頂点キヴォトスお嬢様   作:ちゅーに菌

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ちなみにこんなタイトですが、本人は出て来ませんわ。

後、連載に切り替えましたわ。

感想は時間が掛かっても全部返しますわ(いつもの)







あはは…ペロロ様

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ……? 私がトリニティを辞めた理由ですの?』

 

 

 これは先生がシャーレに来てからそう日が経っておらず、アビドスから一旦シャーレに戻り、溜まった仕事を片付けている夕方頃の話。

 

 目の前のシャーレ事務である生徒――バルバラ揚野ヒカリは先生からの質問に首を傾げつつ、何とも言えない返答をして来た。

 

(まずい……。とんでもなくデリカシーのないことを聞いてしまった……)

 

 対面で向き合って仕事をし続けること約数時間、業務連絡以外の会話がないことに気付き、彼女についての質問をする事にした先生であったが、既にかなり疲れた頭で、捻り出された問は、余りにも配慮に欠ける直球な内容となったのだ。

 

 流石の先生も言った事を失言とし、謝る内容を即座に考えるレベルの発言であると自覚する。

 

『先生は知りたがりですわねぇ……』

 

 しかし、実際気になるところではあった。

 

 というのもゲヘナからSRTに引き抜かれた時の転校は、言ってしまえば栄転であり、強者がより高みに登っただけなためにゲヘナ生からの印象も極めて良い。転校して尚も権威が落ちるどころか、ゲヘナの繁栄を支えるディーテの統治者として不動の地位と、自由と混沌、そして畏怖と恐怖の象徴となっている。

 

 また、ヴァルキューレへの転校というよりも編入は、SRT閉鎖による仕方のない措置であり、ほぼバルバラに非はないと言える。まあ、ゲヘナに戻らなかった点で多少シンパに落胆された程度だ。

 

 しかし、トリニティからゲヘナへの転校は話が違う。水と油である両者で、他方の形式上のトップに登り詰めるなど明確なトリニティに対する裏切り及び敵対行為であり、よほどの悪意や嫌悪がなければやろうとはしないだろう。

 

 しかも先生は、バルバラの根はとても優しい性格をしている事を知っているため、十中八九トリニティ側への不平不満が爆発した結果であるとは、なんとなく理解出来ていたのだ。

 

『うーん……色々要因はありますが……やはり一番大きいのはアレですわねぇ。ではでは、仕事の休憩がてらご説明致しましょう。まあ、私の話ですし、主観十割でお送りしますわね』

 

"あっ、いいんだ。なんだか言い辛いことを無理矢理言わせてるみたいになってゴメンね"

 

オーッホッホッホッホッホ!! 私と先生の間に遠慮など不要! というか、そもそも私にこれ以上、下がる品格も繕う体裁もありませんことよ!』

 

 "そんなものトリニティに捨てて来ましたわー!"と相変わらずな高笑いを交えつつ、バルバラは自身の過去を語り始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれはそう、きっとまだ恐竜が闊歩し、始祖鳥の鳴き声で目覚め、アースロプレウラに装備を破壊されるのに悩まされていた古き時代のお話でしたわ。主食はお紅茶とロールケーキでしょう。

 

 それは置いて置きまして、かつて無数の学園が紛争を繰り広げていたトリニティ自治区は、最終的にトリニティ総合学園としてひとつに統合され、その中でも主要な三つの学園であったパテル派、フィリウス派、サンクトゥス派の三大派閥による三頭政治が現在まで行われておりましたわ。

 

 その中で入学した直後から現代の聖女バルバラとしてたった一年生にして、トリニティ総合学園の生徒会に当たるティーパーティーにパテル派の首長として神輿に担ぎ上げられた生徒がおりましたのよ。

 

 彼女のことは……バルバラちゃんと呼びましょう。当時のバルバラちゃんは、血筋とトリニティであることを誇りとし、厳格かつ他者から求められる"トリニティの聖女バルバラ"という生き方を全てとして育てられ、それに疑問を感じないせいで、それはそれはクッソお固くて、トリニティのことをキヴォトスで最も格式高く崇高な学園だと考え、トリニティに全てを捧げることをライフワークにしていましたの。

