【GTA】6日目。この日には4日目が丸一日サーバーが使えなかったために11日目の延長が発表された。元々が10日間だったために最終日に参加できる人は全員ではないものの、概ね喜ばれていた。俺は元々お休みをいただこうと思っていたので、休みを次にズラせば大丈夫だ。エクリプスの面々は大体そうしたらしい。
流石に10日も連続で配信をしていたらね。次の日は休みにしたくなるのが一般的な感覚だ。
6日目はそこまで中型犯罪が起きなかったのか、平穏そうだったので色々とやれることに手を出してみる。小回りが効くバイクの購入に、せっかくだからとカジノに来たらだいぶ人がいた。お金が余っている人とか、借金している人が一攫千金を狙ったのか、ポーカーだったりブラックジャックだったりで遊んでいた。
こういう遊興施設も再現しているのは凄いな。しかもちゃんと賭け事として遊べるし。
俺もちょっとだけブラックジャックをして楽しんだ。収支では負けだったので、カジノは当分良いだろう。あの場にいた方々が遊び方を親切に教えてくれたおかげで助かった。
そう思っていたら、ジョン先輩に呼び出しを受ける。どうせホスト関連でしょと思って行ってみたらその通り。
オリパガチャのシークレット枠でボイスをくれと言われた。
「頼むよ〜。数足りないんだって」
「コウスケ先輩にやらせれば良いじゃないですか」
「あの人、仔鹿さんにホストのイロハを叩き込まれたら向いてないって言って辞めちゃったぜ」
「あっ。……押し付けた僕の責任って言いたいんですね?」
「Exactly(正解)!」
「台本あります?あるならチャチャっと撮って来ますけど」
「1個はあるけど、他のはお任せするわ。3個は欲しい。500万払って、その後に更に売れた分上乗せでお給料弾むぜ?リリ、悪いことしたいからお金欲しいんだろ?」
「ん……?」
「訓練場から出てくるリリ見ちゃったぜ。救急隊なら銃の練習なんて要らないよなぁ?」
ゲェ、見られてた。救急隊はシロ市民しかなれないし、武器を持てない制約だ。そんな俺が訓練場にいるのは、何かやましいことがあるということ。運営さんに知られているのは良いとしても、ジョン先輩にも知られているとは。
運営さんと院長であるナナホシさんには許可をもらっているので、そこまでやましいことではないけど、弱みとは言えるだろう。
「口止め料でいくら払えば良いですか?」
「んじゃ今回のボイスのお給料を200万にしとくわ。そんで今までのボイスの売り上げと一緒に納品後にお金を振り込んでおくぜ。これで折半だろ」
「助かります。台本は?」
「今個人チャットで送った。面白く頼むぜ!」
収録するところを見られたくないので、ボイスの撮り方だけ教わってジョン先輩から離れてボイス収録をする。ただの目覚ましボイスだったのでそこは問題ない。
台本の奴を撮り終わったので、リスナーの力を借りる。
「『お客様』の皆さん、助けてください。僕に文章力なんてありません。台本の内容を募集します、スパチャは無しで、短いシチュエーションか、言葉を入れてもらえれば」
『任せろー!』
『金入れた人が採用されるのはおかしいからな』
『目覚ましボイスはまあ良いとして、そもそも着信ボイスのはずなんだから、普通に電話が来たよってメッセージじゃいかんのか?』
『逆に普通はありよりはべりいまそかり』
「なぜ唐突に古典?」
『自動入力が悪さした!忘れてリリちゃん!』
『ありが自動変換でそうなるとか、普段どういう文章書いてるんだ……?』
ワードファイルを出して、コメント欄の要望をチャチャっと纏めていく。その中でいくつかできそうなものをピックアップしていき、ついでにコメント欄でアンケートを実施。
上位2つをボイスとして収録すると伝えたらアンケートを皆が投票してくれた。ゲーム内ボイスということで皆さんのところにお届け、ということにはならないけど、動画編集できる人とかが勝手に切り抜いて編集してボイスだけのショート動画を作ったりするだろう。
技術がある人はそういうことを短時間でやってしまう。実はどこかの企業で働いている動画編集者とかじゃないかと疑うくらい技術が高く、短工期でやってしまうので驚いてばかりだ。
