【配信者祭GTA7】も最終日を迎えて11日目。本来であれば昨日終わっているはずだったが、サーバーメンテナンスが入ってしまい1日延長。だが他にも仕事がある人たちも多かったために、エンディングセレモニーは昨日行われた。
運営さんがところどころ撮影していた映像やスクショをムービーにして映画館で流したり、同性同士の、というか仔鹿さんの結婚式にお呼ばれしたり、マジの総力戦のパシフィック襲撃を第3者として見守っていたりと、ずいぶんイベントが多かった10日目だった。
昨日のパシフィックはハピハピ先輩たち『サジタリウスの矢』を含むギャングのほぼ全ての人たちが参加して、見事金品を奪ったらしい。人数も拮抗していたらしく、死傷者が多くてかなり稼がせてもらった。ハピハピ先輩もFPSで慣れた銃撃を見せつけて警察を5人以上倒すというエース級の活躍をしたらしい。
そんなこんなの激動の日が終わって、最終日。今日はログインしている人が昨日と比べて減っているので、騒ぎは少なくゆっくりとした時間が流れていた。俺も暇だったので釣りをしてみたり、斧投げを遊んでみたりとやれそうなことを探して遊んでいた。
そして10時前。病院に戻ってきてナナホシさんに事前に言っていた通り、救急隊を辞めることを伝える。
「ナナホシさん、11日間お世話になりました。救急隊、辞職します」
「はい、お疲れ様。まあ今日はボーナスゲームみたいなものだからね。むしろ今日にズレて良かったよ。昨日だったら大変だっただろうし」
「ですね。最後にトランシーバーで皆さんにご挨拶をして、無職になります」
ボーナスゲームは言い得て妙だ。とはいえ救急隊でもまだ20人くらいはログインしている。配信者は割とスケジュールに調整が効くというか、それこそ大会やイベントなどを予定しない限り大丈夫だった。10日もログインしているゲームの次の日に仕事を入れる人は稀で、そもそも今日別のお仕事がある人は昨日来れていなかったり、このゲームに参加していないだろう。
トランシーバーのボタンを押して、最後の挨拶をする。
「皆さん、お疲れ様ですリリです。現時刻を持って救急隊を辞めることになりました。クソお世話になりました‼︎」
「お疲れー、おやすみー」
「え、あ?辞めるの?中途半端な時間だね?」
「リリ君もありがとー!チュートリアルやってくれてありがとね!」
「最終日くらい好きに過ごしたいよな!またな、リリ!」
最後の挨拶も終えて、借りていたトランシーバーやキュアセットなどを病院のロッカーに返す。最後にナナホシさんが機械を操作して救急隊から外される。これで救急隊からの給料が支払われることもなく、治療もできない。ただのニートに変貌した。
そのまま車で自宅に戻る。自宅のロッカーから必要なものをいくつも取り出していく。
ハンドガンにマシンガン、それにスナイパーライフル。銃弾各種。
それにドラッグ各種だ。
手持ちの荷物の積載量を確認して、余裕があったので一般人でも使える応急手当てのアイテムも持てるだけ持っていき、一度家の外へ。そしてカスタムしまくった高級車のトランクへ銃弾やスナイパーライフルなどをしまっていく。ガレージに車を戻してまた家に戻って、アイテムを入れていくという作業をやっていく。
『リリこれ何してるの?』
『救急隊辞めたんか?』
「あ、昨日の配信見てない方とかが来てくださってますね。説明しましょう。僕は今救急隊を辞めて半グレになっています。これから最後のパシフィック襲撃に相乗りする形ですね」
『パシフィック⁉︎おま、参加するの⁉︎』
『昨日ドロッセルと相談してた奴だな』
『これまで訓練場に行ったり、ブラックマーケットに行ってたのはこの布石だったのだ!』
『訓練場だけなら実物買う必要ないもんな。そういうことか』
ナナホシさんには最終日には半グレになることは伝えておいたし、運営さんにも最終日かつ半グレならと許可をもらっていた。で、最後の大型犯罪だけ噛ましてくれるようなギャングは『ドラッカー』しかなく、リーダーのドロッセル先輩に相談していたわけだ。
