頂点キヴォトスお嬢様   作:ちゅーに菌

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シュポガキのエッチで可愛い方とエッチで子悪魔な方で、エッチで可愛い方と名前が被りましたわ!

今回の更新まで読みましたが、主人公をこのままの設定で突き進んで問題なさそうと判断したため、続行致しますわ!(見切り発車の末路)









独裁お嬢様

 

 

 

 

 

「ホシノちゃん美味しいね!」

 

「そうですね……!」

 

 現アビドス高等学校生徒会長――3年生の梔子ユメと、その後輩である1年生の小鳥遊ホシノもそんなラーメン屋にやって来ていた。

 

 そこはアビドスにある知る人ぞ知る名店である柴崎ラーメンであり、今ここでは行きつけのラーメン屋に後輩を連れて来れてご満悦な様子の先輩と、両目に星を浮かべてラーメンにがっつく後輩の姿だけがあり、どこにでもあるような学生の青春の1ページが広がっている。

 

 それはただ平穏で、微笑ましいだけの光景であり――奇妙な来店客にホシノの視線が向いたことで止まった。

 

 

「………………」

 

 

 それはそもそもかなり怪しい奴であったのだ。

 

 まず、真夏のような気候のアビドスにも関わらず、どう見ても高級そうなスカーフを頭に被り、スケバンがしているようなバッテンマークのついた黒いマスクをし、更にコチラから目が見えないほどの瓶底眼鏡を掛けている。

 

 強盗目的の不良生徒ならば、逆にしない服装であり、そもそも柴崎ラーメンは店主の人柄などもあり、この辺りの者ならば襲うようなことはない。

 

 更に縮こまっているが、身長は180cmを超えていると感じるほど大柄な上、畳まれているが、その背に生える青い翼は、ホシノがこれまで見てきたキヴォトスの天使の生徒たちの中ではふた周り以上巨大なものであり、誰がどう見ようともただの生徒ではないことは明白であり、天使、それも相当なトリニティに連なる名家の出であろうことは、想像に容易いだろう。

 

「なにあれ……?」

 

 アビドスでは見ないタイプの不審者を目にしたホシノは、ラーメンを食べる手を止めてそちらを眺める。

 

 ホシノの視界に映る彼女は、入店してからキョロキョロと店内を見回しており、その姿は不安げというよりも物珍しげに感じる挙動であった。

 

「あれ……? あっ! ヒカリちゃん!」

 

「え゛……?」

 

「――――ッ!?」

 

 "まあ、関わらなければいいか"などと考えてラーメンに意識を戻そうとしていたホシノは、よりにもよって自身が信頼と敬愛を置くユメが、さも当たり前のようにそれに対して手を振って招き、それにホシノは妙な声を上げる。

 

 不審者は声を掛けられたことで驚いたように翼を少しはためかせ、それだけで小さな風を起こしつつカウンター席にいるユメを凝視して少し止まる。そして、不審者側にも面識があったのか、肩を竦めたように見えた。

 

「…………ああ、アビドス高等学校生徒会長の梔子ユメ様ですね。お久し振りです。連邦生徒会の総会以来ですね……」

 

 どうやら不審者は知り合いらしい。しかも生徒会関係の知り合いらしく十中八九要人であることがわかる。

 

「えへへ、アビドスに来てくれてたんだねー。言ってくれればよかったのに!」

 

 ユメは会話しつつ自身の近くに来るように促し、それに従ったユメの知り合いはユメの近くまで来ると、ホシノは居ないようにスルーしつつユメを挟んで逆側のカウンター席の前に立つ。

 

「…………少々、思うところがあったので、1ヶ月ほど休暇をいただいて自分探しの旅をしております。それで……今までこういったところに入ったことがなかったため、少々気になりまして」

 

 そういうユメの知り合いは、厨房にいる柴大将が作るラーメンを眺めており、よく見ると口の端に涎が浮かび、恐らくトリニティ関係者であろう者のイメージからは逸脱している。お紅茶やお菓子を嗜むだけでなく、単純に食意地の張った人物らしい。

 

