但馬と勇者パーティーの殺陣が始まる。クライマックスが近いためにラスボス前の大ボス担当なのか、但馬に魔法がぶつかっても、剣で斬りかかっても倒れることはなかった。チェリーの支援が原因と思ったドロッセルが上に浮かぶチェリー目掛けてレーザーのような魔法を放つが、それはチェリーの身体をすり抜けるような映像が投影されていた。
【あ、私はただこの付近に植えられていた木の精なので〜。火乃香ちゃんの支援とかしていませんよ?あれは純粋な彼女の実力です】
【面妖な……。王子、私もそちらを手伝います!】
【頼む!この鬼めちゃくちゃ強え!】
但馬は接近戦3人に後衛1人という人数差があるものの、その数の差があっても勇者パーティーを全く寄せ付けない大立ち回り。手に持った巨大なまさかりを振り回し、近接メンバーを立ち寄らせないようにしつつ、魔法まで使ってドロッセルの足止めをしていた。
魔王城に残された魔王軍幹部というのは伊達ではなく、同時攻撃をものともしない強者の風格があった。避ける時には避けて、決める時には決める。その動きのメリハリもあって本当に強い敵キャラのように舞台映えをしていた。
【あはははは!勇者の力を手にしても、所詮は簒奪したもの!正規の力の持ち主でもないと、本来の力を発揮できぬ様子!これは、勝った!】
【何ぃ⁉︎リゾマータ、アイツの言ってることは本当か⁉︎】
【……本当だ、バカ王子。だが、異国の少女を戦わせて、それで良いのか⁉︎唄上は戦いも魔法も知らなかった、ただの女の子だ!アイツを戦わせるくらいなら……!】
【隙あり!】
【【おおおおおっ⁉︎】】
悠長に話していた男2人へまさかりの叩きつけ攻撃によって吹っ飛ばす。吹っ飛ばされた2人の元へドロッセルが駆け寄り、すぐに回復魔法を。真崎が手出しをされないように警戒して剣を向けていた。
殺陣が一旦終わりこう着状態になったところで、但馬が楽しそうに笑う。
【まさか勇者を置いてきたのは痴話喧嘩⁉︎えー、わっちそういうの大好き‼︎もっと聞かせて‼︎】
【火乃香ちゃーん。本性出ちゃってますよー】
【おっと、いけないいけない。今のわっちは魔王軍幹部!ということでぶちのめした後に洗いざらい聞く!】
【最悪だ……!】
【俺も聞きたいなー、リゾマータの惚気話!】
【私も是非】
【味方も最悪だ……!】
但馬の本性にチェリーが突っ込み、倒れたゴートンが訳もわからず混乱していると、恋バナと聞いたコウスケとドロッセルも噛んできた始末。
戦闘の空気が全部吹っ飛んだところで、魔法陣が構成されるSEが鳴る。ドロッセルも但馬も使っていないので誰のものだと観客は思うものの、それは声が聞こえたために疑問は融解した。
【メテオフォール!】
【ぎゃあああああ⁉︎】
【私までぇえええええ⁉︎】
空に浮かんでいたチェリーごと落ちてきた巨大な隕石によって但馬とチェリーが地面に落下してくる。それで戦闘不能になったようで但馬はピクピクして起き上がれないが、チェリーはすぐに立ち上がる。
【なーんちゃって。私は本体でもないのでなんともないですけど……。火乃香ちゃんはダメそうですねぇ。火乃香ちゃん、大丈夫ですか?】
【無理……。死ぬ……】
【あら、本当にダメそう。もし元の世界に戻れなかったら、輪廻の先で会いましょうね。私は桜の木ならどこでも見守っていますから】
【ああ、うん……。またね、チェリー……】
但馬はそう言って消えてしまう。立ち上がったチェリーは降参するように手を上げて、舞台袖から唄上がやってくる。声といい、魔法の規模といい、勇者足らん力を見せつけて唄上が復帰した。
【あらあら、勇者さんも力を取り戻して帰ってきたのですね〜。私は一応中立ですし、そもそも倒そうとしても木を伐採しなければ私は倒せません。この魔王城をもろとも消せば倒せるでしょうが……。魔王と戦うために力を温存したいでしょう?】
