今日の夜はコラボ配信。デビューしたばかりの新人と男3人だけでコラボだ。直近にデビューした同性の先輩ともなると俺しかいなく、このコラボも選択的には真っ当だった。本当はKP7先輩も呼ぶつもりだったが、仕事の関係でどうしても今週は忙しいらしかったのでパス。
オフコラボということもなく、普通に自宅から通話アプリでコラボだ。今日やるゲームは協力ゲームで、『トリトンの夢島冒険譚』というもの。最大4人までプレイできて、とある島のダンジョンを攻略してお宝を手に入れようというトレジャーハンター系の謎解きゲームだ。
これをやろうと言っていたのはドグマ・樹林さんで、頑固一鉄さんは楽しめればなんでも良いよと結構投げやりに許可を出した。俺もやったことがないので完全初見だ。
パーティーゲームならまだしも、協力ゲームなんて買ったところでやる相手がいなかったからなぁ。
配信主はドグマさん。俺はゲームの準備だけ済ませて諸々は彼らに任せた。
ドグマさんの設定はまだ10代だけど、実年齢は俺より上。同性の後輩とはいえ年齢は上だから多分このままさん付けだろう。
「あ、音載せました。どーも!エクリプス4期生、パティシエ見習いのドグマ・樹林でっす!今日は念願のコラボだぜー!というわけで同期のてっさん、自己紹介よろ!」
「はいはい。同じくエクリプス4期生、『料理道』のメイン料理担当、頑固一鉄だ。同期コラボ以外では初めての複数人コラボってこってね。まあとある先輩をお呼びしたわけよ。画面には映ってるんだし、先輩自己紹介頼んだわ」
「はい。皆さんこんばんは。3期前半組、『FOR』のR担当絹田狸々です。『料理道』の初コラボ相手に選ばれたということでね、先輩風を吹かせながら頑張っていきたいと思います」
『エクリプスの伝統だよな。同性の一個前の先輩とコラボって』
『男の後輩増えたの、リリ嬉しいんじゃない?』
『この2人以外の後輩って、あのチェリーと但馬だろ?そりゃあねえ……』
ドグマさんは明るい元気っ子で爽やかボイス。一鉄さんは渋い声系のビジュアルも渋めの大人な感じの人だ。ドグマさんは薄緑色の髪に蒼い瞳という日本人離れしたコック服の若いビジュアルで、一鉄さんは和食店のオーナーみたいな、板前さんっぽい服装。立ち絵のオプションで捻り鉢巻があるらしい。
自己紹介なんて今更だろうということで、まずは雑談から。裏ではチャットで話したこともあったけど、通話を繋げてというのは初めてだったりする。
「リリパイセン、マジで狸じゃないですか!リアリティありすぎてびっくりしましたよ」
「ぱ、パイセン?そんな風に呼ばれるの、初めてですね。そもそも僕、今まで生きてきてそんなに後輩がいなかったかな……?バイトの時でさえさん呼びだったから、先輩って呼ばれたこともないかも?」
「えー?学校の後輩とか、部活の後輩とかは?」
「部活なんてやってなかったし、学校の後輩とか絡みなくない……?」
「Oh……。パイセン、この話なしで!パイセンの悲しい過去ほじくりたくないもん!」
「え、あ、うん?」
「多分気にしてないんだろうなぁ。リリ君は」
後輩がいたってそんなに気になることだろうか。バイトに後から入ってきた人とかも歳上だったりして普通に呼び捨てか君呼びだったし。歳下との絡み、かなり少ないか?
