Vtuber学パロダンガンロンパ風序盤ギャグガチンコミステリー小説   作:茶鹿秀太

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(非)日常編 第一章 「イキキレル」3

Day4 August

朝 食堂

 

「全員集まったかい」

 

「ちょっと待ってて、朝食だけよそうから」

 

冥城の呼びかけを少しだけ止めて、配膳だけすませようと急ぐ。朝食には2パターンある。自分で作るパターン。或いは……

 

「フユルダヨ!」

 

この全自動朝食制作ロボ「フユルダヨ」を使うかの二択だ。小さい2頭身ロボが頑張ってお米をよそってくれる。かわいい。

 

「みんなに聞いてほしいことがあるんだ。僕はこの状況がどうしても分からない。昨日の爆発直後、死体は隠されていて、死体を直接見た人は一人もいないことが分かったんだ」

 

ご飯を食べながら話を聞くが、まずい、これは食事中に聞く話ではなかったかも。でもどうしてかお腹が空いて仕方がないので、ご飯は目いっぱい食べることにする。

 

「こんな状態でコロシアイが起きてしまったらそれこそ大問題だよ。誰ひとり犠牲を生まないように、全員で協力して生き残ろう。全員で協力しないかな?」

「その意見に賛成だよ冥城くん」

 

風並が大きい声を出して立ち上がる。まるで自分も同じことが言いたかったというようなニュアンスが含まれていた。

 

「そうだよね、やっぱりそうだよ。みんなで協力すれば怖くない」

 

速水も賛同する。それにつられて、多くの人が声を上げ始めた。

 

「そうでござるよ!」「みんなで協力すれば」「どうすればいいんだろう」「絶対生き残らなきゃ」「よーし!」

 

 

 

 

「くだらない」

 

その声は、小さく、凪に広がる波紋のように全員の耳に入った。黒フードを被り、誰もその顔を見たことがない、威鳴音月と名乗る青年だった。

 

「僕は死体を見た。間違いなく爆発して殺されたんだ。もうコロシアイは起きてる。むしろコロシアイのルールが提示されて、無差別な殺人が抑制されて良かったと安心すべきだけどね。仮初の人間関係で、協力する方がリスクが高い。裏切られて刺されても自己責任だけど、それでいい?」

 

「な、なんだよアンタ。空気壊すなよ!」

 

幼児帰りから人間に帰ってきた岩手が突っ込む。亜酔昏も腕を抱え、膝を組んで冷静に議論しようとする。

 

「その通りだ。むしろその発言は周囲の精神を疲弊させて殺人につながる可能性すらある。協調こそ人間に与えられた能力の一つだと思うがね」

 

が……。

 

「それで? じゃあ僕を殺すかい?」

 

威鳴音月は空気を読まない、いや、あえて読もうとしていないように見えた。

 

「記憶を失って、永遠に学校にいたいなんてやつがいるわけない。それこそ、殺してでも帰ろうとするやつはいる。その可能性を見ずに、お互いの事も知らない癖に誰もが集団に帰属すると思うなよ。僕は単独行動をさせてもらう。君たちに背中を預けるほど、僕も無遠慮な人間じゃない」

 

そう言って、威鳴は食堂を出た。……最悪な空気だけを残したような、嫌な感じだ。

 

「まぁ、その可能性もまだあります。私たちはお互いのことを知らないですからね」

 

ウンフェルスが今の発言を肩をすくめながら一部肯定する。

 

「まぁ、正直警戒はしますよねぇ……。私とか天才ですけど、人狼ゲームとかのセオリーじゃないですか。仲良くしてから裏切るとか」

 

博士の入間るいも同意見らしい。

 

「……全員が仲良くする必要もないさ。そういう意見もある。でもね。僕らはまだ学生なんだ。全部が全部ひとりでできるわけじゃない。出来ることを少しずつやって、お互いのことを知っていく必要があるんじゃないかな。そのための協力だよ。そう考えればいい」

 

風街ピリカが、最大限周りに配慮しながら言葉を出す。お互いに納得したものの、沈んだ空気はそのままに、一人、また一人と何も言わず食堂から出て行った。

 

「……畜生、どうすればいいんだよ」

 

冥城は頭を抱えて食堂に座り込む。真面目な彼の性格だ。みんなをまとめればなんとかなると思っていたに違いない。

 

「……。仲良く、か」

 

僕も何か、出来ることはないかな……?

 

 

 

 

Day4 August

昼 学校内

 

全員、それぞれ普段過ごしている場所に移動しているようだった。

 

そういえば、威鳴音月が普段どこで過ごしているか誰も知らない……気がする。

 

彼は最初から警戒していたのだろう。みんなとコミュニケーションを取れればいいんだけど、全員とは交流を深められていない実感がある。時間がある限り、やっぱり交流は深めていかないとな。……手遅れになる前に。

 

「手遅れって、はは、自分でも何を思ってるんだか……」

 

そう、まるで手遅れになるみたいではないか。もう二度と、話せない人が出てくるみたいで……嫌な想像だ。

 

ダメだダメだ。みんなも不安を抱えているように、僕も不安になってきているんだ。出来ることをやるんだ。今は……。ん?学校の外から音が聞こえる。なんだろう、これは……水? 水の音が聞こえる。様子を見に行こう。

