術式:ブロリーmad   作:フドル

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誤字脱字報告に加えていつも感想ありがとうございます。

想定よりガッツリ戦闘シーンを書いてしまった……。


味方の強化イベントを減らすのは嫌派。

 鳥の囀りや木々のざわめきが聞こえる森の中で、パンパンと私の両手に付いた土埃を払う音が響きます。その周囲では気絶したフリをするパラガス達が木の枝などに引っ掛かっていますが、妥当な姿です。

 

「残りは悟空さんですね。いつもはすぐに捕まる癖にお約束の時だけは無駄にしぶとくなるのは何故なんですかね? ほら、皆さん早く起きてください。行きますよ。」

 

 私が声をかけると今の今まで気絶したフリを続けていたパラガス達はムクリと起き上がりました。全員が集まったことを確認してから一度術式を解き、パラガス達を消します。出したままだと絶対に色んなところへ行こうとしますからね。気分的には自由気ままに動く大量の犬を散歩に連れていっている感じです。

 

 全員がキチンと消えたことを確認した後、悟空とブロリーが走っていった方へ向かいます。早く回収しないと何をするか分かりませんからね。人を殺すことはないでしょうが、例えば2人の追いかけっこルートに誰かがいた場合だとその限りではありません。というか手加減したブロリーのラリアットでも当たればこの世界の住民では余裕で気絶する威力があります。

 

 呪力で身体強化が出来る術師なら問題ないと思っていますが、もしもがあります。そう考えながら走っていると、目の前に人だかりを見つけました。

 

 その中で唯一私がしっかりと姿を確認出来たのは虎杖くんだったので東京校の皆さんに追い付いたと思ったのですが、近寄るにつれて虎杖くんの横に着物みたいな制服を着た男性が弓を片手に倒れ込んでいることに気付きました。倒れ込んでいる地面には蜘蛛の巣みたいなヒビが入っており、まるで凄い力で叩きつけられたように感じます。

 

 ……はい、この男性は何らかの理由でブロリーからラリアットされましたね。周囲の状況を見た感じですとブロリーの進路上にこの男性が入ったのでしょう。

 

「虎杖くん!この人は誰ですか⁉︎手短にお願いします!」

「対戦相手の京都校の人!」

「なら敵ですね!オッケーです!任せてください!」

「殺すのは駄目だからね⁉︎」

「虎杖くんが私のことをどう思っているのかがよぉくわかりました‼︎後で覚えといてくださいね‼︎」

「えっ!ヤダ‼︎」

 

 短いやり取りで最低限の情報を集めながら走る速度を上げていきます。そして虎杖くんが立っている木々が無い小さな広場に出れば、周囲の様子を見やすくなり、そこで京都校の皆さんが虎杖くんを包囲していることがわかりました。

 

 ふむ?虎杖くんの役割って東堂さんの相手だったと記憶していたのですが、何かあったのでしょうか?案外見つからなくて探しているうちに京都校の団体さんとバッタリ……みたいな感じだったのかもしれません。

 

 まぁ、すぐ近くに弱っている人がいるのですから、考えるのは後にして先に脱落させてしまいましょうか。

 

 思考を切り上げ、一歩一歩の踏み込みを強くします。そして未だにダメージが残っているのか立とうとしても腕と脚が震えて四つん這いになるのが精一杯の様子の男性へ詰め寄り、ガラ空きの胴体に蹴りを放って空へ蹴り上げます。

 

「グボォ⁉︎」

「加茂先輩!」

 

 虎杖くんとの模擬戦の反省を活かし、かなり力を抜いた蹴り上げのお陰で男性は胃液だけを吐いて吹き飛びました。その姿を見た水色髪の少女が男性の名前を叫んでいますが、私は上手く力加減が出来た喜びでいっぱいです。

 

 脚を止め、即座に五条さん監修で威力調整をした気弾を生成します。そして蹴り上げた男性……加茂さんに向かって撃ち出そうとしますが、視界の端でチカッと何かが光ったのを捉えました。

 

 間髪入れずに飛んできたのは熱線。パッと見た限りでは私にダメージが入る威力ではありません。わざと命中して無傷な姿を見せつけるというボスキャラムーブをする必要はどこにもないので躱そうとしましたが、ここで私の背後に虎杖くんがいることに気付きます。このまま私が熱線を避ければ空へ蹴り上げられた加茂さんに意識が向いており、更に私の身体が熱線の光を遮っているのでそもそも接近に気付いていない虎杖くんでは躱せないでしょう。

 

 私か虎杖くんのどちらかに被弾する可能性が非常に高い良く考えられた攻撃です。まぁ、私が対処すればいいだけの話ですが。

 

 気弾を持つ手とは逆の手に気を纏って熱線を真正面から受け止めます。明らかに今回のルールで撃って良い部類ではないと思うのですが、遠慮なく撃っているということはこれぐらいなら問題ないのでしょうか?術師は意外と頑丈なのかもしれません。

 

 熱線を素手で押さえ込まれるとは思っていなかったのか、放った張本人であろうロボットが驚愕している気配を感じます。その隙だらけの身体に一瞬だけ気弾を撃つ対象を変えようかと考えましたが、躱す可能性を考えればやはり先に蹴り上げた方を狙った方が良いでしょう。

 

 ロボットから視線を逸らして再び蹴り上げた加茂さんを狙えば、そうはさせまいと妨害が飛んできます。恐らく腕を逸らす目的で放たれた弾丸は見事に狙い通りの場所へ命中しましたが、その程度で私は止まりません。ゴム弾なら尚更です。しかし最近のゴム弾は銃弾とそっくりなのですね。潰れた先端などの再現性もバッチリです。

 

 効果が無いとわかったのか茂みから水色髪の少女が走ってきますがそれは流石に間に合いません。彼女が自身の刀を抜刀する前に下から掬い上げるように気弾を加茂さんへ放り投げます。

 

 真っ直ぐに飛んでいく気弾。加茂さんもそれに気付いているのか持っていた弓を盾のように構えて防御態勢に入っていますが、私の気弾を甘く見られては困ります。

 