【精霊とは本来、嘘をつけない存在です。本当のことでしょう。──唄上さん、あなたはリゾマータさんに勇者の力を奪われたはずです。どうして力が戻っているのですか?もしかしてリゾマータさんが失敗しましたか?】
【あ、いえ……。イソラって神様に力を授けてもらって】
【神に会ったのか!人間のために降臨したと考えて良さそうか?聖女よ】
【……いえ、王子。そのイソラなる神は我々が崇める神ではありません。おそらく異世界の神でしょう】
【その通り、異世界の神様ですよ〜。では皆さん、世界のための最後の決戦、頑張ってくださ〜い】
もう邪魔をするつもりはないとでも言うように、チェリーは光に包まれて消えてしまう。
ドロッセルは異世界の神のことに思案するが、一旦頭を横に振って後回しにすることにしたようだ。次は魔王との決戦であり、余計な考えは要らないと頭を切り替えた。
その代わり、ゴートンが唄上の前に出てくる。
【どうして戻ってきた?たとえ戦う力を手にしたとしても、君には関係ないだろう】
【巻き込まれて、もう無関係ではなくなってしまったんです。戦い方を教えてもらって、戦争のためとはいえ優しくしてもらって、この世界がどうなっているのかも知って、亡くなった人もいて……。私は、あなたたちを知ってしまったんです。そしてあなたたちのことを好きになってしまいました。魔物たちの事情も含めて……私は戦うと決めたんです】
【意志は固いわけか。……わかった。君に力を返そう】
ゴートンが差し出した手を唄上は掴む。力を奪った時と同じように白い光が彼らを包む。白い粒子が唄上に入り込む演出が入り、儀式が終われば、その力の全てを感じ取ったドロッセルが溜息を吐く。
【結局、力は適合者が使うべきということですね。リゾマータさんは精々3割くらいの力しか使えていなかったようですし】
【神の怠慢だ。異世界人に頼るような構造にしなければ良かった】
【ここで鉄拳制裁をしましょうか?だからあなたは王族から追放されるのですよ?】
【あっ】
【え?リゾマータさんって王族だったんですか?え、でも王子様もいて……?】
【バレちまったならしょうがない!このバカ兄貴、変な研究をしてて我が国の宗教団体を怒らせて追放されたんだよ!みっともねえよな!】
【ええー⁉︎ご兄弟だったんですか⁉︎】
その事実に観客からも「ええー!」という黄色い悲鳴が上がった。現代の彼らにそんな設定がなかったために、新情報を浴びせられて女性たちの心にヒットしてしまったらしい。
この前日譚は本当にあったカラグリオット最初の物語と銘打たれていたために、この設定は引き継がれるだろうということ。ファンアートなどを描く時に参考にされるだろう。
【オレの出自なんてどうでも良いだろう。精霊の言葉を信じるなら、次が最後の決戦だ。バカ弟、仮にも王子なら決戦前の音頭を取れ】
【おう!行くぞ、お前たち!最後の決戦だ、気合い入れていこうぜ!】
【【【おおおおーーーー!】】】
勇者パーティーが気合を入れて、場面が暗転する。
BGMも変わり、ラスボス戦のような、疾走感のあるBGMがかかる。舞台に現れたのは最初の王城のように高い玉座が現れ、そこに巨大な黒い影がゆらゆらとしていてどのライバーかわからなかった。
ライバーは全員出場している。それに前年度の例として声優を呼んでいたためにあの影が今回のための特別な3Dであり、声は別の者が担当している可能性はあった。
その玉座の反対側から勇者パーティーがやってきた。入ってきたところで、魔王らしき人物が声をかける。
【よく来たな、勇者よ。それに人間も何人かいるようだが……。瑣末なことだ。潰してやろう、人間よ】
その声は一番後輩の頑固一鉄のもの。まさか彼がラスボスなのかと歓声が湧く。その魔王が玉座から立ち上がったために一鉄のラスボスが聞けそうだと彼のファンが喜ぶ。
その魔王と相対するために唄上が一歩前に立ち──彼へ声をかける。
【その幻影、消して大丈夫ですよ。──アンズさん】
