Vtuber学パロダンガンロンパ風序盤ギャグガチンコミステリー小説 作:茶鹿秀太
「ふ、風並様っ!!?!? なんで、え、どうしてぇっ!?」
彼を発見できたのは、偶然だった。
地面に血の花を咲かせて、今にも息絶えそうな、青年。息も荒く、一目見ただけで理解できた。
もう、だめかもしれないと。
「ま、待っててください、今、お医者様、あぁ、どうしよう、そうだ亜酔昏様、亜酔昏様ならまだ診てもらえるかも、風並様お待ちくださいまし、今から助けを……」
「……~~。……」
「え?」
何か話しているような気がして、口元に耳を寄せる。
「あす、くれ……さんが、しのうと、して……僕が、おく、じょ、……かわ、り……おち……」
「そ、そんな……っ、犯人は亜酔昏様なのですか!?」
「……」
彼はスマホを持って、どうしてか、そのままポケットに入れた。
「ぅ、ぅぅぅぅぅ、今、何とかしますから、止血とか、あぁあどうすれば、風並様しっかり、どうしたら、どうすればっ」
「す、ぅ、さ、ん」
「はい鈴でございますよ! 意識をしっかり、どうしようどうしようどうしよう、死なないで、死なないでくださいまし風並様、お願いですからっ」
「ぼ、くぅ、を……こ……し、て」
「――――え」
たどたどしく、彼は私に告げた。
間違いなく、僕はもう死んでしまうから。
このままだと、亜酔昏さんがクロになる。まだ僕はみんなのことが分からない。
もしかしたら、彼女が死因を偽装して、真実は暴かれないかもしれない。
彼女が生き残ってしまう可能性を、別に否定したいわけじゃない。
でも、もし。もしこの命の使い方を、僕が決めてもいいのなら。
「――お、すぅ、さん、い、きて……、ぼくぅ、より、いき、て……」
「ぁ、ぁあ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
怒りも、悲しみも、辛さも、苦しさも、憎しみも、全部襲ってきて、ぐちゃぐちゃになって、涙が止まらなくて、どうしようもなくて、何もかも嫌で、なんで私がって思って、――最後に過ったのは、あの教室の中で行った演劇の思い出。
「……」
目の下が痛い。痛くて痛くて。あぁ、短い期間だけど、もっと一緒に居たくて。いつの間にか手に持ってたハンカチを、彼の口と鼻にあてた。
びくん、と彼の体が暴れだす。まるで、もうすぐ死んでしまうみたいだ。
「――大丈夫ですよ、風並様……。大丈夫です。私も、いつかそっちに行きますので、その時は、その時はぁ……っ、またぁっ、いっしょにっ、ぐすん、いままでぇ、あぃがとぅございばじだぁっ」
「――」
最後に彼と目が合った気がした。苦しかっただろうに。痛かっただろうに。辛かっただろうに。なんで最後まで、優しい目をしていたんだろう。
「あぁどうしよう、どうしよう」
亜酔昏の声が聞こえた。気が動転しているようだった。
私は、ゆっくり立ち上がって、走って体育館の方に回って隠れた。
「――さようなら、風並様。でも、頼んだ相手が、悪かったですね。――ほら、私ってポンですから。最後の最後で自分から言っちゃいそうですねぇ」
「それでは皆さんとうひょうのお時間で~す! 果たして鈴さんはシロなのか、クロなのかっ! でってってーれーててててててーれれー! てててててててててててててぇ! れっつごぉ~!!!!」
投票結果。12票 鈴
鈴は……クロでした!
おめでとうございます!
