よーん
おお……これが今のホシノね……いやぁ、こう見ると随分変わったな……やっぱ先輩の死がデカかったんだろうな……髪も短いし。
……それよりも
「な……なん……お……男……」
「……またか」
何でそんなに驚くんだ……? いや分かるよ? だって珍しいもんな。でもそこまで驚く? 朝買い物の時とか電車乗ってる時とかもめっちゃ見られたし……こう……なんだろ、前世で男が女性を見る時みたいな感じ
「……はっ?! ……も、申し訳ありません。いきなり銃を向けて……一体何故ここに?」
「ん? ああ……なんというか……」
……何て言おうか。おたくの先輩が死んじゃうから助けにきたよー。なんて言えないし……かと言って借金の事言うと何で知ってるんだって思われるだろうし……うーん? どうしようか……観光とかで良いか?
「最近ここに来たんでな、色んな所を回ってるんだ。ここは1箇所目でな」
「は、はあ……アビドス高等学校を探していたようですが、それは?」
「ここはアビドスの自治区だろ? 挨拶くらいはしておいた方が良いかと思ってな」
「……な……る……ほど」
「……まあ怪しいか。なら、銃を向けたままで良いから、学校まで案内してくれないか?」
「む、向けたままですか?」
「ああ、怪しいだろうし、仕方ないさ」
「わ、分かりました」
未だに困惑しっぱなしだが……まあ大丈夫だろ。すぐ落ち着くさ。とりあえずアビドス高校へGO!
……
…………
………………
「んー……今日も良い天気!」
アビドス高校の一室で、窓の外を眺めていたユメはそう呟く。
(新入生も一人だけど来てくれたし……確か今日も来てくれるって言ってたよね、ホシノちゃん)
先日入学した一年生は、ホシノただ一人。だが、一人でもこの高校を選んでくれたのは、ユメにとっては何より嬉しかった
(そろそろ来るかなー?)
──ーコンコン
(お、噂をすれば)
来るならそろそろであろうと思った時、自分の居る部屋がノックされる。わざわざこの高校に侵入し、ノックするような者は居ないだろうから、ホシノであろう
「はーい。どうぞー」
──ーすいません、貴方はここで少し待っていて下さい。……ありがとうございます。「ユメ先輩、入りますよ」
扉の向こうから会話が聞こえ、そのすぐ後、こちらに呼びかけながら、ホシノが入ってきた
「おはよーホシノちゃん。どうしたの?」
「……お客さんが居ます」
「え?! 嘘! もしかして入学希望者?!」
「落ち着いて下さい……キヴォトスの各地を巡りたいそうで、ここを1箇所目に選んだだけで、ここら一帯はアビドス自治区だろうから、挨拶に来た……らしいです」
「あー……なるほどね。でも何で入って来なかったの?」
「……先に伝えておこうと思いまして。……その方、男性です」
ぼやーっとしていたユメだが、ホシノの一言を聞いて、急に固まってしまう
「ホシノちゃーん? いくら私が出会いが欲しいって言ったからって、そういう冗談は良くないよー?」
ユメは、ホシノの言っている事が、冗談であろうと考えた。キヴォトス……いや、この世界で珍しい男性。しかも、男性は基本的に女性より力が弱い。そんな人が一人旅等する訳が無いのだ。そのため、ユメはホシノの冗談だと考えた。
「……はぁ。信じないのは良いですが、取り乱さないで下さいよ? ……どうぞ! 入ってきて下さい!」
──ー失礼しまーす
「……え?」
扉の向こうから聞こえた声。女性にしては低すぎる、芯の通った声。その声を聞いた瞬間、固まってしまう。
(まさか……)
本当に? そう考えたユメは、扉が開かれるのを待つ。……そして、扉が開かれた
(嘘……)
そこに居たのは、自分達と比べて、違いが一目で分かった。あれは……
「どうも。生徒会長さん。新雲ラセツと言います。よろしく……」
「男の人だ!」