【え?】
【──あら。いつから気付かれていたのですか?勇者様】
【魔王城に入った時にです。まるでこの城があなたを迎え入れたかのように力が膨れ上がっていたので】
真崎に対してそう言うと、真崎が玉座に向かい、魔王の幻影が消えていき真崎が玉座へ上がっていく。
今まで味方だったはずの真崎が魔王だったという事実に、彼女を雇った側のコウスケとドロッセルが狼狽する。
【おい聖女⁉︎彼女を雇ったのは教会だろ⁉︎】
【彼女は教会から派遣されてきてそのまま護衛として側に置いていたので……。彼女の素性を知らなかったのは、確かに私の落ち度です】
【だから教会のことは嫌いなんだ】
【本当に教会に対して苦言が過ぎると、グーですからねリゾマータさん】
真崎が玉座の前に立つと、背中から彼女の身長を超えるような白い翼が生える。その姿が魔王というよりは天使や神と形容する方が正しい姿だった。
彼女はそのまま腰の剣を抜く。今まで使っていたために、彼女の主要武器は剣のまま。
その姿を見て、唄上はゴートンへ手を出す。
【すみません、リゾマータさん。剣を貸していただけますか?】
【オレの腕は勇者の力ありきだったからな。支援の方が向いている。ほら、使え】
ゴートンから剣を受け取って、それを構える。近接が唄上とコウスケに、遠距離支援がゴートンとドロッセルになる。
勇者と魔王らしい戦いになりそうだったが、真崎が剣を上に掲げると雷が舞台に降り注ぎ、それが唄上とその他の3人を分けていた。唄上だけ真崎のいる内側にいて、その他の3人は除外されていた。
まるで戦うのは2人だけで良いと見せつけているようだった。
【最後の戦いは異世界から来た者だけで良いでしょう?元々の世界で力を持っていた私、この世界に来て力を得たあなた。神が娯楽を求めて、この世界のための贄として呼ばれた私たち。──もう飽きたわ。同胞も元の場所に戻ったのか、死んだのかもわからない。この世界の人間のために消費されて死ぬのはごめんだわ】
【私だって……。知ってるとは思うけど、本当は戦うことなんて知らない世界から来たんだから。──終わらせよう】
真崎がワイヤーアクションを使ったのか、玉座の上にふわりと浮いた後に地面にいる唄上へ突撃した。突きをお見舞いするが、それをひらりと避けて、返す手で剣を振り下ろすが、それをワイヤーアクションの横移動によって避けるが、素早い動きで唄上が追いかけて剣をぶつける。
その足の速さがいつもの唄上とは違うために驚きのどよめきが生まれる。
お互いの剣戟が何度も鳴り響く。真崎がどれだけ飛ぼうが、唄上がジャンプしてその動きに追いつき、地面へ叩き落とした。魔法を使わずにただの剣技で魔王を圧倒する勇者。
その殺陣はワイヤーアクションと超人的な身体能力で成り立っていた。
【クゥっ!1ヶ月前にこの世界に来たばかりのくせに!】
【まだまだぁ!】
追撃をしようとした唄上だが、雷を纏った剣の大振りによって吹き飛ばされる。だがすぐに立ち上がって剣を下から振り上げて、剣を吹き飛ばそうとしたが上から剣で押さえ込まれる。
そのまま鍔迫り合いをした後に斜め上に飛んで距離を取った真崎が魔法を使ってステージにいくつも雷を落とす。それをジグザグに走ることで避け続ける唄上。
雷の魔法を使っていたのはただの足止めではなかった。その魔法を剣に纏わせて、更なる一撃を放つためのチャージでもあった。
【消えなさい!異世界の勇者!】
【あああああああっ!】
ステージ全体を包み込む閃光。
ドガン!という大きな音の後に、ズシャっ!というSEが鳴る。
光が収まった後、玉座の上にいた真崎の身体に突き刺さる唄上の剣。
真崎は唄上に寄りかかるようにぐったりしている。
【……そう、負けたのね。おめでとう、異世界の勇者。これで戦争は終わり……。私たちの自殺劇も、神の娯楽も。これ以降は私がこの世界の膜になる……】