そもそもライブ配信が終わって1時間経たない内に切り抜き動画とか上がってるからな。あれは見ながら編集作業をやっているとは聞くものの、その速さは本当に凄い。
というわけでアンケート終了後に、台本を整えてボイス収録を終わらせてジョン先輩に納品した。出来のチェックでジョン先輩に3つ分のボイスを確認されて、入金のために待っていたら唐突に大声で笑われた。
「イーッヒッヒッヒ!最高の出来だぜ、リリ!これは儲けるぞぉ!目覚ましボイスが恒常販売で、他の2つはオリパに入れるから!あ、今入金するから待ってろ」
「問題ないなら良いですけど……。一応リスナーにも太鼓判はいただいていますが」
「そりゃそうだろ。ほれ、金額確認してくれ」
金額を確認したら800万が入金されていた。
200万プラス切り抜きボイスの売り上げだったはずなのに、なんか随分色がついていないだろうか。
「そんなに売れたんですか?」
「今一大ボイスブームだぞ。売ったボイスでお求めのボイスを買うとかいう狂ったループが発生しているくらいにはどこもボイス販売をやってる。ホストやキャバクラだけじゃなく、飲食店もやり始めたし」
「ゲーム内通貨で買えるなら欲しい人は多いでしょうね……。それこそ菱木さんに名前を呼ばれるとか、随分特別なボイスですし」
「ウチはほぼ固定のボイスしかやってないけど、飲食店はリクエストを聞いてその客好みのカスタムボイスを売ってるらしい。配信者って声が良い人が多いから、人気らしいぞ。救急隊では流行ってない?」
「昨日までは忙しかったので。院長のナナホシさんは興味津々でしたけど」
「あの人、リリの恒常ボイス以外にも色んな人のが欲しかったのか、オリパもやってったぞ。2000万は溶かしてた」
「何やってるんだ……。」
そんなお金、どこから集めたんだ。いや、部門の取りまとめ役だからかお給料のベースが違うのかもしれないと思った。
後から知った真相ではギャンブルで勝って手持ちに1億5000万あったようだ。配信者はすぐギャンブルに手を出すのはいかがなものか。
ジョン先輩のお願いも聞いたので病院に戻って、警察署や僻地へ行きつつも通知が多すぎたわけではないので割とゆっくりめにしながら街を探索していると、一気に死亡通知が6人分くらい届いた。
ヘリコプターでも落下したか?大人数乗ってる乗り物が墜落したり事故を起こすと、一気に通知が来るんだよな。場所は、ここから結構近いな。
「リリです。6674に向かいます。他に近い方いますか?」
「あ、リリ君ストップ!それちょっとややこしい奴みたいだから待機で!他の人も6674近辺には行かないで!」
「え、はい。わかりました……。トラブルですかね?」
『事故じゃないっぽい?』
『となるとバグか?』
『6674って街から離れてるけど、何がある場所だっけ?』
『鉱山じゃなかったか?大型の場所がその辺のはず』
トランシーバーで確認したらナナホシさんに止められてしまった。マップで見てみると、詳しいリスナーが大型犯罪の1つである鉱山での物資強奪犯罪が行える場所らしい。
今回用に新設されたサーバーではあるものの、大型犯罪の実行場所や病院、警察などの主要な施設の場所はデフォルトの位置からあまり変えていないらしい。下見などの時間を減らすためのようだ。だからデフォルトサーバーを知っている人からすれば大体の番地で何の場所か理解できるらしい。
山間の、こんなところに何の用があるんだと思うような場所ではある。下手したらヘリコプターが必要かなと思ったほどだ。
他にも死亡通知が飛ぶが、やはり6674付近。大型犯罪をしている最中なんだろうか。それならただ大型が起こってるってだけで良い気がする。
何かあってもすぐ行けるように準備だけして待機をしていると、トランシーバーからナナホシさんの指示が届く。
「大型が起きてるみたいだから、6670付近にはまだ行かないで。警察から終わったら連絡が来るから、それまで待機。あとなんか、ギャング同士の抗争も起こってるっぽい?だから三つ巴の戦いになってるらしいよ?そんな理由もあって皆さん、稼ぐチャンスです。暇なら6670付近で待機!」
「おっしゃー!向かうぜ!」