 1人目脱落。そう心の中でカウントし、次の相手を決めようとした時でした。

 

「あれ?」

「舞戸⁉︎」

 

 パァンと手を叩くような音が聞こえたと思えば私は空から地面に落下している最中でした。そして視界には地上が見えており、虎杖くんの驚いている顔が見えます。

 

 そこまで状況を把握したところでお腹に何かで殴られたかのような感触を感じました。落下中の風を切るような感触から空へ浮かび上がるような浮遊感へと変わるのを感じつつ、視線をお腹へやればそこには私が放ったはずの気弾があります。

 

 もしかしてと思って私がいたであろう場所を見ればダメージから復帰した加茂さんが立って私を見ています。……どうやら何らかの技で私と彼の位置が入れ替わったようですね。

 

 とりあえず先に今の状況を何とかしましょうか。まずはお腹に当たっている気弾を右手で握り潰します。その際に小規模な爆発が発生しますが、威力調整をしていたこともあってダメージが入るどころか服が破れることもありません。やっぱりこの威力は弱すぎますね。

 

 私を空へ運ぶ役割の気弾が潰れたことによって自由落下が始まります。しかしこの程度の高度なら不時着でもなんの支障もないため特に何もしないで落下し、両足をついて着地します。その際に地面に足がめり込みましたがこれは上空から落ちたからであり、決して私が重いからではありません。

 

 そんな言い訳を脳内で行いつつ、合流のために先程の場所と今いるこの場所との距離を測ります。今すぐ今頃は京都校の皆さんからリンチにあっているであろう虎杖くんを救出するのならここから気功波なりをブッパすれば良いのですが、ほぼ確実に虎杖くんを巻き込む上に威力調整を失敗すれば相手を殺しかねません。なので今回のルールでは実行出来ません。

 

 なら走って行くしかないですね。地を踏み締めて虎杖くんがいた場所へ急ぎます。しかし到着してみれば京都校の皆さんはいなくなっており、虎杖くんは東堂さんと何やら青春をしていました。

 

 ふーむ、乱入することは可能と言えば可能なのですが、私でもここで乱入するのは無粋だと理解出来ます。2人の会話を聞く限りでは東堂さんは虎杖くんを成長させようとしているみたいですし。

 

 つまりこれは原作で言うところの主人公成長パートです。それを妨害するなんてとてもじゃないですが出来ません。ここは退散するしかないでしょう。

 

 東堂さんは私の存在に気付いていたようなので会釈だけはしておき、虎杖くんに見付かる前にそそくさとこの場を後にします。

 

「腐☆腐、今こそ彼らに私の領域展開を見せてやろうではありませんか!」

「ふん!」

「どぅぅわ!」

「汚いから片付けておけよ。そのボロクズをな。」

「はい、一生懸命に……。」

 

 撤退途中で2人の青春に触発されたパラガスが領域展開♂をしようとしましたが、即座にベジータに鎮圧されました。パラガスの領域展開♂は見るに耐えませんのでこの行動はナイスとしか言いようがないです。どれだけ嫌なのかと言えば展開の気配を感じた瞬間にみんながパラガスを攻撃するぐらいです。一度見たことがある私もあれは正気の時に見てはいけないものと断言出来ます。

 

 さて、モアがパラガスを埋めている間にブロリーの回収に向かいましょうか。虎杖くんがピンチだったので優先順位を変えていましたが、問題無しとなったのなら本来の目的に戻ってもいいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事にブロリーの回収を完了しました。ブロリーの片手には今世の親の顔よりも見た回数に自信があるボロボロ姿な悟空が握られていましたが、お約束ではいつものことなので気にしてはいけません。

 

 そして目的を達成したのでやっと遊撃の役割を始めることが出来ます。予想よりしぶとく悟空が逃げ回ったおかげでかなり時間が経っています。ここからは少し急ぎましょうか。

 

 そうやって走り出そうとした私でしたが、突然周りの木々を薙ぎ倒しながら木の根っこが迫ってきたことでその行動は中断されます。咄嗟に気の刃を作ってそれらを丸ごと切断しようとしますが──。

 

【逃げろ】

 

 その言葉が聞こえた途端、私の身体は今の行動をやめて根っことは逆の方向へ走り出しました。初めての事態に軽く混乱してしまいますが、そんな私と並走するような形で狗巻さんが近寄ってきたことで彼の術式を思い出し、何故こうなったのかを理解しました。

 

 ようするに彼の呪言によってこうなったのでしょう。感触的に無理矢理キャンセルすることも出来ましたが、今となってはしないほうが良かったと思います。

 

「狗巻さん、これはどんな状況なのですか?」

「しゃけ いくら!」

「……なるほど、わからないことがわかりました!」

 

 迫る木の根を気弾で消し飛ばしつつ、狗巻さんに状況を聞きますが返答がおにぎりの具材なため全く判りません。あ、閃きました。

 

「パラガスさん、今の言葉を解説してください!」

「明日まで!明日までお待ちください!」

「無理ってことですね!」

 

 もしかしてパラガスなら出来るのかと思いましたが、反応的に無理なようです。回り込んできた木の根に引っかかって転倒し、そのまま迫る別の木の根に呑み込まれたパラガスを放置して次の手を考えますが、そもそもこれは誰の攻撃なのでしょうか。

 

「狗巻さん、これはいつものことなのですか?」

「おかか。」

「それは否定……ですよね?」

「しゃけ。」

「ならこれをしているのは京都校の人ですか?」

「おかか。」

 

 最初の質問が首を振って否定されたことでこれはイレギュラーだということがわかりました。そしてこれをやったのは京都校の人ではない。ならやることは単純です。

 

 要は全部吹き飛ばせばいいんですよ。

 

 生成した気弾を握りしめて手の中で圧縮を開始します。この木の根による攻撃が京都校の誰かの術式なら迎撃にも加減をしなければなりませんが、部外者なら話は変わります。

 

 出来上がった気弾を津波のような勢いで私達に迫る木の根に向かって放り投げます。木の根に呑み込まれた気弾は数秒後に光を放ち、大爆発を起こしました。

 