劇団の頃は歳下も全員ライバルだったし、学校でもないから先輩でもなくさん呼びだった。先輩後輩って呼ぶ関係性を構築するのって、割と特殊なんじゃないだろうか。部活に入っていたらそれが当たり前になるのかもしれない。
中学時代から劇団に通っていて、高校になったら劇団とバイトの掛け持ちだったから、部活なんて入る余裕なかった。
先輩と呼ぶ人もいなければ、パイセンなんて余計にいない。なんだかムズムズする。
「そう、リリ君に聞きたいことがあったんだ。『SoF』をやっているだろう?ハードモード難しいかい?」
「めちゃくちゃ難しいですよ、一鉄さん。防具と装飾品が本当に手に入らないので防御力がギフト任せで、あとは回避とジャストガードでどうにかしないとHPがごっそり削れるので。KP7先輩に合わせてハードで始めましたけど、メーカー推奨のイージーか、ノーマルスタートにすれば良かったと思ってます。めちゃくちゃ楽しいですけどね」
「ハードはそんな感じか。自分としてはレベリングも楽しくてついついマップ走破とか、サブイベントとかを見つけるためにあちこち探索しているんだが、そうするとストーリーが中々進まなくて」
「わかります。僕なんて朝の配信で5回目だったのに、多分ストーリー的には3分の1も終わってませんよ」
「話題になってるよねー、『SoF』。オレはアクションゲーム苦手っていうか、あの会社のゲーム、途中で投げ出したことがあるから、またそうなりそうで手が伸びなくて……。だって15000円だよ⁉︎」
それはそう。ドグマさんがクリアできなさそうなゲームに15000円も投じられるかと言うが、まさしくその通り。興味のあるものを最後までやる方が絶対良い。話題作だからってやらなくちゃいけない、なんて縛りはないんだから。
難しそうと思ったら他のフルプライスゲームを2つやった方が健全だ。俺はストーリーを読むためなら多少の苦労は気にしないタイプだからなんとかなっている。あとは同じようなアクションゲームの『ソラソラ』をやっているのも大きいんだろう。
「自分としてはまだノーマルモードの途中だが、もう既に値段相応の楽しさは受け取ってるがなぁ」
「ノーマルもストーリーが面白いですか?それともアクション面の評価です?」
「どっちもだな。冒険者のランクアップとか、アクションの難しさの歯応えとか、中々にゲーマーを刺激してくれる。ハードモードも主人公は冒険者なのだろう?今のランクは?」
「今Bランクです。一鉄さんは?」
「前の配信でようやくDになった。まあ、ランクアップはストーリーの進行度によってばらつくだろうから、そこまで指標にならないか」
「ですね。ストーリーの重要なクエストをクリアすればランクは上がりますから」
多分フォイルが冒険者を辞めそう、というネタバレは言わない。ヴァルモニア解放戦の後に正教に引き取られて、第2の聖女コースだろうし。せめてAランクになってから冒険者を引退したかったなぁ。そういうルート分岐はあったんだろうか。
ノーマルモードは冒険者の男の子なのか。イージーとノーマルが男主人公だということは知っているけど、ストーリーは全然知らない。他の人の配信はKP7先輩の切り抜きくらいしか見ていない。
同じハードモードならストーリーがほぼ一緒だろうから見てもネタバレはないだろうと思うけど、イージーとノーマルはストーリーからして違うので、見た瞬間からネタバレになる。だから当分は他の人の『SoF』配信は見るつもりはない。
真紀さんが今夜からイージーモードを進めるけど、それも見ない。それ以外の配信だったら見に行くつもりだ。
「リリ君、同期が異性だと大変だったりするのかい?自分はこの生意気なガキンチョで割と苦労しているが……」
「てっさん、ガキンチョって言った⁉︎というか大変だと思ってるの⁉︎」
「割と奔放で、30のおじさんにはその無軌道っぷりが中々キツイところがある」
「いやいやいや、そこまで無軌道じゃないから!」
