転生男子生徒の貞操観念逆転キヴォトス   作:チキ・ヨンハ

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2話目です。



初日終了

 

 

(ミカさん……遅いですね……)

 

 お手洗いに行くと言い、急いで去っていった幼馴染をナギサは待っていた。

 

(しかし……入学式前は凄かったですね。校門前で人だかりが出来ていましたし、一体何があったのでしょうか?)

 

 ミカと一足早く校内に足を踏み入れていたナギサは、何故人だかりが出来ていたのかを知らない。……これからその元凶と会うことになるのだが。

 

「おーい! ナギちゃん!」

 

「ミカさん。随分遅かった……です、ね?」

 

 後ろから聞きなれた声がし、その方向に振り向きながら、待たされた事に小言でも言ってやろうかと思っていたナギサは、ミカの後ろから来る人物を視界に入れると、固まってしまう。

 

 ミカの後ろから、人間の男性が歩いてきたのだ

 

「ごめんねー? 待たせちゃって」

 

「いえ、その……構わないのです、が。……後ろの方は?」

 

 いつも通りのミカに対し、動揺により、いつもよりおかしな口調になりながらも、今一番の疑問を尋ねる

 

「あ、ラセツ君? いやー、さっきたまたま会ってさ、一緒に見学しないかって誘われたから連れてきちゃった!」

 

「……な、る……ほど」

 

「……やっぱり居ない方が良かったんじゃないか?」

 

「そんな事無いって! ほら、ナギちゃん! 自己紹介自己紹介」

 

「え、ええ……そうですね。は、初めまして、桐藤ナギサと申します。そこに居るミカさんとは幼馴染でして……何かご迷惑をおかけしませんでしたか?」

 

「えー? 私そんな事しないよ?」

 

 自分の幼馴染が、男性と気軽に話しているのを見て、ミカが何が迷惑を掛けていないか。これだけが心配だった。なんせ、この世界では世にも珍しい、珍しすぎて本当は居ないんじゃないかと思えるほど珍しい、人間の男性だったからだ。これで何か迷惑をかけていたら、恥ずかしさ等捨てて、土下座をする覚悟だった

「ああ、特に迷惑はかけられてないぞ。むしろさっきぶつかってしまってな、怪我をさせてないか心配だったんだ」

 

「……ミカさん。本当ですか?」

 

「……いやー?」

 

「……申し訳ありません。ミカさん、少しこちらに」

 

「ん? ああ」

 

「わ、ちょ、ナギちゃん?」

 

 目の前の男性に断りを入れ、幼馴染の襟を掴み、引きずっていく。

 

「いたた……どうしたのさ、そんな顔して」

 

「どうしたではありませんよ! 何故男性と一緒に居るんですか?! それに、ぶつかったと仰っていましたよね? どうせいつもみたいに前を見ていなかったんでしょう? もし怪我をさせてしまったらどうするつもりだったんですか?!」

 

「ちょ、落ち着いて落ち着いて」

 

「はぁ、はぁ。……ふぅ。……それで、あの男性は?」

 

「ラセツ君?」

 

「……ミカさん、まさかそれはあの方の名前ですか?」

 

「うん、新雲ラセツ君。さっき廊下で会ったの」

 

「……はぁ……この際、何故名前で呼んでいるのかは聞きません。何故一緒に居るのですか?」

 

「えー? さっき言ったよ?」

 

「……」

 

 しまった、とナギサは思った。先程までのミカの発言は、目の前の光景の処理をする為に、無視していたのだ

 

「聞いてなかったの?」

 

「……申し訳ありません」

 

「もー……さっきも言ったけど、廊下でたまたま会ってね。そこでちょっとお話してね? しかも……握手しちゃったの!」

 

「な……」

 

 それは、今まで男性と触れ合った事のないナギサにとって、酷く衝撃的だった。

 

 男性の下の名前を呼び、しかも握手を……? その時点で、ナギサは信じ難かった。この世界の常識として、基本的に、男性は女性との接触をあまり望まないのだ。……まあキヴォトスにはそもそも男性と接触する機会等殆ど無いのだが。

 

「……ふぅぅ……それで、何故一緒に?」

 

「これもさっき言ったんだけど……ラセツ君も新入生らしくてね? 委員会とか見て回るつもりだったから、せっかくなら一緒にどうかって」

 

「……なるほど。……信じ難い話ですが、実際に居るので、嘘では無いようですね」

 

「そうそう。あ、というか、ラセツ君待たせちゃってるけど良いの?」

 

「あ……」

 

 忘れていた。今自分達は人を待たせていたのだ。しかも男性を。その事実に気付いたナギサは、急いでミカを引きずって、その場を離れた

 

「お、話は良いのか?」

 

「は、はい。お待たせ致しました」

 

「まあそこまで待ってないさ。もう聞いてるかもしれないが、新雲ラセツだ。同級生だし、仲良くしてくれると助かる」

 

 そう言って、手を差し出してきた

 

(っ……ミカさんの話を聞いて思っていましたが、男性の方にしては積極的に来て下さいますね……刺激が……!)