お金をコツコツ貯めたり、救急隊では過剰なスペックの車を買ったりしていたのは趣味ではなく、最終日の犯罪支援のためだ。
荷物を積み終えたので服装も変える。全身のインナーを黒にして、プロテクターだけ紫色に。顔も全部隠れるような、犯人がしているような目元だけ開いている黒マスクをつけて完全に不審者の装いとなっていた。
プロテクターの色だけ紫なのは、『ドラッカー』所属というか協力者のギャング・半グレだと警察にわかるようにするため。名前は犯罪中は非表示にすることもあって警察が自分たちと見分けのつくようにとそういうルールがある。
警察は全身黒で差し色が白がデフォ。若干改造している人もいるみたいだが、ほぼほぼ見分けは付く。
『おまっ、どこからどう見ても犯人じゃんwww』
『国民的探偵アニメに出てくる犯人君』
『紫がそれっぽくないけど、つけなくちゃいけないんだろ?』
『へえー。『ドラッカー』に一時的に参加するんだ』
『今日ってギャングも警察も少なくね?パシフィックマジ?』
準備ができたので合流場所に。まだ犯罪をするわけではないので名前も変えて『Vanity Moon』としておいた。エクリプス所属としては中々悪くないんじゃないだろうか。
車で『ドラッカー』のアジトに行く。そのままガレージへ。見たことのない黒塗りの高級車だったためか、入り口にいた但馬さんに止められた。
「え、ん?ヴァニ……?どなたですか?」
「コードネーム、ヴァニティ・ムーン。今回の協力者だ。よろしく頼む」
「ブッ!ちょ、リリ先輩⁉︎何やってるんですか!その服装、え?救急隊辞めちゃったの?」
「まあ、わかるかー。というわけでよろしくね、但馬さん。ドロッセル先輩から許諾は得てるよ」
「ええ……?あ、じゃあ入って大丈夫です」
許可も貰ったのでガレージの中に。その中へ車を入れて、但馬さんに案内してもらい、ドロッセル先輩の元へ。『ドラッカー』は今日欠員もなくフルメンバーらしい。
何人かは最終調整をしているのかいなかったが、真紀さんを始め8人ほどいらっしゃった。
「あら、コウスケさんいらっしゃい。今日の名前は『Vanity Moon』なんですね」
「まだコウスケ先輩のフリしないとダメです?」
「え、あ、リリくん⁉︎え、ギャングになるの⁉︎」
「最終日のお遊びですよ、霜月さん」
「エリサさんにも伝えてなかったんですか?」
「サプライズ大成功〜」
「え、あ、うーん?まあ、人数足りてなかったから助かるけど……。同期なのに秘密にされたー!」
「同期だからこそですよ」
驚かせられたのなら満足だ。『ドラッカー』の皆さんは顔馴染みとはいえ、改めて自己紹介をする。
犯罪用のミニゲームなどは一切やってこなかったので、俺の役目はパシフィック銀行近くのビルの屋上に陣取って空と地上からの射撃支援。そして金持ちの人が離脱する時に車を出して逃げる役目だ。
犯罪者として活動してこなかったから、やれることはシンプル。だが戦力の少ない『ドラッカー』からすればスナイパーの役目がいるのはありがたいらしい。
あとは他のギャングも若干数参加してくれるらしい。それで合計20人くらいにはなりそうということ。20人はパシフィックでは心許ない人数らしいが、今日の警察は30人くらいなのでギリギリいけるかも、という感じらしい。
トランシーバーを専用のチャンネルに合わせる。それで通信確認などの準備を済ませて現場に向かった。
俺が陣取る場所は、1人だけの配置だ。中や銀行の屋上に優先して配備するとなると、周りの建物の屋上は1人くらいしか配置できない。結局半グレも合わせて22人。警察の方が人数が多く、しかも向こうは既に2回もパシフィックを経験している。一方『ドラッカー』のメンバーは麻薬販売ばかりでまともに犯罪もやっていない面々。
ミニゲームだけはかなり練習して、暇さえあれば訓練場で武器の練習をしただけの、ぶっちゃけた話、素人集団だ。ハピハピ先輩みたいに他のゲームでのプレイスキルが活かされるような凄腕ゲーマーも少ない。