 バラバラに砕け散る木の根と何故か無傷のパラガスが大爆発によって空へ巻き上げられます。気弾によって視界を塞ぐものが消し飛んだことで開けた景色の中から目的のものを探し出し、見つけるなり私は距離を詰めてガラ空きの胴体へ飛び蹴りを放ちました。しかしその蹴りは直前に差し込まれた腕によって防がれたので、代わりにその腕を蹴り砕いておきます。

 

『!!?』

 

 相手は自分の腕がこんな少女に蹴り砕かれるとは考えていなかったのか怯んでいます。なのでその隙に回転して今度は遠心力を利用した回し蹴りを頭部にぶち込んで蹴り飛ばしました。

 

 ですが意外と頑丈だったので殺せませんでした。そこらへんにいる呪霊だと容易く頭が粉微塵になる威力だったのですがね……。

 

「あれって侵入者ですよね?」

「しゃけ。」

「だとしたら少し困りました。流石に単独で侵入してくるとは思えません。」

 

 敵地に来るのです。それなりの目的とそれを達成出来る戦力を抱えていると考えるのが自然でしょう。そうなれば他の人達が心配です。この世界は主要人物でも割とコロコロ死ぬらしいので今回のこの襲撃で誰かしら死ぬ可能性があります。

 

「ブロリーさん、悟空さん、ベジータさんにピッコロさん。各自散開して他の人達の援護をお願いします。京都校や東京校は関係無しです。」

 

 目の前の呪霊がどの程度の実力を有しているかわからない今、戦力を集中させるよりか分散させて他の人達の援護に向かわせたほうがいいと判断しましたのでブロリー達を他の人達へ派遣します。いつもなら軽くボケの一つや二つを挟んでくるパラガス達も事態の深刻さがわかっているのか何も言わずに散開……してませんね。いつものように喋ろうとしたパラガスとベジータはブロリーに口を掴まれて物理的に黙らされ、そのまま連れ去られていきました。

 

 というかしれっと連れて行ってますがパラガスは必要なので置いていってほしいのですけど……、おーい?聞こえてますかー?

 

 ……聞こえてませんね。仕方ありません、ここは私1人でお相手しましょう。

 

 奥から再び姿を現した人間で例えるなら眼球があるはずの部位から角のような枝を生やす呪霊に対し、狗巻さんを庇うようにして私は前に出て構えを取りました。

 

─────────────────────

 

 

 

『何です、何なのですかこの人間は?』

 

 舞戸と対峙する呪霊、花御は軽く困惑していた。その原因は勿論目の前にいる舞戸だ。事前情報ではここにいるのは花御なら余裕で相手出来る者ばかりのはず。なのにどうだ?今も舞戸が放ったパンチで花御の右腕が折れたではないか。

 

 舞戸が一方的に攻撃出来ているのはまだまだ花御が本気ではないのもあるが、肉体の強度はとっくに呪力で強化している。それなのに容易く腕が折られている時点で舞戸の膂力がどれほどのものかがわかる。

 

 が、ここでの問題はそれではない。このままだと呪霊側の目的である宿儺の指回収に支障が出る可能性があるのだ。

 

 花御の役割は陽動。しかしこのままでは舞戸だけで十分と思われ、周りの気を引くことが出来ないかもしれない。

 

『これならどうですか!』

 

 一度距離を離した花御は自身の足元から複数の巨大な木の根を伸ばし、舞戸を叩き潰すように振り下ろした。根は確実に舞戸へ命中したが、直後に舞戸がいた辺りの部分が光り輝き大爆発を起こす。

 

 それを見た花御は即座に自身の身を木の根で覆って防御を固めた。その判断は正しく、防御態勢となった直後に爆発によって穴が空いた箇所から舞戸が現れて飛び蹴りを花御へ放つ。

 

 防御を固めたにもかかわらず身体に響く衝撃。しかしそれに呻く時間はない。既に舞戸は追撃の体勢に入っているからだ。花御は反撃のために潜めていた木の根を勢いよく伸ばすがそれは身体を傾けるだけで躱され、伸ばした木の根は脚で刈り取るようにして蹴り折られる。

 

 だがここまでは花御の予想通り、大振りの蹴りを放ち終えたばかりで隙だらけな舞戸へ花御は本命の呪いの種子を放つ。呪力が大好物な種子は今もなお呪力出力が上がり続けている舞戸にとっても天敵であることには変わらない。

 

「私には当たりませんよ?」

『ですが彼はどうです?』

 

 しかし変な体勢であるにもかかわらず、舞戸は指先に生成した気の刃で種子を両断した。体勢を立て直した舞戸は刃の範囲を腕にまで伸ばしてから花御を真っ二つに斬り裂くつもりで腕を構えるが、わざと聞こえるように呟かれた花御の言葉にハッとした様子でとある方角を見た後、攻撃を中断してそちらへ向かって走り去る。

 

 舞戸が見た方角にいたのは狗巻。四方八方を木の根に囲まれた彼は呪言によってそれらを退けようとするが、それよりも早く舞戸が乱入。木の根に隠されるように狗巻へ打ち出されていた種子とついでに周りの木の根も丸ごと吹き飛ばしてから舞戸は狗巻を抱えて戦場から一時的に離脱する。

 

「狗巻さん、大丈夫ですか?」

「しゃけ。」

 

 戦闘開始から数度目になる舞戸からの問いかけに、狗巻は喉スプレーを使いながら問題ないと答える。実際あの程度なら狗巻は対処出来る。なので舞戸は花御の相手を続けるのがベストだった。

 

 だが舞戸は狗巻の強さを知らない。何処までが問題なくて、何が対処出来ないのかを何も知らない。要は信頼関係が構築出来ていないのだ。今日が初対面なので仕方ないが。

 

 だから過剰に反応し、少しでも不味そうだと舞戸が判断すれば攻撃を中断して救助に入る。それを見抜いた花御によって利用され、未だに戦況は拮抗していた。

 

「こんぶ。」

 

 しかしここで戦況が変化する。舞戸から降ろされた狗巻は舞戸に頷いた後で花御とは逆方向の方角へ走り出す。その行動が意味するのはこの場からの離脱。

 