「そっかぁ、なら座ってよー。一緒に食べよ!」

 

「ではお言葉に甘えて……」

 

 椅子に座ろうとした彼女は、顔に着けていた眼鏡やマスクやスカーフを外す。

 

 その中身は、透き通った青空のような髪色に映える陶器のように白い肌に、明けの明星の如く燦々と輝く金の瞳をし、同じキヴォトスに生きる者とは思えないほど整った顔立ちをしている。

 

「あら……」

 

 彼女はここまで来てホシノを認識したのか、席に座る前にそちらへ向くと、自身のロングスカートの裾を掴んで、恭しく頭を下げた。

 

 その所作や佇まいがあまりにも堂に入っており、カーテシーとはこういうものをいうのだろうかと、ホシノはそれとなく考える。

 

 

「そちらの可愛らしい御人(おひと)。覚えずとも構いません。(わたくし)はトリニティ総合学園1年生で、ティーパーティーのパテル派の首領をさせていただいている――"バルバラ揚野ヒカリ"と申します」

 

 

 ホシノは3年生ではなく同学年だったことに驚愕しつつも彼女の第一印象を、自然に失礼でこちらのことを道端の石ころとしか考えていないような生きる世界の違ういけ好かない奴だと考えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仕事美味しいですわ! 仕事美味しいですわ……!!』

 

 アビドスにゲヘナ風紀委員会が作戦を展開したり、私がミネに襲われ、トリニティの救護騎士団まで返却しに行ったりし、カイザーコーポレーションとの学園法定裁判の準備を着々としつつその間にも賽の河原の如く積み上がるシャーレの仕事を消化していますわ。

 

 訴訟の方の準備はマコト様に6割ほど任せていますが大丈夫でしょう。あの方は風紀委員会さえ絡まなければ、己と学園の利益を第一に追求し、生徒一人一人に目をやり、腹芸もでき、黒い部分にも精通したキヴォトストップクラスの為政者ですわ。ええ、風紀委員会さえ絡まなければ。

 

 そもそも為政者に必要なのは、能力のある部下を抱えるカリスマ性と有事の際にその部下を扱う能力に加え、どれだけ黒い側面を柔軟に対応して学園の利益と出来るか程度。残りの能力は学園に泊を付けるオマケですわよ。その点、マコト様は素晴らしいですわ。風紀委員会さえ絡まなければ。

 

 三頭政治を謳っていながらその実仲良し小好し本末転倒な政治をしているトリニティは論外、ミレニアムも現トップに個人の能力や黒い部分に適応できる力はあっても対人経験値の深刻な不足から何でもかんでも独力でしてしまおうとする辺り為政者としては終わってますわ。レッドウィンターはトモエさんがトップになる気があるならキヴォトス最強の学園になれると思いますわ。サクラコ様はああ見えてただの善人ですし。百鬼夜行は……ええ……。

 

 ちなみに風紀委員会のヒナさんは、為政者にはあまり向いていません。彼女は最上級の戦闘能力に加え、高い事務処理能力まで備え、トップを出来なくもない能力を持ってしまったばっかりに今のポジションにいるだけですわ。本来ならナンバー2とか、戦ヴァルの帝国のヴァルキリア人ぐらいのポストが適性ですわ。

 

 生徒なら誰しも学園の上層部が汚職も横領も癒着も忖度もしていない(黒でもグレーでもない)なんて考えていないでしょう? クリーンやらホワイトな政治などと戯言を謳っている政治を勘違いした新興宗教家(ワカモノ)の方にむしろ危機感を感じますわ。為政者なんて、政治をやってさえくれれば、見てくれは白っぽくてその内面はドス黒いぐらいで丁度いいんですの。そうでなければ適当に騙されて終わりですわ。

 

『オホホホホ……!』

 

 それにしてもシャーレの仕事の質は様々な学園のトップに居た私が太鼓判を押し、腹の底から何かが込み上げるほど上質でハルナさんも究極だと言うでしょう!

 

 また、どれだけ食べても無くならず、いつまで経っても腐らず、無限に追加されるのでアカリさんも大満足ですわね!