まあ、結局はやりようだろう。
空ではヘリコプターが2機。燃料の問題でまだ待機しているが、空から屋上に辿り着いて制圧を狙ってくるので、それを防ぐためにもヘリコプターは必須だ。そして俺の役目も基本はヘリコプターの相手。あとは地上から入ろうとする警官の妨害だ。連絡は密にするように言われている。
「いやあ、お祭りって感じでワクワクしますね」
『馬鹿騒ぎって楽しいよな』
『リリが救急隊って言い出した時は血が足りねえと思ってたけど、最高のカーニバルじゃねえか!』
『リリのリスナーってそんなバーサーカー思考のやついたっけ?』
『FPSなりRPGなり、難しいやつやってるとたまにいる』
『チェリー・心:今日の同期てぇてぇ会場はここと聞きましたわ〜』
『チェリーは同期の枠行けよ……』
『あ、『ドラッカー』の人数が少ないから参戦するって決めたってこと⁉︎』
『いやそもそも、『ドラッカー』が最後に大型犯罪するって知ってなかったらその論成立しなくね?』
何でチェリーさんがこっちに来ているんだ。いや、誰の配信を見るのも自由だけど。ちなみに救急隊になった時点でドロッセル先輩に最終日に一緒に悪さしようとは誘われていた。なのでこの参戦は当初の予定通りではある。
そろそろ仕掛けるとドロッセル先輩から連絡があったので、チェリーさんにはゆっくりしていってねとだけ伝えて空の警戒をする。
ドロッセル先輩の掛け声でギミック班という名の金持ちの人たちがさまざまなトラップに挑戦し始める。それと同時に警察が警察署から出発するルールだ。通知があった時点で必要な装備を用意して、こちらへ向かってくる。遮蔽物がないのでヘリコプターが一番速いはずだ。
警察署以外から迂回して向かってくる可能性を考えて、こまめに見る方向を変える。そして警察署からズレた方向からやってきた白黒のヘリコプターへ、スナイパーライフルで射撃を始める。ヘリコプターは車ほど速度が出ない上に人をたくさん乗せられるから大きい。射撃の的としては狙いやすい方だ。
何発か当てるものの、煙も出さない。流石に頑丈か。
こちらを狙ってきたので立ち上がって回避。直接タックルで狙ってきたということは、屋上への輸送ヘリではなく空中戦用のヘリだ。飛ぶためのブレードに当たったら即死するので、それには当たらないように非常階段に逃げて手榴弾を投げ込む。爆発している間にちゃんと買ったドラッグを飲む。
効果はアーマーの付与。少しのダメージなら問題なく弾くために、相手が降りてきても大丈夫だ。デメリットも空腹が速くなる程度。ドカ食いすれば問題ない。
ヘリコプターの相手は降りてこようとしてそのまま俺が投げた手榴弾で爆散したらしい。ラッキー。鍵とか奪えないだろうかと確認しにいったら、死んでいたのはコウスケ先輩だった。
「え、降りてこようとしたんですか?それは悪手でしょう」
「リリにやられたのかよ⁉︎そっちの方が人数が少ないから、確実に外から数を減らしていく方針だったのに!」
「鍵ゲット。それで?遠隔操作するにはこのミニゲームをやって……?なんだ、ただの掛け算か」
「遠隔操作って、それイソラの奴⁉︎その非道なアイテムを捨てろ、リリぃぃぃ!お前まで地獄に落ちるな!」
「落ちるのはヘリコプターですね」
簡単な掛け算を3問解くだけでヘリコプターを遠隔操作できるようになった。このアイテムはイソラ先輩が作って割と警察を阿鼻叫喚させたアイテムではある。
イソラ先輩が自重したのかお値段は5000万したのだけど、それくらいボイスの売り上げでどうとでもなった。『ドラッカー』でも3つ買っていて、ヘリコプターでも車でも好きにハックできて質量爆弾にすることができる。
運転方法は普通の操作と同じ。なので浮かべて、空を飛んでいる白黒のヘリコプターにぶつけるだけ。相手は味方だと思っているので簡単にアタックができるという、極悪設計だ。隣でコウスケ先輩が鬼だの悪魔だの騒いでいるけど聞こえない聞こえない。
