Vtuber学パロダンガンロンパ風序盤ギャグガチンコミステリー小説   作:茶鹿秀太

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非日常編 第一章 「イキキレル」1

「――風並、さん……ッ!?」

 

「死体が発見されました。一定時間経過後、学級裁判を行います!」

 

 

 

僕が声を発した時、改めてアナウンスが鳴り響く。ぶつんと音が途切れ、世界が静寂に包まれる。

 

「ち、ちが」

 

クロカメがこちらを視界にとらえた。

 

「せ、拙者じゃない、拙者はやってないでござる! お願いでござる、信じて、ちが、拙者じゃないっ!!」

 

「一体何を……、風並さんっ!! しっかりしろ風並さん!」

 

冥城が飛び出して死体に抱き着く。無理もない、こんな突然の別れだなんて、誰も想像できなかった。

 

「なん、で。いやそんなことっ、そんなことぉ……うぅ、くっ、ぐぅううううぅうううああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

 

彼の声につられて、現場に人が集まってきた。

 

「風並さんっ」「そんな」「嘘だろ……」「ひどい……」「うっ、臭い……げほっ」「この暑さだから……」「事件が、起きてしまったんだ……」

 

苦しい。目が、体が、心が痛い……。

 

なんで、なんで彼が殺されてしまったんだ。あのコロシアイを真に受けて、本当に殺した奴がいるって言うのかよ……。

 

ひどい。ひどすぎる。この人が何か悪いことをしたんだろうか。

 

いや、絶対にしていない。

 

こんなところで、こんな風に殺されるような人間ではないはずだ。

 

痛い。心が痛い。そして何より、苦しい。彼を殺した人間を殴ってやりたいと思って、何もできない自分が苦しい。

 

喉を締め付けられたような、辛さ。‥‥…一定時間後に、よくわからないが、学級裁判が行われ、犯人当てゲームをしなければいけない。

 

 

 

「みんな」

 

最初にこの停滞を切り裂いたのは、風街ピリカだった。

 

「きついかもしれないけど、多分……この後犯人当てゲームが始まってしまう。死を悼む時間は、あまり与えられていないかもしれないんだ。……犯人を捜そう。僕も……このままじゃ、納得できない」

 

「風街……」

 

そうだ、やるしかないんだ。それぞれがやれることをやって、この忌まわしい事件を解決しなければいけない。やるしか……ないんだっ。

 

 

 

 

 

捜査開始。

 

 

 

「亜酔昏さん。死体の状況、分かる?」

 

僕の声に彼女はすぐに動いてくれた。彼女は自己紹介の時に医学をたしなんでいると言っていた。何かわかるかもしれない。

 

「そうね……死体の状況を見るに、頭部を強く叩かれて殺されたみたい。形状は……そうね。研いでない刃で思い切り殴られている感じかな。それ以上は、ごめんなさい。流石に今すぐは分からないわ。手術設備が整っていれば話は違ったけど……」

 

「そっか……ありがとうございます」

 

僕も彼の死体を眺める。あまり、死体って見たくないけど、頑張らなきゃ……。

どうやら、頭から血が流れてるみたいだ。鼻の周りに青い痣ができてるのも見えた。指先と唇が……少し青くなってるような気がする。

 

服はどうだろう。……血がついてる。気持ち悪くなってきた……臭いにあてられたかも。でも、頭の怪我にしては変なところに血がついてる……? 膝とか。足元が多いかも。逆に胸とかは少ない気がする。

 

「あ、ポケットに膨らみ……。スマホ?」

 

死体に手を合わせてお辞儀した後、スマホを回収してみる。

 

「起動してる……。メモ?」

 

どうやら、メモが開かれたままポケットには入っていたようだった。だが、何も書かれていない。何かが書かれて消された……わけでもない。起動したままポケットに入れられたようだった。

 

「ねぇこれ!」

 

速水が叫ぶ。剣道部の部室に飾られている、ロッカー上にあった模擬刀だ。……どう見たって血まみれだ。鞘も、たった今速水がゆっくりと、スムーズに鞘から抜いた刀身も。

 

「もしかして、模擬刀が使われたのかも……」

 

彼女が自信満々にふんすと鼻から息を吐いた。確かに間違いないかも。こんなに血があるのだから……。

 

頭の中で想像する。部室に入った風並。模擬刀で、一撃。そして倒れて……。模擬刀を戻す……? あれ、何か違和感があるような……。だめだ、いまいちわからない。

 

部室を出ると、クロカメが周囲の人間から質問攻めにあっているようだった。しかし、彼も焦燥しているようで、たどたどしく答えていた。

 

「どうですか? ウンフェルスさん」

 

僕の声に反応して、クロカメの話を聞いていたウンフェルスが彼に聞こえないように話をしてくれた。

 