 

 おクソがッ! イズミさんアレンジですわ! チョコと歯磨き粉を持ってきなさい! そして、ぶちまけてお駄目にしてしまいなさいジュンコさん!! なんて過酷な職場ですの!!!

 

『ハタラケルヨロコビ! ハタラケルヨロコ――』

 

"バルバラ、ちょっといいかな?"

 

 誰に言うまでもなくそんなことを考えたり、口に出したりしているといつの間にか先生がおりましたわ。

 

『あら? アビドスから帰って来ていましたのね? オホホ……。言ってくだされば出迎えを――』

 

 立ち上がりながらそこまで言ったところで、先生の表情と雰囲気が、いつもの飄々として若干頼りなさそうなそれから意思に満ちて張り詰めたものになっていることに気付き、私は言葉を途中で止める。

 

『――どうやら私に何か相談事でもありますの?』

 

"ありがとう……。手短に話すね?"

 

 そして、そのまま近くの椅子を引くとそちらに先生を促すと、先生は私を真っ直ぐに見ながらことの顛末を話し始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行動は兎も角として、カイザーPMC理事と黒服さんの言うことは尤もですわね』

 

 バルバラがシャーレに戻ってからアビドスで起きた事柄――カイザーPMC理事と黒服の共謀によってホシノがアビドスから姿を消し、カイザーPMCの部隊が侵攻してきたことを黙って聞き、ホシノの手紙にも目を通した彼女は、開口一番にそう言い放った。

 

『アビドスの借金はアビドス生徒の借金ではなく、アビドス高等学校に対する責任ですわ。なので、自主退学をしてアビドスを去るという選択肢が一番現実的でしてよ』

 

 どうやらバルバラはそちらの肩を持つらしいが、常に何らかの組織のトップに立ち続ける彼女ならその言葉も仕方ないところだろう。

 

『キヴォトスで幸福に学園生活を送ることに、アビドス高等学校でという枕言葉を付ける必要はありませんわ。彼女らほどの戦闘力を持つ生徒ならゲヘナでもかなりの待遇で5名とも受け入れるでしょう。弱小や中堅と言われる学園なら引く手数多、寧ろ現状そうなっているように留まる方のデメリットの方がデカ過ぎますわ』

 

 そのままバルバラは小さく溜め息を吐くと更に言葉を続ける。

 

『アビドスに残ること自体が不毛。高々、10億ぽっちの借金程度に首が回らなくなる部活どころか同好会程度の規模の生徒たち……』

 

 "ミレニアムのユウカさん辺りなら指先だけで稼いで見せますわよ?"とバルバラは呆れ半分冗談半分な様子で呟いた。

 

『支援して借金を解決するのは簡単ですわよ。それこそ10億なんて私の資産では小指の爪の先以下の金額ですし、そこまででないにしろ。ノノミさんが動けば似たような解決ができるでしょう』

 

 "一言ホシノが頼めば私は借金を全て返済して差し上げますことよ"とだけ吐き捨てるバルバラだが、どうやらホシノとの関係は先生が思っていた以上に深い関係性らしい。

 

『ですが、ホシノは……アビドス旧生徒会はそれを決してしない。私としては、アビドスの生徒たちに自主退学を焚き付けてくれるだけでもよかったのですわ』

 

"ホシノがヒカリを嫌っているようだったのは……"

 

『ええ、私が1年生の時点でホシノに再三自主退学を勧めていたからですわ』

 

"そっか、だとしても私には生徒が望まない進路を、強要することはできないよ"

 

『誇りと望郷……そしていつかの面影を抱き続け、泥を被ってでも生きることをせず――(ユメ)に押し潰されるとしても?』

 

"あの子達はそんなに弱くない"

 

『ええ、そうでしょうね……残りの4人は』

 

 酷く含みのある言い方をしつつ、バルバラは自主性と現在を尊重する先生とは真逆の解答を提示する。

 

『ですが、解決策はありません。だから不毛ですわ。なぜ、連邦生徒会がアビドスに支援しないかわかりますか? 薄情だから? 余裕がないから? 違いますわよ』

 

