Vtuber学パロダンガンロンパ風序盤ギャグガチンコミステリー小説 作:茶鹿秀太
僕の声に反応して、速水も、心当たりがあって震えだした。
「う、うそだ……。私が、夢で……そんな、そんなっ」
馬鹿な、速水さんの夢の内容が、合致している? 予言? 夢に関するVtuber? 彼女が。――彼女が夢の中で殺害した?」
「【その歴史解釈は赤点ですよ】」
「!?」
クロカメの言葉以上に、まるで自身の推理に赤ペンを引かれたような、……或いは自身の語る推理を黒塗りで検閲されたような錯覚。……ウンフェルスだ。
「秋冬さん。私はその推理が正しくとも、威鳴音月犯人説は揺らがないと思います。まだこの話を続けますか?」
「ウンフェルスさん……?」
「さて、初歩的な授業ですよ、皆さん。秋冬さんの証拠を思い出してください。本日の食糧庫の入退室者は「クロカメ」「風街」「秋冬」「威鳴」の4名で人数が正しく記載されています。死体を凍らせて、午前午後で解凍したという推理ならば、間違いなく彼女の入室記録が残るはず。彼女は犯行に関わっていないでしょう。全て威鳴音月の犯行の方がスムーズに事は進みますよね。彼が殺し、彼が凍らせ、彼が燃やした。間違いないでしょう?」
確かに、間違いない。それは間違いないのだけれどっ……。なんで、なんで僕は気付いてしまうんだよ。
「【それは違うんです……】最悪だ、最悪なことに、気付いてしまった……」
「!?」
「人間が、もう一人いるはずなんです。だから、可能性は0にならない……っ。そして、威鳴音月は……完全なクロじゃない……っ。だって、狐の入室は、今日だけなんです……。だから……無理なんです。殺せても、燃やせても……っ! 彼だけは凍らせられない。」
「あっ!?」
ウンフェルスが自らの推理の誤りに気付く。そう、そして同時に。すべての前提が覆る。亜酔昏が確かにと捕捉する。
「死体、体重を適当に考えて50kgから60kgの肉を凍らせるとなると、流石に時間はかかる。食糧庫の冷凍が何度かは不明だが、おおよそマイナス35℃と考えて……。おそらく0時から始めたとしても、心もとない気がするね。つまり、検討するべき内容は2つある。1つ、カードリーダーを踏まなくても問題の無い入室方法。そしてもう1つは……」
「まだ一人、人間が潜伏してる。その人が犯人の可能性もある。その人物が、誰かを探さないといけない」
僕の言葉に、速水がまるで断頭台に向かうような青ざめた表情で僕に呟いた。
「私、死ぬのかな」
僕は歯を食いしばって、夢の殺人を否定することに頭がいっぱいになった。
「死ぬもんか」
議論も佳境を迎えているような感覚。間違いなく、真実に近づいているはずだ。まずは食糧庫に潜入したもう一人の人間の正体。これを暴く。
「誰が食糧庫に入ったか、それを考えていこう」
風街が思考を口に出していく。
「僕とクロカメくん、威鳴くん、そして秋冬さん、それ以外のもう一人、【小春そらさん】は風邪を引いていたから難しいよね」
小春が咳こみながら、威鳴への反骨心で戦っていく。
「私は【威鳴音月さん】が怪しいと思っているから、それ以外の人では無いと思う、ごふっ、ごふっ、難しいよ」
入間が疑問を抱く。
「というか、部屋に入ったことが証拠になるかは分からないし、名乗り出ないんじゃないですか? 例えば威鳴さん以外の人物が事件に関わっている証拠の提示が欲しいですね」
威鳴はにやけ面でからかってくる。
「申し訳ないけど、【僕がやったっていう話】は否定されてないんやから、【僕でもいいよ】? 当たるも八卦、当たらぬも八卦。頑張って犯人を当てていこう!」
ウンフェルスが苦しげな表情で威鳴を見据える。
「むしろ【冥城くん】が生きていたのでは? 食糧庫に入っていたのかもしれませんよ? その後威鳴さんに殺されたとか」
亜酔昏が悩ましい表情で訴える。
「……死体はどうやって運んだんだ? 男性は重たいぞ。私は【台車】を使ったが、物理的に運んだのか?」
「亜酔昏さん、【それに賛成だよ】。今ので思い出したんだけど、台車の跡が浜辺に新しくできてたんだ。だから……」
校舎裏、そこから奥に進んでいくと森があり、獣道のような荒れた小道を進んでいくと、砂浜があるのだ。そして目の前には……海。懐中電灯で照らしながら、みんなが見つけたものを調べる。《color:#000000》
「あった。2人分の足跡と車輪の跡」
「……2人分の足跡が、あった。台車の跡は……」
車輪は、最初の事件でも印象に残った車輪の跡だったので覚えている。間違いなく、台車が使われたのだろう。砂浜の真ん中くらいで引き返している。多分これ、小舟があった場所かな。小舟の置いてあった場所から海まで、砂浜に一文字の轍が……。
……? …………?
