夏の暑さもなりを潜め、すっかり秋になってきた今日この頃。一日の授業が終わり、帰りのホームルームにて
「……はい、連絡はここまでかな。……っと、一番大事なのを忘れてた」
一番大事なら忘れちゃダメだろ
「今年は例年通り文化祭やるから。君たちで出し物とかは決めておくように。じゃ、以上」
教師が出ていった後、放課後特有の騒々しさが教室内を包み込む。……にしても
「文化祭かぁ」
まあそりゃ、学園だからあっても不思議じゃないが……去年は無かっただろ
「おや、知らないんですか?」
隣の席からナギサが問いかけてくる
「ああ」
「……珍しいですね。トリニティの文化祭と言えばかなり有名ですが」
と、少し驚いた様子で話す。ごめんねぇ、世間知らずで……
「まあ事前の調べとか特にしてなかったし……それに、殆ど家から出てなかったからな」
「ああ……」
納得した様子で頷くナギサ。……ああ、そうだ
「でも、去年は無かっただろ。何で今年になってまた?」
「えぇっと、それはですね……」
「二人とも何話してるのっ」
そう話していれば、いつの間にか近くに来ていたミカが割って入ってくる。元気やね……おじさんは学校で一日過ごすだけでヘトヘトだよ
「文化祭の話だよ。去年はやってなかったのに、今年でまた再開するのは何でだろうなって」
「あ〜。去年のはラセツ君が来たばっかだったからじゃない?」
「おん?」
えぇ……まーた俺が原因なんすか
「ええ。男性の入学者なんて初めての事例でしょうし、どこまで影響を及ぼすか分からなかったんでしょう。それに、本人が良い思いをしない可能性がありましたし。この一年で、例年通り文化祭を開催しても良いと判断したのでは無いかと」
「はえー」
なるほどなぁ。……まあ良いかァ! やるからには楽しもう!
「で、出し物ってどうすんだ?」
「ふむ……そうですね。幸い、今日はクラス全員が揃っていますし、今決めてしまいましょうか」
「だねー。みんな揃うことってあんまないし」
「そうだな。……よし、後は頼んだ」
「えぇ……ラセツ君がやりなよ。面倒臭い」
「やだよ。俺もめんどい。というか、こういうのはお前らの仕事だろ」
「私たちよりラセツ君が言った方が言うこと聞くと思うよ」
「なわけ。仮にも、次期ティーパーティーのホスト様達のお言葉だぞ。大人しく聞くだろ」
「仮にもって何、仮にもって」
「とにかく、こういうのはお前らがやれ」
「やだ」
「やれ」
「やだ」
こんな低レベルの争いを数十秒続けて……結局俺が折れた
「はぁ……分かった分かった。やれば良いんだろ」
「やりー。じゃ、後はよろしくね〜」
クソ……ちゃっかりナギサも座ったまま動かんし。こいつらマジで全部俺にやらせる気だな。……しょうがねぇ
「あー……みんな、聞いてくれ」
俺がクラス全体にそう声を掛ければ、皆こちらを向いてくれる
「さっき言われた文化祭の出し物なんだが、幸い今日はクラス全員が揃っているし、今から決めたいと思うんだが、大丈夫か?」
反対は……居ないな。よし
「ありがとう。じゃあ、早速決めていきたいんだが、何か意見のある者は居るか?」
そこからは、結構スムーズに進んで行った。去年は無かった文化祭ということで、みんなやる気があったんだろう。お化け屋敷だの射的だの、結構一般的な物も出てきた
「ふむ……まあこんなもんか?」
合計すれば六から七個程。これ位で十分だろう。そう思っていると、一人の手が挙がる
「お、まだあるか」
「えーっと……その、ラセツ君が良かったら、なんだけど」
「うん?」
「執事喫茶、とか、どう……かな?」
瞬間、教室内に緊張が走る。……いやなんでだよ。なんでみんな息を呑んでこっちを見る
「あー……執事喫茶ねぇ」
『っ……』
「俺は構わないけど、お前らはそれで良いのか?」
俺がそう言えば、提案した生徒を含め、みんな首がちぎれるほど頷いている。勢いすげぇな
「じゃあ執事喫茶……と。じゃあこの中から決めていくぞ。まずは……」
挙手制の投票で決めていく訳なんだが……一向に手が挙がらず、気づけば最後の執事喫茶の番になっていた
「えーっと、じゃあ最後の執事喫茶……」
すると、先程までのが嘘のように勢いよく大量の手が挙がる。……いや全員じゃねぇか
「マジか……じゃ、じゃあこの執事喫茶で決まりって事で良いか?」
『よっしゃァ!!!』
仮にもお嬢様だろお前ら。なんでそんな野太い声出るんだ
「じゃ、内容詰めて行くぞー」
『はーい!』
そこから決まった事が
・料理担当と接客担当に分かれる
・買い出しは料理担当が
・執事役は俺が固定で、後は他からも何人か。着る服は各自で用意する
この位。まあ、あとは各担当でやれるだろ
「いやーお疲れお疲れ」
「誰のせいだと思ってるんだ」
席に戻れば、ミカがニヤニヤしながらそう言ってくる。こいつホンマ……
「……そういえば、ラセツさんは着る用の服は持っているんですか?」
「ん? ……いや、持ってないな。買わないといけん」
「でしたら、そういった系統の店を知っているので、今度一緒に行きませんか?」
「お、良いのか。助かる」
「あっ! もう! 先越された〜!」
「ふふっ。早い者勝ち、ですよ。ミカさん」
「うぅ……」
仲良いなこいつら
文化祭編!……荒れる予感がするぜ