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メリークリスマスですの。さて、ブルアカのクリスマスといえばあの方ですわね。
(どっ、どどどど……どう、どうしたらいいの!!!?)
憧れるアウトローを挙げると三番目までには確実にバルバラの名を出す生徒――陸八魔アルは、一目散に逃げた先のアビドスの路地裏に一旦おり、腕を組みながら震えていた。
というのもアルの失言によって、平社員のハルカが思い込みで紫関ラーメンを爆破したのだ。それだけならゲヘナが誇る便利屋68のいつもの事なのだが、今回はより深刻である。
何せ、爆破した店舗である柴関ラーメンは、ゲヘナ最凶最悪と名高いアウトローのバルバラ揚野ヒカリによる紹介であり、店主の柴関大将の口から関係性が窺えるほどだった。アウトローだとか、どうだとか言っている場合ではない。
ゲヘナなら自身にナメた事を働いた者に対してキヴォトスの端まで逃げようと一人残らず追い詰めて襲う空崎ヒナ、三国志なら自身の国を持った呂布、戦国時代なら統治能力にも長ける武田信玄、大航海時代なら私掠船認定されたエドワード・ティーチ、紳士な鎌倉武士。バルバラという者が大多数の不良生徒から恐れられている印象で言えば、悪魔より悪魔なレベルの有り得ない怪物である。
その上、そもそも単体が持つ権力と戦闘力が高過ぎるため、他学園の自治区に逃げ込んだ者に対し、その学園に一言だけ断りを入れ、ほぼ事後承諾染みた戦闘を自治区内でするという無法者っぷりだ。
まあ、学園側としては、バルバラの行動を抗議すると脅迫紛いの正当な方法で学園を責められ、猫をレンチンしたら死んでしまったのでそれを表記していなかったレンジを作った会社が悪いレベルに理不尽極まり無い濡れ衣を彼女が学園側に押し付ける。更に何処からか持って来た今回の件とは一切関係のない学園側の黒い部分を白日の下に晒して学園側の信用を失墜させ、論点をすり替えつつ正当性を主張して謎の利権争いを強いられる。その上、結局逃げ込まれた学園側が逃げ込んだ者を捕まえなくてはならないという三重苦になるため、三大学園レベルでなければ、基本的に抗議さえされないのだ。この辺りがバルバラがキヴォトスで悪名高い最大の所以だったりする。法とは同じレベルの者とではないと機能しないという証明であろう。
ちなみに三大学園でもマトモに抗議するのはトリニティ程度で、ミレニアムはトップ層とバルバラが仲が良く特に問題にならず、ゲヘナはそもそも彼女の領域なので関係がない。また、そんなことばかりしているため、ゲヘナと彼女が抱え、バルバラ自身を含む弁護団はキヴォトス最強と名高く黒を白に変え、その逆もまた然りなのだ。
そのため、彼女がSRT学園総隊長となった時にどの学園も特に抗議が上がらず、むしろ今までと何が変わるのかと首を傾げた程度であった。彼女ほど適任な人選はないであろう。
要するにアル的には、そんなアウトローの顔に全力で泥を塗ったという認識なのである。不良も良識のある生徒もその反応自体は間違ってはいない。
「くふふ、アルちゃん顔に出ちゃってるね」
「全然、取り繕えてない」
「ヒカリちゃんってアルちゃんに激甘だし、別に大丈夫じゃない?」
「社長になら片腕折られても笑ってそうだし」
「私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい……!」
アルの近くでは室長の浅黄ムツキと、課長の鬼方カヨコが会話し、いつもよりもアルの様子が可笑しいため、より猛省している平社員の伊草ハルカが
『お邪魔しますわよ』
「ヒュッ――っ!?」
そんな時、何処からかともなくバルバラやって来た。断末魔のような声を漏らしたアルは、白目を剥いたまま白く燃え尽きたようになる。
「あっ、ヒカリちゃんひさしぶりー! 遊びに来たの?」
『ムツキちゃんはいつも通りですわね。まあ、似たようなものでしてよ』
"いぇーい!"と言いつつムツキはハイタッチを要求して来たため、バルバラは身長差から屈みつつ手の位置を下げてハイタッチをする。
『カヨコさんもイェーイ!』
「……い、いぇーい」
見た目に反して、中身はムツキ並みにノリの良いバルバラがカヨコにハイタッチを要求し、カヨコは小さな溜め息を漏らしつつ彼女の手を叩いた。
「あっ、あっ……ああっ……あっ――」
『ハルカ様もお元気そうで――』
「あっ、アル様の為に……! あなたを消して私も消えます!!」
「ハルカ――――!!!?」
『オホホホ、やはり貴女方は退屈しませんわね』
ハルカがショットガンを乱射を始め、それをバルバラは小さく笑い声を漏らしつつ、ハルカの方に歩みながら身体で受け止め、当たる度に多少体幹が仰け反る。
そして、目の前までやって来るとショットガンが弾切れを起こした瞬間、ハルカの頭を鷲掴みにし、アイアンクローのまま持ち上げる。
『まあ、ワンマガはワンマガですわよ? 1トンで赦して差し上げますわ』
「あががががが……――――きゅう」
バルバラは片手に1トン程の力を込め、容易くハルカを昏倒させて床に下ろす。
そのうちに白目を向いて顔が引き攣ったままのアルは、床に正座して頭を下げる。
「わっ、私はどうなってもいいので社員たちだけはどうか許してっ……! ください……!!」
『………………』
アルから謝罪をされたバルバラの行動が止まり、気温が下がったのではないかと錯覚するほど彼女の雰囲気が凍て付いたものへと変わる。
そして、そのままアルの方へとゆっくりと歩み出した。
『赦しませんわ……よくも私をここまでおコケにしてくれましたわね……!』
(ヒィィィ!? めちゃくちゃ怒ってるぅ!!!?)