「というわけでぇ~! おにいちゃんおねえちゃん大正解~!この事件のクロは、鈴さんでした~!」
ひとなつおもい学園長の声が、耳鳴りのように残った。それなのに、どうして。
「これが真実ですよ」
――なんて、きれいな笑顔で教えてくれたんだろう。
本当に、身内を殺された人間とも思えないほどの、演技力。
本当に、最後まで隠しきった人間の、エンドロール。
「皆様、ご迷惑をお掛けしました。まぁ、私も私なりに全力で抗ったので、お許しくださいまし。だって、全力で演らないと、風並様に失礼でしょう? ……亜酔昏様」
「っ」
びくっと、亜酔昏が震える。
「恨んでませんよ。風並様は。むしろ、亜酔昏様を死なせずに済んだと、かっこつけて最後までヒーローみたいなことを仰ってました。……バカですよねぇ。だったらそのまま死んでいればいいものを。私に、最後を頼むなんて。でも、きっとあの人生きてたら脚本の才能あったと思うんです。だって、最後まで皆さんに気付かれない謎を、提供したのですから。ご安心くださいな。亜酔昏様が指名される前に、私、名乗り出る予定でしたので」
「鈴さんっ」
僕の声を、笑顔で流す。
「皆様。お願いです。コロシアイなんてやめてくださいまし。生きてるだけで儲けもの。死なば何も成せぬまま。生き汚くても積み重ね、人と人の縁を繋ぎ止め、誰かを笑顔にしてくださいな」
踊る様に、舞う様に彼女は証言台から降り立ち、深々と頭を下げた。
「これにて今宵の演目も終わり。至らぬ点多々あるかと思いますが、野狐の戯れと思ってご愛嬌を。まさに議論もたけなわ。ご縁があればまたどうぞ。それでは皆様御機嫌よう。役者の名前は鈴、脚本は風並将吾と申します故、名前だけでも憶えていただければ幸いです」
そして彼女が、ひとなつおもいの画面に向かって歩き出す。
一瞬だけ、僕の前を横切った。その一瞬に。
「あ、やべどうしよ。やっぱ死にたくないなぁ」
彼女は、あきらめたように笑った。
「っ、鈴さんっっ!!?」
「それでは皆様おまたせいたしましたぁ! やっぱりここからが本番だよね! というわけで、全ダンガンロンパファンの皆様、お待たせいたしました。やっぱり恒例全世界待望、おしおきたいむ~!」
僕が声をあげた時、鈴さんは。
最後の最後まで、笑顔だった。
「え~~~くすたしぃ! なつやすみの宿題を前日のねる前に終わらせたようなかいかんがぁ、かけめぐるぅ!」
「ぁ、ぁああ」
誰が声をあげたのかも分からない。
でも、あんな、あんな尊厳をぐちゃぐちゃにするようなやり方で、処刑をするなんて。
なんでだ。なんでこうなったんだろう。
「それじゃあ、みんなだまりこくっちゃったわけだしぃ? 今日のところはこれにてかいさんしまぁす。明日からしっかりなつやすみをまんきつするよーに! 朝6時にはラジオたいそうとかオススメです。――まだおわらないよ。なつやすみがおわるまで、この戦いはつづくのだぁ」
「いや、いやぁああああああああああああああああああっ!?」
亜酔昏が、壊れる。
当たり前だ。殺したと思って、やっと許される死に方が出来ると思って、結局生き残って、彼女はどうすればいいんだ。
みんなだってそうだ。
この事件を見て、何も思わないわけじゃない。
誰かが殺されて、誰かがむごいおしおきを受ける。これが、ずっと、ずっと……。
「ふざけるなぁあああああああっ!」
ダメだ。絶対だめだ。
僕はそんなこと許せない。
絶対に、絶対に生き残るんだ。
鈴さんが、鈴さんが言ったように。
もうコロシアイなんてさせない。
みんなで、みんなで生き残るんだ。
「絶対に、絶対にこの事件を解決してやるっ、もう誰も死なせたりするもんか、お前なんか許さない、僕たちは、……絶対生き残るんだっ」
こうして、地獄の舞台は、幕を閉じた。
死亡者
爆発による死者 茶鹿秀太
犠牲者 風並将吾
クロ 鈴
生存者
秋冬ハル
速水らいむ
黒光の亀
亜酔昏ヨイ
冥城んみ
小春そら
岩手大好丸
入間るい
威鳴音月
ウンフェルス
風街ピリカ
非日常編 第一章 「イキキレル」 完
次回。(非)日常編 第二章 「ウイルスメモリー」