元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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2周年イベント振り返り座談会

 エクリプスで2周年イベントがあった日の翌日、日曜日の夜。ゴートンのチャンネルにてイベントの振り返り座談会が開かれていた。参加者はドロッセル、コウスケ、唄上のエクリプス1期生前半組『カラグリオット』組だ。

 振り返り配信で裏話などが出ることを期待されて、集まった人は多かった。1万人を超えていて、現地で見ていたり有料チケットで見ていた人間だろう。概要欄にネタバレありと書かれていたので、基本は劇を見た人のみが見に来ているにしても多い視聴者数だった。

 配信が始まる。

 

「今日も占いの館にようこそ。ゴートン・リゾマータだ。昨日あった周年イベントの振り返り座談会をやっていこうと思う。というわけでゲストはいつもの3人だ。自己紹介よろしく」

 

「皆さんこんばんはー。聖女ドロッセル・アン・パルスです。今日はまったりと、お茶を飲みながらお菓子をつまみながら見ていこうかなと思いますので、皆さんもごゆるりとご覧ください」

 

「オッスー!勇者コウスケ・フォン・ヤクモだ!王子とかマジで大変だった!柄でもないし!今日は配達で頼んだステーキ丼を食べながらなんでしゃべらない時間もあるかもだけどよろしくー」

 

「ただの花屋の娘、唄上オーフェリアですわ。去年も振り返りをしましたけど、主役だと一層恥ずかしいですね……。今日はよろしくお願い致します」

 

 4人の自己紹介も終わり、コメントに流れる感想などを見つつ、ゴートンが画面を操作して今回のイベントのスタッフ紹介をする。会場販売のパンフレットと同じ内容をPDF化したものだ。

 それを見ながら、裏方として参加してくださった企業などを紹介して、身内の話を始める。

 

「まあ、ここの演出か。リリが演劇を齧ってたっていうのは知ってる人は知ってると思うけど、今回もこうすると良いですよってかなり意見を出してくれて。オレの名前は脚本を書いている関係でいるけど、ぶっちゃけ7割はリリの演出だな」

 

「去年居てくれれば助かったよなー。去年は去年で本職の方呼んだけど。殺陣の配置で観客側が目移りしないように同時進行の殺陣であっても、片方を暗くして見せないようにしようとか考えたのアイツだし、やっぱ経験者の目線があると違うよなー」

 

『リリ、それで配信結構少なかったんか』

『やりそうかと言われたら、やる』

『そもそもリリの名前の占有率、高くない?』

 

 リリの名前は演出と殺陣指導、それに音楽で名前を連ねている。ネムリアもイラストレーターということもあってイメージボードイラストやパンフレットの絵などを作成しているが、多分野という意味ではリリが多い。

 

「リリさん、基本私たちの練習の際にはスタジオに来ていただいて。私たちが基本舞台にいることが多いので客観的に見てくださる方が必要だったので本当に助かりました。知識も豊富で、身振りなども実際にやっていただいて参考にした部分も多いですし」

 

「演技の質問で皆様リリ様を頼っていらっしゃいましたね。ライバーの中では演技経験がある方はリリ様しかいないので、然もありなん、という光景でしたが」

 

『リリに突撃するライバーが目に浮かぶ』

『本人も結構面倒見が良いからなぁ。そりゃ行くでしょ』

『そんなことしつつ楽曲提供もやってんの?』

『夏頃は結構作業配信が多かったから、おそらくこれとアルバム関係と推察される』

『それで劇中では剣の材料にされるのか。良かったな、リリがエクリプスに入って』

 

 基本的にスタジオ練習の時にはリリがほとんどやってきて、そこで指導をすることが多かったという話がされる。それに楽曲も全部描き下ろしであり、台本を見せてこういう曲が欲しいと伝えたら割と早く提供をしてくれて、この4人でこう変更して欲しいと伝えると修正も早かったという話が出た。