2回アタックしたら流石に遠隔操作だと分かったのか、乗組員がロケランを使って爆破された。ロケランを使わせたという意味では良い結果だろう。ロケランは陣営ごとに1発だけという制限があり、戦車やジェット機は禁止。定跡とはいえ屋上からの突入組がロケランを持っていた。
「こちら外組。相手のロケランを使わせました。オーバー」
「ナイス!ロケランの有利はこっちだよ!」
「ヘリコプター戻った!煙吐いてる!今空薄いよ!」
「外組は外壁チェック!非常階段から上がってくるかも!」
「確認します」
スナイパーライフルの弾丸補充をして、スコープで非常階段を見る。IGLの言う通り、階段を登っている人たちが3人。大きな出入り口は警戒を強めているから、非常階段から入ろうとするのもまともな手だ。
数発打つが、プロテクターに阻まれたのか倒せない。流石に装備が良いか。
警察も外からの銃撃で場所を把握したのか、帰ってきたヘリコプターが俺を狙ってきたのでコウスケ先輩を置いて非常階段で一気に駆け抜ける。建物の影になっているところで食べ物を食べまくって空腹をどうにかする。
居場所がバレているなら、囮でもいい。そのまま正面玄関を見てみると既に侵入されているようだ。
人数が少なくて、正面玄関も3人くらいしかいないからな。人数のゴリ押しには弱いだろう。
ヘリコプターは俺を探すのを諦めたのか、屋上へブレードアタック。とにかく数を減らそうとしているのか、非常階段組を援護しているのか。どっちにしろ、この場に留まっていてもやれることはない。周囲を確認して増援がなさそうだと分かって、正面入り口から入っていった。
手に持つのはサブマシンガン。スナイパーライフルは中の乱戦には向かない。装備を変えつつ、今度は速く走れるドラッグを使う。出血しやすくなるが、作戦成功が優先だ。正面玄関で姿を隠しつつ中を見ると、クリアリングをしながら進もうとしている警官が。その後ろを突いてサブマシンガンを乱射。2人ダウンさせたことに合わせて中にいた誰かが狙撃をしてくれたようで3人とも倒れる。
「やったやった!正面玄関クリア!今誰もいないよ!」
「マミちゃんナイスぅ!金持ち班、あとどれくらい⁉︎」
「あとギミック1個です!5分くらい!」
「5分くらい保たせるよ、みんな!」
トランシーバーを使わずに周辺の確認に戻る。正面玄関がクリアされたのならここはもう安全だろう。警察が後何人残っているのかわからないけど、戦力は屋上に集中していそうだ。
裏口に回るとそこは大きな車で扉が塞がれていた。警察車両だな、これ。こっちからも入り込まれているのかもしれないのか。
入ろうとしたところで、大きな爆発音が。そういえば裏口組がロケランを持っていたんだったか。金持ちが逃げるとしたら裏口からの方が近いようで、戦力が集中するなら裏口か屋上ということだったのでこっちは裏口組が持つことになった。
「ロケランで2人吹っ飛ばした!でもやられちゃった!ごめん!」
「1:2交換なら十分!もうちょっとだよ、頑張って!」
「裏口も全員倒したかも!屋上ヤバそうなら援護行く⁉︎」
「ヘルプヘルプ!ヘリはいないけど、結構人多いかも!」
「じゃあ行くよ!」
裏口組が屋上へ向かう。俺は一度だけ裏口をクリアリングして問題ないことを確認して、また周辺の警戒に戻る。第2波があるかもしれなかったので、車の準備をして逃げる準備、かつ警官が来たら車でアタックをして妨害だ。
車に乗ることを伝えて、建物の周りを高速でぶっ飛ばす。予想通り警察車両が正面玄関に突っ込もうとしていたので横から突撃。車両はクルクルと回転しながら吹っ飛んだ。
「こっちはフルカスタムの超高級車乗ってんじゃい!警察車両がなんぼのもんじゃ!」
『リリにしては珍しい言葉遣い』
『叫びながらマシンガン撃つなw』
『あーあ、車両が蜂の巣だよ』
『時間差攻撃失敗』
『人数が少なくて油断したところに一気に突っ込むのは作戦として悪くないんだけどなぁ』
一応警察車両に近付いて、生きていないことを確認した。治療したことのあるストリーマーさんだったのでギャング堕ちしたことに驚かれた。謝ってから応急キットを使って回復しつつ、ストレス値もやばかったのでキャンディという名前のタバコを使ってストレス値を下げる。