「小舟、……なんで出てきた……?」
なんだ、何かが変だ。頭の中で想像する。例えば仮の犯人を、威鳴さんとする。死体を台車で運ぶ。そして……死体を、……。最初に、浜に……? あ、あぁっぁぁぁぁあぁぁああっぁあぁあっぁぁあっぁぁぁぁぁぁっぁっっっっ!?
「二人、いたんだ……。二人いたんだ……っ。共犯、いや違う? なんで、どうして?」
「あぁ、バレちゃった?」
威鳴音月が、全く目で笑っていない癖に、口が三日月のように裂けた。ある種の自白。なんで、言った? バレちゃったなんて言わなければ、まだ疑うだけで済んだのに……っ。
「ち、畜生! つまり、こういうことだったんだ!」
威鳴音月は、間違いなく手にささくれがあったことから、素手でキャンプファイヤーの木を組んでる。
この事実を変えずに、浜辺の伏線を回収するとするならば……。こうとしか考えられない。
誰かが死体を台車で浜辺に運び、船に乗せ、海に流した。その後、別の誰かが死体を同じ台車で回収して、グラウンドに運び、段ボールに入れ、木を組んだ。木を組んだのは、威鳴音月しかいないなら。
「犯人が別にいる……。本当に死体を運んだ人が、別にいるんだ……?!」
「その通り! いやぁー、まさか解かれるとは思わなかった。解けてしまったら……さぁ振り出しやで。僕は死体を運んで木を組んだだけで、殺してないんやけどどないする?」
「威鳴音月ぃいいいいいいっ!!!」
くそくそくそ、なんだよこれ、なんなんだよ! 今までの話は……なんだったんだ。結局なにも分からないままで……こいつは、こいつは冥城んみの死体を、弄んだだけじゃないか!!!
「ははは、僕に切れてどうするのさ。大事なんは殺した犯人やで。しっかりしろよ秋冬ハル。なんで気付かへん? ほかの手掛りは、今の話し合いに出ていたのに」
「っ」
今の話し合いに、ヒント……? なんだ、一体なにが……。
「死体が運ばれたのは木を積む前。しかし午前中には本人は生存。午後にはみんなが動いてて目立つ様子のある人はいなかった。僕以外にはね」
「……。お前は、何がしたいんだよ。犯人のように振る舞ったり、かといってヒントを出したり。一体何が目的なんだ」
「――もう目的は達成してる。後はお好きにやればええんちゃう?」
腹立たしいほど彼は既にこちらに興味を持っていないかのように振る舞って、表情が抜け落ちていく。くそ、くそっ。絶対許さない、絶対に……許してやるものか。風街が自分の怒りを抑えるように、声を張り上げる。
「ちょっと待って、午前中に生存!? それは変だよ、だって冷凍されてたんじゃ!」
そうか、死体が冷凍されているなら、亜酔昏が午前0時からの冷凍ですら怪しいと言ってた。では、……午前中に生きていたとされる冥城は一体なんなんだ?