「ははは……。別に同期が女性だからって困ったこととかはないですよ?先輩たちも皆そうですし、同期も良い人たちなので困ったこと……。水瀬さんが僕たちをパパママ扱いするくらい?」
「あー、確かになぁ。高校生の娘っ子がいるほど歳とっちゃいねえもんなぁ」
「FORの家族っぷり、有名ですよね!同期ってより家族っぽいっていうか」
「水瀬さんがあれだけパパママ連呼していたら、そうもなりますよ」
同期について話しつつ、雑談もそろそろ良いだろうと言うことでゲームを始めていく。
ドグマさんにホストになってもらい、部屋に入る。こういうオンラインプレイも、オフラインプレイもできるようで1つのテレビを分割して遊ぶこともできるらしい。
ゲームについては操作方法がチュートリアルで出てくるくらいで、とにかく宝を見つけましょうくらいにしか言われない。最初に行けるダンジョンも決まっているようで、マップで行ける場所は1つだけだった。とりあえずそこに行ってみる。
「とりあえず奥を目指せば良いのか?」
「そうっぽい。オレも初見だから全然わからないけどね!こっちのヒョロガリがオレで、一回り大きいのがてっさん。女性キャラがリリパイセンね」
「何で選べるキャラが男女2:2なんだ……」
「男女で遊ぶ謎解きゲームだから?」
「え?これそんな陽キャがやるようなゲームなのか?ドグマ、お前こういうのは女性とのコラボに取っておけよ!」
「ええーっ⁉︎じゃあてっさんが女性の先輩誘ってよ⁉︎オレ絶対無理!」
「何で見た目はそんなにチャラチャラしてるのに、女性の先輩はコラボに誘えないんだよ⁉︎」
「女子と話すとどもっちゃうんだよ〜!」
うーん、ギャップが激しい。立ち絵だけならそれこそそこら辺の大学生っぽいのに、女性は恥ずかしくてコラボに誘えないなんて。
そういう設定なのか、本性なのか。よくわからない。
ただこのキャラはもう浸透しているようで、いつも通りの様子だとコメントに流れている。女性をコラボに誘うなら一鉄さんにやってもらうと駄々を捏ねているが、こうなったらサシコラボなんてできないんじゃないだろうか。
ダンジョンに入って、操作説明のチュートリアルが始まる。ジャンプとワイヤーアクションができるフックショットの使い方を教えられて、さまざまな仕掛けを解いて奥を目指すようなゲームらしい。
謎解きもしながら、雑談もする。
「さっきの話でもないが、女性の先輩を気軽にコラボに誘って良いものだろうか?その辺りがまだわからずに男性としかコラボの話をしていないんだ。リリ君、アドバイスあるかい?」
「内部だったらドンドン誘って良いと思いますよ。ただ外部となると炎上するかもって感じです。エクリプスのリスナーと他の箱や個人勢の方のリスナーはその辺りの感覚が違いますから。まあ、大手だと相手の女性が配慮してくれるのでそもそもコラボの許可も出ないと思いますが」
「リリパイセン、他の女性の先輩たちってどうやって誘ってるの?」
「基本僕からは誘わないですね。向こうから誘ってくれるのでそれに参加するケースが多いです。エクリプスの全体チャットでコラボの誘いとか全員にメンションをつけて投稿されるのを見て、じゃあ参加しようかなって感じですね。コラボを誘うのは基本同期か後輩だけかな?僕があまり企画を発信しないというのも関係しているんだろうけど」
コラボはなぁ。FORとか後輩向けならこっちから声をかけるけど、全体とかに向けてコラボのお誘いをしたことはない。先輩たちと雑談で話していて、じゃあやりましょうかという話にはなるものの、こっちで企画して呼び込むということはしたことがない。
そんな大型企画をしたことがないからだ。
「こんな感じで基本受け身なのにどうにかなってますからね。というか僕なんて最初大炎上かましてるので、女性の方を誘いづらかったですし。あとは公式の企画とか呼ばれてたら案外コラボの余裕がないなあってこともあったり。個人の配信なら相手の時間を気にしなくてもできますけど、コラボだと予定を取らないといけないじゃないですか。全体募集の企画を先輩たちも数多く投げてくるので、やろうって意気込まないと中々コラボができない実情だったり……」