【やっぱり元の世界に戻れるっていうのは、嘘なの……?】
【イソラ様に頼んで、嘘を言ってもらったの。私たち魔族は、死んだらこの世界を包む遮蔽膜となる……。そうして他の世界へ干渉しないように、正しい世界の在り方へ戻す。それがイソラ様との契約。これで200年は私たちのような犠牲者は出ない……。ごめんなさいね、巻き込んで……。この術式は、他の種族にトドメを刺されないと発動しなくて】
【……さようなら、優しい王様】
唄上が剣を抜くと、真崎の身体が粒子になって消えていく。彼女は玉座を丁寧に降りていき、ドロッセルたちに合流した。
合流した後、ステージの照明が絞られていき、一鉄のナレーションが入る。
【こうしてカラグリオットの戦いは終結。事実を唄上は王子たちへ伝えて、この事実を200年後まで残していきました。ただ、事実を周知された神は勇者へ呪いをかけます。再び戦乱になった際に、戦う義務を与え、彼女が戦わなければ命を落とす血の呪い。それが解呪されるのは──200年後。勇者コウスケ・フォン・ヤクモが召喚された時のお話】
【でもさあ?それじゃあ彼女はハッピーエンドじゃないよね?日本で彼女の帰りを待つ人がいる。だからこれは神の気まぐれ。もしくは世界を救った報酬。──カラグリオットに送り込まれなかったIFの彼女を送り返すくらいはできちゃうんだよねえ】
突如としてステージの中央に現れたイソラが指パッチンをする。
するとステージは魔王城ではなく、一番最初の喫茶店のような内装に変わっていた。そしてそこにはパネルに映り込んだ一鉄とドグマがいた。
彼らの間に白色の魔法陣が現れて、その中から制服姿の唄上が転がってくる。
【きゃああああ⁉︎】
【うおっ、唄上⁉︎お前、今その魔法陣に飲み込まれたじゃねえか!無事なのか⁉︎】
【え?え?魔法陣?学校でテストを受けて、マスターのご飯食べて……?】
【唄上君、無事かね?警察に電話しようとしていたところだが……?】
【多分……?】
【私もタクマも白昼夢でも見ていたのかもしれないな……。無事で良かった。ひとまずプリンでも食べて一息つかないかね?】
【わーい、マスターのプリン!食べまーす!】
【それが行方不明になった奴の態度かよ⁉︎いや、1分もいなくなってないだろうけどさあ!】
3人の口がパクパクと動いているものの、声は届かずそのまま照明が絞られて舞台の幕が落ちていく。そして幕が落ち切った後に、終幕のブザーが鳴った。
観客の拍手の後に、幕がゆっくり上がっていく。そして両袖から1人ずつ出てくる。まずは4期生のドグマと一鉄だ。彼らはモニターのまま挨拶をする。
「喫茶店のマスター兼ナレーション兼魔王の幻影役、頑固一鉄と」
「主人公の幼馴染役、ドグマ・樹林でした!ありがとうございました!」
モニターなために2人で身体を横にブンブンと振ることで挨拶とした。拍手をしつつ、次のカーテンコールの人々が出てくる。デビューの逆順で、チェリーと但馬が下手からやってくる。彼らは3Dの姿なため、ステージの真ん中まで歩いてきた。
「桜の精霊役、チェリー・心と〜」
「魔王軍幹部役1、但馬火乃香でした!ありがとうございます!」
彼女たちはしっかりと頭をしっかりと下げてその後手を振りながら一鉄の方へ移動する。次に出てきたのはFORだ。上手から出てきて、リリを真ん中にして真ん中へやってきた。
「魔王軍幹部役2、霜月エリサと」
「魔王軍幹部役3、水瀬夏希と!」
「雑魚敵兼魔王軍幹部4、絹田狸々でした!ありがとうございましたー!」
3人も一緒にタイミングを合わせて頭を下げる。雑魚敵も兼ねていると言ったことで若干笑いが起きつつ、彼らはドグマの方へ行き、リリはドグマの隣に、その隣にエリサと夏希が続く。
その次は2期後半組の3人がやってくる。
「魔王軍幹部役5、ユークリム・ロゼリーヌ・ワカナと」
「操られた女役、ハピハピ・ガンスレイブと」
