Vtuber学パロダンガンロンパ風序盤ギャグガチンコミステリー小説 作:茶鹿秀太
冥城んみ犯人説。訳が分からない。
しかし、それを否定するも、肯定するも、この議論を重ねるしかない。
クソ、やるしかないのかっ。冥城が主張を開始する。
「僕はまず剣道部の部室に【風並将吾を呼び出した】【彼は何も疑うことなくやってきて、何もできず殺された】」
いくらでも否定できる。しかし、そんな証拠どこにもない。例え嘘だとしても、この発言は撃ちぬけないっ!!!
「もちろん凶器は【模擬刀での一撃】、そして、返り血を浴びた僕は、証拠隠滅を考えた」
やばい。これは。何も、なにも否定できない。
「そう、焼却炉だよ。焼却炉には燃え残りのビニールがあった。【僕は衣服をそこにくるんで、一緒に燃やしたんだ】。そして、正直全員疑問に思ってたんじゃないかな。剣道部の部室には、彼の血が全くなかったこと」
おいおいおいおいおい、嘘だろ、これじゃあまるで、本当にただの自白――。
「台車を使ったんだ。台車を使って、血をトイレットペーパーとか、タオルで全て綺麗に吸い取り、【段ボールに入れて全部燃やした】。台車で運んだせいで、ルミノール反応が出てしまったんだよね、実際にそうだろ? 秋冬さん。ついでに、タオルに染みた血がなかなか問題だと思ったから、絞ったんだ。血を、地面に。そして、僕は水を出した」
「……はっ?」
「みんなが水遊びしてただろ? あそこに、血を、絞って流した。だからあそこで遊んでいた岩手くんの靴にべっとり血がついてしまったんだよね。あれは誤算だった。本当は血を洗い流したくて水を出しっぱなしにしておこうと思ってただけだったからさ。僕がしたかったのは神の証明であり、人間が協力すれば僕という巨悪を打ち砕いてくれると信じたから。でもこんなこともできないのなら、自分からネタ晴らしをしてすっきりして死んだ方がいい。そう思わない?」
おい。おいおいおい。なんだこれ。
頭の中で映像がよぎる
。冥城が風並を呼び出し、模擬刀で殺害。
その後証拠隠滅のために刀を戻し、血をふき取り、台車を使って、グラウンド側に設置されていた水道あたりで血を絞り、水を噴出させ地面に水を撒いてごまかし、焼却炉で燃やした。
できる。いや、完璧だ。疑問の余地なんてない。
出来るのだ。まったく不可能ではない。
きちんとできる、ただの自白――。ただの、自白……?
「冥城くん……本当に、君がやったのか……?」
風街が動揺する。おそらく、同じようなことを考えているから。
「間違いなく。【僕が風並を呼び出して】【模擬刀で殺害】。そこから【偽装工作】を行った。この主張に、間違いはないっ!」
「【それは違うよっっ!!!!】」
「!?」
思わず、僕は叫んでいた。
この中に自分が論破できるものなんてない。
ただ残っていたのは、彼が、風並の死体を見た時……、泣いていたから。
「死体を目撃した時、冥城は取り乱して泣いて、死体に向かっていった。あれが、嘘だって言うのかよっ、応えてくれよ、冥城ぉっ!」
「――、あぁ。あれ。まだ気付かない? 血を拭き取った時の紙がさ、死体に付着してたんだよ。だから回収するために演技した。最高の、名演技だったろ?」
「――――――っ」
「話は終わりかい? なら、僕を処刑するといい。この罪を持って、僕はどこにでも贖罪の旅に出よう」
――あぁ、ダメだ。僕は、何もできない。
もう、何も否定できない。間違いなく、彼がやったに違いない。
ただの狂人の自白に、僕は打ちのめされていた。
……いやいや、これでいいじゃないか。
犯人がもう言ってくれてるのだから。
【もう一切の疑問もない】。これにて、事件解決……。
「……【それは、違う】」
「?」
なんだ、違和感が渦巻く。
何が引っ掛かった。
さっきから何が頭に残ってる?/それって解決する必要がある?/まだ謎は残ってる/もう話は終わったじゃないか/なんでこんなにも、こんなにもいら立ってる?