 狗巻は自身が舞戸の邪魔になっていると判断。呪言による援護も最初の1発目を花御が受けた時点で過剰に警戒され、常に花御と狗巻の間に木の根の壁が生成されて対策されてしまい、さらに自分自身は舞戸の攻撃を中断させる手段として利用すらされている始末。

 

 そうなれば自分がこの場にいるのは不都合でしかない。悔しくて仕方ないがここはあの呪霊とサシで戦えている舞戸に一任するしかない。

 

『させません‼︎』

 

 だがそれを花御が阻止しようと走り出す。呪言は確かに厄介だが、それよりも厄介な者が自由に動き回るようになるのは何としてでも阻止しなければならない。

 

「その言葉、そのままお返しします。」

 

 しかし行かせないと言わんばかりに去る狗巻と追う花御の間に舞戸が入り込んだことで花御は脚を止めた。が、狗巻の足止めを出来ればいいため今度は狗巻を巻き込んで周囲一体を木の根で囲もうとする。だがその動きも止められることとなった。

 

 花御から見ても異常と言わざるを得ない出力で舞戸から呪力が溢れ出す。それと同時に舞戸の髪が逆立ち、筋肉が膨張を始める。その異常な変化はちょうど花御側の協力者が下ろした帳によって一際不気味さを演出し、その光景に思わず花御は動きを止めて注視してしまう。

 

「おぉぉぉぉおおお!!!」

 

 そしてフルパワー形態への移行を完了させた舞戸が吼える。ただ声を出しただけ、それだけなのに衝撃波が発生し、舞戸の足下の地面がヒビ割れた。

 

 それによって巻き起こった土煙が花御の視界を塞ぐ。何が起きても即座に対応出来るように構えた花御。土煙が動き、舞戸が動いたのだと更に花御は意識を集中させる。その直後、花御の眼前に舞戸がいた。

 

 『来た』のではなく『いた』。そのことに花御の思考が追いついた時には舞戸の拳が迫ってきていた。

 

『がぁ!』

 

 直前に腕を差し込んだはずなのに腕は吹き飛び、顔の枝がへし折れた。空へ殴り飛ばされた花御は即座に腕を回復させるとともに危機感から左上半身を覆っていた布を破り捨てて左腕を自由にさせる。

 

『奴は何処に!? ぐぅ⁉︎』

 

 すぐさま追撃に来るであろう舞戸を探す花御。しかしその時には花御より更に上空へ舞戸は移動しており、未だに舞戸を探している花御へ強烈な蹴りを繰り出した。

 

 その威力に花御は真っ逆さまと地面へ着弾とも言える勢いで落下。地面にめり込んだ花御が立ち上がろうとした時には既に舞戸が追いついており、花御の片脚を掴んで持ち上げ、玩具のように振り回した後で再び地面へ叩きつける。

 

『(マズイ、早く抜け出さねば……。)』

 

 何度も叩きつけられ無視出来ないダメージを負う中で花御は思考を続ける。だが行動を開始しようとした時には地面に叩きつけられており、その衝撃で行動をキャンセルしてしまう。

 

 やむを得ず持ち上げられたタイミングで掴まれている方の脚を自切。勢いをつけて持ち上げられたので花御は再び空へと舞うこととなる。

 

 離脱出来たとはいえ、これで逃げれたとは花御は考えない。急いで視線を地上へ向ければ、既に舞戸は花御に向けて飛び出していた。

 

 しかし空中ならやりようはある。木の鞠を作ってそこに乗ると同時に花御は手の中で呪いの種子を生成し、しっかりと狙いをつけてから舞戸へ向けて打ち出した。

 

 本来なら躱せるとは思えない状況だが、花御は油断せずに躱した先に打ち出す第二の種子を作り出す。

 

 が、花御の予想はハズレてあっさりと種子は舞戸へ命中した。大好物な呪力を前にして種子はケタケタと笑い声をあげながら即座に根っこを伸ばし始める。

 

『奴ほどの実力なら種子の危険度も察せるはず。呪力防御に自信があったのか……。それとも……。』

 

 当たっても問題ないのか。そう花御が呟く前に答え合わせだと種子に変化が訪れる。大好物の呪力を前にしてケタケタと笑い声をあげていた種子。それが突如苦しみのような声に変わったと思えばボロボロと枯れ始めたのだ。

 

『これは……根腐れ⁉︎ 呪力を吸い取る種子が呪力に溺れたというのですか‼︎』

 

 ありえない。舞戸は恐らく種子が根付いたと同時に種子の能力を見抜き、逆に呪力を捩じ込んだのだろう。確かに呪いの種子は呪いとはいえ植物だ、根腐れだってやろうと思えば出来るだろう。だがそれを可能とさせる呪力量に呪力出力を持つものなんて花御は知らない。

 

 未知の事態に直面した花御は思わず硬直した。戦闘時にそれは余りにも大きすぎる隙。それを舞戸が見逃すわけがなく、花御が我に返った時には舞戸は花御の眼前でダブルスレッジハンマーの構えをとっていた。

 

『しまっ─‼︎』

 

 自身の迂闊さを後悔をするよりも早く両腕をクロスするように頭上に構えて防御態勢。明らかに強烈な一撃が来ると分かったからこそ取った構えだが、舞戸が片脚を引き絞っている姿を見て花御は釣られたことに気付いた。

 

 直後、花御の胴体に舞戸の強烈な蹴りがめり込んだ。その威力に口から多量の紫血を吐きながら蹴り飛ばされた花御は回転しながら地上に落ち、落下の衝撃で地面にクレーターが形成された。

 

『ぐぅ……、この手段は……あまり使いたくなかったのですが……。』

 

 舞戸相手に勿体ぶる暇はないと判断した花御は仰向けのまま左手を地面につけた。そしてそのまま周りの植物達の生命力を吸い取ろうとしたその時、空から落下してきた舞戸が両脚で花御の腹部を思いっきり踏み潰す。

 