「操られた男役、KP7でした。ありがとうございました」
彼女たちは但馬たちの隣に。順番的に入ってきたのは2期前半組。
「クトゥルフの神役、イソラ・イグスートスと」
「謎の刺客役、ジョン・スミスと」
「門番役1、音無ケインと」
「門番役2、ポラリス・コットンガードでした!エクリプス最高!」
「頭下げにくいこと言わないでよ」
「空気読め!」
「ぐだぐだですみません〜。ポラリスさんは後で説教で」
「ケインまで裏切るなよ!」
ぐだぐだになってしまったためにドナドナされるポラリス。彼らはFORの隣にやってくる。
次は1期後半組だ。
「母親役、ネムリア・ファムタールと」
「息子役、宗方奏上日向と」
「商人役1、亜麻井円香と」
「商人役2、宗馬メルトと」
「魔王役、真崎杏でした!楽しかったー!」
彼らは真崎の言葉を事前に聞いていたからか、タイミングを合わせてお辞儀ができていた。2期後半組の隣に向かってはけていく。
ここからは1人ずつやってきた。
「王子役、コウスケ・フォン・ヤクモでした!全力出し切ったぞ!ありがとうございました!」
ここからは主役級だからか、拍手が大きかった。コウスケはただ真ん中を空けるくらいでそこまで移動せずに留まっていた。
「聖女役、ドロッセル・アン・パルスでした。今後もエクリプスは安泰だと思うような劇ができたんじゃないかと思います。ありがとうございました」
綺麗な所作でお辞儀をして、彼女もそこまで移動せずに真ん中を空けて。
次にやってきたのはゴートン。
「呪術師役、ゴートン・リゾマータでした。ライバー、スタッフ含めてめちゃくちゃ無茶振りをしてしまって申し訳ありません。今日の劇ができたのは無茶振りを聞いてくれた皆さんのおかげです。本当に、ありがとうございます。そしてファンの皆さんも、ありがとうございました!」
脚本をやっていたことも公表されているからか、ヒーロー役だということもあってここ一番拍手が大きかった。
そして最後は、主人公の唄上だ。彼女は今日初お披露目の制服のような衣装でやってきた。
「主人公役、唄上オーフェリアでした!大役で大変でしたが、楽しんでできたと思います。本日はありがとうございました!」
彼女が深々と頭を下げたために、会場では長く大きな拍手が鳴り響いた。
頭を上げた後は、劇でお約束の全員で手を繋いでのお辞儀だ。その時には「きゃー!」という黄色い声も飛んだが、拍手万雷で塗り潰された。
そのまま幕が閉じて終わるのかと思ったが、まだ何かあるのかそのまま残っていて、唄上が話を始める。
「これだけは言っておきたくて。最後の私と魔王の殺陣ですけど、わたくしあんなに速く走れませんからね?わたくしは宗方様にやっていただきました。あれ、裏で実際やってたのはびっくりですわ。ワイヤーをつけずにあれだけジャンプされるのですから」
「あれくらい普通では?実際リリ殿もワイヤーありきとはいえ、普通にやっていたではないか」
「できないからお願いしたわけで……。私の役はリリさんにやっていただきました。ありがとうございます」
「いえいえ。今回はアドリブがなかったので。あったらワイヤーでお腹が捩れていましたよ」
「その危険性くらい、拙者もわかってる」
「ソウちゃん、本当?」
魔王と勇者の最終決戦の殺陣だけは、見栄えを優先して宗方とリリが代役をしていた。いつもアドリブをするためかネムリアに突っ込まれている。
そんな裏話もしつつ、ドロッセルが取り仕切る。
「さて、皆さん。今日は劇ですがサイリウムを用意していただいたと思います。その出番ですよ?最後に2曲だけ全員で歌って終わりたいと思います」
「「「わあああああああ!」」」
「それでは聞いてください。『ムーンクライシス』」
アルバムに収録された曲を2曲、ライブでは初お披露目で2周年イベントを締め括った。
SNSではいくつかの出来事がトレンド入りし、2周年に相応しい盛り上がりを見せることになった。