 アルバムの楽曲にしろ、今回の劇のBGMにしろ、そもそも仕上げてくるのが早く、修正もしてくれるのでありがたいと感謝される。

 そしてその流れで、殺陣指導の話になる。

 

「今回殺陣はほぼ全員あったわけだけど。宗方とリリの凄いところは全員分の殺陣のシーンを小分けにして撮って映像を配布したところ。編集とかはスタッフにしてもらったけど、全員分をいつでも振り返れるように撮影したのはエグい」

 

「ポラさんとKP7っちも銃撃戦については結構手伝ってもらったけど、宗方なんて銃をあまり理解してなかったからか、こう避ければ当たらないとか超人的な動きをいきなり実行させようとしてきて全員困惑してたな。そんなに動ける人間はいない!って。まあ、本人は動けるんだけど」

 

「皆様、信じられますか?最終戦のわたくしと入れ替わった殺陣、本当にただの身体能力でワイヤーアクションを使っていたリリさんに拮抗していたのですよ?ジャンプとかもジャンプ台もなしにやってのけて、本当に同じ人間かと疑ってしまいました」

 

「あれは入れ替わる真崎さんも、受け手側のリリさんも驚いていましたね。ワイヤーアクションだけは別スタジオを借りてその練習をしたのですが、本当にワイヤーなしで殺陣を実行してしまうどころか、むしろ優っていて。スタッフさんたちが驚いていましたよ」

 

『宗方やっば』

『あいつ普通に3mくらいジャンプしてなかった?オリンピック出ろよ』

『侍だからって縮地でも使ったんかってくらい瞬間移動してたけど、あれ誇張じゃなくて本人の身体能力ってマジ?』

『アイツの3Dお披露目の頃からマジで身体能力はお化け。フィットネスのゲーム、超余裕でクリアしてたし』

 

 殺陣の指導や、実際に見せた殺陣について視聴者も演者側もスタッフもドン引きしていたというエピソードで、宗方自身が嘘をつけない性格なこともあって本当にヤバいんだなと思われていた。

 そもそも今回の舞台では使用できるワイヤーアクションのロープは1本しか設備としてなかったので、設備情報を見れば真実だと言うことがわかる。バーチャルだから嘘だろと言うコメントもいくつかあったが、リリが入れ替わっていた真崎のアバターがワイヤーでなければ再現できない動きをしていたために、宗方の身体能力が化け物だということで話は決着していく。

 スタッフの紹介も終わったので、次は台本の話だ。

 

「そもそも今回も舞台をやろうという話になったのは去年の劇が好評だったからですね。3月ほどにスタッフさんと話しまして、今年も劇にしようと。なら何の話をするかということで、原初の勇者の話が良いとなりました。前回はコウスケさんが主役でしたので、今回はオーちゃんだなと」

 

「わたくし、前回も裏主人公みたいなものでしたのに……。やるからには全力で挑みましたが」

 

「前回のやつを後輩が結構褒めてくれてさー。舞台とか良いですよねって話を結構聞いてたから、俺がなら全員出しちゃえば良いんじゃね?って言って。んで、内容はゴートンに全部ぶん投げた」

 

「ぶん投げられた嫌がらせでコウスケを王子にした。後悔はない。台本そのものの骨格はオレが書いて、ほとんど当て書きとはいえ、セリフに違和感がないか当人たちに確認してもらって修正しているからそこまで違和感のある口調じゃなかったとは思う。構想自体は去年の話を作るに当たって前提条件として必要だったから、それを形にしただけではある」

 

『ゴートン、何というかお疲れ』

『去年の劇だと設定はあるもののいきなりオーちゃんが覚醒したからなぁ。その辺の解説としてはよくわかる』

 

 去年のこともあるために、そして経験があるためにゴートンが台本を書くのは誰も異論がなかった。コウスケはああ言ったものの、彼ら4人で設定は固めてどういうストーリにするか、肉付けなどもかなり話し合っている。