「なるほど。先輩たちめちゃくちゃ企画を投げているからな。コラボしたかったらそこに混ざるように企画を投げるとか、積極的にコラボを誘わないといけないと。ここは歳上として自力で頑張るしかないか」
「案外事務所でバッタリとか、チャットでの興味とかでコラボになったりしますよ。興味ある先輩とか、ゲームとかで先輩たちを誘っちゃって大丈夫です。今回みたいにね」
「それで女性の先輩誘えたら苦労しないんですよー!」
『リリ、自虐』
『最近も燃えたもんなぁ。とはいえ毎回貰い事故だけど』
『リリ自体はめっちゃコンプラとか守ってるのにどうしてこうなる……』
コラボのやり方とか話しながら、ギミックを解いていく。最初のダンジョンだからか、ギミックもそこまで難しくない。ただ操作が敏感なことだけ難しかった。スイッチの上に乗らないといけない仕掛けが少しでもズレていたら反応しないとか、その辺りの調整が細かい。
「こういう謎解きゲームって、男女でわーきゃー言いながらやるものなのだろうか……?リリ君は経験あるかい?例えばFORでやったり」
「いえ、経験ないですね。FORでホラーゲームはやりましたけど、協力ゲームもRPGのレイドとかで、こういうゲームはとんとやったことがなくて……。こういうのも一種のパーティーゲームなんですかね?」
「多分そう!部分的にそう!オレもやったことないからわかんないけど!良いなー、オレも女子とパーティーゲームやってみたい!」
「……どもるのに?」
「青春を取り戻したいんですぅ!女子ときゃっきゃうふふなんて経験ないんですよ⁉︎パイセンとてっさんはありそうだけど!」
「いや、僕も別に……?」
「自分もそんな経験はないが?」
「絶対嘘だー!パイセンなんてたくさんの女の人とコラボしてるんだからそういうことあったでしょ!」
言いがかりをつけられている気がする。女子とは緊張しちゃうのか、楽しく遊びたいのかどっちなんだ。
そりゃあ真紀さんと陽菜ちゃんとコラボの時は緩い雰囲気にもなってるだろうけど、きゃっきゃうふふではないだろう。多分。
ゲームを進めていくと、コウモリの大群が襲ってきた。攻撃手段なんてあっただろうか。
「フックショット、ダメージ入りません!」
「蹴る、殴るなんてチュートリアルになかったよな?」
「ど、どうすれば⁉︎わ、わぁ!HPめちゃくちゃ減ってる⁉︎」
「ドグマー!」
「逃げてから考えます?倒せそうにないですし」
ドグマさんがダメージを喰らいつつ。こちらに攻撃手段がないっぽいので奥に進む形で逃げる。前に宗方先輩とチェリー先輩とやった謎解きゲームは攻撃手段あったもんなあ。
奥に行くと袋小路に。一本道だったから迷子ということもないだろう。つまりここにお宝があるはずなんだけど、その前にコウモリが邪魔だ。
なんか、入り口も鉄網柵で塞がれたし。
「ここでコウモリを撃退しろってことですかね?武器落ちてないかな」
「ちょっとこっち側探してみる」
「なんでパイセンとてっさん、そんなに冷静なの⁉︎」
「ゲームオーバーになりたくないので攻略法を探すのは当たり前では?」
「別にグロテスクでも何でもないだろう。こういうゲームは基本攻略するための正攻法がある。それがこの部屋になかったとしたら道中で見逃していたということだから、最初からやり直すしかないな」
「コウモリに襲われてるのに、この人たちおかしい!うわっ、まじで死ぬ〜!」
『リリも一鉄も、『SoF』やってたらこんなコウモリなんて怖くないだろ』
『女子とわーきゃー言いながらやるゲームで、ドグマが女子枠になってるじゃん』
『ドグマ。女子はこういう頼りになる男性とこういうゲームをやりたいんやで』
『ウチの女性陣だったら割と普通に攻略しようとするイメージがあるけどな』