「そうですね。彼が言うには、いつも通り練習しようとして部室に入ったら死体があって驚いたとのことでした。とりあえず彼が第一発見者か犯人か、どちらかではあるだろうが私にも思います。ひとなつ学園長が言っていたルール、思い出せますか?」

 

「えっと、なんだっけ……」

 

「死体発見時のアナウンスは、クロ以外の2名が死体を目撃した時とありました。ですので、彼がクロの場合は、殺害→ 第一発見者が死体を確認→ その後クロカメ さんが絶叫→ 秋冬さんが目撃の流れになります。また第一発見者でも、殺害→ 誰かが死体を発見→ クロカメさんが発見で自然な流れに見えますね。おそらくどちらかの流れになるとは思いますが…… 彼の憔悴っぷりを見ていると、犯人ではないような気がしますね」

 

「なるほど……」

 

分かりやすく説明してくれたおかげで自分の中でも整理がついた。クロカメさんが犯人か犯人じゃないかで、かなり事件の全容が変わってきそうだ。……余計複雑になってない?

 

「でも、これ以上は普通に何も……。あとは、どうすれば……」

 

現場は見た。証言も今聞いてもらってる。後やることなんかあるのかな……?

 

うーん……。ん? 体育館に周りをうろうろしながら歩いている入間るいがいた。

 

「入間さん。どうしたの?」

 

「あぁしゃ、じゃない、しょ。じゃなくて、そうだ。秋冬さん」

 

「あぁそんな覚えててくれなかったんだね」

 

「へへ、申し訳ねっ。じゃなくて、良かったらこれ使ってください」

 

「? これは?」

 

これは……霧吹き? なんで霧吹きなんかを僕に渡すんだろう。

 

「えっと、知ってるかどうか分からないんだけどね? ルミノール反応って分かります?」

 

「るみ、うん。なんか、うん、美味しいよね」

 

「ルミノール反応っていうのは私が用意したルミノール溶液と血液が反応して青白く光る原理のことだよなぁ。なので、この霧吹きの液体をいろんなとこにかけたら、血の付いたところは青白く光るよってこーと」

 

「そんなすごいことが!?」

 

す、すごいこの博士。凶暴なちぃかわじゃなかったんだ。浮き輪で流されるだけじゃなかったんだ!早速試してみよう……っ!

 

 

 

とりあえず剣道部の部室で試してみよう。

 

しゅ、しゅ、と。うわ、模擬刀が光ってる。

 

近くにいた速水さんがドン引きしてる。亜酔昏さんたちは別場所に移動しててよかった。これ以上ドン引きされたら死ぬとこだった。

 

「……あれ?」

 

妙だな、いや、そんなもんなのかな。死体の周りの床とかはルミノール反応がない。あれぇ? 

 

頭部叩かれて死んだんなら、血ももっと出てそうなイメージだったけど……。なんだろう。

 

なんとなく、ぷしゅ、ぷしゅと歩きながら薬液をばらまいていくと、体育館の床にもちょこちょこ青白い光が灯っていく。

 

「なんで体育館の床に血が……。おっと」

 

部室の反対側の壁側にある器具庫の床まで血が伸びているように感じる。器具庫を開けて除菌スプレーをかけるみたいに適当に部屋の中に何プッシュも押していく。

 

「あ。光った」

 

これは……台車だ。台車が光ってる。ちょこちょこ血痕がついてる。

 

「……。これは」

 

いろんな想像がよぎるが、まだ確定しちゃいけない。……外にも続いているかもしれない。外に向かって、血液が途切れてる。まるで、車輪の線みたいに。

 

 

 

「……車輪の跡はないけど」

 

みんなが外からズカズカと体育館に入ったことで、車輪の跡は見当たらないし、消されているかも分からない。血の跡は……?

 

「……ある。これ、靴跡……? え、靴に血をべっとりつけてる人いない???」

 

え、そんな愚かなことある? 誰かの靴跡の形で青白い光が残ってる。え?

 

「……辿ってみよう」

 

手当たり次第散らしながら歩いていくと……。

 

「……ここは、さっきの」

 

ホース遊びをした、水飲み場。地面はもう水たまりができるほどびちょびちょだ。

 

しかし、ぬかるみの中にあった判別のつかない靴跡に、……反応があった。おそらくこの感じだと……3人分だろうか? 足の大きさ的に。

 

でもこの靴の人が犯人なのか? いやでも、ここで遊んでいた人たちがいたわけで……?

 

「どういうことだろう。ここで死んだ? いや、部室で殺した後、ここに来た……?」

 

頭の中で整理がつかない。

 

台車があるから死体を移動させた? 

 

ここから? いやでも、模擬刀で、ここで殴った? 

 

なんとなく頭の中で考えている事件の概略はこうだ。

 

まず、そうだ。犯人はまず模擬刀で風並の頭を叩いて殺した。

 

その後……、外で殺した? その場合は台車で移動させた? クロカメに罪を擦り付ける為? 