「金金!まだ欲しいボイスがたくさんあるんだ!」
「カスタムボイスー!」
「ドラッグ使っててくれ!金を巻き上げてやる!」
トランシーバーから聞こえてくる熱意が凄い。これ、逆に俺は向かわない方が良さそうな気がする。
皆さんそんなにボイスが欲しいのか。流行っているというのは本当だったらしい。シークレットボイスがオリパにあるってバレないと良いなぁ。
そして大きな情報が手に入った時には報告だ。やってることグレーどころかアウトな気がする。真紀さんの連絡先を開いて通話をかける。
『流れるように情報リークしようとするなw』
『リリも立派な『ドラッカー』の一員だよ……』
「もしもし、リリくん?どうかした?」
「ギャング同士の抗争が起きてるって聞いたんですけど、知ってました?」
「あ、知ってる知ってる。今回の抗争に介入しないでくれって両方のギャングから聞いてたから、今裏で麻薬を売り捌こうとしてるところだよ」
「あら、ご存知でしたか。やっぱりドラッグを使うと強くなれるから、ドラッグを売らないでくれって話ですか?」
「そうそう。でも事前に売ったものは多分使うだろうから、連合側がだいぶ不利なんだよね……」
話を聞いてみると、とてつもなく強い15人くらいのギャングがあって、そこがほとんどの中型犯罪を成功させているために他の少人数ギャングがあまり中型犯罪ができずに稼げないらしい。中型犯罪もクールタイムがあるようで、大型や中型など種別が同じものは受注できる時間にクールタイムがあるようだ。
そのせいで銀行強盗やコンビニ襲撃、ATM奪取などのチマチマした犯罪しかできないらしく、失敗したら大赤字。そういう現状に嫌気が差した小ギャングが5つ、連合を組んでトップギャングと大型犯罪で競争という名前の同時受注をしたらしい。
だからお互いに足の引っ張り合いをしつつ、警察が介入して三つ巴になっているようだ。さっきから死亡通知が止まらない。
「ギャングだけでも40人近いからね。警察もそっちにかかりきりになりそうだから、今の内に麻薬の密売をしちゃおうって。今頃密売の通知爆弾が警察に行ってるんじゃないかな?」
「警察の人たちが大型や中型に合わせて通知を送ってくるからってかなり怒ってましたよ?」
「
麻薬取締の人たちが編成されるほどヘイトを買っているのかと驚いた。警察も麻薬売買が中心のギャングがいることを把握しているものの、その存在を現行犯逮捕しないと摘発ができないらしい。麻薬を使っていた人とか、持っていた人を捕まえることはできるものの、大元を捕まえるには麻薬のバイヤーとやり取りしている瞬間か逃走中の人を監視カメラで確認して捕まえないといけないらしい。
ギャングから警察になったポラリス先輩も公平性を保つために『ドラッカー』のメンバーの内訳や売買した場所を明かしていないらしい。律儀だ。
そこからもちょっと雑談をして、また用事があったらかけてもらうように伝える。
大型に気を引かれて他の死亡通知に対応している人が少なかったので、事故で吹っ飛んだ人を治療に行く。自転車に乗っていたら車に轢かれたらしい。ストリーマーの男性でギャングの人だった。
「自転車って小回り効いて良いですか?バイクは持っていますけど、自転車は持っていなくて」
「速さを求めてるなら自転車の方が良いよ。カスタムすれば120km/hとか出るから」
「ええ?何ですか、その違法バイク」
「安いし、視認性が悪いから警察からも逃げやすい。下手に高いバイク買うよりも、自転車のカスタムの方が安いよ。だからメカニックが今カスタムでてんてこ舞いだって」
「そんなに安いんですか?」
「自転車とフルカスタム代合わせても200万で十分。まあ、紙耐久だから車に接触した瞬間に死ぬんだけど、自転車は大体無事なんだよね」
「犯罪のためには欲しいですね、それ」
「銀行強盗の後のカーチェイスでめっちゃ役に立つよ」
そんな気になる情報も貰っていると、大型犯罪が終わったようだ。警察は負けたらしい。ギャング同士で争っていても、先に警察を倒してしまえばギャングの勝ちには変わらない。
ギャングの死体はほとんど回収されてしまったようだ。とはいえ、蘇生に呼ばれるだろうから運が良ければ救急隊も稼げるだろう。現場に行ったらそのまま警察署にも呼ばれるから一気に荒稼ぎできただろうに、儲けられるかは運になってしまったのはご愁傷様だ。