「あ〜。ドラッグ使うとストレス値の溜まりが早すぎる〜」
『戦場でタバコ吸うな!』
『飴ちゃんのはずなんだよなぁ』
『ラーメンだろうが一律で食べ物はハンバーグになるのと同じ』
『これで殺されたら面白い』
壁際に寄って一応隠れていたので大丈夫だった。警察の増援はないようで、屋上も警察を撃退したという報告が来たので、警戒をしているだけで良いだろう。
あれ、『ドラッカー』連合、結構強いんじゃないだろうか。
もちろん結構やられた報告もあるものの、どこかが突破されたという話はない。屋上ではエクリプス組が大活躍だったようだ。ドロッセル先輩がやられてしまったものの、警察を返り討ちにしてヘリも追い返したようだ。
「金持ち班、アイテム回収完了!トラップにも引っかかっていないので待機する必要もなし!逃げられます!」
「籠城なし、了解!皆、できるだけ仲間を回収!罰金減らして完全勝利と行きましょう!」
「おおー!ナイスぅ!ラーク班、足の用意!」
「リリです、正面玄関に車用意してます。3人乗れます!」
「裏口にも用意しておく!車ある人はなるべく用意して!」
「アルファ生きてます!大型車両持ってきます!やられたオースさんは回収済み!これでラーク班全員かな⁉︎」
「ラーク班3人だね⁉︎金持ちは速度重視のリリさんの車で!屋上のメンバーもヘリで無理だったら下に来て!」
「上空班、ヘリ全滅です!応急処置間に合わないので、車で逃げて欲しい!生き残ってるのあたしだけ!」
各々報告し合って、逃げる準備を始める。警察の方が人数が多かったのに、勝ったのか。地雷とか設置できないから防衛側が有利、みたいなことはない。奇襲はしやすいけど、それだけだ。ドラッグでブーストしたとはいえ、あっちはもう3回目のパシフィックだったから慣れもあったはず。
それでも勝てたのは資金力によるアイテムの暴力だろうか。武器はそうでもないけど、プロテクターとか最高品質のものを用意したって言ってたし、イソラ先輩のアイテムとかもめっちゃ買ってる。準備に入念に時間をかけたからこその勝利だろう。
金持ち班を乗せて、『ドラッカー』のアジトへ。安全無事に送り届けて、アジトの金庫に押収したものをしまったところでクリア通知が画面上部に出る。
「やったーーーー!パシフィッククリアーーー!」
「お金の暴力最高っ!」
「最高のチームだった!本当にありがとう!」
「協力してくれた皆もありがとー!」
「こっちこそパシフィックに参加させてくれてサンキューな!このまま警察署に煽りに行ってくる!」
「あ、待って!成功報酬──」
「宵越しの金は持たねえぜ!クリア報酬こそ最高のアガリだ!またな、同士たち!」
「バイビー!楽しかったぜ!」
クリアにトランシーバーから歓声が聞こえてきたが、半グレの人たちがお礼だけ言って抜けていってしまった。
カッコいいなあ。あれができる大人って奴だろう。
最終日にお金があっても使いきれないっていう切実な理由もありそうだけどね。高級車を買うくらいしかなさそうだ。あとはギャンブル。
倒れてしまった人は全員回収できたようで、ここに医者を呼ぶことに。半数以上やられてしまったが、最高難易度の犯罪をクリアしたのだから十分だろう。
「リリくん、参加してくれてありがとうね」
「いえいえ。コウスケ先輩倒したくらいですよ?」
「あ、コウスケ先輩倒したんだ。ヘリ乗ってたの?」
「降りてきて確実に倒そうとしてきたので返り討ちにしてやりました。その後は操作奪ってヘリをぶつけたくらいですよ」
『嘘こけ。正面玄関の2キルとアシスト、それに第2波のパトカーで1キルしてんだろ』
『4キルはやってんねえ!』
『ヘリ追い返したのもかなり良い功績なんだよな』
『コウスケも降りずにブレードアタックに専念していれば……』
『非常階段に逃げられたら、ヘリだと隣の建物に引っかかって自爆しかねないからな。あそこは降りるしかない』
『ならリリの判断が良かったのか』