結局その部屋に銀でできたブーメランがあったので、それを投げることで倒せた。投げて、拾って、投げてということを繰り返すしかないのはこれがアクションゲームじゃなくてあくまで謎解きゲームだからだろう。
コウモリを全滅させて、最後に壁画を正しく完成させる謎解きの後、宝箱が出現。緑色の球で、売れば大金持ちになれるもののようだ。
これで帰っても十分利益が出るという話だが、主人公たちは他にもお宝があるはずと他のダンジョンにも向かうことにしたようだ。
「これで1面クリアですね。謎解きはそこまで難しくなかったのが救いかな?でー、パイセンとてっさん。次のステージやる?」
「多分次で終わりじゃないですよね?これって途中でセーブとかは?」
「ホストのオレだけできて、ゲストの2人はまたホストに呼ばれないと続きからはできないっぽいです。シェアゲームができるのは利点ですけど、まあ本格的にやりたいなら買ってねってことですね」
「次のステージまでやれば良いんじゃないか?それで続きが気になるのならまた集まればいい。それこそゲストの追加もできるんだろう?女性の先輩を呼んでも良いんじゃないか?」
「えー、途中からやってくれる懐が広い人います?」
というわけで続きをやっていく。お安いオンラインゲームだし、誰か1人でも購入していればゲストとしてプレイできるだけ安上がりなんだけど。
次のギミックは水のギミックが多かった。道を塞いでいたり、潜ったり。ただそこまで難しくなかったのでメインは雑談になる。
「リリ君、今度『ウィザーズ&モンスターズ』で戦わないか?アプリの方で頼むよ」
「良いですよ。紙はやってないんですか?」
「紙は学生時代以降は買ってなくてね……。アプリ復帰勢なんだ」
「オレもやってるよ!エクリプスで大会やってたの良いなーって思いながら見てたもん!」
「協賛とかなくても同じようなことはできるんだから、自主大会を開いたら?多分参加してくれる人も多いと思うけど」
「その案いただきっ!」
カードゲームは男性ならではというか。息の長いコンテンツだし、供給も多いので割とプレイヤー人口は多いんじゃないだろうか。
ドグマさんが今言ったような大会を開くなら参加しよう。アプリの方は最近あまりやってないなぁ。あっちもログインして今どんな環境なのか見ておこう。
アプリと紙で『ウィザーズ&モンスターズ』は環境が違う。紙の方が新規は優先で、アプリの方だと半年から10ヶ月ほど実装に遅れが出ている。
あと紙だと現物を買わないといけないが、アプリだと高額カードも固定のポイントで作成できることと、基本一発勝負であることもあって環境が若干違う。紙だとBO3という2回勝つマッチ戦であり、1戦ごとにサイドデッキと呼ばれるデッキの中身を変更できるルールがあるが、アプリはその機能がない。
そのため、とにかく1回勝つためのデッキと、2回勝つためのデッキでは構築が変わってくる。流行っている環境デッキのためのメタカードとかも用意できるし、環境がそれこそ違うために新規の強いカードが来ていないために冷遇されたままのデッキもアプリにはある。
アプリは今何のデッキが主流なんだろうか。唄上先輩がアプリで新弾が実装されるたびに開封配信をしているのは知っているけど、中身は見てない。
「ドグマさんはアプリを最近もやっているんですか?今って何が強いんです?」
「今は『アトラス』デッキがTia1です。お手軽に攻撃力4000が出てきて破壊耐性もあるので中々突破できないんですよ」
「『アトラス』?確か3月箱のテーマだから、まあそんなところかな」
「紙だとどうなんだい?」
「『ノアの方舟』がまた上位独占ですね。新規テーマも面白くてTia2くらいには入り込んでいるので、健闘している感じです。『ノアの方舟』は儀式新規が来たので、それを主軸にするかでデッキレシピがかなり増えているみたいです」
「アプリでたまに戦うけど、あれどうやって倒すの?攻撃力5000とか出てくるんだけど」
「攻撃力をそれ以上に上げるか、『ルトゥナ・ノア』まで着地する前に止めるしかないですね。僕もあのデッキと戦ってボコボコにされることありますから」