記憶がないから?事件が納得できないから?
いや、そうだ、そうなんだ。
分かった。納得できないんだ。
――冥城んみが、殺すはずがない。
まだその意見が頭に残っているのだ。
みんなをまとめようと必死に頑張ってた冥城が。
風紀委員をやっていて、みんなを仕切ろうとしていた真面目な彼が。
――そんなこと、やるはずがないだろっっっ!
振り絞れ脳みそ。必死になって考えろ。絶対に突破口は……あるっ!
「ねぇこれ!」
速水が叫ぶ。剣道部の部室に飾られている、ロッカー上にあった模擬刀だ。……どう見たって血まみれだ。鞘も、たった今速水がゆっくりと、スムーズに鞘から抜いた刀身も。
「もしかして、模擬刀が使われたのかも……」
彼女が自信満々にふんすと鼻から息を吐いた。確かに間違いないかも。こんなに血があるのだから……。
頭の中で想像する。部室に入った風並。模擬刀で、一撃。そして倒れて……。模擬刀を戻す……? あれ、何か違和感があるような……。
「そうか分かったぞっ!!! 冥城、間違いなく模擬刀で一撃で風並を殺したんだな!」
「? それが何? 検死結果からも明らかだよね?」
「お前が、一撃で?」
「?」
「僕はバカだった。一撃で死んだという事実で頭が回ってなかったんだ。当たり前だよ。模擬刀なんて重たいものを振って一撃で殺すことが出来ると思われるのは、剣に造詣の深い、剣道部のクロカメだけだっ! それ以外の人物が刀を振っても、一撃で殺せるとは想像できない! 加えて、模擬刀はスムーズに鞘から抜き取ることが出来た。模擬刀を全力で振って一撃を与えたんだ。鈍器みたいにっ。斬られていないのなら、素人の一撃が致命傷なら、模擬刀がゆがんでしまう可能性がある!」
「なっ!?!?」
「そうか、やっと違和感が解けたよ。模擬刀で一撃で殺すには、冥城くんだと心もとないんだ。なら、考えられる可能性は絞られた」
風街ピリカが、僕の推理を補足していく。
「一つ、模擬刀で殺された説。僕らはこれを基に話を進めてきた。そして、もう一つの可能性。奇しくも冥城くんが、面白い説を出してくれたんだ。血は、水道近くで絞ったってね。そして台車も使われたとなると、冥城くんが殺害していない前提でも新しい物語が生まれる。秋冬さん。ここまで言えば分かるよね?」
「うん。もう一つの可能性は、模擬刀で殺されていない説。風並さんが死んだ場所。剣道部の部室じゃなくて、台車で運ばれた説だよ」
「ど、どういうことでござるか!?」
「模擬刀はゆがんでいなかったから、クロカメさんが滅茶苦茶きれいに刀を上手く使って殺したか」
「拙者まだ容疑者でござったか!?」
「そして、もう一つがクロカメさんが模擬刀を使ったように見せるために、死体を剣道部に運んできた可能性だよ。この場合、どこで風並さんが死んだかがポイントなんだけど、一か所だけ心当たりがある。血のあったと思われる場所。不自然に水道の水がホースと繋がって、水が噴き出していた場所。例えばそこで殺されてたくさんの血が流れていたから、水を使ってごまかした可能性のある場所。……みんなで遊んだ水飲み場。あそこで風並さんが殺された可能性があるよ」
「なんと、では、拙者はその推理に頼るしか。でも犯人が分かりませぬな……」
「――その場合、容疑者が一人浮かぶよ」
冥城が、なぜか、疲れ切った表情で皮肉げに笑っていた。
「僕らはなぜ、模擬刀で彼が死んだかを議論したか」
黙って話を聞いていた、威鳴音月がため息をつく。
「はぁ。なるほど。最初から嘘をついていた人間がいたというわけか」
小春そらが叫ぶ。「じゃあ、誰が一体っ」
速水が泣いた。「もう一体誰なのぉ」
鈴が唖然とする。「……まさか」
入間が犯人を見つめる。「嘘、最初から」
岩手が顎が外れる勢いで口を開ける。「いや、いやいや。おらぁ、信じて、信じてたんだぞ」
クロカメが、罪を擦り付けようとしたクロを嘆く。「な、なぜ。一体どうして」
ウンフェルスが、目をつむった。
「その可能性は、確かにありました。ですが、信じたくなかった」
風街が、犯人を告げる。
