元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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案件配信 『駆動戦士ズァーク Next Z VS』最新情報発表会!

 今日は案件配信。大体の場合は案件先の企業様がエクリプスのスタジオに来て、俺たちがいつもの場所でプロモーションをつけて配信して、という流れで実施するのだが、今回は別で俺たちエクリプス側が案件の会社に案内された。しかも開発部どころか全部署がある、本社として登録されているその会社のみで経営されているビルであり、そんなところに入るのにカジュアルな格好で行くのはどうなんだと考えた結果、全員カジュアルスーツとかそういう失礼のない格好で向かった。

 関連会社も一纏めに入っているテナントのようで、何階に何があるというフロアガイドが知っている会社の名前しかなくて驚いたくらいだ。

 外見が凄い綺麗なビルだと思っていたら、ロビーに大きな滝があって、本当にゲーム会社の本社なのかと疑ってしまった。超豪華なホテルと場所を間違えたんじゃないかと思ったほどだ。

 あと今回ばかりは女装をしていない。そもそも女性用のスーツを持っていない。

 場所も場所で普通にオフィス街だし。そういう理由もあってちゃんとしたスーツにコートを着てきた。俺はやったわけではないが、就活とかはこういう感じらしい。側から見たら就活とかインターンの集団なんじゃないだろうか。もう年末だけど。

 

 スタッフさんもライバーも全員きっかりした格好で受付に行き、そこでビルに入るためにゲストカードを発行してもらって、全員中へ。かなり有名なゲーム会社ということもあって様々なIPのポスターや大きな模型にイラストなどが辺り一面に展開されていた。

 撮影禁止なのでスマホを出すこともないが、見たことのないイラストなどもあったのでとても興味を惹かれる。

 案内されているために大きな声を出すわけにもいかなかったので目に焼き付けることにする。ちなみにこの案件に選ばれなかったライバーからはどんな様子だったか教えてほしいと言われているのと同時に、めちゃくちゃ羨ましがられた。有名ゲーム会社の本社に来る機会なんてそこの社員にならない限り、ほぼあり得ないんだから。

 楽屋じゃないけど使用する待機室と配信するスタジオ、それにトイレなどを紹介されて、リハの準備や今日の案件の内容を改めて確認する。今回の案件の企画者やディレクターの方と話して、紹介するゲームの試運転をする。スタッフさんたちは配信の準備をしているのに、俺たちはゲームをやっているというのがなんとも。

 操作の練習もできて、リハも終わって、休憩室でライバーだけとなって今回の案件というかこの会社のことを話していた。

 

「いやあ、流石RPGの老舗。知ってるキャラクターがいっぱいだったよ」

 

「RPG以外にも今回みたいに格ゲーも取り扱っていますからね。とはいえ『ズァーク』は権利関係を持っているからでしょうけど」

 

「いやあ、人生で何したらBN社の本社に来られるんだって。一鉄さんなんてこの前デビューしたばっかりなのにこんなことになって驚いてるんじゃないの?」

 

「驚いているとも、ジョン君。それこそ子供の頃からやっていたゲームを作っている会社だ。エクリプスが良いところなのは知っていたが、まさか『ズァーク』が好きだというだけでメンバーに選ばれるなんて」

 

「でも全作見てるんでしょ?漫画雑誌を定期購読している人以上に適任者はいないって」

 

 今回のメンバーはジョン先輩にハピハピ先輩に一鉄さん。ジョン先輩は格ゲーの上手さから、その他のメンバーは配信で『ズァーク』関係の話をしていたからだ。エクリプスは最近2周年イベントで盛り上がったこともあって、色々な会社から案件を紹介されているらしい。

 今回の件は結構前から決まっていたが、ここ最近はエクリプス宛に営業にやってくる人が多いようだ。どうしたって一番チャンネル登録者数が多いドロッセル先輩が指名されやすく、次いで1期前半組が指名されているようなのだが、割と露骨な営業も多くて対応しているスタッフさんも辟易しているらしい。

 それこそこの商品を紹介してほしい、くらいで商品の名前と画像しか書いてないメールが来たり、電話だけで全部を話そうとしたり、ドロッセル先輩の予定を伝えたら舌打ちしながら帰ったり。他のメンバーではダメだと怒鳴ったり。

 営業の質が悪いと社長が嘆いていた。ちゃんとした営業であれば話を聞いて、お互いの折衷案を決められるのだがそこまで行かないケースが増えてきたと。有名になるのも問題ってことだな。