 だからこそ、ゴートンとオーフェリアが恋仲になるような設定を受け入れた。というより、消去法というやつだ。唄上という苗字が残る時点で、勇者の子は残る。とするとカラグリオットで誰かと一緒になったということ。その相手役は必然的に主役級。

 そんな主役級を後輩の誰かに任せるよりは、同期が務める方が良い。そして前年の劇しかり、普段の関係値しかりゴートンしかいないとなって関係性は決定。あとはサポートメンバーにして、旅立ちやすいかつわかりやすさを優先してドロッセルはそのまま聖女に、コウスケは王子となった。

 新人の情報をゴートンはいち早く仕入れていて、その人たちをどのように入れようかと考えていたためにライバーの中ではかなり早く新人たちの人となりを知っていたと公表。デビュー前に事務所で面談をして劇に参加できるかも確認を取っていた。

 1年越しの大プロジェクトなために、動く時はかなりしっかりと動いていた。3Dお披露目も本人たちとほぼ同時期に知って、なら動かせるなと判断して台本を変えたりしていた。

 そんな裏事情もありつつ、最初の場面から話す。現実世界の喫茶店からだ。

 

「ここの2人は一番新人の2人に任せたわけだけど。もし2人がデビューしてなかったらオレとコウスケでやるつもりだった」

 

「セリフ増える上に、多分観客も困惑するだろうからって、やらなかったのは助かったぜ。ぶっちゃけ同じ顔の奴が異世界にいたらビビるだろ?」

 

『それはそう』

『あれはあれでシュールだったから面白かったよ。1人だけ3Dって』

『というかオーちゃんの新衣装。いきなりでビビったわ』

 

 オーフェリアの新衣装はトップシークレット。いきなり度肝を抜こうとする、2Dでも持っていない制服っぽい服にしたのはこの劇に合わせてのこと。3Dモデルは夏頃にはできており、この制作にエリサが関わっているということが発表された。

 エリサは普段の配信でも3Dモデルの作り方やモデル作成ソフトの使い方講座をやったりして、ミニキャラを作ったり、許可をもらったライバーの変顔を作って送りつけたりする。前職のゲームでのモデル作成を活かした技能だ。

 FORの3人はなんだかんだで技術力がある面々が揃っていた。

 オーフェリアが巻き込まれた魔法陣のデザインはイソラ作成のもの。彼女が今回の魔法陣系のスケッチを描いており、それをCGに起こしたのがエリサだ。色々なライバーが制作に関わっている。

 次は宗馬と亜麻井の商人としてのやり取り。ここはほぼ2人に任せてのアドリブだらけで、それで良いと了承を得て好きに任せた結果だった。着地点としてオーフェリアをいつもの3D衣装に戻せれば良いということで、あそこが一番自由度が高い場面だった。

 特訓場面はとにかくギャグにするようにリリにオーダーをして多種多様なやられっぷりを映像で撮ってくれたのはモブとしてのやられ役を散々演じてきた無名役者としての面目躍如だ。

 そして、初のネームド戦。FORとの対決。

 

「ぶっちゃけこれも、まともに戦ってたのはリリだけだしなぁ。シリアスとギャグの温度差が酷ぇや」

 

「戦いという意味でのギャグ描写はここまでで、リリからシリアスな戦いもありますよっていう分水嶺にしてたからな。さすが殺陣指導、動きが良い」

 

「リリさん流石ですよねー。ここのスクリーンショットなんてそれこそ威力のありそうな飛び蹴りですし。小さいながらも動きが大きいと威力が高そうに見えると言ってましたね」

 

「戦う時にはオーバーなくらいがちょうどいいと演技指導されましたね。小さな動きは遠くのお客様には見えないから、堂々と大きく動くと良いと。まあ、はっちゃけすぎて怒られていた方々もいらっしゃいましたが」

 

「大学生ノリなんだよなー。ポラさんとケインとKP7っち」

 