『ぐぅおおぉぉ!?』

「頑張ったようだが、とうとう終わりの時が来たようだな。」

 

 花御が地面に落ちた際に舞い上がった土煙が踏み潰しの衝撃で吹き飛ぶ中、舞戸はまだ生きている花御の頑丈さを讃えながらも気弾を生成する。その気弾に込められた呪力量は明らかにトドメを刺すものであり、くらえば確実に死ぬ。

 

 だが地上は花御のホームグランド。即座に術式を起動させ、生成した巨大な木の根を舞戸へ向ける。

 

 舞戸はそれを躱さない。確実に当たる。しかし花御には見えない、舞戸が串刺しになる光景が。

 

 確実に当たるという花御の考え通りに木の根は舞戸に直撃した。そして舞戸の肉体に負けて先端がへし折れた。この時点で花御は目の前の存在が人間か疑わしくなっているが、思考を放棄している場合ではない。

 

 使える手は全て使う勢いで舞戸を引き剥がそうとするが、舞戸は口角を上げるだけで効いている様子はない。ならば奥義である領域展開をするしかないと花御は呪力を練り始める。

 

 次の瞬間には死んでいるかもしれない故に起こる極度の集中。そんな状態となった花御の感覚がとある音を捉えた。

 

「うおっ!舞戸!?」

 

 その声が聞こえた瞬間に花御は領域展開をキャンセル。練った呪力を全て術式に流し込み、周囲一帯を木の根で無差別に攻撃する。

 

 術師は仲間意識が高い。だから味方が攻撃されればその度に隙ができる。そして舞戸は仲間が危機に陥ればそれを助けに行くのは先程の行動から見て確実。

 

 花御の予想は正しく、舞戸はトドメを刺すために生成した気弾を何処かに投げ捨てて壁のようになった密度の木をぶち抜きながら声が聞こえたところへ向かって姿を消した。

 

「虎杖ぃ!」

「ぎゃぁぁ‼︎こっち来た!」

虎杖(ベストフレンド)!知り合いか⁉︎」

「舞戸だよ!顔合わせした時にいただろ⁉︎」

「こんな身長(タッパ)(ケツ)のデカい女は知らん!」

「あー、それもそうか。」

 

 生半可な対応をするならそのまま刺し殺すつもりだったが、変わらず声が聞こえることから無事なようだ。だが壁は出来た。ここは一度距離を離し、体勢を整えて──。

 

 そこまで考えたところで、自身の身体に何とも言えない感覚が襲いかかる。それが何なのかを理解する間もなく、本能のままに花御は飛び込むように地面へ伏せた。

 

 直後、壁となっていた木壁の一部が赤熱したと同時に貫いてきたレーザーが伏せた花御の頭上を撫でる。そのレーザーは徐々に右斜め上へと移動していき、木の壁を切断して上空へ伸びるとやがて細くなって消えていった。

 

「もう怪獣じゃん……。俺よく少年院の時に逃げ切れたよな。」

「いいな、実に良い。こんな状況じゃなければ真っ先に戦いを挑んでいたところだ。」

「えっ……?この状態の舞戸はやめといたほうがいいよ、マジで。」

 

『宿儺の器……ですか。』

 

 口からレーザーを放ったからか、白い煙を吐く舞戸を見ながら東堂は戦意をたぎらせ、それを真剣な表情で止めに入る虎杖がズレ落ちた木壁の先から現れる。

 

 これで3対1。さらにその内の1人はサシで花御に優勢を取れる人物だ。この状況に花御は迷わず撤退を選択。虎杖と東堂を狙うことで舞戸の注意を逸らし、一気にこの場から離脱する。

 

 考えが纏まったので後は実行するだけ。今にも飛びかかって来そうな舞戸に注意を払いつつ、花御は術式を発動しようとする。しかしその術式発動は花御の背中に何かが触れたことで止まることとなった。

 

 不自然に花御が硬直したのを何か企んでいるのかと東堂が訝しげな表情で見つめる。だが今回は都合が良いと考えたのか、東堂は少し待てと言わんばかりに口角を上げたまま花御へ向けて歩き出そうとする舞戸の肩に手を置いた。

 

「……何だ?」

「ここからは俺と虎杖に任せてくれ。選手交代だ。」

 

 舞戸からの短い問いかけに東堂は単刀直入に要件を伝える。だがその要件を聞くなり舞戸は無言で東堂の手を払い、花御に向かって歩き始める。その姿は問いかけるだけ無駄だったと言いたげだ。

 

「待て。」

「状況を考えろ。五条達がいない今、私たちは先に安全を確保するべきだ。そして私は確実にアイツを祓える。つまり安全を確保できる。なのに何故不確定要素を生む必要がある? これは遊びではないんだぞ?」

 

 それでも諦めずに舞戸を止めようとする東堂。そんな東堂とついでに虎杖を舞戸は睨みつけ、これはお遊びではないと正論をぶつける。

 

「あぁ、分かっている。これは決してお遊びではない。だが舞戸、虎杖を見ろ。コイツはあらゆる物を喰らい、羽化しようとしている真っ最中。それは何人たりとも止めることは許されない。……それ程までの実力を持つお前なら今の虎杖の状態にも心当たりがあるのだろう?」

「…………。」

 

 要するに東堂は花御を虎杖の成長に使いたいと言っている。東堂の問いかけに心当たりがある舞戸は身体の向きを変え、東堂の背後にいる虎杖へ近寄った。

 

 舞戸の意図を鋭い勘で察した東堂は虎杖に視線を向け、頷いてから舞戸へ場所を譲る。

 

「出来るのか?」

「……っ‼︎」

 

 虎杖の眼前に立った舞戸からの短い問い。それと同時に虎杖に襲いかかる舞戸の威圧。その威圧に首を絞められているような感覚を感じた虎杖は、本能のままに思わず退がりそうになる。だがそれを実行する直前に自分を睨みつける舞戸の眼を見たことで、ここで退がれば即座に舞戸が花御殺害へ踏み切ると虎杖は理解。退がるために浮かびかけていた片脚を気合いで戻し、ギリギリで踏み止まった。

 

「あぁ!出来る‼︎」

 