強いんだよな、『ノアの方舟』。真紀さんと紙で戦ったけど、新規カードがどれも強力で勝つのは大変だった。そんな真紀さんでも唄上先輩には負けたらしい。あの人、どれだけ強いんだ。
雑談をしていると、今度のダンジョンでもボスっぽい炎を纏った巨人が出てきた。それはギミックで大量の水を濁流の如くぶつけることで消滅させた。水のダンジョンに水が弱点のボスを配置させるってどうなんだ。
というわけで2つ目のダンジョンもクリア。これでセーブをして、一旦ゲームは終了となった。2時間ほどやっているし、続きをやるとしたらまた今度だ。
「リリパイセン、今度女性の方とコラボする時はお力添えを!リリパイセンの素敵なボイスで落としてくださいよ!」
「他力本願……。というか、先輩にしろ後輩にしろ、僕の声なんて聞き慣れてるからどうにもできないと思いますよ?」
「いいや、リリパイセンならできる!サシコラボの仲介してくださいよ〜」
「仲介はできなくもないけど、別に普通に誘えば内容がよっぽど酷くなければ誰でもコラボしてくれると思うけどなぁ」
「誘うの気恥ずかしいんですよ‼︎」
「そんな情けないことを大声で叫ぶな。同期として恥ずかしい」
何故か次の女性とのコラボへの仲介をすることとなり、相手の相談を受けることになった。一鉄さんはもちろん、コメントも困惑している。
無難に直上の先輩である『日本幻想組』のチェリーさんか但馬さん、もしくは2人とコラボしたら良いんじゃないかという話で進める。一鉄さんはコラボをするなら自分で誘うので自分の分は良いということ。
それでやりたいゲームは国民的に有名なレーシングゲームだった。
「いや、やりませんかって普通に誘えば良いだけだと思う」
「いきなりパーティーゲームに誘う後輩男子ってキモくないですか⁉︎」
「自覚があって何より。人数比も合ってないのは不審がられるだろうな」
「じゃあてっさんかリリパイセンも一緒に!」
「自分は個々人とコラボをする予定だから無理にお前の企画に合わせなくても顔合わせはする予定だ」
「僕もレーシングゲームは苦手なので……。参加しても良いですけど、結局サシコラボになってないんじゃ……?」
話が二転三転しすぎている。1:2でサシコラボとは言わないだろう。むしろ女性の方が多いからドグマさんは緊張しすぎて話せないんじゃないだろうか。そこに俺が入っても大差ないんじゃないかと思ってしまう。
「無理にコラボとかしなくても良いんじゃないか?どうせいつかは大きな箱内の大会だったり企画だったりでコラボをするだろう。無理に企画をしても破綻するだけだ」
「事務所でたまたま会ったとか、そういうきっかけなことも多いですよ?それこそ僕だってサシコラボをしたことない人ってたくさんいますから。企画とか諸々でいつかは全員会うことになるんですから、焦らなくて良いのでは?」
「コラボ解禁されたので、ならやりたいと思いません?焦ってるのかなぁ」
「コラボが全部良いとも限りませんし。僕だって異性の方とちゃんとサシコラボしたことがあるのって同期を除いたらドロッセル先輩とハピハピ先輩だけのはず。ほとんどが男性だから、なるようにしかならないですよ」
こう振り返ると、サシコラボは本当にやっていない。歌枠などでコラボをしている先輩たちはいるものの、俺は歌枠なんてやったことないし。複数人コラボが基本で、サシコラボを異性とやっている人の方が少ないんじゃないだろうか。
リスナーも若干気にするから、あまり2人だけのコラボとかはないはずだ。同期は割と別扱い。
一鉄さんはぼちぼちとやっていくようなのであまり心配していなかった。年齢だけならエクリプスで一番歳上だし。ドグマさんは一番の後輩ということで慌てているんだろう。
慌てたって良いことはないし、良いことも悪いこともいきなりやってくる。そういうのに巻き込まれても大丈夫なようにまずは自分の配信を繰り返してリスナーを固定化することが大事だと伝えた。