 

 しかし、不思議なことに当時のバルバラちゃんはそれを当然のことだと考え、不満にすら全く感じて居なかったのですわ。むしろ、シスターフッドか、ティーパーティーのどちらかに入るかを選べた程度の選択を自由だなどと考えてた了見の狭いどころか終わっているメスガキでしたわ。当時の身長182cmですわ。

 

 バルバラちゃんは、日々大病院の院長回診のようにパテル派を連れ歩き、トリニティのために来る日も来る日も仕事をし続け、お茶会や品格を保つことばかりに精を出す……まあ、今の私がやったら30秒でトリニティを破壊し始めるであろう生活をしておりましたの。

 

 趣味も特になく、強いて言えばお茶会に出せるので、スイーツの研究のようなことをしていた程度でしてよ。無論、今は馬鹿らしくてしておりませんわ。

 

 そんなバルバラちゃんのターニングポイントとなったのは、とあるトリニティ生徒と出会ったことでしたわ。いえ、当時彼女は中等部でしたから厳密には少し違いますが、まあ誤差ですわね。

 

 彼女の名は……本人のプライバシーを尊重し、"Hさん"と呼びましょうか。

 

 片一方はパテル派トップでティーパーティーの聖女バルバラ。それに比べてHさんは、中等部で平凡な一般生徒。トリニティ内でも……いや、トリニティだからこそある天と地ほどの明確な格差があり、本来なら直接的に関わることはほぼないと言い切れたでしょうね。

 

 まあ、どうしてそんなバルバラちゃんとHさんが会ってしまったかと言いますと……その……。Hさんが、ブラックマーケットの入り口で、ちょろちょろしていたのを偶々見付けてしまったからですわね……。

 

 ブラックマーケットといえば、治外法権が罷り通り、法や倫理が機能していないキヴォトス有数の危険地帯であり、当時のバルバラちゃん……いえ、トリニティからするとスラムのクズの掃き溜め程度の認識であり、治安とか以前に穢らしさから近付こうともしない場所でしたわ。

 

 そんなところの入り口で中等部の生徒がうろうろしているのを見付けたら……ティーパーティーとか、パテル派とか特に関係なく、止めて注意しますわよね? まあ、その選択は今でも間違っていないと思いますわ。

 

『わっ!? あ……あぁ……!? バルバラ様……!? なんでこんなところに……!』

 

 動物で例えるとキバタンみたいなHさんに、一人で下校途中だったバルバラちゃんが声を掛けるとそんな感じでわたわたし始めて可愛かったですわね。けれど、それはそれこれはこれ、ブラックマーケットの周辺は危ないので注意喚起をし、中の様子を興味本位で知りたがるなど以ての外ということを叱りましたの。

 

 そしたらHさんったら――。

 

 

『――――ッ! バルバラ様! 一生のお願いです! 私と……ブラックマーケットに行ってください!!』

 

 

 とんでもねーこと宣いやがりましたのよ。

 

 一生のお願いを本当に一生のお願いに使ったらダメですのよ全く……。

 

 まさか、中等部の生徒にそんなことを言われ、有無を言わさずにグイグイ手を引っ張られるとは思わず、筋力的には圧倒的にこちらが上の筈なのに気付けば、ブラックマーケットの中に居ましたわ。

 

 結局、Hさんに気圧されて入ってしまったバルバラちゃんは、言葉でどれだけ言っても止まらない上、最早乗り掛かった船になってしまったことで、仕方なくHさんの目的を達成して直ぐにブラックマーケットから離れることにしましたの。

 

 しかし、Hさんもブラックマーケットに来るのは始めてだったらしく、捜索は難航。その上、Hさんが探していたモノが何か聞けば――。

 

 

『あはは……ペロロ様です!』

 

 