他に見逃している通知はなさそうだと確認が終わったら、ハピハピ先輩から通話がかかってきた。このゲーム内では初めてだ。
「あ、リリ。お疲れ様。今って手が空いてる?」
「空いていますよ。治療ですか?」
「そうそう。6110まで来てくれる?」
「6110……。すみません、どこですか?」
「マップの左下の方。海が近いところなんだけど」
「えーっと……。ああ、ありました。ここなら5分くらいで向かえると思います」
「待ってるねー」
ハピハピ先輩もギャングになったはず。このタイミングだと大型犯罪に関わっていたんだろうか。
向かった先は大富豪が持つプール付きの別荘という感じの家だった。地下ガレージもあってそこに車を入れて、ハピハピ先輩の案内で建物の中を進む。多分ここ、ギャングのアジトだ。
向かった先にはダウンしている人が8人。多いなぁ。
「さっきの大型犯罪に関わっていたんですか?」
「そう、勝ったゼ!ギャング連合も警察も全部返り討ち!今奪ってきた鉱石を換金中」
「ああ、ハピハピ先輩たちが最強ギャングだったんですね」
「『サジタリウスの矢』は最強ってことで!救急隊にも知られてるかぁ!」
「あ、いえ。今回強すぎるギャングに反発した小ギャング連合がいて警察と三つ巴だって話を聞いていただけで。名前までは存じ上げませんでした」
「あれ。まあ名前はいっか」
蘇生をしていくが、麻薬反応はなかった。この人たちしっかり約束を守ってブーストアイテムを使わずに人数差があるのに実力で勝ったようだ。
なにそれかっこいい。
正規の値段で良いということだったので院外蘇生と院外治療でほぼ全員の治療をして荒稼ぎをさせてもらった。換金に出ている人も帰ってきて、換金レートが高かったのか8億手に入ったらしい。13人でやったのでかかった経費などを差っ引いてもめちゃくちゃな大金を手に入れていた。
やっぱりギャングが稼ぐ額がおかしいって。それなら通常通りの請求を切っても屁でもないわけだ。エクリプス割を期待して俺を呼んだのかと思ったのに、違ったらしい。
純粋にアジトの場所をバラさない救急隊が良かっただけのこと。口の堅さが評価されたのは良しとしよう。
治療ついでに初めましての人が多かったので挨拶をしていたら、なんかイソラ先輩がやってきた。クラフト系の人が何でギャングのアジトにいるんだ。
「ハピ。スタングレネードと暗視ゴーグルどうだった?」
「バッチリ!スタングレネードでスタンしたところに銃弾ブッパするの気持ちいいよ!」
「サーモグラフィーゴーグルは?ドラッグ使われたらわからなかった?」
「一応ドラッグ禁止にしてたからわかんないです。でも熱源キャッチはできてたから、奇襲も防げて良かったよ」
「実験終了だね。じゃあ次は警察にもこれを売り込んでくるから、精々警戒してね」
「切り替えとか視界の狭さに慣れるのに時間がかかるでしょ。そのアドバンテージを活かしてこれからも暴れまわるよ」
あー、つまり中立でアイテムを売ってたってことか。警察にも売ってるから商売人としてはある意味真っ当。ドラッグ以外にも便利なアイテムがたくさんあって、それらをレシピを集めて作るのがイソラ先輩のクラフトマスターらしい。
レシピは材料を採取すると思いつくようなので、ゴミ漁りをしたり木を伐採したりと、街を駆けずり回っているようだ。他にも何人かクラフトマスターはいるようで、紳士協定でわかったレシピは共有して色々なアイテムをギャングや警察に売っているようだ。
イソラ先輩はギャングの窓口らしい。
「リリもグレーだね。ギャングのアジトの隠蔽なんて」
「顧客情報は守りますよ」
「えらいね。あんなボイスを売り出してるくせに」
「……まさか買ったんですか?目覚ましボイス?それとも切り抜きボイス?」
「オリパの2つ。3つ買ってぶち抜いた」
「イソラ先輩⁉︎」
何で3つしか買ってないのに俺のやつを2つも当てているんだ!それはなんか、確率がおかしいだろ!
オリパは結構数を用意していたってジョン先輩が言ってたから、早々に当たるとは思わなかったのに!