アルから見ても彼女に対してここまで直接的な言葉を使って来るのは珍しく、最早死の危険さえ覚え始める。
バルバラはその手をアルの頭へと伸ばし――割れ物でも触るような優しい手付きで包むように撫でた。
「えっ……? ええ……? はえ……?」
『………………』
更にアルの手に4本チョコレートのバーのようなものが置かれる。それは包装にバルバラのヘイローであり、ディーテの校章である黒鉄のピースマークが描かれているようだ。
呆けるアルを他所に、バルバラは自身の携帯電話を取り出すと、それをダイヤルして何処かへと電話を掛け、スピーカーにする。
そして、電話の相手が出た瞬間、今まで閉じられていた口を開いた。
『絶対に赦しませんわ……カイザーコーポレーション――プレジデント……!』
《は……?》
余りにもヤバいことを言い出したため、アルだけでなく他の気絶していない便利屋の2人も目を丸くする。
また、電話先の初老の男性と思わしき声の者も困惑しているらしい。
《なんだ……。秘密回線の番号をどうやって――いや、その声はまさか……? バルバラか?》
『アルちゃん社長を雇うのはいいでしょう。確かに私が気に掛ける可愛らしいアルちゃん社長ですが、戦闘を主としてなんでもするのが便利屋68のモットーですし、正当な仕事の依頼ですわ。むしろ、それで汚れようと許容されるべきです』
《…………? なんのことだ。待て、今情報を――》
有無を言わさず、相手の意見をも遮り、バルバラは更に言葉を続ける。
『柴関ラーメンに立ち退きを勧告するのもまあいいでしょう。私が懇意にしている店舗ですが、旧アビドス生徒会が貴方方に土地を切り売りした場所に建っていますし、権利上は仕方のねぇことですわ。仕方のねぇことですわね』
《アビドスの話か、それは言う通りこちらに利権が――》
『しかし、貴方方はよりもよって……この私の……ユスティナ聖徒会の可愛いアルちゃん社長に愛する柴関ラーメンを爆破させましたわね……!! その上、声優の盾の如くアルちゃん社長による土下座……! ああ、素晴らしい! ならばこちらも断罪以外の選択肢はありませんわ!!』
《まず、話を聞いてくれ。調査もしよう。その上で――》
『あらあら……? ではでは、立ち退きを迫っている店舗に対して、カイザーPMC理事長が雇った傭兵が大した理由もなく勝手にィ! 爆破した……と? そんな戯言、冗談も休み休み言いなさいな』
正解である。アルは顔面蒼白になった。
『既に直接ボッコボコにしたことのあるカイザーPMC理事長様が、この私に対してそのような愚行を働くことはしないでしょう……。そんな嫌がらせをするとすれば、もっと上……私のことを直接的には知らず、目の上のデカいタンコブ程度に考えているプレジデント様……貴方しかいらっしゃいませんわ……』
《…………なんのことだか。この件については記録されている。正式に抗議させ――》
『超古代兵器の確保。それとサンクトゥムタワーでも掌握できれば、キヴォトスを牛耳るのも夢ではありませんわねぇ……』
《――――ッ!?》
その言葉を聞いた瞬間、これまで平静を保っていたプレジデントの様子が明らかに変わる。
『あらあらまあまあ? この私が、アビドスで貴方方がしているお宝探しのことを知らないとでも? 私、他人の弱みを握ることもライフワークなもので、グレーに出来ていると考えている事柄など筒抜けですわぁ……悪事の記録や証拠……2年前から集めていたら今ではちょっとしたお山が出来そうになっていますのよ? それで、抗議が何でしたか? つまり私と学園法廷で争う気があると解釈して構いませんね?』
《待て……! 何が目的だ? 可能な限り――》
『言い訳も謝罪も結構、最早言葉は必要ありません。最悪の形で宣戦布告した報い……とっくりと……味合わせてさしあげますわよ? ゲヘナ、ディーテ、私足るユスティナ聖徒会。貴方は少なくとも既にそれらを敵に回しましたわ。今、この瞬間からキヴォトスで搾取が出来ると思わないことですわ』
《――――――》