そう認識した途端、その人物の元へ一目散に駆け寄り、抱きついた
「うわー! こんな感じなんだ男の人って! 写真で見たのとは全然違う! うわ、すっご!」
「えぇ……」
「……はっ! ゆ、ユメ先輩! 何してるんですか! 早く離れて下さい!」
そう叫びながら、ユメをラセツから引き離そうとするホシノ。しかし、ユメは抵抗する
「やーだー!」
「ちょ、力強! 何してるんですか! 失礼ですよ!」
「何って……抱き着いてるんだよ?」
「それが問題なんですよ! 初対面、しかも男性の方に抱き着くとか何考えてるんですか?! 捕まっても知りませんよ?!」
基本的に、この世界では女性から男性へ向けての行動が犯罪になるパターンが多い。つまり、今ユメがやっている行為は、相手に訴えられたら間違い無くアウトなのだ
「はっ……! ご、ごめんなさい! 本当に! 悪気は無かったんです!」
「悪気しかなかったでしょ! ……本当にすいません。こちらが悪いのは理解していますが何卒……」
そう言って頭を下げるホシノ達
「……」
しかし、数秒経っても、相手からの反応は無い。訝しみながら、顔をあげればそこには歯を食いしばって何かを我慢している姿が
「あのー……大丈夫ですか?」
「……ふぅ。危なかった」
と言いながら、額を袖で拭う。……怒ってはいないようだが
「あの、本当にごめんなさい」
「改めて、私からも謝罪を。申し訳ありませんでした」
「……?! ちょ、何で謝ってるんだ?!」
「……? だって、女が男に抱き着いちゃったんだよ? 謝るしかないよ」
「そうですね」
「は……ああ、そう……? いや、とにかく、頭を上げてくれ。俺は別に気にしてない……むしろ……何でもない」
「あ、ありがとう……本当にごめんね」
「ありがとうございます」
こうして、ラセツとアビドスとの初対面は終わった。
……
…………
………………
「……って感じだったな。いやぁ懐かしいねぇ」
「そうなんですか〜……ユメ先輩、ラセツさんじゃ無かったら捕まってましたね」
「うぐっ……本当にすみません」
「本当ですよ……どれだけ肝が冷えたか」
俺はここに来てからアビドスとの出会いまでを、転生したとかは隠しながらノノミちゃんに話していた。いやぁ……あれは衝撃的だったね……マジで俺の中の俺を抑えるので必死だったわ
「というか、ラセツさんってトリニティだったんですね。分かりませんでした」
「まあラセツはトリニティっぽくありませんからね」
「おい。何だそれは、煽ってるのか?」
「いえ? 何でも」
「おぉん?」
「はいはい落ち着いて」
クソ……俺が落ち着きの無いバカだって言うのか? その通りだよ!
「ユメせんぱ〜い。ホシノに煽られた〜」
そう言ってユメ先輩の方へ近づいたら、優しく撫でてくれた。やっぱり包容力が違ぇわ!
「……………………」
「……ユメ先輩」
「……分かってるよ」
ホシノと何か喋ってるが、気にしない! 俺はこの優しさに溺れるんや!
「ラセツさーん? こっちも空いてますよ?」
「くっ……! 魅力的な提案だ! ……だが、まだ歳下に慰めてもらうわけには行かないのだよノノミ殿……!」
「耳かきありますよ〜?」
「お願いしまぁす!!」
いやこの子の耳かきマジで上手いんよ……やってもらってるうちに眠く……なって……ZZZ
……
…………
………………
「ふふっ……寝ちゃいましたね」
「やってくれたねぇ……ノノミちゃん」
「やりますね……流石に」
「にしても……やっぱり無防備すぎないですか? 男性が女性しか居ない部屋でこうも寝ているのは」
「だよねぇ……」
「そうですね……」
「はあ……寝顔も可愛いねぇ……ラセツ君は」
「蕩けきってますよ……幸せそうですね」
「ふふっ……可愛いですね」
「……次は負けないよ」
「私も負けませんよ」
「私が次も頂いちゃいますよ〜?」