 

 

 

昼 学校外

 

 

玄関を出て右に曲がると、奥にグラウンドがあるはずだった。グラウンドへ行くには、校舎に沿って歩き、水飲み場を通過し、階段を下りていくとすぐにグラウンドだ。そちらに向かって歩いていると、水の音が大きくなっていく。

 

「わー!やばいってこれ!!え、大丈夫? やばいってぇ!」

 

小春そらの声が響き渡る。彼女の姿が見えた時には、びちょびちょの彼女がワタワタと慌てている様子だった。

 

「ううっひょぉー! らずもねぐ出でくるでねぁーが! 水が冷でえぜ! 気持ぢいい! 楽しくなってぎだぜ!」

 

「うっわ方言濃い」

 

思わず声が出るほどの盛岡弁。

 

間違いない、岩手大好丸だ。彼もここにいたのか。彼はグラウンド手前にある水飲み場につながっているホースを手に取って水を大量にばらまいているようだ。勢いが強い!

 

「うひゃー! ちょっと激しすぎますよ! お水勿体ない!  もー靴もびちょびちょですよ! あ、むしろ洗えるチャンス? 公園生活を思い出しますね!」

 

鈴が巻き込まれている。いや公園生活ってなに? 靴洗うな!?

 

「もぉー私を差し置いて楽しそうなことして!! きゃーもう冷たいってぇ!」

 

「ははは。楽しそうなことしてるなぁ」

 

他にも、速水と風街もそこにいるみたいだ。どうやら水遊びをしているだけだったらしい。

 

「なんで水遊びを・・・?」

 

「あぁ秋冬ちゃん。実はさ」

 

「小春さん」

 

「最初ホースの水が滅茶苦茶大暴走してて、それに気づいた岩手くんが水遊び始めちゃったんだよね」

 

「せっかぐ水が出でらんだ。こったな暑い日には水ぶっかげで気持ぢも晴れやがにするもんだぜ!」

 

「聞き取りづらいけど、大体わかるよ」

 

そっか。みんなも不安だったから、岩手がその空気を壊そうと頑張ったのかもしれないと思った。

 

「ちょっと、すごい水の音が聞こえるんだけど一体……」

 

亜酔昏がちょうど玄関側から歩いてきたと思いきや。

 

「あ、すまん」

 

「ぐわぁー!!?!?」

 

岩手のホースの向ける先が運悪く彼女の顔へ。眼鏡が吹き飛ばんとするくらいの勢いで、彼女は顔からびしょぬれになってしまった。

 

「こ、こらぁー!! 何をするのかね!! この私の顔がビショビショに……あっ」

 

「?」

 

亜酔昏が突如呆ける。目線の先は、グラウンド。

 

「あ、虹だ。岩手くん水を上に向けてみよう」

 

「任せぇ!」

 

ホースの水が小さな雫と霧になって、真夏の太陽の光に乱反射する。小さくて、それでいて光り輝いて綺麗な虹が、眼前に広がった。

 

「なんかさ、いいよね。こうやって遊ぶの」

 

速水がぼそりと呟いた。

 

「うん。いいよね」

 

僕も、なんとなくこんな日常が続いてほしいと、彼女に同意した。

 

「アンタも混ざろうぜ! やっぱ水一遍浴びな損ってもんだろ!」

 

「……うん、それじゃ、ばちこーい!」

 

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 

岩手がホースを剣のようにこちらに振りかざそうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

この空気を切り裂く、叫び声。反射的に水をかわして、声の方向に走った。

 

「え、お、おい!?」

 

岩手の声を置き去りに、足は勝手に動く。体育館の側面にある扉。そこが開いていた。体育館の中に土足で入る。体育館内には器具庫や体育放送室、ボール置き場や部室が設置されている。部室の扉の一つが、開いていて。誰かが、声をあげている。

 

「ぁ。ぁああっ」

 

その部屋から漏れ出す声。僕は、何も考えず駆け寄った。そこは、剣道部の部室だった。部室の中で、尻もちをついているクロカメ。

 

きーんこーん、かーんこーん。

 

気の抜けたような無機質なチャイム。そして放送が鳴り響く。

 

あの、忌々しい声。ひとなつ学園長の声が。

 

「死体が発見されました」

 

「ぁ……」

 

今の声は、誰の声だったんだろう。

 

いつも聞きなれているような、自分の声が漏れてしまったような。

 

あぁ、無理もない。そこにあったのは。

 

クロカメの目の前、僕の視界のその先。

 

剣道部部室の中央に、倒れている血に濡れた男性。その服装にも、顔にも、見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――風並、さん……ッ!?」

 

夏休み。蝉の声は聞こえない。遠くから潮騒が聞こえる。そんな真夏のさなか。蒸し暑い体育館の中。汗の匂いがする剣道部の部室。僕は初めて死体を見た。見知った顔の瞳孔の開いた瞳は、死んだ魚みたいだった。その時初めて知った。人間というのは、生きて動かなければモノのように思えてしまうと。

 

 

非日常編 第一章 「イキキレル」

 

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