身内のようになったリスナーは多少燃えても助けてくれる。執着されすぎるのもどうかと思うけど、辛い時には短いコメントでも心が軽くなったりするものだ。
「まずは男性だけのコラボとか定期的にあるものに参加しつつ、この人とこのコラボをしたいって定めたりとか、好きなことを共有したいと思ってマネージャーさんに企画を上げると良いと思います。とりあえずで行くと痛い目を見るので」
「やっぱりそうかぁ。もうちょっと考えてみます」
「リリ君がコラボが少ない理由は?やっぱり純粋に忙しい?」
「僕の場合は優先順位の問題ですね。エクリプス運営の企画や案件、同期とのコラボ、作曲が上位に来て、その間に行けそうな企画とか興味のあるものに参加するかを考えて、そこから自分の配信って感じに順番を付けているだけなんですよ。それにコラボじゃなくても普通に裏で遊びに行ったりご飯食べに行ったりもしていますからね。何が何でも配信しなくちゃいけないなんてルールもありませんから」
コラボなんて配信形態の1つでしかない。パーティーゲームとか誘われたら行くし、予定が決まっていなければ定期的なコラボも積極的に参加する。
この辺りは自分のスタイル次第な気がする。コラボをしたからってチャンネル登録者数が爆発的に増えるとかでもないし。
「僕たちは男性なのでスターティンクルの方とは難しいかもしれませんけど、レインボードロップスや他の事務所の方とコラボをするっていう外部コラボとかもあるので。何でもかんでも内部で完結させる必要もないというか。ただ外部コラボなら事務所同士で結構ちゃんと取り決めとか決めてするから内部コラボよりも大変だとは思うけど」
「そうなんですか?」
「ちょっと前にレインボードロップスの仔鹿さんとコラボをしたんだけど、オフコラボだったし、どこでやるとか立ち入り禁止エリアとか、お互いの事務所で譲れないルールとかの話し合いが大変だったって僕のマネージャーが言ってた。まあ、内部でもNGなことがある先輩とかもいるから、コラボはそんな簡単じゃないよ。スケジュールを合わせるだけで結構大変だし」
「その割にはパイセン、二つ返事じゃありませんでした……?」
「後輩の初コラボは全員二つ返事だよ。日本妖怪組とFORでコラボするって時も即答だったから。そこは慣習でそうなってるだけ。今回はFORと料理道でコラボとかも考えてたんだけど、水瀬さんが今週と来週は3Dお披露目のレッスンで忙しいから……」
陽菜ちゃんが学生のため、平日にあまりレッスンができないので平日の夜とか土日に練習をするしかなかった。土日はできたら真紀さんも一緒のパートの練習をしたいので、個人パートの練習はこうして平日にするしかなかったりする。
俺とか真紀さんは平日の日中に練習ができるので、学生の陽菜ちゃんは今回の新人コラボには予定が合わなかったわけだ。女性2人の日本妖怪組と初コラボよりは、1回同性の俺を挟んだ方が良いという運営判断で今回のコラボになったわけだ。
「となるとリリ君も忙しかったんじゃないかい?今週お披露目があるだろう?」
「まあ、今週は忙しいですけど今日は空いていたので。毎日練習したりするわけでもないですし、スタッフさんにも休みは必要ですから。ドグマさんは女性とそんなに話せなかったのは、日常生活大変だったのでは……?」
「結構、苦労しましたよ……」
「そうしたら女性のライバーを誘えるように社会復帰ができるように手助けしましょうか」
『ドグマが女性と遊びたいのに誘えない話は雑談で散々してたし』
『そういうところも可愛いよね』
ドグマさんの社会復帰を手伝うことになった。デートに誘うわけでもないのにコラボとか会話で困っていたら大変だろう。
あと、俺のお披露目の準備はほぼ完璧だ。リハも終わっているのでどちらかというと真紀さんと陽菜ちゃんのお披露目の手伝いの方で忙しい。俺はソロ配信だし、先輩方に協力をしてもらうがその辺りの練習も終わっているのでやることはなかったりする。
