元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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5章 2024/6~
FPSでスナイパーを極めるぞー!


 六月に入って、今月もコラボやら案件やらが多数ある中、今日の俺は朝から夜までやることを決めていた。既に昨日の時点で内容は報告していたので協力プレイに参加したい人はもう用意してくれていることだろう。

 深夜からぶっ続けでやるよりは、朝から長時間やる方が健康的だと思う。休日ではなく平日に実施するのは平日が休みの人もいるからその少ない人のためにも平日にやる。こればっかりは運だと諦めて欲しい。

 今日やるのはFPS。以前ハピハピ先輩とKP7先輩とやったゲーム、『シャングリラ・サバイブ』だ。ちょっと諸用でFPSに慣れておくためにリスナーとやっておきたかった。

 朝6時から配信を始めるが、待機場でのコメントを見ると早くやりたいというコメントが溢れていた。俺のリスナーにもFPS勢がいるのか、ハピハピ先輩のリスナーが流れているのかわからない。

 ちなみにサムネはリスナーが防塵ゴーグルを着けて迷彩服を着てスナイパーライフルを持ったリリを描いてくれたのでそれを使用させてもらった。ファンアートを描いてくれるファンの方は本当にありがたい。こうやってサムネにも使えるし。

 配信を始めよう。

 

「皆さん、おはようございます。絹田狸々です。今日は久しぶりに『シャングリラ・サバイブ』に触れようと思っていたんですが、かなりの人数が集まってますね」

 

『リリ、おはよう』

『FPSやりたくて早起きしちまったぜ!早速やろうぜ!』

『今日有給で良かったー!』

『FPS民ワラワラで草』

『ハピハピの枠からハシゴですが?』

『あっちは倍率ヤバすぎだけど、リリの枠なら潜り込めるかなって』

『リリと組めなくてもリリをボコしても良いし』

 

 ハピハピ先輩も違うFPSをやってたのは確認したけど、あっちはランクマッチでランク帯をかけて行うマジモノの戦争だ。順位をキープするための本当の鎬をしていて、本当に命を懸けていると言われてもおかしくないほどの熱量でやっている。

 ちょっと前に参考になるかなと思って世界大会の様子を見たけど、大汗をかいて真剣にやっている様子を見たら本当に彼らはe-sportsをやってるんだなって思えるくらい激しいものだった。

 そこで活躍していたハピハピ先輩は本当にヤバいくらい上手いんだろう。

 

「ゲームの説明は良いとして、僕は今回スナイパー固定で行くのでよろしくお願いします。通話を繋げられないので不利かもしれませんが、まあ練習のランダムマッチなのでとりあえず楽しんでいきましょー」

 

『ゆるい感じ、了解』

『スナイパーか。ハピハピに勧められてたっけ』

『FPSやるのはハピハピがメインだろうし、ハピハピはスナイパーなんて焦れったいものやりたがらないから……』

『長距離支援タイプはどんなFPSでも欲しいからその役をリリがやるのは良いんじゃね?』

『早くやろうぜ‼︎』

 

 ルームIDを公開して、集まった人と一緒にフリーマッチに潜る。1マッチ終わったら入れ替わってもらい、数多くのリスナーとプレイすることを心掛ける。まあ、2枠しかなから割と激戦だとは思うけど、そこは激戦を勝ち抜いてほしい。

 初戦はアタッカー2、スナイパー1といういつぞやの構成と同じだった。俺に遠慮してスナイパーは使わないでくれているのかと思ったら、スナイパーはタンク同様不遇職らしい。

 

『アタッカーは速度もあるし、他のFPSに慣れてると一番オーソドックスなんだよ。だからランダムマッチとかだと空気読まなければアタッカー3人とかの構成にもなる』

『タンクとスナイパーは別の練習が必要になるから面倒で……』

『むしろ今回はリリが確定でスナイパーで助かる』

『タンクなんて誰もやりたがらないし。FPSなのに銃が撃てないって……』

『運営もバランス調整頑張ってるんだけどな。中々難しい』

『タンクなんて余計な役職があるのに『シャングリラ・サバイブ』が人気なのは動きが一番爽快だからなんだよね』

『だからこそ速度が普通で銃が使えないタンクがより見向きされなくなる……』

『どうせスナイパーの攻撃食らったら死ぬんなら速度特化にして突っ込んだ方が早いし強い』

 