「……唯一死因を偽装出来て、信頼を集められる存在。死体を唯一見られる存在。医者の卵であることを利用して、上手く自分への注目を避けた。――君がキーだ。亜酔昏ヨイさん」
「っっっっ!!?」
まさか。そのまさかで。冥城の隙をつぶした一手が、思わぬ勢いで、新たな容疑者にめがけて飛んで行った。
「な、なぜ私が……。検死を疑ってしまえば、もう前提が崩れてしまうぞっ!?」
僕は、……僕は。
「うん、だから、一緒に話し合おうか」
もう推理を止めない。疑った先に、信頼と真実があるのなら。
亜酔昏が冷静に疑問の矢を放つ。
「検死を疑ってしまったら、死因から考え直す羽目になるぞ」
風街が疑問への推理を振りかざす。
「死んだ場所が【水飲み場】であれば、模擬刀で殺害した可能性も低いね。模擬刀を運んで振りかざそうとしたら、目撃者だって出てくる」
元気になってきた岩手が自身の想像を膨らませる。
「模擬刀じゃないとしたら……【全力で滑って転んだ】とかどうだ?」
速水が呆れる。
「いやいや、そんなドジっ子じゃないでしょ。【石とか何かで思いっきり叩いた】とかかもよ?」
クロカメが真面目な表情を浮かべる。
「命が奪われるほどの一撃でござる。【屋上から飛び降りた】のではなかろうか」
亜酔昏がいら立ちながら、持論を深める。
「何度も言うけど、【模擬刀による一撃】が死因よ。それを疑うのであれば、私はもう何も言うことはない」
……今の話を聞いて、一番納得できるのは。
「クロカメさん。【それに賛成だよ】。風並さんは、【屋上から飛び降りて】死んでしまった可能性があるかな。死体の状況、一撃という点が亜酔昏さんも変わらないのなら、一撃で重たい衝撃があったとすれば、落ちてしまったことで納得できる」
「【それは誤診じゃあないかしらっ!】」
「!?」
亜酔昏が僕の言葉を切り裂く。なるほど、彼女の診察をしのぎ切らないと、このまま押し切られてしまいそうな圧がある。もし彼女が真犯人であるのなら、負けてはいけない。
「私は【クロカメ】、もしくは【岩手大好丸】、【冥城犯人説】を捨ててない。【模擬刀で死んだ】のであれば私は納得する」
「台車にはルミノール反応があった。死体が運ばれた可能性があること、死んだ場所が違う可能性がある以上、納得できない。それに岩手、冥城の二人が犯人であれば、模擬刀もゆがむだろうし、一撃で殺しきれると思わない。一体何が言いたいんだ」
「でも私の診察を否定する証拠はないはず。模擬刀が引っ掛かるなら、クロカメさんが犯人で、【模擬刀で殺害】後、偽装工作をして【叫んだ】。これ以外ないだろう」
「【その推理は否定できるよ!】 死体発見アナウンスは2人が死体を発見した時に放送される。僕が見た景色は、クロカメさんが死体を発見した後に叫んで、アナウンスが流れた。つまり、クロカメさんがただの目撃者の可能性を示唆している。死体発見アナウンスが、彼の無罪を証明してるんだ! 間違いなく、模擬刀は犯行に使われていない。模擬刀を使った検死が間違っている証明になるはず! そして目下一番怪しいのは、死因に嘘をついている可能性がある亜酔昏さん、君なんだ!」
「んぐぅっっ!? な、ならっ! えっと、死体を台車で移動したって言うの? 屋上からの墜落死であるなら、大量出血をしている可能性があるわ!」
「焼却炉の中身で推理可能だよ。あったのはビニールと、段ボール」
「ぐぅうううううううううう!!!!?」
「これが事件の真相だっ!」
まず、亜酔昏さんは風並さんを屋上に呼び出して、彼を屋上から落とした。
死体は頭部から大量の出血があったはずだった。
なので亜酔昏さんは……まず死体をビニールシートでくるんで、段ボールをひいたり、被せたりして台車で運んだ。見られたときに誤魔化せるようにしたんじゃないかな。
ビニールを使ったのは、血が流れないようにして移動するためだった。
風並の服は何故か変な箇所に血がついていた。
服はどうだろう。……血がついてる。
気持ち悪くなってきた……臭いにあてられたかも。
でも、頭の怪我にしては変なところに血がついてる……?