中の様子などを真紀さんや他の人に聞きつつ、治療に来た医者のKONさんにギャングになっていることに驚かれた。半グレです。ちなみにトランシーバーで速攻半グレ落ちしたことを救急隊にバラされた。
最終日だし、仕方がないよねとは言われる。それに救急隊も忙しくなかったようで、今のパシフィックの治療でちょっと忙しいくらいのようだ。最終日に無茶をするものかと思ったが、そこまで皆無茶はしていないらしい。
あと1時間もしないでサーバーが落ちる。手に入れたお金でギャンブルに繰り出す人もいれば、誰かに会いに行く人もいる。俺も着替えて最初のチェックの服に戻して病院で最後は過ごすことにした。
病院に帰って中に入ると、熱烈な歓迎を受けた。端的に言うと殴られた。
「何で殴るんですか⁉︎」
「放蕩息子が帰ってきたら殴るのが昭和の親父だ!」
「偏見が酷い⁉︎最後は救急隊の皆さんと過ごそうと思ったのに!」
「犯罪者になった子は知りません!」
「それはそうですけど!ドーヴァさん、勘弁してくださいよ!」
パステルインク所属の男性Vtuberでずっと救急隊をやっていたドーヴァさんに殴られた。この人、本当に息子さんがいるからって他の歳下男性を全員息子扱いしてくる、ちょっとヤバイ人ではある。
どうなっているんだ、パステルインクは。
それで禊は済んだのか、そこからは穏やかに交流ができた。これを意図してやっていたのなら、ドーヴァさんは空気読みとかが凄くできる方なのではないだろうか。
病院には他の職業の人たちがお礼に来たり、警察がやってきてさっきのパシフィックに参加していた人たちが俺のことを詰めて来たり。特にコウスケ先輩とポラリス先輩、それに仔鹿さんに裏切られたと言われたが、やりたかったんだから仕方がないだろう。
ついでに正面玄関で倒していた人の1人が仔鹿さんだったらしい。
「あーあ、リリ君に大きな傷を付けられちゃったなぁ。これじゃあお嫁さんに行けないや。責任取ってもらわないと」
「いやいや、昨日ド派手な結婚式をされてたじゃないですか!旦那さんいるでしょう!」
「だってダーリン、今日ログインしてないから離婚したようなものだよ!」
「過言では⁉︎」
「責任取れ、リリー!」
「女の子泣かせたー!」
「そこの先輩2人、茶化さない!」
そんな戯れがあったり、ナナホシさんが集めたボイスの発表会があって俺のボイスもいくつも流されたり。
そしてサーバーが落ちる直前は全員すぐに復活するからと、殴り合いのもみくちゃになった。これが【GTA】の終わり方の様式美らしい。俺以外にも武器を用意していた人がいたために、ブラックマーケットに行っていたことがバレた人が何人か。
俺はイソラ先輩から買っていた刀で無双していた。こんなところで武器を使って無双してどうする。
最後はゲラゲラしながらサーバーが終わりを迎えてキックされる。スタート画面に戻されて、笑い終わった後に、配信を閉じるためにコメント欄に言葉を残す。
「いやー、楽しい11日間でした。普段関われないような方と関われて、知見が深まりましたし、こういう大規模サーバーに参加するのが初めてで、夢のような時間でした。明日はお休みをいただいて、明後日の朝から朝配信を再開する予定です。というわけで皆さん、遅くまでお付き合いいただきありがとうございました。おやすみなさい」
『リリお疲れー』
『ボイス良かったぞ。だから出せ』
『おやすみ、リリ』
『リリ×仔鹿劇場はここと聞きましたが?』
『だいぶ乗り遅れてる奴いるな』
配信を閉じて、その日はすぐに寝た。次の日に結構な数の切り抜き動画が出されていて、パシフィックの多数視点とか、ボイス集などが上がっていた。こういう人たちって寝ているんだろうかと心配になる。
そしてバイタリティがある人が夜に切り抜きの同時視聴配信をやっていたのを見て、そういうのがあるのかと感心した。自分以外の出ている切り抜きの同時鑑賞会ってやって良いんだ。
調べてみるとこういう大型企画ではむしろやる方が多数らしい。真紀さんを誘ってやってみようか。