最初から相手の言葉を一切聞き入れていないバルバラは、最後に"それと――"とだけ区切り、スピーカーのボタンを押して相手の声を耳に入らなくし、通話を切断するボタンに手を掛ける。
『貴方にはユスティナ聖徒会のやり方でも報復しますので……どうぞ、震えて眠りなさい。まあ、眠っても……次に朝日が拝めるといいですわね』
これがキヴォトス最凶最悪の問題児であり、ゲヘナの校風である混沌の権化足るバルバラのやり方であった。
『では、さようなら』
それだけ言って電話を止めると、バルバラは"お邪魔しましたわ"とだけ告げて、路地裏を後にし――途中で足を止めた。
『ああ、そうですわ。アコちゃんが貴方方を捕縛するため、ヒナちゃんに無断で動いているようなので気を付けてくださいな。後、アビドスの子たちも復讐しようと向かって来ているみたいですよ?』
「え゛!?」
それだけ言い残し、バルバラは去って行った。嵐のようなどころか竜巻のように通るもの全てを破壊する女傑と言えるだろう。
放心状態のアルの肩にムツキが手を掛け、ポツリと呟く。
「よかったねアルちゃん……。ヒカリちゃんにカイザーコーポレーションを潰させるだなんて、ブッちぎりで超アウトローだよ!」
「こ、こここ……こっ、こんなの望んでないわよー!!!?」
その場にはアルの絶叫だけが響き渡り、その声に気付いたアビドス対策委員会と先生が十数秒後にやって来るのであった。
◇◆◇◆◇◆
…………ああ、私ですわマコト。要件はメッセージの通りですわ。手始めにカイザーコーポレーションと協業している全ての事業を無期限に停止及び予定していたもの全てを白紙にする勧告を。機械部品類含む該当品目の輸出は即日停止致しますわ。
それから訴訟のご準備を。まず、証拠No.98と281と358を事件概要ごとキヴォトス全土に拡散しなさい。後、ブラックマーケットのマネロンの件も添えておきますか。それらの情報の反応が生徒たちから出て来た段階でディーテでNo.663の件で民事で訴訟起こし、更に訴訟を重ねた上、定期的に刑事訴訟も起こしますわ。大丈夫ですの。私は今ヴァルキューレにいますので、刑事の方の操作は私ができますわ。
え? 本当にやるのかですって? あらあらまあまあ、マコト……戦う前から敗北主義者ですの……? 混沌を掲げるゲヘナ、万魔殿議長でありながら……それはいけませ――えっ、違う? そうですわよね、私のマコトさん……いつも風紀にしているように今回もご遠慮なく……貴女の才能は私が一番良くわかっておりますのよ、ええ。それはそれとして誰もカイザーコーポレーションを止めないから今更こんなことになるのですの。そもそもあんなものがキヴォトスで幅を効かせている事自体、虫酸が走りますわぁ……。学園と生徒による歴史で成り立って来たこのキヴォトスで……企業風情が……! 大人風情が……! 思い上がるからですわ……! キヒッ……キキキ――おっと、オホホホ!
ではでは、この辺りで。近日中にそちらに顔を出しますので、カイザーコーポレーションへの対応の打ち合わせはまたその時に。では、混沌を始めましょうか。
……………………。
………………。
…………。
……。
あら? お電話が……うわ、ミネじゃないですの……はぁ……あっちから掛けて来る時は、基本厄介事なんですわよねぇ。
……はい、バルバラですわ。どうしましたのミネ? はい、はい……えーと………………つまりは何の御用で? は? 救護が必要? 誰に――はい、私に? いや、待ちなさい。まだ、本格的に行動は――あっ。
いえ、違いますわ。やっぱりじゃありませんミネ。話を聞きなさい。私の行為は正当なもの――というか、どこの情報ですの? アァ、匿名の情報? ハッ! どうせおチクリ魔狂言回し風勘違いトラブルメーカー女郎のセイアさんが、夢にでも見たってところでしょう!? おソースがクソゲーですわ! アイツ、ぜってぇ赦しませんわ! 覚えておきさなさい!
ん……? なんですか、今の壁をぶち抜いたような音? 二重に聞こえ……まさか、貴女今何処に――。
「救護します――!」
何やってんだよ団長……!