 

 と心の中で思ったが、なるべくそれを表に出さないようにして、握手に応じる

 

「ひゃい! お願いします!」

 

 事は出来なかった。だがこれは仕方ないとも言える。彼女達はこれまで、人間の男性と話す事は無かったのだ。そんな中、実際に相対して、さらには握手まで求められ、平常心を保てる訳が無かった

 

「ブフッ……!」

 

「ッ! 〜〜〜!」

 

 ナギサは、自分の顔が熱くなっていくのを、一瞬で理解した

 

(くっ……! まさかここまで緊張するものだとは……あぁ……初対面の印象は最悪ですね……)

 

 自分の男性経験の無さを恨みながら、印象を悪くしてしまっただろうと考え、大分落ち込んでしまうナギサ。ふと相手の顔を見ると、こちらに対して、引いている様子等は無く、むしろ穏やかな顔をしていた

 

「あの……どうかなさいましたか?」

 

「ん? ……ああ、少しお堅い人なのかなと思っていたが、そんな事はなさそうで安心したよ」

 

「え……」

 

 驚いた。話に聞いていた男性というのは、こちらを見下し、何か失敗したらバカにするような人物だったからだ。しかし、今目の前に居る人物は真逆であった。こちらの失敗を笑って許し、さらにはフォローも入れてくれたのだから

 

「あー……その、握手は……してくれるのかな? こう、自分だけ手を差し出してるのは中々恥ずかしくて……」

 

「っ! あ、し、します! よろしくお願いします!」

 

(うぅ……初めての男性……どう接するのが良いのでしょうか……さっきからよく分かりません……)

 

「ははっ。よろしくな。……ああ、それで、どこから回るとかは決めてるのか?」

 

「え、ええと……まだ決めてはいません。ミカさんが帰ってきてから相談しようかと……」

 

「ん、そうか。どこか行きたい所は無いのか?」

 

「そうですね……ミカさん、何かありますか?」

 

「んー? そうだね……まあ特には無いかな。ラセツ君は?」

 

「俺も特に無いな。なら、適当に歩き回るか」

 

「そうですね」

 

「おっけー」

 

(まさかこの学校で男性と会えるとは……ここにして良かったですね……)

 

 ……

 …………

 ………………

 

「ここで終わりか」

 

「そうみたいですね……」

 

「みたいだね……」

 

 部活動や、委員会の見学を終えた三人だが、ミカとナギサは落ち込んでいた。理由は……

 

((もう終わり……))

 

 終わって欲しくなかったからだ。男性、しかもこちらに友好的であり、積極的に話しかけてくれる者と一緒に居れるなんて、まさに夢のような事だったからだ

 

「「はぁ……」」

 

「……? あ、今日はこれで帰って良いみたいだな」

 

「そうみたいですね……」

 

「みたいだね……」

 

「今日は助かったよ。ありがとうな」

 

「いえ……お気になさらず……」

 

「そうそう……」

 

「あ、そうだ。俺ここら辺に来たのは最近でさ、地理とか分かんないんだが、二人は分かってるのか?」

 

「ええ……」

 

「知ってる知ってる……」

 

「じゃあ……時間があったらで良いんだが、今度案内してくれないか?」

 

「ええ……」

 

「分かった……」

 

「おお、助かる」

 

 …………

 

「「え?」」

 

 もう終わるという悲しさから、返事が曖昧になっていた二人だが、ラセツの一言で正気に戻る

 

「どうした?」

 

「その……案内ですか? 私たちが?」

 

「ああ……ダメだったか?」

 

 少し悲しそうな表情をしながら、こちらに顔を向けた彼、もちろん、嫌なわけでは無いので、慌てて否定する

 

「いえ! そういう事ではなく……私達で良いのでしょうか?」

 

 その問いに、隣にいるミカも、うんうんと頷いている

 

「ああ、二人とも話してて楽しかったしな、二人が良いんだが……」

 

「っ……」

 

「……わーお」

 

 恥ずかしげもなく言われた言葉で、こちらは恥ずかしくなってきた。その証拠に、二人とも顔が真っ赤である。

 

「……そ、そういう事でしたら、おまかせ下さい」

 

「う、うん。任せてよ」

 

「助かる! あ、じゃあ頼む時に連絡したいから、モモトーク交換してくれないか?」

 

「「え?」」

 

 再度困惑。これも仕方ない。一般的に、男性が自分から女性と連絡先を交換することはありえないのだ。だからこそ、あちらから提案してきた事に困惑した

 

「……あ、も、モモトークですね! ええ! もちろん大丈夫です!」

 

「う、うん! 交換しよ」

 

「助かる、……よし、じゃあな。今日は助かった。またよろしく頼む」

 

 そう言って去っていく彼を、二人は長い間見つめていた。しかし、ふと思った事を、二人同時に聞く

 

「ミカさん……」 「ナギちゃん……」

 

「「夢じゃない(ありません)よね?」」

 

 

 

 

 

 

 






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シチュエーションも何卒……!
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