 次は、新たな街で喋れなくなった子供を思う母親と襲撃の場面。

 ネムリアのセリフはむしろ本人の希望で増えたという。彼女は遠方な上に本業もあったので大変だと思ったが、練習の時にはセリフを完璧にしてくれたために練習が滞ったことはなかったと賞賛される。

 

「あ、宗方のセリフは全部収録だ。演技ができなくてなぁ。本人もセリフを間違えそうってことで、ネムリア先生と雑談をさせてそれを切り取った。他の人のセリフが覚えられないって。動きは完璧なんだけど、演技はどうにもって感じらしい。まあ、アイツは殺陣が完璧だったから何も言うまい」

 

「今回はアドリブもなかったからな。あったらリリが泣いてた」

 

「違いないです」

 

『宗方への負の信頼がすごい』

『あの超人的な殺陣で全部お釣り来るからな』

『だと思った!アイツがこの短時間で演技が上手くなるわけがねえ!』

 

 ここでの襲撃で短い出番ながらやられていく人が多かったのは、正直な話が尺と、全員の練習時間をそこまで割けなかったためだ。基本全員忙しい上に、見せ場の殺陣があるので我慢してくれということに全員が了承。主役はあくまでゴートンたちなので後輩たちも出しゃばるつもりはなかった。

 そして操られていた夫婦役で、ドロッセルとオーフェリアがキャアキャア言い始める。

 

「ここ!ここは本当にビックリした!最初の台本でもそこまで設定を練っていなくて、ただ洗脳された男女だったんですけど、まさかKP7さんとハピハピさんの方から夫婦役にできないかって相談してきて‼︎」

 

「まさかですよね!殺陣としても脇役同士の戦いって感じでしたけど、最後にKP7様が介錯をして重なるように倒れる演出をしようとリリ様がおっしゃって!グッジョブでした‼︎淑女の皆様もあの場面は興奮されましたよね⁉︎」

 

『あれはマジでビックリした。てぇてぇじゃん』

『画面の前で叫んじゃった。オーちゃんとゴートン君のは予想できても、モブみたいな2人でそこまで濃厚な恋愛絡みがあるなんて……!』

『私、家族の前だったのに大声で叫んで両親に怒られた』

『冬コミの前なんだよ!原稿が、修正がぁ……!』

『そうだそうだ!冬コミにはどうやったって間に合わないのに、こんな時期にとんでもないもの送り込んできて……!二次創作作家泣かせだよ!』

『そういや年末は冬コミか』

 

 設定変更を頼んできたKP7とハピハピは、ユークリムといつもの関係で逆転をしてみたくて、ついでに短い出番で爪痕を残すには悲劇的な方が良いだろうと、恋愛要素を足したに過ぎない。

 それを見てリリとしても、主役の恋愛に繋げやすいから良いのではないかと意見を出して、ゴートンが納得。

 そうして勇者を庇うイベントと、勇者の力を奪うイベントへ進む。

 冬コミの話題がコメント欄にも多かったためにそれにも触れながら、1周年のイベントをなぞるように巻き込んだ勇者の力をどうにかするストーリーにしたという。

 

「去年も、オーフェリアの力で全てに終止符を打つストーリーだからこそ、今作もカラグリオットの面々はできるだけ自分たちの力でどうにかできるように動くっていう筋道はズラさずに行けたと思う。それにリゾマータは王族というのもあって、そこは人一倍責任感があるようにしたかった。それらが伝わっていると嬉しい」

 

「200年後には正教所属であっても神様のことは信じていませんからね。聖女の私が言うことではありませんが。それだって親友のオーちゃんを助けるために必要なことでした。今作では同じ聖女なのに真逆の、本当に敬虔な役をしたのも意図的ですね」

 

「今作の裏テーマが、割と『反転』になったのは当初からは想定外だった。演劇は全員で作るものだって改めて思い知らされたよ」

 

「わたくしも、特別な力を与えられた普通な一般人でしたからね。本来は一般人に偽装した特別な力を持つ人間ですのに」

 