 準備が終わって、配信の時間になって。俺の進行で案件が始まる。

 

「皆さん、初めまして。Vtuber事務所エクリプス所属の絹田狸々です。僕が今回の司会進行を務めさせていただきます。この度はBN社様より『駆動戦士ズァーク Next Z VS』の案件をいただきました。本ゲームの新情報もありますので、是非最後までご覧いただけますと幸いです。ではジョン先輩から自己紹介お願いします」

 

「エクリプス所属、ジョン・スミス!格ゲーが好きで『NZ』もゲーセンで実際に遊んでいるぜ!今回は新情報があるってことでめちゃくちゃ楽しみにしてきました!よろしくぅ!」

 

「同じくエクリプス所属、ハピハピ・ガンスレイブです。普段はFPSメインですが『ズァーク』のアニメ作品は全て見ていますし、ゲームも遊んでいます。『NZ』で好きな機体は『トロモレーゼ』です、よろしくお願いします」

 

「エクリプスの新人料理人、頑固一鉄だ。『ズァーク』はアニメ作品全制覇、漫画もおそらく大体読んでいるはず……。好きな機体は『AE』の『ズァーク ダブルバインダー レプリカ』です。よろしくお願いします」

 

「それ、ヴァリエーション機体だから外伝では……?僕の好きな機体は『ズァークMk-Ⅱ 連合カラー』です。よろしくお願いします」

 

 全員の自己紹介と、好きな機体などを話していく。

 今回の案件は以前俺の配信でやった『ズァーク』の格ゲーの最新版だ。今でもゲーセンで稼働していて、格ゲーが好きな人や『ズァーク』が好きな人が結構な頻度でプレイしている人気ゲームだ。どこのゲーセンに行っても置いてある人気作で、操作できる機体は200機を超えているという大ボリューム。

 マイナーな機体とかも収録されているので『ズァーク』ファンならどれか好きな機体はいるだろうと言われている。強い・弱いはどうしてもあるが、その弱い機体だってアップデートとかで修正されて限りなく良いバランスで運営されている。

 今日はそんなゲームの、年明けにあるアップデート状況を伝える案件配信だ。

 コメント欄も普段Vtuberなんて見ない層も見ているようだ。ゲームの最新情報ということで、いち早く情報を知るにはこの番組を見ないといけない。後から公式で出すショート動画で確認してもいいだろうが、最速となるとやはりこのライブ配信を見るしかない。

 人気ゲームだからこそ、コメントもちょっと荒れているなと思いながらそのまま進行する。

 俺たちエクリプスのファンの場合はこのゲームを知らないかもしれないので、まずはゲームの紹介。1クレジット100円で遊べて日本全国のゲームセンターで稼働している、実はゲームセンターのゲームでは売り上げNo.1タイトルだったりする。

 そんな基礎的な情報を話しつつ、あんまり引っ張ってもということなので早速、キュー出しをして今回のアップデート情報動画を映すことになった。

 

 動画ではまず上方修正の情報。既存の機体、『ズァーク プライマル』という緑色の万能機の全体的なダメージ上昇と移動速度の上昇の情報が発表される。動画の下の方に「※開発中の映像です」という注意書きと共に、対戦動画が流れる。

 パイロットの声優さんの気合の入った演技と共に動く機体はとてもかっこいい。3Dモデリングも細かく、ちゃんと機体ごとの大きさの比率も拘っているので見応えのある映像だ。本当に上手い人の映像だと、アニメやゲーム本編のような超人的な動きを見せてくれるので、たまに全日本大会の映像を見たりする。

 2機目の上方修正は『トロモレーゼ』という、ハピハピ先輩が挙げていた射撃機。敵の機体ではあるものの、射撃特化で主人公を追い詰めたこともあって人気の機体だ。この機体があったからハピハピ先輩が呼ばれている。

 こちらは弾数の増加と射撃武器の届く距離の上昇。あとはHPの微増がアップデートの内容だった。

 その次は新規実装機体。最新作の『ズァーク HE』から追加の『ズァーク ガストロフ(大気圏内仕様)』。ライバル機の実装だった。こちらは1月に公開されるエピソード3に登場する統一連合側の正規ズァークであり、作品のお決まりのようにライバル仮面キャラが使用する。

 エピソード3の予告にも出ていたので、こちらは順当に実装といったところだろう。なお、主人公機の『ズァーク エプシロン』は映画公開の2ヶ月以上前にこのゲームに実装されている。