 お気色わりぃアヘ顔トリカス……失礼、アバンギャルドな見た目のモモフレンズのキャラクターの限定品でしたわ。

 

 聖女バルバラを、ティーパーティーをペロロ様の為に顎で使ったといいますか、使われた事実に愕然とするバルバラちゃんでしたが、遂に見付かった目当ての限定グッツは、プレミアが付いていて中等部の生徒のお小遣いでは厳しそうな額でした。

 

 ええ、Hさんは途中からあるいは、私に見付かっ……いえ、私を見付けた時から考えていたのでしょう。

 

 意思に溢れて、澄んで透き通った汚れのない瞳でバルバラちゃんを見据え、Hさんはこう言いましたわ――。

 

 

『バルバラ様……。お金をっ! 貸してくださいッ!!』

 

 

 この世にはこんなエゴの極致のような奴が居るのかと、最早感心すら覚え、バルバラちゃんは自分自身の人生を見直す切っ掛けになったのでしてよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『で、私が生まれたってわけですわ』

 

"ええ……"

 

 先生は戦慄した。

 

 どうやらバルバラが言うには、彼女の成り立ちはそのHさんというトリニティ生徒が関わっており、彼女が居なければ今でもトリニティに残っていたと逆説的に言っているらしい。

 

 人生を変える出来事というモノは、唐突に訪れるらしいが、幾ら何でもお巫山戯が過ぎているだろう。

 

『無論、彼女は切っ掛けに過ぎません。それから約一ヶ月間、今まで見ようともしなかったものを直視し、経験する必要のないと考えていたことを体験しましたの。ユ――ホシノと知り合ったのもその頃ですわ』

 

"そっかぁ"

 

 一先ず安心する先生。どうやら半分は冗談だったらしい。エピソードそのものが冗談でない限り、狂気は変わらない筈だが、今は考えない事にした。

 

『新たな視点を持つと視野が広くなり、見えて来なかったモノも見えるようになる。そうして、改めてトリニティを見て見たら……酷く窮屈で……却って醜いところばかり感じられるようになってしまった。結局のところ私がトリニティを離叛した理由の大部分はそれだけですわ』

 

 "バルバラちゃんは何もモノを知らなかったのですの"と彼女は自嘲気味に呟く。

 

 何だかんだ言いつつ最終的に選んだのは自身であり、Hさんに非はないと暗に言っている辺りが、バルバラらしいところであると先生は感じ、少なくとも魔王か何かのような世間の評価とは異なると考える。

 

『まあ、他にも好きなものは好きだから仕方ない。諦める理由にはならず、それをどんな手を使っても手に入れようとする。そのように夢を追う姿勢そのものが、紛れもなく私に足りないものでしたわ。そして、夢を抱いた時、トリニティに居る理由は無くなりましたのよ』

 

"バルバラにとっての夢って?"

 

 先生の問いを聞いたバルバラは、当然とばかりに小さく笑い声を漏らす。

 

 

『それはもちろん――学園都市であり、生徒のためにある"キヴォトスの安寧(世界の平和)"ですわ』

 

 

 そう語るバルバラの夢は確かに崇高であったが、彼女のガスマスクのレンズ越しの瞳を見ることは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まあ、この話の教訓はこうですわ先生……』

 

"えっ? まだ、続きあるの?"

 

『可愛い女の子が、借金をするため……! 必死で私に頼み込む姿は最高でしてよ……!!』

 

"性癖が破壊されてる!?"

 

『後、ペロロ"様"――ですわよ?』

 

"さっき、スゴい罵倒してなかった?"

 

 

 

 

 

 








〜 ちょっと先の未来 〜


囧「うわぁあああ――ヒカリ先輩また負けたぁぁぁ――!」

☮『あらあらまあまあ? また溶かしてしまいましたの……?』

囧「おか゛ねか゛し゛て゛くださいィ――――!! 今度という今度は勝ちますからぁあああ――!」

☮『本当に仕方ない娘ですわねぇ……(ゾクゾク)』


      多重債務者コ◯キ 需要と供給編より





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