 それはかつてSRT特殊学園総隊長――連邦生徒会長の片腕として全ての学園を見渡し、現在あらゆる学園の生徒を助けるために動いている彼女だからこその考えであろう。

 

『例え、借金を返し切ったとしても……アビドスの砂漠化など疾うにどうにかできるわけがないではありませんか? かつて、トリニティやゲヘナほどの勢力を持っていた学園が、全力で砂漠化に立ち向かった結果、原因すら掴めずに半ば滅んだ……。そんな絶望的な現状を前に、連邦生徒会がこれ以上何をしろと?』

 

 恩情で現実主義者。それは薄情者とも思われてしまう損な質だ。

 

『アビドスだけでなく、キヴォトスにある数千の学園運営を基本は任せつつ統括して補佐するのが、連邦生徒会の仕事ですの。毎年どれだけの数の学園が潰え、新設されているか。アビドスも所詮そのひとつとなるに過ぎませんわ』

 

”それでも……。生徒たちがしたいことを否定するのは、先生がしていいことじゃないよ。だってあの子達はまだ……やりたいことに向き合えてもいないから”

 

『そうですか……先生――』

 

 まず、バルバラに助力を頼もうとしていた先生は、平行線の考えで動いている彼女を今回味方に付けるのは難しいと考え――。

 

 

 

『――言質は取りましたわよ?』

 

 

 

 そのため、バルバラはこういう人間であったことを先生はすっかり忘れていた。デスクの下から出された彼女の手にはボイスレコーダーが握られている。

 

『アビドスの皆様のしたいことを尊重なさるということはァ……私のしたいことも尊重して下さるということですわね? それならお話がお早い! では早速! カイザーをぶち殺しに行きますわぁ……』

 

"え゛……?"

 

『あー、もしもし? バルバラですわ。ええ、予定通りに。では、アビドス砂漠のカイザーPMCに対し、侵攻作戦を展開致しますわよー』

 

 そのまま、困惑する先生を他所に楽しげな様子のバルバラがどこかに電話を入れると、デスクから立ち上がり、首の骨が鳴り響くほど首を回して伸びをする。

 

"よかったの? さっきの言葉はみんなバルバラの本心なんじゃ……"

 

『ええ、本心ですわ。しかし、それと同時に建前と理性でもありますの。なのでそれはそれ、これはこれですわ。だって……カイザーの一人勝ちなんて心底気に入らねぇじゃありませんか?』

 

 それは正しくゲヘナらしい暴君であり、また紛れもなく彼女が独裁者として振る舞うかつてトリニティ総合学園のトップだったバルバラという女生徒の本質そのものであった。

 

『というかぁ……逆恨みの何が悪いんですの? 気に入らない奴はぶん殴る! 個人的に納得できないことを力で捻じ伏せ、黙らせますの! それこそが私の目指すキヴォトスですわァ!!』

 

"あはは……"

 

 しかし、明らかにやり過ぎるところが玉に瑕である。まあ、そのためにキヴォトス中から恐れられているわけだが。

 

『さて、助力を求めるなら先生は私の元だけで終わる訳では無いでしょう? 要らないお節介かも知れませんが、ゲヘナの風紀委員会とトリニティのティーパーティー辺りがオススメですわね。前者はヒナちゃんがアンパンマンみたいな精神をしているので断らないでしょうし、後者は私の名前をそれとなく出すといいですわ。シャーレという組織あるいは先生という個人に借りを作れる上、エデン条約前に私へ貸しを作れるというのならば喜んで手を貸すと思いますわ』

 

"そうか……。ありがとう、バルバラ"

 

 先生の背を押してシャーレの執務室から強い足取りで出て行き、扉まで差し掛かったところで、バルバラは"後、一言だけ"と言って先生を呼び止める。

 

『善人が何もしないとき、それだけで悪が勝利する。それが私の座右の銘ですわ。先生は……生徒にとっての善き隣人であってくださいましね?』

 

"ああ……!"