 

いやでも、みんながホースで水遊びしていたわけだから、無理だろ。

 

じゃあ、模擬刀を移動させた? 

 

血液の量的にもそれなら理解できるし……。後は何だろう。

 

3人くらいが事件を起こした? 

 

共犯者がいるってことだろうか? 3人も? 

 

これは風並を狙った犯行? 

 

そしてなんで剣道部の部室に死体がある? 結局そこで殺したのなら、やっぱりクロカメが犯人? 他に犯人になりそうな人間は……いなくないか? 

 

そうだよ、誰も彼もが人を殺せるやつじゃない。動機は……? 

 

例えば喧嘩とか、……威鳴か? あいつは怪しかった。

 

後は……演劇部の友達の鈴? 或いは、……自殺とか。

 

 

 

「おーい! みんなこっち来てー!」 

 

声が聞こえてくる。水飲み場から体育館に行って、中に入らずさらに奥へ。

 

曲がり角に行くと、校舎裏につく。校舎裏で、黒い煙が上空に立ち上る。

 

「……燃えてる?」

 

女子たちが何人かが集まって中の物を取り出そうとしている。居るのは……冥城、小春、速水、入間、亜酔昏、鈴だ。熱そう。気を付けてほしい。

 

「あちっあちっ、取れた!」

 

小春が火かき棒をうまく使い、何かを取り出した。

 

「これ……ビニールでできた大きい透明なシート? だったものかな。血がついてる。あと段ボールがまだ燃えてるみたい……」

 

「間違いない。証拠隠滅のために燃やしたんだろうね。でも一体何が……」

 

亜酔昏が困惑する。確かにビニールと段ボール。一体何で燃やしたんだろう。事件に関係はあるはず、だが……。一体何を。

 

 

きーんこーんかーんこーん。

 

全員が一斉に上を見る。

 

体育館の屋根に設置されてる音響から音が流れていた。

 

「それじゃあ皆さーん。時間になりましたー。果たして、犯人は誰なのか! 学級裁判を行いますので、学校の中庭に集合してくださーい。中庭への行き方は、美術室の方に向かって進むと、中庭に行ける扉があるので、開けて入ってくださーい。カギはこっちで開けておきましたー」

 

「……」

 

いよいよ、始まるのか……。思わず体が震えてしまう。ここから、ここから本番なのか。よし……っ。

 

「おーい今の聞いたかよ! やばいって。遂さ犯人捜し始まっちまうよ。おらなにも分がらながったんだげど分がった人いだ? いったい誰がやったんだべな。くそ、絶対見づげでけるぜ」

 

岩手大好丸がこちらに声をかけた。……。ん?

 

「……岩手さん。その、おい、靴……」

 

「んあ?」

 

そうだな。いっぱいルミノール液をばらまいたからか分からない。

 

理由は分からないが、岩手の靴裏が、青白く光ってるように見えた。しかも思いのほか、べっとりと。明らかに血の海踏んだよね? みたいな光り方をしている。

 

「え、え?」

 

博士の入間るいが動揺している。当たり前だ。彼女が薬品を作ったのだから効用も理解している。

 

「ん?」

 

岩手はなにも分からないといったような顔で、ずしずしと近づいてきた。

 

―――――。え?

 

 

 

 

Day 4 August

夕方 中庭

 

 

生徒はそれぞれの足で中庭に向かう。

 

全員が中庭につくと、地面が揺れて、一部箇所が横に開き、階段が現れる。

 

階段を降りると、あまりに広々とした、荷物運搬にでもつかうのかもと思えるようなエレベーターがあった。

 

一人、また一人エレベーターに入っていく。

 

全員が乗ると、自動でエレベーターの扉が閉まり、ずしりと揺れて、下に動き始める。

 

「な、なぁ。俺じゃないよ? な? マジで。 おらでねぁーって。信じで。な」

 

岩手が必死に言い訳するも、周りは冷たい目をしている。

 

クロカメも同様に、口を噤んでいる。

 

誰も笑わないし、ただただ静かな空気が流れる。ぐおんぐおんと音を鳴らして下に沈んでいくエレベーターは、まるで地獄への案内をしているようだった。

 

 

 

――この中に犯人がいる。風並を殺した、犯人が。まだ知り合って4日の僕らの中に、犯人が。全員が怪しく見える。誰もが等しく容疑者なのだ。だが、犯人を僕らで当てないと、……あのルールが正しければ。ひとなつ学園長の言葉が真実であれば、僕らが殺される。

 

 

……何故だろう。記憶を失った僕だけど、酷い話だけど。事件が起きてからの方が、頭が冴えているような気さえする。僕は一体誰なんだろう。それを知るためにも……。

 

 

僕は、この事件を解かなくてはいけない。生きるために、生きて、本当の自分を知るために。こんな僕に優しくしてくれた、風並の為にも……。

 

 

 

――学級裁判、開廷。

 

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