『うーむ。マジで前作をじっくり見直したくなってきた』

『前作を見たくなったそこのあなた!なんと2周年記念商品の中にDVD・BD化した去年のイベントがあるぞ!』

『ダイレクトマーケティングぅ……』

『なんでコウスケたちじゃなくてコメントで商品紹介してるんだよ』

 

 そして反則級のイソラの登場。ハッピーエンドにするにはご都合主義と呼ばれても、彼女の力が必要だったと4人とも話す。現実世界に帰る手段として、コウスケと違う方法にするには、神の力しかなかったと語った。前年度とは差異を作らないといけないとして、そこで目に付けたのがクトゥルフ神話の関係者だ。

 神様ってどんなことができるのかをイソラに確認を取った上で、なら人間を元の場所に戻すことと、複製を作り出すこともできそうだとは理解した。

 最も、本当の神はそこまで慈悲深くないので、あんなに優しい神格だったのはご都合主義とも、イソラに釘を刺されたことも伝えた。

 勇者の力が戻って、最終決戦の魔王城へ。

 ここで驚かれたのは初めて見せるワイヤーアクションがチェリーになったことは、観客を驚かせられただろう。彼女もノリノリで手を振りながらゆったりしていて練習から楽しかったと言っていて、本番でも楽しそうにしていた。ワイヤーで飛んで映えるような動きをするものだが、それをせず空に浮かんでゆっくりしていたのはある意味真逆の魅せ方だ。

 

「ここで複数対1っていう、但馬さんには難しい殺陣を頼むことになったのは申し訳ないと思う。できるだけ但馬さんに負担がいかないように宗方とリリとオレたちで考えたんだけど。圧倒する演技は結構難しくて、どっしりとした構えに速い動き。それを再現するために但馬さん、この時期結構筋トレをしてくれたらしくて」

 

「私やオーちゃんにも動きの確認の連絡が来ていましたね。リリさんや宗方さんのお手本とどこが違うのかというのを比較して、本番ではかなりお手本に近かったですよ」

 

「演技の方はほとんど本人たちでしたので、指導も少なかったですね。新人の皆様、本当に手がかからない真面目な方ばかりで先輩として非常に助かっています」

 

『ま、真面目?チェリーと但馬が?』

『殺陣は凄かったけど、泥酔コンビが真面目?どこの世界線の話です?』

『最後の幹部に相応しい大立ち回りだったよ!』

 

 チェリーが超常の存在でギャグ落ちをしたものの、今のライバー生活に関わるような伏線のような会話を挟んだのもチェリーたちのリクエストからだ。本人たちが演じやすいのであれば、本人たちの希望は全体的に取り込んでいる。

 チェリーたちが退場した後、主人公の復帰とリゾマータの王族バレ。呪術師という設定を活かしつつ、しかも勇者パーティーに同行する世界の危機に駆けつけてもおかしくない設定は何かと全員で話し合い、くじ引きの結果王族になった。

 ゴートンの意見が採用された場合は普通に危険な研究をしていた危険者で罪人という設定で行くつもりだった。だが主人公の恋仲になるのが犯罪者というのはどうなんだということで意見が割れて、同数だったためにくじ引きをして、コウスケの意見が採用された。

 

「ちなみに200年経ったので、現在のゴートン・リゾマータと唄上オーフェリアは王族ではないので悪しからず。傍流ではあるものの、血筋に正統性は無くなっている。これ公式設定なので」

 

「今はただの占い師と花屋の娘です。宜しくお願い致しますね?」

 

『了解!』

『オーちゃんの教養の深さを王族の傍流だとすればそれはそれで話が通じちまうからチクショウ!』

『花屋の娘にしては気品とか隠された力があったっていうのはこの伏線があったからか!』

『それって後付けでは?』

『細かいことは良いんだよ!』

 

