「……修、身体貸して」
「兄さん!兄さんでも、この数は……ソレに空閑も」
「黙りなさい!お兄さんはね!
弟のガールフレンド守りたいのよ!」
始はそう言うと三雲の身体を奪い、
門から出てきたバムスターとモールモッドの大群に
レイガストを向けた。
「あぁ……足りねぇな。足りねぇな!!
俺と…俺と弟を殺すなら!
テメェらの100倍を連れてこいや!」
全てのトリオン兵が一撃だった。
一撃で撃破されていく。
ソレは修ではない、始の本気。
知らぬうちに可愛い弟に可愛いガールフレンドが居たのだ。
なら、きっと義妹になるはず。きっと守るべきだと!
「お兄さん…はりきってるなぁ……」
「凄い」
「まだまだ……!
心火を燃やしてぶっ潰す!」
アサルトライフル型のトリガーを左腕に持ち、右手にレイガスト。恐ろしいのは一発一発の威力が高いのか、バムスターの装甲をいとも容易く破壊していることだ。
「もっとだ……もっとだぁ!……もっと!もっと俺を」
最期の一匹だったのだろう。
動きを止めたモールモッドに始は乱射する。
「……レベルが違うんだよ。レベルがぁ!」
「オラ!オラオラオラオラオラオラオラ!!!」
レイガストの展開を拳程度にする。
それだけで簡易型ナックルの出来上がりだ。
最後の一体のバムスターをまるで嬲る様に始末する。
装甲を砕き、段々と核を狙って破壊する。
「オラァァ!」
核を砕き、活動停止するバムスター。
「はぁ……ストレス発散!アイ・アム!ウィナァァァァ!!!」
そう、ランク戦とネイバーとの戦闘が始にとってのストレス発散である。木虎や木虎や木虎や木虎や馬鹿な生徒や糞教師。
始にはストレス発散が常に必要だ。
他にも読書、運動、カラオケ等があるが運動と破壊が可能な
戦闘が1番のストレス発散となる。
「……イエス!イエス!イエス!」
「うわ、帰ってきた」
「……兄さんがその、ストレス発散でおかしくなってるんだ。
今のうちに話すぞ、空閑」
修達は何やら良くわからない事をしていたが、
始めは気分の昂りが抑えられずマネキンで運動している。
「あっ、兄さん。トリオン測れるって」
「トリオン?」
「うむ、私にはトリオンを測る機能がある。
ちなみに修は18だな。優秀だ」
「おっ、レプリカ先生。判るか因みに最初は2だったぞ」
「ほぉ 成長したと?」
「わからん、俺が修と合体したからかもしれない。
じゃあ、俺も頼む」
「………」
レプリカ先生とマネキンが繋がる。
傍目から見れば実にシュールだ。
そもそも、今マネキンの一部はないのだ。気持ち悪い。
「出たぞ、29修より優秀だな」
「俺のトリオンも化物だからな」
ニヤリと笑うマネキン。
千佳はそれにビクリとしながら修の後ろに隠れる。
「シクシク、お兄さん悲しい。こんなに優しい幽霊なのに。
祟ってやる」
「兄さん、シャレにならないから」
そして千佳の番になるとレプリカ先生が測定を開始する。
その間に修は始も知らなかった千佳の話を始めた。
幼少期からトリオン兵に狙われ続けた理由、
それを空閑はトリオン量だと仮定した。
「なんで兄さんは狙われないんだ?」
「それは…幽霊だから」
「あっ…そう………」
実際、トリオン兵はBORDERが表に
出てくるまで知らなかったのだ。
「んご……デカすぎ」
「計測完了だ。トリオン量39、天才だな。
私もこれ程のトリオン量は見たことがない」
その時、始コンという音を聞いた。
「あーーー、お前達。最低最悪、迅がしくじったな」
ゴトンという音と共に始の取り憑いているマネキンが斬り裂かれた。
「ありゃ、マネキンだ」
「……関係ない。トリオン兵を発見した」
現れたのはA級7位三輪隊。
隊長の三輪秀次と隊員の米屋陽介だ。
「……三輪さんに、米屋さん」
「ありゃ?三雲じゃん、なんで此処に」
「裏切りか、三雲」
「これには深い理由が!」
「どんな理由があろうと、ネイバーは人類の敵だ」
三雲修と三輪秀次いや三輪隊は面識がある。
というのも、三雲の戦い方が恐ろしいからだ。
ネイバーとの戦闘中、まるで憎む様に切り裂き、撃ち抜き、
破壊する。無論、常にその戦闘をしているわけではない。
だが、ネイバーに対する戦い方が気に入られた。
「退け、三雲。俺達は城戸司令の命令で動いている」
「……やっぱあのぼんち揚げ野郎を頼るのは拙ったな」
「ぼんち揚げ……迅か」
(兄さん?!)