「岩手さん、亜酔昏さん。ごめん、もう一度詳しく、冥城さんと話した午前中の事、聞かせてほしいんだけど」
「えぇ? 別にいいどもさ」
「えぇ、問題ないわ」
岩手と亜酔昏の話をまとめていく。鮮明に、具体的に……。
Day13 Augest
朝 冥城部屋前
「おーい冥城ぉ。起きてるかー?」
岩手が寄宿舎の彼の部屋をノックする。ガサゴソと何かが動く音が聞こえた後。
『いやー、心配かけてごめんなさい。』
「んにゃ。別にいいけどよ。生きてるか?」
『はい! 大丈夫です!』
「そっか。熱とかどうだ?」
『あー…………、んーと、絶対増えてると思いますよ』
「マジかよ。気を付けろよ。なんか手伝えることあるか?」
『大丈夫大丈夫! ……正直不安です、熱は絶対にみんなに……』
「あー、まぁ小春ちゃんも咳出てたっぽいし、流行るかもなぁ。俺も気を付けらぁ。後で差し入れ持ってくるわ。お大事にな」
『へへ。うわーやばい。楽しくなってきたぁ』
「おう期待しろよなー。じゃあなー」
「あの、冥城くん。起きてる?」
『……』
「今日の分の薬、ここに置いておくから。必ず飲んでね。市販の風邪薬で未開封だから、問題ないから」
『‥…』
「その、寝てる? ご飯とか食べた? ちゃんと栄養を取らないとダメだよ」
『……』
「――ふぅ。今日はもう行くよ。それじゃあ……」
『……』
Day13 Augest
夜 学級裁判場
「一応こんな感じの会話だったぜ」
「私もこんな感じだった」
岩手と亜酔昏の会話の詳細を聞いて、何か妙な違和感を覚える。
「なんだろう、岩手との会話が、すごく気になる」
「はぁ? ドコがよ。真っ当な会話だべや」
いや、なんだろう。何が、何かが気になる。なんだ? その時、クロカメがぽんっと手を鳴らす。
「あっ。よく聞くと会話が成り立ってないでござるな」
そうか、確かにもう一度振り返ってみると。
「おーい冥城ぉ。起きてるかー?」
『いやー、心配かけてごめんなさい。』
「んにゃ。別にいいけどよ。生きてるか?」
『はい! 大丈夫です!』
「そっか。熱とかどうだ?」
『あー…………、んーと、絶対増えてると思いますよ』
「マジかよ。気を付けろよ。なんか手伝えることあるか?」
『大丈夫大丈夫! ……正直不安です、熱は絶対にみんなに……』
「あー、まぁ小春ちゃんも咳出てたっぽいし、流行るかもなぁ。俺も気を付けらぁ。後で差し入れ持ってくるわ。お大事にな」
『へへ。うわーやばい。楽しくなってきたぁ』
「おう期待しろよなー。じゃあなー」
「意識して聞いてみると、確かに会話に脈絡がないかもしれない」
小春そらが困惑しながら、
「ごほ、ってことは、え? どういう、ごほごほ」
「……なんだろう」
――いや、分かる。分かるけれども。もしかしたら、あの証拠がとても生きてくるのかもしれないと、直感が働く。だが、それは出来るのか……? それを、それを提示してしまったら、……。
冥城……。お前を殺した人は……。
「これは、……DVDの音声から冥城の声を録ったものなんじゃないか?」
「DVD?」
風街が心当たりがないといった声を上げる。
「実は、ある教室に、ビデオカメラで撮影された映像が残ってたんだ。こんな感じのやつだよ」
『あー、あるぇ、これが、こうなって、んーと、あ、出来てる。はい! 大丈夫です! いやー、心配かけてごめんなさい。上手くできてることを祈りますよ! 正直不安ですけど!』
『――絶対増えてると思いますよ。大丈夫大丈夫! 確かに今はしんどいかもしれないけれど、ウンフェルスさんの熱は絶対みんなに移っていきますよ! なんか聞いてる僕も熱くなってきました。うわーやばい。楽しくなってきたぁ』
「あれ!? なんかこの映像の冥城くんの声、まさか」
速水が映像の中の彼の声の違和感に気が付く。そう、間違いなく。
「この映像の冥城の音声で、実は会話をしていたんじゃないかな。岩手くんとの会話を思い出してみてよ」
『いやー、心配かけてごめんなさい。』『はい! 大丈夫です!』『あー…………、んーと、絶対増えてると思いますよ』『大丈夫大丈夫! ……正直不安です、熱は絶対にみんなに……』
「馬鹿な、セリフが完全に一致している場所があるぞ?」
亜酔昏は口をあんぐりと開けて、動揺を隠せないようだった。
「……冥城さんと会話した午前中、実は音声で会話がなされていたんだ。だから……彼が死んだ時間を、誤魔化すことができた。要は全部嘘だったんだ。僕らは騙されてたんだよ。冥城さんは、……冷凍保存されていたのなら。死んだのは今日じゃない。もっと前だ。そして、それを誤魔化し続けた、クロが存在する」
「それで? 誰が犯人なんだい?」
威鳴がにやりと、嫌らしい笑顔を浮かべる。その顔も、姿も、全部否定するように、僕は推理を続ける。
「いつ死んだかも分からない。どうしてこうなったのかも分からない。でも、一人だけ明確に、容疑者が浮かび上がるよ。このDVDの映像の存在を知っていたのは、誰かっていうこと。少なくとも、映像の中で、明確にカメラを設置している人間が、2人いた。一人は冥城さん。そしてもう一人が、本当の容疑者」
……。信じたくなかったです。先生。
「ウンフェルスさん。貴方です」