「あー、色々あるんですね」

 

 このゲームの役職では速度がアタッカー>タンク>スナイパーで、攻撃力がスナイパー>アタッカー>タンクで、防御力がタンク>スナイパー>アタッカーという、一応バランスの取れた能力配置をしている。

 キャラによってウルトと呼ばれる必殺技とか微妙にステータスが違うが、ウルトの種類は限られているのでどんな効果があるかを覚えておけば割と対処できる。

 マッチが始まって周辺のアイテムを回収した後、俺は1人で草むらの中でしゃがんで別行動。どうせ通話ができないんだし、俺の声は配信で届いているだろうからそのまま声に出して伝える。

 

「FB36地点に3人。5秒後仕掛けるよ」

 

『索敵能力はアタッカーだけ低めに設定されてて、タンクとスナイパーはほぼ同距離だからな。キャラ性能にもよるけどほぼ誤差』

『リリの声が聞こえてるのは大きいかもな。このゲーム、通話機能ないんだろ?』

『というか、FPSが基本ない。口悪い人間が多すぎて誹謗中傷の裁判が起こって、全ゲーム撤廃した。海外の裁判で億を超える賠償金要求されたらしい』

『治安はなあ。ルームでのチャット欄も終わってるとは聞く』

『ゲーム次第。『シャングリラ・サバイブ』はチーターがいなければ割と平和』

『お、ヘッショ!ナイス!』

 

「移動します。スナイパーは倒せたけど気付かれた」

 

 先手必勝ということでスナイパーを一撃で倒して、アタッカー2人にもダメージを与えたけど倒せはしなかった。気付かれた瞬間に動かれたからそこまで狙いをつけて撃てなかった。

 全滅させなくてもダメージを与えられたので他のチームが倒してくれるかもしれないと前向きに考えて移動を開始する。川沿いに移動をしてまた草むらに隠れて、アタッカー2人が見付けたチームへ突っ込む。

 俺はそれを別角度から援護だ。

 

「ラッキーですね。タンクがいますけど、タンクが離れてる。アタッカーを撃ってしまいましょう」

 

 味方のアタッカー2人がアタッカーの探知範囲に入る前に俺が1人をヘッドショット。索敵をしていて足を止めた瞬間ならスコープ越しに撃つのは簡単だ。もう1人は逃げられたので追撃が少ししかできなかったけど、十分だろう。

 

「僕は残ったタンクの人を攻撃しますね」

 

『タンク孤立はあかんやろ……』

『通話がなければそんなもんかもしれん。アタッカーに追いつけんし……』

『一番速度速い役職はタンクにしないとあかんかったよな……』

『でも最近はスナイパー2、タンク1が熱いらしいぞ?』

『なんやその変態的な構成は……。巣穴に潜り込んでスナイパーを守り切って大火力で吹っ飛ばすパーティー?』

 

 タンクの人が防御スキルを使うものの、焼け石に水。防御力が高いだけあって数発耐えるが、危なくなったのかウルトを使って一定時間範囲内の味方が無敵になった。

 無敵なので撃っても弾丸の無駄なので無視する。回復されてもタンク1人で逆転するようなことはほぼできない。使えるのがもしもの時用に使えるコンバットナイフとかの近接武器だけで、それで倒そうとする前に遠距離からの銃撃の嵐で負ける。

 一時期コラボでレーザーブレードというめちゃくちゃ強い近接武器が実装されていた時はタンクが無敵を交互に貼って突っ込むゾンビ戦法が活発だったようだが、FPSではないだろと批判も集まるコラボだったようだ。