 自分は本気だと伝えるためか、思わず舞戸を睨みつける虎杖。そんな虎杖を舞戸は数秒程見つめた後、ため息を吐いたと思えばシュルシュルと身体が小さくなる。

 

「ふぅ、逃がさず確実に祓うこと。これを約束出来るなら譲りましょう。」

「おう!任せてくれ‼︎」

「それとこれは東堂さんにも適用されます。わかりましたか?」

「ふっ、俺と虎杖がいれば何の問題もない。大船に乗ったつもりでいてくれ。」

「ならもし失敗したら罰ゲームをしましょう。そうですね、私自らお二人にジャーマンスープレックスをお見舞いしましょうか。」

「……それ本当に罰ゲーム?死刑じゃなくて?」

 

 覚悟を決めた男の顔らしきものから一瞬でいつもの表情に戻った虎杖を見た舞戸は軽く微笑んだ後、2人へ背中を向けて歩き出す。その様子から近くで様子を見るのではなく、本当に任せるつもりだろう。

 

「では頑張ってください。吉報をお待ちしています。」

 

 最後にそう言い残し、舞戸は花御が動かないように花御の背中にほぼ接するように生成していた圧縮気弾を消滅させながら、他の生徒を探すために森の奥へと姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、何なんだよアイツ!」

 

 金髪をサイドテールで纏め、自身の術式によって目元にそれぞれ3つずつ模様がついた男、重面(しげも)は現在とある存在から必死に逃げていた。

 

 出会ったのは本当に偶然だった。出来れば女の子がいいなぁ〜などと考えながら高専の敷地内へ侵入した重面だったが、初エンカウントは重面の要望とは真逆もいいところな筋骨隆々の大男。如何にも強そうな風貌ではあったが大男は背中を向けていたこともあり、奇襲をしたら勝てると重面は判断して攻撃を仕掛けた。

 

 しかし重面の攻撃は弾かれた。彼は人の手が柄で手首から先が剣となっている奇怪な剣の呪具を使用しているのだが、その剣がただの筋肉に弾かれた。

 

 決して重面の呪具が(なまくら)だった訳ではない。人体程度なら容易く斬り裂けるし、貫通する程度の切れ味はある。なのに筋肉で弾かれた。

 

 その信じ難い結果に重面は思わず動きを止め、その間にお返しと言わんばかりに大男もといブロリーから裏拳を貰う。その一撃で重面は壁を数枚程ぶち抜きながら吹き飛び、絶対に勝てないと確信したため逃走に至る。

 

 彼の背後からギュピギュピと響く足音。現在は入り組んだ迷路のような道を出鱈目に逃げているから何とかなっているが、何もない平地などに出れば一瞬で捕まってしまうだろう。

 

 これは駄目だ、撤退するしかない。出てきて早々に戻るという結論を出す情けない結果となったが、こんなに逃げているのに一向に撒ける気配がないのだ。その結論になるのも仕方ないだろう。

 

 だがここで重面は違和感に気付く。先程までずっと聞こえていた特徴的な足音が聞こえなくなったのだ。それに気付いたことで重面は足を止め、撒けたのかと確認するように後ろへ振り返る。そしてその行動が彼を助けた。

 

 あのまま重面が走っていたら頭部があったであろう位置を壁を突き破った腕が掴み取る。音に反応して重面が振り返ると、壁を突き破ってブロリーが姿を現すところだった。

 

「何処へ行くんだぁ?」

 

 反転し、ブロリーの問いかけを無視して再び逃げ始めた重面。その必死な姿をブロリーは楽しむように笑って追いかける。

 

「楽しそうにしやがって!こっちは全然楽しくないのにさぁ!」

 

 いつもは自分がしていることを相手にされている。それに軽い苛つきを感じつつ逃げ続ける重面だったが、道の先に現れた人物を見るなり喜びを露わにした。

 

「わーお!女の子じゃん!やっぱり俺って運がいい!」

 

 女の子を見つけた重面は自身の幸運を喜びながら走るスピードを上げる。その走りは先程よりどことなく弾んでいるように見えた。そしてそのまま重面は剣を構え、ウルフカットで童顔の女の子に斬りかかり──。

 

「いきなり何をするんですか?」

「へっ?ブッ⁉︎」

 

 容易く刀身を指先で掴まれた。まさか攻撃を受け止められるとは考えていなかった重面は指先で掴まれているだけなのにうんともすんとも動かない自分の呪具へ戸惑いと困惑が混ざり合ったような声を出すが、直後に顔面を殴られて後ろへ吹き飛ぶ。

 

 吹き飛んだ先の壁にぶつかった重面は血が出る鼻を押さえつつ、体勢を立て直しながら殴られた際に離してしまった呪具の位置を確認するとニヤリと口角をあげる。そして女の子もとい舞戸へ向かって駆け出そうとしたが、それよりも早く万力のような力で頭部を握りしめられた。

 

「よく頑張ったが、とうとう終わりの時が来たようだな。」

「ヒィ⁉︎」

「ブロリーさん、お疲れ様です。」

 

 持ち上げられた重面は背後から聞こえる声に誰がいたのかを思い出したのか、自身が捕まっている状況に思わず恐怖の声を漏らす。

 

「高専の服を着た私に攻撃するってことはこの人は呪詛師なのでしょう。とっとと殺ってください。」

「はい。」

「ちょっ⁉︎待っ──」

 

 舞戸の指示にブロリーが従い、重面を掴んだ腕を振り上げた。自身がどうなるかを理解した重面は咄嗟に静止の声をあげたが、その言葉が言い終わる前に勢いよく石畳へと叩きつけられる。

 

「終わったな、所詮クズはクズなのだぁ……。」

 

 ブロリーの本気の力で叩きつけられたのなら、ギャグ補正が付いていない限り確実に瀕死、もしくは死亡する。しかし舞戸は石畳に頭部をめり込ませて足をピクピクさせている重面に違和感を感じた。

 

「……ふむ、ブロリーさん。そいつを引き抜いてください。」

「はい。」

「……やっぱり生きてますね。ブロリーさんの力で叩きつけられたのに頭が砕け散って無い時点で丸わかりですが。」

 