 

 今度こそ先生は、前だけを見てシャーレから出ていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふふっ……本当に面白いお方』

 

 先生が出て行ったのを確認し、暫く先生の居た場所を無言で見つめていたバルバラは、何か琴線に触れたのか小さく声を漏らした。

 

 それからデスクに戻ると徐ろに会話を録音していたボイスレコーダーを持ち上げると、それをパソコンに差し込んで、先生が話したカイザーや黒服とのやり取りを含めたアビドスの一件の一部始終の音声データをメールに添付する。

 

 そして、宛先に自身の電話帳から見知った名のアドレスを貼り付けた――。

 

 

 "蒼森ミネ"――と。

 

 

『はい、送信っと……。戦力が多いに越したことはないでしょう』

 

 最後に"ッターン!"と軽快にEnterキーを叩いてメールを送信したバルバラの肌は、何処かツヤツヤになっているように思える。

 

『では、仕上げですわね』

 

 それからバルバラは自身の携帯電話で何処かに電話を掛けた。

 

《…………なんだ? 今、忙しん――》

 

『やっハロー! バルバラですわよ、カイザーPMC理事!』

 

《――!? ――――! ――!!!?》

 

 電話越しに凄まじく咳き込む声が響く。プレジデントとの通話のときに言っていたようバルバラが、その昔に一度は殴り付けた相手なため、面識があるらしい。

 

『小粋な挨拶はここまで。今、アビドスで悪いことをしているそうですわね? どうやら懲りてない様子で何よりですわぁ……』

 

《な、なんだ藪から棒に……!?》

 

『唐突にアビドス高等学校の変動金利を3000%上昇させ、利子を1億近くに引き上げ。約10億の借金に対する保証金として1週間以内に3億の請求でしたわね』

 

《それがどうした……? お前には何も関係ないことだろう?》

 

『ならばこちらも急に……。何かしてもいいですわね?』

 

 するとバルバラは、とても楽しげな様子でパソコンを操作し、幾つかの作業を終わらせ、ゆったりとした声でカイザーPMC理事に告げる。

 

 

『ではでは……ディーテ法務部は、今よりアビドス高等学校の顧問弁護団となりましたわ。とりあえず、えいっ――たった今、3億入金しましたわ。もちろん、ディーテの運営資金から』

 

《は……?》

 

 

 学園の運営資金――すなわち国ならば国庫に当たるようなものであり、それが脅かされたということは、バルバラが統治する地獄であるディーテ夜間学校と全面戦争することに他ならなかった。

 

『吐いた唾は呑めないでしょう? 急に取り下げるなどなさらぬように。さて……よくもこの私にとんでもない暴利を振りかざしてくれましたわね……? 誠に遺憾ですわ。遺憾の意でしかないですわ』

 

 当たり判定だけ伸びて激突してきた(亜空間タックル)、そもそも車に飛び込む当たり屋、完全にやっていることは、大規模過ぎるだけの通行人に肩パンを当てるスケバンのそれである。

 

 ただ、ひとつ違うのは自身も相手も悪党であるということだ。

 

『ああ、そうそう――カイザーローンのマネーロンダリングの件はとっくの昔にこちらで証拠を押えているので悪しからず。他にもキヴォトスで違法な武装のブラックマーケットへの横流しや、カイザーPMCとして雇った傭兵に持たせていた件も添えておきますわね』

 

《ど、どこでそんな……!?》

 

『疑惑と証拠があれば十分、後は我々と世論が白とグレーを黒と決め付けるだけですわ。学園法廷で勝っても引き分けでも負けても……貴方の首はもう終わりですわねぇ』

 

 そう言ってバルバラはカラカラと笑い"一応、言っておきますと"と言って更に言葉を続けた。

 

『こちらの示談条件は、アビドス高等学校及び元カタカタヘルメット団の方々のカイザーローンによる負債を即刻破棄すること。それから旧アビドス生徒会あるいはアビドス高等学校へそちらが買い上げた土地の利権を全て返還し、ついでにアビドス砂漠からカイザーPMC部隊を引き上げて施設を取り壊した上で、恒久的にカイザーPMCをアビドスに近付けぬようにしてくださいまし』