 その時以外タンクを使ったことはないという人も多いようだ。

 運営もどうにかしようと頑張っているようだが、空回りが多いらしい。そういうネタ要素も好まれているらしい。

 

「あ、ヤバい!見付かった!」

 

『逃げろ逃げろ』

『殺意高ぇー。見付けた瞬間ウルト使ってきたよ』

『多分ウルト2つ使ってるな。タンクの探知用の奴と、スナイパーの定点爆撃。その組み合わせが割と殺意高いんだよな』

『こう見ると組み合わせ次第では本当にタンクも使えるんだけどなあ』

『マジで操作が複雑なのと、他のFPSと比べて独自性が強すぎて……。1人だけ別ゲーやってんだもん』

 

「やられたー。あとは味方にお願いしますか」

 

 蘇生のようなシステムはないので、やられたら後は味方の視点を覗きに行くことしかできない。

 結果10チーム中4位だったのは久しぶりにしては検討した方だと思う。

 

「ウルト使う前に落ちちゃったのは失敗でしたね。『モルト』さん、『ポップK』さんありがとうございました。次の試合に行きましょうか」

 

『ウルトは1試合1回しか使えないからなあ』

『切りどころミスると終盤ジリ貧になる』

『けどこうやって抱え落ちするくらいなら使った方がいいというジレンマ』

『次はもろたでー!』

『もう埋まってるンゴ……』

 

 次のマッチでは練習していた寝そべりながらのローリングを披露して相手の狙撃を避けてカウンターをかましたり、武器入れ替えを使ってしまってスナイパーライフルじゃなくサブマシンガンを握ってしまったところを狙い撃ちにされたりという失敗もしつつ、とにかく練習を積んでいった。

 お昼過ぎあたりのマッチで初めてチャンピオンになることができて、思わず雄叫びを挙げてしまった。

 

「よっっっっっっし‼︎チャンピオンだー!」

 

『おめ!』

『GG!』

『¥800 チャンピョン代』

『スパチャナイスぅ!』

『それ誤字だよな?ネタか?』

『リリのスナイプも上手くなったなあ』

『ワシが育てた』

『誰だお前』

 

 ぶっ続けで8時間くらいマッチをしていたところに、チャットアプリに通知が来る。なんだろうと思っているととある先輩に通話を繋げてくれと言われたのでパソコンで通話アプリを立ち上げて音声を載せる。

 

「リリ、FPSやるなら声かけてよー!」

 

「ハピハピ先輩、お疲れ様です。でも僕、事前に告知してましたよ?」

 

「それは見逃したウチが悪い!ということで混ぜろー!」

 

「じゃあ新しく部屋を建てましょうか。ハピハピ先輩、深夜まで配信をしていましたけど、体調は大丈夫ですか?」

 

「サンドイッチとエナドリぶち込んだから全快だよ!それより敵をぶっ潰そうぜ!」

 

『強制コラボw』

『枠が減ったなあ』

『リスナーで部屋作ればいいべ』

『リリのタグ付けてSNSで参加者募集してるのいるし』

『リスナーで集まったけど負けたわ。やっぱ通話がないと咄嗟の判断ができなくて……』

『状況わからないよな。こうやってコミュ障は除外されていくんだ……』

『むしろゲーム内通話がないからちょっとやらかしてもバレへん』

 

 ハピハピ先輩が参戦。この人、本当にFPSが好きだなあ。

 まあ、今日やってるのもこの人のお願いを聞いてるからっていうのもあるから、ちょうど良いけどね。

 通話をしながらの方が連携が取りやすいし。

 お昼過ぎということでハピハピ先輩も疲れなどがなかったのかめちゃくちゃに動き回ってた。というかトップランカーがいるのは卑怯というか。海外勢に「Oh No~!」ってチャットを貰ったし。

 まさかの初回からチャンピオンとか。

 

「リリ上手くなってんじゃん!射撃能力があるスナイパー欲しかったんだよねえ!」

 