 ブロリーが脚を掴んで引き抜いた重面の顔を見つめた舞戸は即座に生きていることを見抜く。その表情は何故生きているのか心底不思議そうだ。そんな舞戸の顔を見た重面は隙だらけのその姿にひっそりと口角をあげた。

 

 重面の笑みを訝しげな表情で見る舞戸の背後では、重面が殴られた際に手放した呪具がひっそりと立ち上がって舞戸へ向かって移動を始めた。その移動をブロリーは舞戸の身体が邪魔して見えないし、舞戸も重面に集中しているのか呪具の移動に気付いている様子はない。

 

 そして距離を詰めた呪具が刀身を先にして舞戸へ飛びかかる。

 

「不思議な剣ですね。」

 

 だが確実に決まると重面が確信していた奇襲は舞戸が半身を逸らすことで難なく躱された。宙に浮かんだままの呪具は叩き落とされた後で柄部分の手を舞戸に踏み潰される。

 

 それによって呪具は完全に潰れ、二度と動くことは無くなった。自身の切り札を潰されたことで、絶体絶命となった重面は露骨に焦り始めた。

 

「じゃあもう一度潰しましょうか。」

「ま──」

「イェイ!」

 

 何かここから逃げる手段を考える時間を作り出すために重面は舞戸へ話しかけようとしたが、それよりも早く舞戸はブロリーへ指示を出し、それを受けたブロリーは再び重面を石畳へ叩きつける。

 

 一回、二回、三回……と重面の形へ石畳が凹んでいくなか、中々死なない重面に舞戸は面倒臭くなったのか、もう五条先生達に丸投げしようと考えてブロリーを止めた。しかし止めたことによってもう一度重面の顔面をしっかりと見た舞戸はあることに気付く。

 

「なるほど、身代わりみたいな術式ですか。」

「じょ、情報!」

「はい?なんですか急に。」

 

 重面の目元にあった模様が全て消えている。舞戸が最初に見た時は五つ。そして今さっきの叩きつけも5回だったことから、一応辻褄は合う。

 

 自身の予測が正しければ模様が無くなった重面は次の一撃で死ぬはず。ならさっさと終わらせようと再びブロリーに指示を出そうとした舞戸だったが、突然叫び始めた重面に訝しげな表情を向けた。

 

「情報を話す!ここに来た目的とか色々!だから命は──」

「いえ、そんなもの必要ないです。」

「助け……えっ?」

「だって、あなた……平気で嘘をつくタイプでしょう?」

 

 重面の命乞い、その対価としての情報。何もわからない呪術師からすれば興味が惹かれるものだろう。しかしそれを考えるまでもなくいらないと切り捨てた舞戸に、この命乞いは通ると考えていた重面は虚を突かれたような表情となった。

 

 その理由も重面が嘘をつきそうだからという始末。命がかかっているのに嘘なんてつくわけないだろうと重面は叫ぼうとしたが、浮遊感を感じたことでブロリーが叩きつけるために持ち上げたのだとわかり、喉が引き攣るだけとなった。

 

「ではさようなら。」

「ヒッ! 誰か助け──」

「その攻撃!ちょっと待ったぁ‼︎」

「「「!?」」」

 

 思わず溢れた重面の言葉は誰にも届かずに終わる……筈だったのだが、突如上空から3人の隣に口元だけを露出させたヘルメットを被る如何にも正義のヒーローみたいな姿の男が着地する。

 

「私は悪は絶対許せない!正義のヒーロー!グレートサイヤマンだ‼︎」

「何ぃ?カカロットォ、どういう教育をしているんだぁ!」

「こ、のパターンは……初めて見ましたね……。」

 

 本人曰くカッコイイ決めポーズと共に決め台詞で名乗った悟飯(青年)……ではなくグレートサイヤマンにブロリーは驚きながらもすぐにその正体を見破ったのか、どうしてこんなのになるまで放置していたと親の名前を叫び、舞戸はこれまでの人生でこのパターンは初めて見たと口元をヒクヒクさせつつも感想を述べる。

 

「弱者を一方的にいじめるのは認められない!今すぐその人を解放するんだ!」

「いやいや、悟飯くんじゃなくてグレートサイヤマン。この人は──‼︎」

 

 どうやら抵抗出来ない重面を一方的に攻撃したのはグレートサイヤマン的には見過ごせない事態だったらしく、攻撃を止めるべく登場したようだ。しかし重面はこの業界からすると確実に悪であり、本来ならグレートサイヤマンが倒すべき敵。それをわかっているから舞戸はグレートサイヤマンを説得しようとしたが、直後に薄暗かった空が明るくなったことで顔を上に向ける。

 

「帳があがった?」

「隙ありぃ!」

「ヘェアァ⁉︎」

 

 舞戸の注意が上に向いたその隙を突いたグレートサイヤマンがブロリーへ蹴りを放ち、舞戸と同じように空を見ていたブロリーはその蹴りで思わず重面を離してしまう。重面はすぐさま逃走を始め、すぐさま追おうとしたブロリーは立ち塞がったグレートサイヤマンに脚を止めざるを得ない。

 

「ふふん!奴を追いたければこの私を倒してから行くがいい‼︎」

「ンンンンン‼︎今楽にしてやる‼︎」

「いえ、ブロリー。その必要はありません。」

「何ィ!?どういうことだ!」

「彼を排除する適任がいます。」

 

 ブロリーの問いかけに舞戸はグレートサイヤマンの分類はお邪魔キャラ系と脳内メモに書きつつ、とあるキャラを呼び出すために指を鳴らす。そして現れたキャラを見るなりグレートサイヤマンは驚いたかのように声を荒げた。

 

「いぃ⁉︎ ビ、ビーデルさん!」

「悟飯くん!一体何をやっているの!?今日という今日は洗いざらいに吐いてもらうんだからね‼︎」

 

 舞戸が呼び出したビーデルは即座に悟飯へ詰め寄った。対して悟飯は対策手段がないのか徐々に後退りをしながら距離を取ることしかできない。

 

