月曜日の朝雑談ですが、今週最後の配信枠予定です
GTAというとても大きな他事務所も巻き込んでの超巨大企画が終わって1週間ほど。【SoF】のノーマルモードをやったりして12月になり、もうエクリプス初の全国流通アルバムも発売されて月曜日。
朝配信で今日は珍しくゲームをやらずに普通の雑談配信をしていく。今週末にはエクリプスの2周年イベントがあることもあって、今週は配信が難しいという話をしなくてはいけない。
これは多分エクリプスのライバー全員がそうだと思う。
「皆さん、おはようございます。エクリプス3期生、絹田狸々です。今日の朝配信はゲームをすることなく、普通に雑談配信をしようかなと思います。今週は週末のエクリプス2周年イベントがある関係でかなり忙しいので他に配信枠を取れないと思います」
『リリおはよー』
『年末がもうすぐってマジ?』
『土曜日だもんな。チケット抽選外れたんだよなー』
『毎年周年イベントは豪華だよな。去年と同じで劇だっけ?』
皆が気にしている周年イベント。毎年12月にエクリプスの周年イベントをやる流れになっていた。今の1期前半組が初配信をした日が12月の第2週だったこともあって周年イベントは土日にやることになっている。
毎年バーチャル環境のある劇場を確保していることがウチの事務所の営業力が凄いと思う。劇場全部にバーチャル設備があるわけでも、専用のバーチャル設備を使う電力があるのかも問題だ。
割とVtuberがライブとかをやるには大きな会場じゃないと設備が整っていないためにそもそもライブとか生で何かをやるというのはできない。生身の身体を投影してバーチャルの姿を舞台に出さないといけないので、これができるのかのチェックなどが必要だ。
そのチェックのリハで前日を丸々使うこともあって、金・土は全く動けなくなる。それ以外にも調整などがあるので実は今週忙しかったりする。
今週最後の配信ということもあって、告知をしておこうと準備していた画像を出す。
「僕、というかエクリプスのライバーは全員関わっているので。改めて今週末の周年イベント、『カラグリオット前日譚〜こうして原初の勇者は喚び出された〜』の告知をします。今週土曜日18時半開演の、ライバー総出の劇をやります。チケットでの有料配信と、途中までのアーカイブ配信もありますので、現地でのチケットが外れてしまった人は是非こちらを見てください。今日の配信の概要欄にもURLを載せてありますので、こっちも見てください」
『キャパ10000だっけ?エクリプスの公式チャンネルの登録者数20万だぞ?』
『そもそもドロッセルは80万人なのでその時点で無理です……』
『リリが13万いる時点でキャパはオーバーフローしてんのよ』
『配信画面自体は18時から見れるのね』
『現地組良いなー』
昨今のライブだと動画配信サイトで有料チケットによる動画配信をしている。前半30分ほどは無料配信で流れるのだが、それ以降は有料配信となる。いつかはDVDやBDで販売されるものの、リアルタイムにそのライブを見たいというお客の需要に応えるようなシステムだ。
リスナーはチケットに外れてもライブに擬似参加できる。会社は利益になるという両得と思えるが、有料チケットは有効期限があってDVDが発売されるまで見れないことが多い。そこはエクリプスが決めているわけではなく、動画配信サイト側の取り決めなのでエクリプスがどうにかできることじゃない。
確かあれって3ヶ月くらいしか見られないんだよな。ライブ映像を保存しておくにもサーバーに負荷がかかったりするから、1年も保管できないという話だ。
今回のイベントは既にDVDとBDにすると決まっているので、待てる人はそちらで見てくれという感じだ。
去年は本当に1期前半組と数人のゲストだけによる劇をやったが、今年はなんとライバー総出。3Dで劇をやるのだが、まだ3Dがない4期生のドグマさんと一鉄さんもちゃんと出番がある。パネルで表示させるシステムで立たせて、それで演じてもらう。
全員何かしらの役割を持たせているので、それはもう長い劇になる。