「恐縮です。ハピハピ先輩は本当に同じキャラ使ってます?動きがヌルヌルで怖いんですけど……」

 

「PCのスペックが多分エクリプスの中でも一番だからね。FPSに勝つために周辺機器を弄るのは必須だよ。競技プレイヤーのスペック調べてみたら良いかもね」

 

「やっぱりそこにお金をかけなくちゃいけないんですか……」

 

『3桁万円なんて普通らしいからな。あの界隈』

『ゲーミングPCは拘ったら際限なくカスタムできるから……』

『賞金の使い道に機器の強化を挙げる人の多いことよ』

 

 スピード特化のキャラを使っているけど、回避がヌルヌル過ぎて全然相手の攻撃が当たらないハピハピ先輩。アレ、相手からしたら恐怖だろう。そこで錯乱しているところに俺に撃たれてやられる人が多かった。

 アタッカーの中でもスピードが速いキャラなので防御力と攻撃力が落ちているのに、彼女のキャラコンとエイム力によってひたすらにHPを刈り取る高速移動死神でしかないんだよな。

 で、ハピハピ先輩が暴れてヘイトを集めてくれるから遠くから俺が狙撃をする余裕があると。通話で意思疎通にタイムラグもないからやりたいことがやれる。

 前の時はわからなかったけど、前線に1人暴れる人がいるとスナイパーとしては大分楽だとわかった。

 

「リリがブロンズ帯にいるのは卑怯だなぁ。ランク戦はしてないんだろうけど、訓練場はどれくらいやったの?」

 

「え?全部やりましたよ。この前は基本操作だけでしたけど、今回久しぶりに操作するのでソロモードのスナイパーは全部クリアしました」

 

「全部?マジ?あの鬼畜難易度のやつを?」

 

「もしかしてソロモードってめちゃくちゃ難しい奴ですか?最後にワラワラと出てくる敵を薙ぎ払うのは大変でしたけど、『ズァーク』の格ゲーと比べればソロモードは簡単でしたけど……?」

 

「あれ、熟練者でもやらない奴。ランクマとかの方が楽しいし、アレクリアできるなら初心者じゃないから」

 

『リリのやってたあの格ゲー、筐体の奴と同じ難易度だからお金チュッチュモードとか蔑称されたやーつ……』

『ガキの小銭巻き上げた悪魔のソロモードと比べるなって』

『格ゲーなのに接近戦がほぼ効かないラスボスぅ……。そのせいで遠距離射撃機が最適なんだけど、その前に近接最強機体を置く罠……』

『なるほどね?リリはそこでスナイパー技能を学んだわけか。……元は格ゲーだよな?』

 

 あのソロモードは本当にキツかった。何度リトライしたことか。当時の高校の同級生に手伝ってもらって2人プレイでどうにかしたけど、1人だとクリアは難しかっただろう。

 難しいゲームはアレが基準になってしまった感じがあって、今作のソロモードはそんなに難しくなかった気がする。基本動作をしっかりとできていれば距離を取って撃てば倒せたんだから。

 夕方までやった結果、ハピハピ先輩が暴れまわった結果連戦連勝。やっぱこの人、世界ランカーだけあって上手すぎる。自分が上手くなったと勘違いしそうだ。

 もう配信時間が枠いっぱいになりそうだったので締めの言葉に移る。

 

「ハピハピ先輩、ありがとうございました。何か告知ありますか?」

 

「んー、また今度リリとはコラボする予定なのでお楽しみにってことで」

 

「そうですね。今月中にコラボがありますのでお楽しみに。僕からですが明日は3期後期組の2人とFORでコラボ予定です。で、土日はちょっと配信を休む予定なのでよろしくお願いします」

 

『お疲れー』

『リリの長時間配信久しぶりだったな』

『今日は夜配信なしか。おやすみー』

 

 明日はあの問題児2人も合わせての配信なんだよな。

 俺に手綱を握れるだろうか。暴走、しないかなあ。

 

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