 凄い決め方で決まった設定に突っ込みつつも納得をして、コメントに賞賛されたことでコウスケは鼻高々になっていた。

 そして最終戦へ。魔王の影のアバターはスタッフに作成してもらい、声を一鉄に担当してもらったのは大人で雰囲気があったため。ナレーションを務めていたこともあって、この物語を俯瞰的に見ている存在が魔王だった、と少人数でも思わせられたら勝ちという仕込みだった。

 実際SNSではそう書き込んでいる内容もあったので、仕込んだ意図を汲み取ってもらえたことはキャスティングもしたゴートンからしたら嬉しいことだ。

 そして魔王の影が幻影であり、真崎が本当の魔王だったということにはかなりの人数が度肝を抜かれていた。今まで味方として殺陣もやっていた人間が魔王というのは、真崎のいつものライバーとしての配信を見ている者こそ驚いただろう。

 

「真崎さんのラスボスは最初から決まっていましたよね。ラスボスを出来そうな人は誰かという話で、スタッフさんも合わせての投票でぶっちぎりの1位でした」

 

「他にもポラリス様とKP7様、それにリリ様も候補に上がっていましたが、前者2人は練習時間があまり確保できないということで断られてしまって、リリ様は純粋に頼んでいることがあ多かったことと、やはりFORの皆様で動いて欲しかったのでラスボスは見送られました。殺陣はやっていただいたので、大変さは変わらなかったかもしれませんが」

 

「味方に居てもおかしくない性格と評価で、裏切ったら驚きが一番大きいのって、まあ真崎さんだよなって」

 

「本人もモチベーションが高かったので即決。台本上でも彼女の役のセリフだけ少なめにしてあくまで戦闘で補助してくれるだけの人というイメージを持つように、極端に空気を薄くしている。冒頭から見直すと真崎はほとんど話していないはずだぞ?」

 

『マジ?』

『確かにセリフは少なかったかも……?』

『お助けキャラだと思ってあまり気にしてなかったわ』

『宗方も一瞬とはいえ味方になってくれたし、普通にパーティーの一員として見てたわ』

 

 そして冒頭や劇が終わった後にも言ったことだが、最終決戦は殺陣の動きは入れ替わっていて、真崎はリリが、オーフェリアは宗方が担当していた。ワイヤーアクションをしながら逃げる真崎の姿と、素の力でジャンプして斬りかかっているスクリーンショットを見せられて、全員が宇宙猫になっていた。

 実際にその動きを現場で見ていたコウスケたちも、宗方の動きに驚くしかなかったのだ。

 

『マジでこれ、ただジャンプしてるだけなの?ワイヤーなし?』

『あの劇場、1個しかワイヤーないから……。消去法的にそうなる』

『コウスケたちも驚いてるんだから、本当なんだろうけど……。宗方はさっさと普通校に編入して陸上部に入れ。世界を塗り変えろ』

 

 殺陣指導陣の派手な決着。そしてオーフェリアが真崎に剣を突き刺した後から入れ替わりは終わって本人たちに戻った。

 最後は始まりの喫茶店で終わらせることで、日本で悲しむ人が出ずに終わるという結果で終劇となる。カラグリオットに残った方も、日本に帰った方も本人であり、全く同じ存在が別の世界に同時に存在するような設定だということが語られて、劇の振り返りは終わる。

 その後のこととなると、劇のカーテンコールの順番だ。これは見てわかる通りデビューの逆順。最後に歌うことも決まっていたために、全員が出てきて、劇の終わりのお決まりである全員で手を繋いでのお辞儀をやってみたかったと全員で話した。

 歌う2曲の選曲はドロッセルが。歌詞割りも担当し、どのパートを誰が歌うのかも決めたという。

 基本は同期同士か男女で分けて、あとは盛り上がりそうなところは全員で歌うことにしただけ。全員に歌う練習もしておいてと頼んだだけで、ダンスも何もなかったのでリハーサルで歌っただけで、それ以外に合わせて練習もしていなかった。

