワー形態時はそんなことはしない。サイヤ人の中でブロリーを師匠としてほぼ毎日死と隣り合わせな特訓を受けていたので、ブロリーの技はほぼ全てを使える。転生の際にブロリー達を満足に動かせるようにと桁外れの呪力量を設定されており、本人もそれを自覚している。
この世界が物語と知っているため、誰が死んでもこのキャラはここで死ぬ設定だったんだと考えている。なので親しい者が死んだと知らせが来ても特に反応はしない。したとしてもあぁ、残念程度。そして意外と短気。私生活では前世のずぼらな生活が出てくるので、部屋ではぶかぶかのシャツ1枚に短パンが標準装備。
ブロリーmad製のブロリー達が出てくる話がないな。なら自給自足しようとのことでこの話が爆誕。満足したので自給自足は終了します。
もっとブロリーmadの話、増えないかなぁ……。
そういえば呪術廻戦の世界ってドラゴンボールという作品が存在しているような発言を虎杖がしてるんですよねぇ。原作の術式がカッコイイ名前ばっかりだし、仮に誰かにオリ主の術式の名前を話すならここら辺を参考にしてカッコイイ名前をつけたいところ……。