 

《は……?》

 

『ああ、もちろん、全て無償という形でお願い致しますわ。撤去などで掛かる費用なども全額そちらが負担してくださいな。こちらは鐚一文足りとも出す気はございません』

 

《巫山戯るのも大概にしろ……! そんなもの条件ですらな――》

 

『あらあらまあまあ? 散々、あなた方がして来たことでしょう? これが、ディーテ及びキヴォトス最悪の女生徒足る私のやり方ですわ。お金! お暴力! お権力! それさえあればキヴォトスではなんでもできますのよ?』

 

《だとしても今回の件で何の得がお前にある!? 正当性はこちらにある上にお前には何も関係も得もないことのハズだ!》

 

『ええ、一切、利益にはなりませんわね。それどころか、既に損失が出ております。しかし、心情的におクソほど気に入らねぇですわ……それだけでテメェの顔面を撲り付けるには十分過ぎる理由でしてよ? それをするのに3億は安いですわねぇ』

 

《子供か貴様……!!》

 

『あら? 私、独裁者ですわよ? それで歴史上、独裁者のおつむがおクソガキでなかった試しがありまして? 気に入らないことに理不尽で当たり前ですわ。取れるものなら私のご機嫌を取ってみなさいな?』

 

 それだけ言い切ったバルバラは、返答を待たずに最後の通達をする。

 

『では……。アビドス砂漠のカイザーPMC部隊に対して――"OWL中隊"と軍事侵攻させますので、対戦よろしくお願い致しますわ。学園が一企業に対する宣戦布告ですわよ』

 

《――!? 最初からそれが目的か……!?》

 

『なんでもそちらの戦力は何百両もの戦車、何百名もの選ばれた兵士、何百トンもの火薬に弾薬だそうで……それで? その虎の子の部隊とやらは、本来なら少数精鋭を理念とするSRT特殊学園の中で、唯一中隊だった私のOWL中隊――"240名"を相手に何処までやれるか見物ですわね』

 

 それだけ告げて電話を切ったバルバラは、椅子に深く座り直すと、机の上に目を向ける。

 

 そこには先生が置いて行ったホシノの手紙があり、その内容はまるで残るアビドス生徒に対する遺書のようなものに思え、事実として自身が敵対したときにヘイローを破壊――すなわち、殺すようにとすら書いてあった。

 

『死はなにか崇高で特別なものなどではありません。強いて言えば、質の悪い呪いでしょう。そんなことはあなたが一番よく存じているでしょうに……』

 

 そして、バルバラが眺める手紙の中には、バルバラについて書かれた箇所もあった。

 

 そこには"バルバラは今でこそあんな風だが昔は真面目だった。本当は自分よりもずっと優しくていい奴だから何かあったときは頼って欲しい。必ず力になってくれる"等と書かれており、表面上では決して見せない関係性が伺える。

 

 それを見つつもう片方の手でガスマスクが外されると、そこには相変わらずの隈を蓄えてはいるが、何処か悲しげに眉を顰めた表情があるばかりであった。

 

 また、手紙を持つ手が震え、爪を皮膚に突き立てており、食い込み続けたそれが弾け、薄っすらと血が滲み出すのにそう時間は掛からない。

 

「随分と……買い被られたものですね」

 

 次の瞬間、バルバラの血が沸き立つように蠢き、更にそれが赤黒い火花を上げ始めたと思えば、血混じり炎と化してホシノの手紙を跡形もなく焼失させる。

 

「ユメさんが残した貴女のためです。そうでなければ楽園を棄てた天使であり、光を掲げる者(掲野ヒカリ)たる私がここまではしません。ねぇ、神様」

 

 その後もバルバラの掌には、自ら握り潰すまでの間、血のような炎が煌々と輝き続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 







感想や評価ありがとうございますわ。ちなみに去年のレールガンコラボで始めて半年経たないぐらいの頃に私の先生Lvは90になりましたわ。この前、モエ(水着)引きましたわ。ガチャが耐えられねぇですわ(諸行無常)
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