(……修、最悪な場合此方が悪になる)
「……空閑、悪いな。利用するぞ」
「いいよ、トリガー起動」
「なっ……あの女ではなく」
「そっ、俺がネイバー」
「……トリガー起動」
空閑に続き、修いや始もトリガーを起動する。
レイガストとアサルトライフル。
三輪はそれをみて理解する。
「……空閑、三輪さんと米屋さんを任せる。
俺は……あっちの二人を、『潰す』」
冷酷に殺害宣言にも聞こえるそれを言い放つ。
「なぁ、別に良いけど俺がその娘を人質に」
「……米屋さんはするでしょうが、三輪さんはしませんよ。
千佳はネイバーに家族も、友人も奪われた。三輪さんがするわけない。もしするなら、ネイバーと同じレベルに堕ちる」
「……へぇ、逃すと」
「てわなけで、米屋さん。さよ~なら」
完璧な不意打ち、レイガストを拳にした一撃で米屋を吹き飛ばす。
「任せるぞ!」
そして、始めはサイドエフェクトを頼りに計算し狙撃に適切なポイントを割り出す。そして、全ポイントから死界になる位置を駆ける。
「奈良坂先輩、こんにちわ」
「お前、いつの間に」
幽霊だから出来ること。
幽霊だから出来たこと。
「初体験も上手くいくな」
「あぁ、兄さん!」
それは分離。トリガー起動状態、身体はオリオン体となる。
始のトリオン量29は修と融合しているときに発揮される。
しかし、融合しなくとも修は何故か18ものトリオンがあったのだ。
「……スコーピオンあって良かった」
「兄さん、此方も終わった」
そう、そもそも分身しているなんて想定外。
しかも、簡単に消えるのだ。
始は確かにそこに居るが、トリオンで実体と非実体を切り替えられるというチート野郎になってしまい笑えない。
しかも、実態が消えれば直ぐ様修と合流してくる。
デメリットは修から出現するため、
修がトリオン体でなければいけないこと。
修から分離する都合、修より距離が離れると実体化できない事。
そして、修のトリガーを圧迫する事。
壁キックで擬似的なグラスホッパーも可能だが、
何もなければ意味が無い。
「てか、これなら俺も直接母さんの飯食えるんじゃ……」
「そこかよ。兎に角戻ってよ」
「おす」
修が戻ると空閑が鉛玉を食らっていた。
「空閑、此方は終わったぞ」
「うそだろ、奈良坂と古寺がベイルアウト?」
「三雲……どんな手品を」
「三輪さん、諦めてください。これ以上の戦闘は無意味です」
「ふざけるな!B級が」
三輪が孤月を使い修を斬ろうとした。
「それは、計算済みです」
そう、此処に立っているのは始ではない。
修だ、修は孤月よりも重いはずのレイガストの抜刀で
三輪の両腕を斬り落とす。
「なっ………」
「すみません、三輪さん」
そして、頭を斬り落としベイルアウトを行わせた。
「……おいおい、嘘だろ」
「米屋さん、僕は空閑も、そして千佳も守りたい。
撤退して下さい」
「……へぇ、なら」
「あと、僕シューターです」
地面のしたからアステロイドが生み出される。
まるで槍のごとく、米屋を貫きトリオンが流失する。
「……三雲、手加減してるだろ」
「いえ、手加減してません。これが、今の僕の力です」
レイガストで残った米屋を一閃する。
仲間内での戦いだ。ランク戦以外で修はしたくなかった。
「へぇ……強いじゃん」
「強くなってるんだ。兄さんの戦闘経験が僕に蓄積される。
演算で、相手の身体の動きも、全て計算できる」
「……そうなんだ」
「……遅かったか」
「迅さん」
「……個人的にこの未来、したから3番目だね。
始さんがこんなに速く実体化するなんて」
迅は頭を抱えながらも静かに三人を見る。
「……始さん。空閑と千佳ちゃんの護衛頼めます?」
「ヒィ?!」
「うぉ…修からお兄さんが産まれた」
修から分かれるように始が出現する。
「空閑、今なら俺も戦える」
「おっ…お兄さんだ」
「あの……はじめまして。始さん」
「千佳ちゃんとも面と向かって話すのは初か。
と言うより、修以外初なんだよね〜。
母さんにも見せたいし、まぁ護衛任せてよ。
BORDER最強じゃないけど、迅以外なら弧月馬鹿先輩位だし。
俺を倒せるのってさ」
「あー、確かに」
「あと、メガネ君は」
「修、迅の指示に従うように。俺の計算ではそれが」
「うん、わかってる。僕の計算でも迅さんに従った方が
62.4%の確率で良い方に向くと出てる」
「良いねぇ…俺のサイドエフェクト。
修、覚えておけよ。其奴は能を酷使する。
俺が中にいれば俺が計算してお前に無意識に伝達できる。
居ない状況で使いすぎれば………」
「うん、オーバーフローを起こして僕が倒れる」
「お前が死んだら、俺は実体化できない。
母さんの所でマネキンに憑依して生活することになる」
「……」
「お前が念じれば俺に届く。BORDER本部で何かあれば、
すぐに呼べ。必ず、必ず壊滅させる。俺がお前を救い出す」
それは兄として、生きている弟を護る存在としての言葉。
「行ってきます」
修はそのまま迅とBORDER本部へ向かう。
「心配なのか?」
「……心配さ、産まれる前から俺は彼奴を守ってきたんだ。
離れるのは、本当は苦しいさ」
「始さん、教えて下さい。修くんの事」
「なら聞くと良い!修は………」
始は悲しまない。悲しませない。
己の存在にかけて、家族を、友人を守るために戦うのだから。