膝とか。足元が多いかも。逆に胸とかは少ない気がする。
死体を例えば運びやすいように体育座りとか、丸めさせて運んだんじゃないだろうか。剣道部の部室に運んだあと、死体を置いて、模擬刀に血を塗って仕舞った。
ビニールと段ボールを焼却炉へ、台車を体育館へ隠して、屋上から落ちた場所にホースを大量に水を出して血を流そうとした。
その後、岩手が水を発見して水遊びを始めてしまったために靴にべっとりと血が残ってしまった。
「ちょっと、すごい水の音が聞こえるんだけど一体……」
亜酔昏さんがちょうど玄関側から歩いてきたと思いきや。
「あ、すまん」
「ぐわぁー!!?!?」
岩手のホースの向ける先が運悪く彼女の顔へ。眼鏡が吹き飛ばんとするくらいの勢いで、彼女は顔からびしょぬれになってしまった。
あれはもしかして、亜酔昏はホースの水を確認するためにもう一度現場に戻ってきたのではないだろうか。
そして死体が発見された後、医者の卵であることを利用し、死因を偽装した。これがこの事件の全容だ。
「つまり、犯人は亜酔昏ヨイさん。君だ」
「う、うぐぅうぅぅぅぅぅうぅぅぅうぅうううぅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!?」
頭を抱えて、彼女は膝から崩れ落ちた。
……終わった。事件は全て、暴かれた。
「いや、まだ、まだだ。推理だって穴だらけで、推論ばかりで、納得できる回答っていうだけで、そう、冥城くんだって自分が犯人だって言ってて、模擬刀の件だけで否定されてるけどそうじゃないかもしれないっ。岩手くんだって、まだ何も否定されてないっ、だから、だからぁっ!!!」
「いやぁ、ふと思ったげどよぉ。さすがに人殺した後さ水遊びなんてでぎねぁーんでねぁーが? おら自信ねぁーよそったなこどするなんて」
岩手が、ぽつりと素直な心情を語る。ぽかんと、亜酔昏が口を開けた。
風街が悩んでいる様子で、冥城を見る。
「冥城くん。なんで君は自分の事を犯人だなんて言ったんだい? もしかしたら、本当に犯人として扱われるかもしれないし、本当に自白だったかもしれないけど、タイミングも、なんでそんなことをしたのかも不明瞭だ。もういいんじゃないかい? 理由だけ教えてほしいんだ」
冥城が、ふぅ、と息をついて、頭を抱えた。
「嫌だったんだよ。岩手も、クロカメも、大した根拠なく疑われて、まるでいじめみたいだったから。あの二人が、人を殺すと思えなかったのに、なんでみんな模擬刀とか靴とかで犯人だって決めつけるのか理解できなかった。弱きものを救うために、教祖をやってる僕だからこそ、許せなかったんだよ。ただ、本当にそれだけだった。はぁ。僕はやってないよ。ごめんみんな。……最低なことをしたよ」
「―――」
その声が、どう響いたのかは分からない。ただ、亜酔昏はぺたりと座り、その眼鏡の奥から、涙がぽろぽろと零れ落ちるのが見えただけだ。
「は、はは……。はは…………」
「亜酔昏さん……」
僕が話しかけると、もう希望の光すら一切残らない瞳で、彼女は僕に語り掛ける。
「ねぇ、秋冬さん。私は、私だって、はは、ねぇ、じゃあ、誰が、……私が、弱くないなら、だれが、わたしをたすけてくれたんだ……」