 最初の曲の『ムーンクライシス』はエクリプスの代表的な曲であり、2曲目の『Rise My Self』はリリが作った曲ではあるがアップテンポの盛り上がる曲なので会場はかなり盛り上がっていた。

 どっちの曲も動画サイトにMV付きで上がっているので、観客も予習は問題なく、コールアンドレスポンスもしっかりとできていた。

 

「振り返りはこんなところかな。改めて3年目に突入したわけだけど、全員何か意気込みとかあるか?ドロッセルは?」

 

「健康に皆仲良く、ですかね。今回のような劇ができたのは皆さんの協力のおかげですから。これからもほどほどに皆さんに無茶振りをしていこうと思います!」

 

「するな。コウスケは?」

 

「怒られないように生活習慣を気にしまーす。いや、遅刻癖は本当に減ったんだぜ⁉︎ここ最近はドロッセルにも怒られてないし!」

 

「あら?私の記憶が正しければ11月の練習の際に遅刻してきて怒ったような?」

 

「それが今のところ最後だろ⁉︎マジで来年は頑張ります!」

 

 いつもの聖女と勇者コンビのやり取りも見えつつ、オーフェリアの件になる。

 彼女は割と深刻な声色で目標を告げた。

 

「ちょっと金銭の扱いに気を付けようかと……。散財でもないですし、収支で言ってもプラスなのですが、お金遣いが荒いと指摘されてしまって……。大きな買い物は控えようと思います!」

 

「無理じゃね?」

 

「オーちゃん、結構私たちと感覚が違うからねえ」

 

「年末年始は出費が嵩むし、毎年何かしら買ってるような気がするが……?」

 

「来年は無駄に『ウィザーズ&モンスターズ』のBOXを買い漁ったり、限定商品を複数予約したり、それこそ最高レアリティのカードを買い漁ったりしませんからー‼︎」

 

「「「無理だろ(でしょ)」」」

 

 どれもこれも前科があるため、3人全員から否定される。何度も同じことをして、毎回呆れられているのだから来年になっても変わらないだろうと思われた。

 最後に枠主のゴートンの出番になって、目標を聞かれた。

 

「今回全員に大きな貸しができたから、何かしらの形で返せたらなと考えている。そういう恩返しの年にできたらなと」

 

「まあ、それは全員に言えることなので。ではここで急に告知です!ゴートンさん、例のサムネを!」

 

『告知⁉︎あるの⁉︎』

『マジで急じゃん』

『何やるんだ?』

 

 ドロッセルに言われて画面操作をするゴートン。

 表示されたのは笑顔の4人に、サンタ帽を被った姿。そして『クリスマスプレゼント会!』と赤字でデカデカと書かれた上に、12/24 18:00~と日時も書かれていた。

 要するにクリスマスイブにクリスマスプレゼントをあげようという会だ。

 

「というわけで、ライバー全員でビンゴをやっていただき、そこでビンゴした人から私たち4人が準備したプレゼントを渡していく会です。結構豪華なプレゼントを用意しましたよ」

 

「これの中身で言うと、オーフェリアが用意した物はかなり高額なような……?」

 

「準備をしたのは2周年イベントの前なのでセーフです!」

 

「もうなんでもありだな」

 

『クリスマスに予定できたー!ありがとう!』

『皆で交換とかはあるんですか⁉︎』

『ケーキ予約して、見ながら食うか』

『チキン予約しなきゃ!』

 

 イベントの振り返りと一緒に、次の動線を用意して相変わらず話題を作り上げたカラグリオット組。

 面倒な彼氏彼女がいるのかという邪推を躱すためのイベントであり、同時に少しでもエクリプスの宣伝をして昨日の劇を振り返ってもらおうという施策だった。

 その試みは見事に当たり、2周年イベントとクリスマスでSNSで話題にすることができた。イベントの有料チケットを改めて買う人もいて、振り返り配信としては満点の結果だった。

 

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