今週は健康に過ごしつつ、真紀さんたちのお披露目の手伝いがあるだけだ。
コラボについてはマネージャーともう少し詰めてみるということで配信は終わり。コラボとか運営の方針とかためになったというコメントも見られた配信だった。
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昨日の配信はなんというか、微妙だった。せっかくリリパイセンを呼んだのに、ゲーム内容も微妙だったし、俺が女性を誘うことについてどっちつかずな言葉を繰り返していたためにマネージャーに呼び出しを受けて、今日事務所に何人か女性ライバーが来るので直接挨拶をしましょうと言われた。
マネージャーも一緒に挨拶をすることで不審者には思われないだろうとのこと。
そんな打ち合わせが終わってちょうどよく女性が2人事務所に入ってきた。スタッフさんと挨拶をしていて、マネージャーも挨拶に行くよと言っているのでライバーなのだろう。
片方は背の高い、長い袖と長いスカートで肌を徹底的に隠したような人だ。ドレススカートとか言う服だったか。黒いドレスを着ているようなもので大人の女性に見える。
もう1人は背が低くて、膝丈のベージュ色のスカートに上着はカーディガンを着ているという秋らしい格好だ。誰だか見当はつかなかったけど、挨拶をするしかない。
2人はとても仲が良いのか、ずっと笑っている。こんなに仲の良い感じだと同期だろうか。
「お2人とも、練習の後にすみません。ちょっとウチの子を挨拶をさせたくて。ほら、ドグマ君」
「あ、あ、あの。初めまして。4期生としてデビューしました、ドグマ・樹林です……。女性と話すのが苦手で、こんな自分を変えたくて……。ご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、これからよろしくお願いします……」
そう話すと、ああ、と納得してくれたようだ。もしかしたらマネージャーが今日来る方に事前に話を通してくれていたのかもしれない。
背の低い方から挨拶を返してくれた。
「こうして会うのは初めてですね。3期前半組の霜月エリサです。コラボとかも内容次第では全然受けますよ。今月は大体予定が入ってしまっているので、来月以降で応相談です」
「あ、はい。その時はよろしくお願いします」
霜月さんだったのか。となると隣の人は水瀬さん……?高校生って聞いてたけど、だいぶ大人びた人だな。
いや、待てよ?今日は平日だ。ということは水瀬さんは学校のはず。じゃあこの隣の人は一体……。
全然挨拶してくれないし。さっきまで霜月さんとは笑顔で話していたのに今は真顔だ。綺麗な顔の人に真顔で見つめられるのはちょっと怖い。
こっちから挨拶しないとダメか?
しばらく沈黙の時間が流れると、霜月さんが吹き出した。
「プッ、あはは!もー、ダメだよ。誤魔化す意味もないんだから普通に挨拶したら?」
「……昨日ぶりです。ドグマさん」
「え、は、ええっ⁉︎その声、リリパイセン……⁉︎マネ、どういうこと⁉︎リリパイセンって実は女の人だったの⁉︎」
「いやいや、リリくんはちゃんと男の人だよ?この前の身バレ騒動で、事務所に近付く時は女装してるの」
「まあ、そういうこと。しばらくはこうやって事務所で会う時には女装してるけど気にしないでほしい」
「は、はぁ。そういえばそんなことありましたね」
そうだ。リリパイセンだろうっていう写真がコラボカフェで盗撮されたとかで身バレ防止の注意喚起が来ていたのを思い出した。
その対策が女装か。古典的というか、でもこんな普通に女性としての美人だったら正攻法になるんだろうな。
この人を外で見てもリリパイセンだとは思わないだろう。この人女装もできるのか……。
「俺じゃ練習にならないので、普通に他の人を誘ってくださいね」
「そりゃあそうですよ。パイセンはパイセンですから。いやでも、これはこれで心臓に悪いですよ……」
見た目だったらマジで好みど真ん中だった。罪な男だぜ、パイセンは。