「リリ、目覚ましボイスなんて売ってるの?買いに行っちゃおうかな〜?どうせジョン先輩のホストクラブでしょ?」
「そうそう。そっちは指定で買えるから、目覚ましボイスだけならジョンに言えば買えるよ」
「でも犯罪中にリリの目覚ましボイスが鳴ったら笑っちゃいそう」
「そこは設定で通知を切っておいてくださいよ!」
確かそんな風に設定ができたはずだ。スマホが使えなくても連絡を取るためのトランシーバーだし。
誰かが俺のボイスを聞きたかったのか、イソラ先輩へ通話をかける。そのせいで俺のボイスが流れてしまった。
「お姉ちゃん、電話だよ?出てくれないと……このまま耳元で囁くからね?早く早く〜。1〜、2〜、3〜。出たかなぁ?これでもまだ出ないってことは、僕と電話がしたいのかな?残念でした〜。今は僕の電話じゃありません!それはまた今度、ナイショでね?〜〜お姉ちゃん、電話だよ?」
「なにそのショタ声!前から思ってたけど、リリって声幅広っ!」
「イソラさん何で切っちゃうの!もっと聴かせてよ!」
「ループは購入者特典。今のはお試しってことで。ちゃんと大金払ってオリパを買うこと」
「そんなにホストクラブを肥えさせたいのか!」
「一応同期の店だし」
「リリこれ誰リクエスト?」
「リスナーです……」
何の罰ゲームだ。いや、ボイスとして発売した以上、どこかしらでこうなったとは思うけど、俺だってバレないくらいには擬態したつもりだったのに。名前を出された上で着信を受けたら意味がないじゃないか。
『サジタリウスの矢』のメンバーもホストに行こうと思っていた女性陣がいたために、ボイスを買うついでに散財しに行くことを宣言。男性陣も消耗品の補充やキャバクラに行くようで、各々解散になったタイミングで俺も帰った。
犯罪で得たお金が飲食店に流れて、経済が回ってそうだけど、ギャングで失敗した人たちはむしろ借金を背負っていて、一部の人たちがお金を持っているだけという状況じゃないだろうか。
ギャングの抗争の後、負けたギャング連合の一部は借金が多すぎるからと警察や飲食店に転向する人が出た。ホストとキャバクラに流れる人もいて、どこかで見た流れだった。
そのどこかで見た流れを前もしていたコウスケ先輩は、ギャングから足を洗って警察になっていた。
これまたどこかで見た流れだ。
「ポラリス先輩の後追いですか?」
「しゃーないだろ!ハピさんのチーム強すぎんだから!マジで借金地獄でこのままじゃゲームが楽しめねえ!」
「ホストをやればすぐに返済できそうなのに……」
「いーや、俺はホストに向いてないね。だから勇者らしくこの街の平和を守ることにした。警察になれば2000万までの借金はチャラにしてくれるからな!」
「コウスケさん、それ給料からの天引きですよ。今日は借金によるデメリットが帳消しになっただけで、かなり捕まえないとあまり給料いただけなくて餓死したりしますからね?」
「……ナナホシさん、教えてくれてありがとうございます。リリ、点滴ツケで!明日纏まった金入ったら絶対払う!ちょっくらパトロール行って捕まえてくるわ!」
ナナホシさんのアドバイスで、あまり借金事情では解決していなかったようなので職務に戻っていった。メモ帳にコウスケ先輩の請求書の金額だけ書いておいて、明日もらうことも明記しておく。
院内だったし、5万なんだけど、そのお金も払えないのか。それとも飲食物を買ったらお金が残らないからだろうか。
本当に素寒貧みたいだし、しょうがないか。
それから1時間後、中型犯罪があったようで警察署に治療に行ったらポラリス先輩に牽引されているコウスケ先輩がいた。
死んでしまうとは情けない。
「リリ〜。これもツケてくれ……。マジで明日払うから……」
「良いですよ。悪い人は捕まえられましたか?」
「3人くらい倒したから、頑張った方じゃね?な、ポラさん」
「今回は警察の勝ちだし、実力を見たら十分即戦力なんで。給料もすぐ貰えますよ」
「励ましでも後輩のエールは暖かいぜ……」
今回の騒動もあって、ようやく警察とギャングの人数が同数くらいになったこともあって、犯罪の検挙率がだいぶ上がったらしい。コウスケ先輩と何回か遭遇した時には頑張ってる報告を逐一貰っていた。何の報告だ。
そろそろサーバーも閉じるといった頃、また警察署に来ていた。捕まえた犯人の蘇生で来たら、珍しいことに真紀さんと但馬さんがいた。『ドラッカー』でも2人だけか。
「霜月さんと但馬さんが捕まってるのは初めて見たかも。何をやったんですか?」
「飛行機墜落のミニゲームのやり方を覚えようとしたら、ハッキング施設に近付いただけでロケラン撃ってきたんだよ?酷くない?」
「ロケットランチャーなんてあるんですか?もしかして直撃したら即死?」
「そう!爆発の余波浴びたら骨折して逃げられなかったんです!リリ先輩、これは抗議して良いと思います!それか治療費マケて!」
「いやあ、こっちも悪かったけど、犯罪しようとしてたのは荷物の中身的に事実だから……」
「犯罪者なのは事実でしょ」
「事実ですけれども!」
警察に文句を言いつつも、罰金と監獄での反省は変わらないらしい。犯罪をするとアイテムは基本的に没収になるので銃とかを没収されたらしい。会話の流れ的にドラッグを持ち歩いていなかったのが功を奏したようだ。
薬物の密売元だと知られたら袋叩きにされるかもしれないし。
2人を治療した後に、監獄送り。その後刑期の時間が終わってドロッセル先輩の迎えでどうにかサーバーが閉じる前にアジトへ帰れたようだ。