「僕もちょい役ですけど出させていただくので、興味ありましたら是非。出番は本当に少ないんですけどね」
『メインはカラグリオット組だろうし、それはそう』
『昔はチケット外れた時点でライブなんて見れずに諦めるしかなかったからなぁ。良い時代になったもんだ』
『今回の会場、マジもんの演劇やるような劇場なんだよな。Vtuberのライブでも使われるけど』
『前はコウスケが召喚された時の話だったけど、今回は別なんだよな』
『最初の勇者の女の子が召喚された時の話だべ?脚本はまたゴートン?』
『逆に言えばゴートンしか書けないだろ。こんなの』
前回の劇の際にも脚本を書いたのはゴートン先輩だ。4人の関係性と設定を全部把握していて、かつエクリプスのライバーを当て書きで配役するように脚本を書ける人なんて身内しかいない。となると実績のあるゴートン先輩に白羽の矢が立つわけで。
実は前回の劇の際にも少し関わっていたりする。演技について質問をされて演技指導みたいなことを1期前半組の4人にしていたが、まだデビュー前だったのでスペシャルサンクスにも名前が書かれていない。本名で書いたら身バレをするから何も書かれていない。
声優さんたちには演技指導の意味がないこともあって、俺は会ってすらいない。その辺りはむしろ演出も兼任していたゴートン先輩が色々とお願いしたらしい。
今回は結構初期から脚本も見て関わらせていただいている。BGMの提供然り、演技指導や演出について相談を受けていたのでそれに応えたりしていた。
なので今回の劇についてはかなり思い入れのあるイベントになっている。
場所やら時間やらの宣伝をしたところで、今度は土曜日に発売されたばかりのエクリプスのアルバムについての宣伝だ。
カバーアルバムとオリジナルソングアルバムの2つが発売された。SNSなどで店舗で買ったりとか、配信版をダウンロードしたという報告も数多くされている。どの楽曲が良かったという呟きも多くいただいている。
どの配信サイトで配信されているのか、楽曲は何が収録されているのか。それらを丁寧に説明していく。俺は歌っていないものの、作曲や作詞をしている曲があるため紹介をする。
どこの店舗で売っているのか、通販をやっているのかも画像で表示する。アニメ関連グッズを売っているお店では結構取り扱いがあり、あとは大手通販サイトでも販売がされている。この時期はJ-POPなども有名グループがアルバムを販売していないからか、通販サイトでのアルバム販売ランキングでは上位にいるようだ。
何で歌ってないんだという声が販売記念特番や普段の配信でのコメントで言われていたが、ぶっちゃけ作詞・作曲で力尽きたということだ。作った本人として歌っている他の人にアドバイスをしたり、収録に立ち会っていたら自分が歌う余裕なんてあるはずもなく。
その後には3Dお披露目の準備があったりと、エクリプスとしてやることは結構あって忙しかったためにカバー曲すら歌えないという事情があった。
ということにすれば歌わなくて済むかなという計算もあったりする。第2弾では歌ってくれとも事務所から釘を刺されているけども。
告知周りはそんなところだ。最近あった後輩のチェリーさんと但馬さんの3Dお披露目配信はお呼ばれされなかったので関わっていない。2人とも女性ライバーしか呼ばなかったという、ある意味配慮を見せたのに先日の『友人コレクション』の件ではどうして配慮してくれなかったのか。
告知も終わったので、溜まりに溜まっているスパチャの読み上げをしていく。【SoF】はゲーム会社の意向でスパチャが禁止されているので、かなり溜まってしまっている。
ピン留めをしているスパチャから読み上げていく。随分古いものもあって、今見たらスパチャで【SoF】のネタバレをしているような内容もあった。今だからハードモードやイージーモードのネタバレは気にならないけど、ちょっとネタバレが酷いスパチャを送ってくる人は飛ばそうか。
いくらお金を貰っているからって、ネタバレをしすぎるのはダメだろう。
「スパチャはとてもありがたいのですが、ネタバレは全面的に禁止です。スパチャをする前にもう一度概要欄を見てから書き込んでくださいね。スパチャをいただいても内容を読めない場合がありますので、ご留意ください」