 

【どうしたァ、偽物!貴様のズァークは所詮紛い物、こちらこそ統一連合が作った最新機!デッドコピーが囀るな!】

 

 劇中でも印象的なセリフを言いながら戦う映像に、コメント欄も大盛り上がりだ。映画公開前から使えることと、動き的にも劇中の行動を再現していそうで期待が高かった。

 スタイルとしては近距離主体のスピード型ではあるものの、サブ射撃でミサイルを大量に地上から上空へ発射できるなど中距離が無理なわけではない。それに一応レーザーライフルを持っているため、遠距離への牽制もできなくはないという、バランスが悪いとは絶対に言えないような仕様だ。

 この機体の操作は近距離戦が得意なジョン先輩に任された。

 そして次の機体。こちらの方がサプライズ感が強いと思う。企画打ち合わせの時にジョン先輩を除く全員で驚いたからなぁ。

 

【ガウルも連合も……!僕たちの島から出ていけー!】

 

 その幼い少年の声の次に表示されたのは機体名『ナビィ・バルカン』、作品名としては『駆動戦士ズァーク 策謀の大地』。パイロットは準主人公と言ってもいいソルという十歳くらいの少年。

 ナビィ自体はガウルと戦争をしている統一連合の一般的な量産機だが、この機体は統一連合でもガウルでもない地元ゲリラが運用している機体。それに乗り込んでいる、正規パイロットでもない少年だ。

 そして唯一、量産型とはいえズァークを倒した機体とも言われている。

 この機体は予想できていなかったのか、コメントはさっきの『ズァーク ガストロフ(大気圏内仕様)』より盛り上がっている。

 

『えっ、1500コストで新規⁉︎』

『しかもパイロット、ソルの方⁉︎アンナじゃないんだ⁉︎』

『うおおお!ネットで言われてるソル最強説を、俺たちが叶えられるってこと⁉︎普通ズァークに勝った後のボロボロの状態でナビィ軍団を倒せねえって!』

『いやだって、間宮沙希って引退してるだろ?そもそも変声期前の声で今更収録できるわけもなく……』

『ということは何か別のゲームで録っておいたボツ音声の再利用?』

『かもしれん』

 

 このゲーム、2vs2が基本で、6000コストを失うと負けというルールで機体は1500、2000、2500、3000のコストで割り当てられる。1500の機体は4回やられないと負けないのだ。その分火力とHPが低めに設定されているものの、回数を多く倒すのは面倒だったりする。

 そのためコスト1500機を使われると相方のコストが高い方を集中砲火するのが鉄則なのだが、そっちに集中していてもチクチクと削られたら厄介なわけで。結構低コスト機というのはルール的に嫌われがちである。

 あとは有名な機体は強くしたいということもあって、主人公機とかは基本3000コストで実装される。3000コストの強い機体に勝つには、腕か同じくらいの性能の機体を使わないといけない。機体の使用率とかのデータを見ると、使用率上位は高コスト機ばかりだ。

 その辺りを危惧しての新規1500コスト実装だという。

 動画の最後に1/4アップデートと表示されて、動画が終わる。配信画面が俺たちの姿を映したものに切り変わったのを確認してから話し始める。

 

「はい、ということで動画を見ていただきました。『ズァーク プライマル』『トロモレーゼ』の上方修正と、新規実装で『ズァーク ガストロフ(大気圏内仕様)』と『ナビィ・バルカン』でした。まずは推し機体としても挙げていた『トロモレーゼ』のことをハピハピ先輩に聞いていきましょうか」

 

「上方修正やったね!弾数が増えるのは本当に嬉しいし、当たり判定の距離が伸びたのも射撃機としては本当に痒いところに手を加えてくれたなって感じ!あとHP22上昇も、もしかしたら耐えられる攻撃が増えるのかなって思うと嬉しいな」

 

「『トロモレーゼ』は射撃機ということもあってHPは全機体の中でも低めですからね。続いて『ズァーク プライマル』のことを使っていたというジョン先輩、強化内容はいかがですか?」

 

「速度上昇は近寄るにしても避けるにしても、何にしても必須級だから上がるのは本当に嬉しい。あと威力上昇も万能機だからこそ、特化型にあまり競り勝てなかった場面って絶対あったと思う。そこが変わるから、多分使いやすくなるんじゃないかなって思うぜ!」

 