「悟飯、逃げろ!」

「あれ、悟空さんいつの間に。」

 

 まるで浮気がバレてしまったかのような空気に息子の危機を感じ取ったのか父親である悟空が駆けつけ恐らくこの状況で1番適切なアドバイスを送った。そんな父親の頼もしいアドバイスを聞いた悟飯はほうほうの体で逃走を始め、ビーデルはそれを追い始める。本来の身体能力は悟飯が明らかに勝っているため逃走は確実だと思われた。

 

「もう許さないんだから‼︎ えぇ〜い!」

「ギャァァァァァ‼︎‼︎」

 

 だがこの始末☆ 怒れる未来の嫁にこの状況まで追い込まれた時点で悟飯に勝ち目などあるはずがなく、不思議な力であっという間に追いつかれて鉄拳制裁をくらう。そんな姿を舞戸、ブロリー、悟空は真顔で眺めていた。

 

「……はっ!いけません、早くあの人を追いかけないと。」

 

 いち早く我に返ったのは舞戸。思わず見続けてしまったと反省しながらも逃げた重面を追い始めようとする。幸い重面はまだ感知範囲内に入っており、さらに悟空もいるため捕まえるのは容易い。

 

 が、遠方で五条の呪力反応を感じ、彼から撃ち出されたものの進行先を見た時点で舞戸は追うのをやめた。追うだけ無駄になったからだ。

 

 帳が破壊された時に上空に五条が立っていたのを舞戸は確認している。この異変も五条がいれば解決したも同然だろう。なら自分がここでやるべきことは単純だ。

 

「皆さんのところへ戻りましょうか。この状況で団体戦も何もないでしょうし。」

「俺も戻る!」

「さっさと帰るか!」

 

 

「と、父さん!ギャァァァァ‼︎」

 

 助けを求める悟飯の手を意図的に無視し、悟飯の悲鳴を背中で聞き流しながら舞戸達3人は仲良く肩を並べて他の人達と合流するために早歩きでこの場から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、やっぱり俺は運が良い‼︎」

 

 舞戸達から逃げることに成功した重面は自分の幸運を改めて噛みしめながら逃走していた。

 

 呪具も舞戸に破壊されて損しかしていないのだが、今の重面は自身が生き延びている喜びでいっぱいだった。

 

「今日も俺は……生き延びたぁ‼︎」

 

 嬉しさのあまりに跳び跳ねつつ、重面はまだここが敵陣だというのも忘れて叫ぶ。だがその喜びもここまでだった。

 

「へぇあ?」

 

 森の中から凄まじいスピードで迫る紫の球体。それに重面が気付いた時には時すでに遅し。間の抜けるような声を漏らした頃には球体は重面を呑み込んで己の役割が終わるまで愚直に進み続ける。

 

 球体が通った後に重面の姿はなく、ただ破壊の痕だけが大地に刻まれていた。




オリ主……実はフルパワー形態が自身の最大値とは一言も言っていない。虎杖は主人公だし強化パートはいりますよねぇなどと考えつつも、合流してくるまでは真面目に花御を祓うつもりだったし、問いかけで虎杖が一歩でも退がれば即座に花御へ攻撃するつもりだった。
グレートサイヤマン系は初。それなりに色んなMODを見てきたのにいきなり初見を出されて衝撃を受けた。
ちなみにフルパワー形態時では口から拡散砲、レーザー砲、ガトリング砲などと色々撃てる。花御に撃ったのはレーザー砲。

虎杖……オリ主のことを怪獣か何かだと思い始めている。いきなり木の根が迫ってきたと思えばその中から筋肉ムキムキオリ主が現れ、その姿を視認した次の瞬間には少年院のことを色々思い出してしまい、らしくない本気の悲鳴をあげた。
ちなみに花御は逃した。

花御……生存ルートを走り抜けた。もし虎杖達があの時合流しなかったらなんやかんやでオリ主の拘束から抜け出し、死を前にした極度の集中から黒閃を発動。オリ主を殴り飛ばし、戻ってきたオリ主と殴り合いを始め、帳があがったタイミングでキチンと離脱するルートがあったりする。

重面……女の子に会いたいと考えていたら筋肉と隠れ筋肉に出会った。逃走虚しく捕まり、ボコボコにされていたところで突如登場したその歳でそんな格好するぅ?な好青年のお兄さんに助けられる。やっぱり自分は運が良いなぁと自身の幸運を噛み締めていたら、紫塗りの球体に衝突されてしまった。
もし生きていたら渋谷事変の時に怒ったナナミンを斬れなかった時点でトラウマ再発。即座に逃亡を選択する(逃げれるとはry)

帳……五条のみを拒んだので原作時刻まで生き残れた。もしオリ主を外に出すのを制限していたらレーザーの時に諸共吹き飛んでいた。





読者がブロリーmadを読みに来ているのは理解出来ているんですけどつい戦闘系も書いちゃうんだ……。ネタが少なくてすまない……。

個人的には何処かで使いたかった「この始末☆」を使えて満足です。



以下Q&A

Q.オリ主ってフルパワー形態の時はブロリーみたいな言葉ばっかじゃない?
A.オリ主のフルパワー時の肉体は術式ありき、つまりmadに寄っているのだ。

Q.花御の背中に添えられた気弾っていつ出したの?
A.虎杖救出をしに行った時に何処かへ放り捨てたはずの気弾をコッソリ操気弾。

Q.最初は花御と互角風みたいな描写だったのに最後あたりオリ主ツエー展開じゃん!
A.オリ主は超が付くレベルでスロースターターです。本気で戦う場合だとフルパワー形態時がやっとスタートラインに立ったと思ってくれて大丈夫です。要約するとオリ主の戦闘スイッチを入れてから放置するとほぼ際限なしに防御力と攻撃力が上がっていく仕様です。まぁブロリーです。







ちなみにですがオリ主は悟飯(グレートサイヤマン)のあのポーズはギニュー特戦隊の影響を受けたと考えています。多感な時期にあんなもの見ちゃったから脳裏に焼きついちゃったのね……。
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