『そんな内容のやついるんか?』
『金払えば何しても良いわけじゃないんだぞ』
『たまにいるよな。高額スパチャを送りつけて苦言呈するやつ。金持ちなんか?』
『赤スパやって文句って暇なの?というか配信者に直接言いに来るな』
スパチャにもルールはあるのだと、普段の視聴者ならこういうことをしないのでおそらくアンチとか変なお金持ちの人だろう。内容も酷い感じだし、他に俺の配信にコメントもスパチャもしていない、1回限りのコメントなのでただのアンチだろう。
本当に何でお金を払ってまでネタバレをしようとするんだろうか。数百円とはいえ、お金がもったいないと思わないのだろうか。
あとそろそろ【SoF】のノーマルモードが終わりそうなので、これは言っておかないといけない。
「ネタバレで思い出しましたけど、【SoF】の公式から発表がありましたので報告しますね。次回の【SoF】の配信でも言いますが最終章のエクストラモード『刻の羅針盤』ですが、配信禁止とのことなので配信はできません。ゲーム側の規約ですのでご了承ください」
『あー。まあそういう制約もあるよな』
『最終章なんてゲームの一番大事な部分だろうし。そうじゃなくても膨大なシナリオなんだから、最後くらいはね』
『DLCは配信禁止とか、第2部禁止とかあるし。3ルート配信OKな時点で有情だろ』
そもそものゲーム配信が禁止とかでもないので、【SoF】はかなり配信者に恩情を与えている方だ。通常のフルプライスゲームの倍するゲームを配信できるだけでかなりありがたい。
だから最終章は俺だけで楽しむつもりだ。もしかしたら陽菜ちゃんも見るかもしれないけど。
あとはアルバムについてのスパチャもそこそこあったので、それについても答えていく。とはいえほとんどはアルバム発売記念特番で話している内容だったので、改めて言うくらいだった。
雑談配信としてはそんなところ。その後は毎日事務所のスタジオに行って、演技指導をひたすら進めた。
そして金曜日。
リハのために午前中から設備のチェックと、どう動くのか。それらのチェックをしていると何人か知っている方がいて驚いた。普通の3次元の舞台をするような会場でもあるために、俺が俳優時代にお世話になった音響さんや照明さんがいらっしゃった。
「しかし、住吉君がVtuberでこんな大きい舞台にねえ。5000人キャパの舞台のエクストラでアワアワしていた可愛い子はどこに行ってしまったんだか……」
「高木さん、それ自分が高校生の時の話ですよ……。事務所に所属したばかりの16歳が5000人キャパで演じるってなったらアガるのも当然でしょう……?」
「子役の子とかはそれでも演じてたんだから、むしろ当然のような慌て方をしていたのは逆に印象的だったんだよ。間宮沙希君とか、草津雄大君とか初めての舞台でこのくらいの規模の準主役とかやってたから、そういう天才で目が肥えているんだろうな」
「その子たち、天才中の天才じゃないですか。自分みたいな凡人と比べないでくださいよ」
「凡人は戦隊モノのレッドに選ばれたりしないんだよ」
「ポシャって演じてませんけどね。と言うか、皆さん情報通過ぎませんか?」
「あの作品、音響で参加してたんだぞ?エンディングクレジット見てないのか?」
「降板した作品なんて初めてだったんでトラウマで見れませんよ……」
音響の高木さんも中々酷いことをおっしゃる。
結局俺は自分が出るはずだった戦隊モノについては全く見ることができないまま、もうすぐシーズンの配信も終わる。1年通年でやっているので春には放送が終わるはず。評判すらも見れずに、今どんな出来かも確認できないまま。
検索も全然できずに、今どうなっているのかわからない。後続の人が誰になったのかも知らない。
降板してから俺は次の仕事が欲しくて、俳優として生きていくために奔走していて、結局事務所が保たなくて。Vtuberに転身して、昔の人に褒められて。
頑張っていたことが褒められるのは嬉しいけど、複雑な気分でもある。
「そうそう、天才と言えば。間宮沙希君が今声優やってるって知ってるかい?」