 2機の画像を出しながらそう話す2人。

 続いて新機体を1つずつ細かく紹介していく。まずは『ズァーク ガストロフ(大気圏内仕様)』から。ズァークらしくトリコロールカラーに、白と青が多めの配色になっている。特徴的なのは背中のバインダースラスターであり、大気圏内で高速で飛ぶためにデッドウェイトになることを承知でスラスターを増設している。ズァークでもなければ重量に負けてパワーダウンしているという機体だ。

 パイロットを演じるCVも発表されている。とはいえこれは映画の予告の方で既に公開されている情報なので不思議ではない。30後半にもなる有名男性声優の方だ。

 どのボタンが何の武装を使うかという紹介をして、その武装がどういったものかという静止画も見せて紹介していく。

 そしてサプライズであった『ナビィ・バルカン』。こちらは通常のナビィに現地調達の他の機体の武装を持たせた、そして修復のために連合とガウルどちらの機体も使っているために色も形もバラバラな、まるでパッチワークでやったような機体だ。

 いつぞやの模型同好会の時に俺が作ったプラモデルの機体でもある。

 技は地面にトラップを設置したり、肩に付いたバルカン砲の一斉掃射だったり。それ以外にもトリッキーなワイヤーアクションなどもあって戦える距離で判断するなら万能機だが、どちらかというと数少ないサポート機かもしれない。自分が倒すのではなく、味方の援護をするための機体が少ないながらもいる。

 今回の俺の担当だ。

 CVも当時のまま、間宮沙希と表示されていてコメント欄がやっぱりというもので溢れる。

 

「こちらのソルのCVなのですが、実は既に芸能界を引退された元子役の間宮沙希さんのボイス、過去作などの流用ではなく今回の新録になります。今回のためにわざわざ開発チームが連絡を取り、できるだけ昔のボイスに似せた声で収録してくださったようです」

 

「え、新録⁉︎だって沙希君ってもう大人になってるでしょ?流石に声変わりしてるんじゃない……?」

 

「開発チームも驚いたようです。本人からもコメントを頂いているので、そちらを代読させていただきますね。『皆様、久しぶりです。もしくは初めまして。元子役の間宮沙希です。僕が『策謀の大地』に参加したのは10年前、まだ子役として役を頂いて間もない頃でした。そんな中で初挑戦のアニメーション作品の声優、しかも僕も大好きなズァークの関連作品です。当時はとても緊張して、アンナ役の村川さんにくっついているだけの子供でした。今回『ナビィ・バルカン』をソルで実装するということで、昔の映像を見返して収録させていただきました。当時の僕の初々しさ、そして生きる場所を守るために年齢関係なく戦った戦士の声を、少しでも再現できていればなと思います。僕も実装されたら地元のゲームセンターで動かしてみますので、その時は皆さん、お手柔らかにお願いしますね?』以上です」

 

『し、新録?マジで?』

『どうやったら8歳の頃の声が出るんだよ⁉︎人体の神秘を体現してないか⁉︎』

『沙希君、芸能界復活してくれ!そんでまたズァークに出てくれ!』

『勉強、ひと段落したんじゃないかな?(チラチラ)』

 

 さすが一世を風靡した天才子役。コメントだけでこの盛り上がりよう。

 というか、本当にこんな子供の頃の声、今どうやって出したんだ?ボイスは一通り聞いたけど、新録って聞いて本当に驚いたし。

 そしてコメントにあった復活してくれというものだけど。多分声優で復帰して、最新作のズァークの主人公を演じてますよと言いたくなる。年齢と苗字が一致していて、あの才能だもんなぁ。予想している人もいるんじゃないだろうか。

 【SoF】で少年役と老人役を演じ分けていたし、今回もそんな感じで幼い少年を演じているんだろうけど。どっちとも声色が違うから意図的に声は変えてるとして。本当に百色の声色を持っているんじゃないかと疑ってしまう。

 機体の紹介が終わったので、実際に動かしてみようということでクローズドネットワークにある開発環境で対戦をすることになった。

 ジョン先輩が『ズァーク ガストロフ(大気圏内仕様)』、ハピハピ先輩が『トロモレーゼ』。俺が『ナビィ・バルカン』、一鉄さんが『ズァーク プライマル』だ。チームはランダムにして2回対戦をした。

 全員がこのゲームの経験者ということもあって、不甲斐ない試合にはならなかった。スタッフさんからコメントも好評だったと聞く。

 これで今年の案件は終わり。次の大きなイベントはクリスマスのプレゼント会だろう。

 

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