「その話有名なんですか?間宮光希君ですよね?」
「おっ、知ってるか。ズァークといい、色々なアニメといい、かなり仕事頑張ってるよ。天才子役は声優になっても天才だったわけだ」
「俺が関わっているアニメでも重要な役をやっていて驚きました。元子役ってことを隠して1からのキャリアなのに凄いなって思いますよ」
「あの子は努力の天才だからな。俳優業をやっている人は全員見習うべきだ」
「……努力の?演技の天才ではなく?」
高木さんの不思議な物言いに、俺は首を傾げる。5歳頃から引っ張りだこになっていた、知らない人がいないほどの国民的な子役。ただの子供から天才児、快楽殺人鬼にそれこそ破面ライダーというニチアサヒーローもののライダーそのものを演じるような、アクションもできた天才。
できない役はないだの、今の内に重要な子役が必要な作品は映像化してしまおうだの、ドラマ・映画界隈を動かし続けた特異点。それが天才・間宮沙希だ。雑誌モデルをやれるほどに可愛らしい風貌に、現場でも文句を言わない、とても良い子だと世間でも知っているような性格もとても良い子。
世間ではあんな子供が欲しいと思われて、彼のようになりたいと子役志望が増えたほど。当時の小中学生の初恋泥棒とまで言われた、誰もが愛した天才子役。俺だって歳下ながら憧れなかったわけではない。
そんな、芸能界に入ってすぐ順調だった天才が、努力の天才とは。
「俺もこの業界が長いから、できる子とできない子くらいの見分けはできるわけよ。そりゃあ間宮君は一目見て伸びると確信したけど、それは才能によるものじゃない。彼は作品を良くするために、自分をアピールしたいがために、どうすれば上手くなれるか周りの人に聞いていたんだ。教えを乞うために俳優に、監督に、演出に、そんで俺のような裏方にもどうすれば良いかを聞いてきた。初めては軽乗用車のCMの撮影でな。宮下喜沙と一緒のやつで、どんな曲を流すんですかって聞いてきたんだ。5歳の坊主が普通、音楽について聞くか?完成系がどんなものになるのか、自分で考えて演技する。あいつは適応型の天才だよ」
「……視野が違いますね。普通そんな年齢の子はとちらずにセリフをちゃんと言えて、笑えていれば十分なのに」
「そういうのが彼を使いたくなる理由だったんだろうな。現場で泣き言を言わずに、クオリティを求める監督にも立ち向かって演技する。その仕事に全力を注いでくれる。そんで時たま、想定を超えた演技をしてくれる。……俺たち裏方の人間は、あいつに脳を焼かれちまったのさ。そのせいで今でも間宮沙希応援委員会なんてグループがあるほどだぞ?」
「それは逆に引きます」
何をやってるんだ、良い大人が。
でもそうか。彼の評判はかなり良かったが、そういう努力の天才で、それこそ周りの人と合わせて演技をするために頑張っていたからこそ、出演するものが良い作品ばかりだったのか。誰か1人が絶望的に下手だとそれだけでクオリティが下がったように見える。たとえ主役がいくら良くても周りがダメだと総じて評価は落ちる。
演技はそれなりで良いとされる子役が上手ければ、周りの俳優も奮起するだろう。役者って基本負けず嫌いだし。
「お前らエクリプスの去年の劇。アレに間宮含めてペパームーンの声優送り込んだの、俺たちだぞ?ウチの音響チームが推薦してペパームーンとエクリプスを繋いだ」
「思いっきり関係してる⁉︎どれだけ脳を焼かれてるんですか‼︎」
「それだけの天才だったんだよ。あ、お前確かズァーク興味あったよな。今度の第3部、一緒に観に行くか?」
「あー、エクリプスの先輩とも観に行く予定でしたけど、何回見ても良いですからね。後で日程合わせましょう」
「よしきた。公開してすぐは無理だから、2月の中旬くらいでどうだ?その頃には今の戦隊モノの仕事も納品済みだろうし」
「承知です。自分は予定を合わせやすいので、高木さんに合わせますよ」
というわけで1月後半公開予定のズァークの映画を一緒に観に行くと約束をして。
舞台でどう見えるか、音はどんな感じか。そんな調整を午後ずっとして、夜にはリハーサルをして。
ライブ当日の土曜日を迎えた。