元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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話題のゲーム、1周年を記念に初見プレイ!

 結局、運営からオンラインマッチができるパッチは配られなかった。そのため練習場に篭ったり、CPU戦で各種ルールを試しつつ、現状パッチの状態を確かめるしかなかった。

 明日に大会を控えたために、今日は練習をせずに各々自由に過ごしていいということになっている。なので配信をしている人もいれば休んでいる人もいる。俺は休もうかとも思ったけど、同期2人に誘われたので夜に短い時間だけど配信をすることにした。

 息抜きになると思って好きなタイトルということもあり3人で配信をする。とはいえ配信画面を用意しているのは霜月さんだけで、俺と水瀬さんは枠を用意していない。マルチでやるまで画面の操作をすることがないから枠を立てなくていいだろうと判断した。

 今日やるのは『ソラソラ』と呼ばれるアプリゲームだ。スマホでもできるものの、マルチプラットフォームでできるゲームなので据え置き機でもできる。アプリをあまり重くしたくないので俺は据え置きでやっている。霜月さんも水瀬さんも同じ理由でスマホには入れていない。

 スマホ専用ゲームをやろうと思ったら容量が足りなくなる。据え置き機やPCでできるのであればそっちでやる方が良い。スマホなんて簡単に容量を増やせないんだから。

 配信が始まる。

 

「はい、こんばんは〜。霜月エリサです。今日は今月リリース1周年を迎えた『ソラソラ』を初見プレイしていきたいと思います。マルチがあるということで同期を呼んでます。夏希からどうぞ〜」

 

「はーい!同期の水瀬夏希です!『ソラソラ』は豪華声優陣に惹かれてリリースしてすぐ始めました!まあ、何回かプレイはしてるし雑談でも話してるから知ってると思うけど、メインストーリーは最新まで進めてあります!今日は珍しくね、エリーに先輩風をビュンビュン吹かせていっちゃおうかなって!じゃあ次、リリちゃん」

 

「皆さんこんばんは。絹田狸々です。僕も雑談配信でプレイしているので結構やり込んでいる方のはずです。今日は息抜きがてらの参加なのでメインは水瀬さんに任せる予定です。宜しくお願いします」

 

『『ソラソラ』1周年か。早いな』

『最近のアプリゲームは1年保たないことが多いのにようやっとる』

『マルチプラットフォームで展開してるから普通のアプリゲームとは結構違うと思うけど……』

『昨今のアプリゲームはリリースと同時にPC版も出すからそうでもない。アプリの容量とか、配信者に向けてPC版はあれば喜ばれるから』

 

 『ソラソラ』、正式名称『空を()くは天空騎士団』というゲームだ。オール3Dグラフィックの大変綺麗なグラフィックのゲームであり、シナリオが泣きゲーということでシナリオ・キャラ・グラフィック全てで高評価を受けて去年の新進気鋭やるべきゲーム大賞というものに選ばれているゲームだ。

 実際シナリオもコンスタントに発表されており、イベントも豊富なのでユーザーに飽きが来ず楽しめているという評価が多い。俺も毎日のデイリーミッションだけはどんなに忙しくても欠かさないようにしている。

 そんな『ソラソラ』を霜月さんがプレイしようということなので、オブサーバーで参加することにした。

 

「前から評判は知ってたんだけど、やるタイミングが掴めなくて。今月で1周年とは聞いていたんだけど今月は色々と忙しくてこんな月末になっちゃいました。あたしも忙しかったんだけど、リリくんも大丈夫?無理してない?」

 

「丁度良い息抜きですよ。明日に備えて好きなゲームをするだけです。僕は基本マルチの時に手伝うくらいなので、ゆったりしながら霜月さんの配信を見てるだけですよ」

 

「そっか。じゃあメインは夏希、お願いね」

 

「合点承知!それじゃあ早速プロローグを見ていこうか」

 

『同期てぇてぇ』

『リリ、マジでお疲れ様……。この2週間、毎日8時間以上配信してなかったか……?』

『メンバーの案件があった日が2日あったから、それ以外の日は8時間以上だな』

『明日は対人戦だから、あの理不尽NPCを相手にしなくて良いのか。勝ったな』

『いやいや、プロチームはそれで金を貰ってるんだから強いんじゃね?』

『めっちゃグラフィック綺麗やん!これアプリゲーってマジ⁉︎』

『メインは据え置き機の方だから。アプリだとスペックによって爆熱ホッカイロに早変わりだぞ』

『このグラならそうなってもしょうがないわ』

 

 世界は魔物がありふれている。そして国家間の戦争もある物騒な地上。

 そんな地上に嫌気が差し、人々は空を目指す。空に浮かぶ空島に移り住み、空で自由な生活を始めていた。そんな空と地上でも新たな諍いが起こり始める。

 そんな中、まだ開拓されていない空島を求めて天空騎士となり自由を求める主人公が──。というのがプロローグだ。ここで主人公を男女どちらかから選び、物語が始まる。

 男女で変わるのは見た目と声優さん、それに装備できる防具と衣装のグラフィックが変わるくらい。性能差は一切ない。霜月さんは女の子を選択。

 この女主人公、キャラクターボイスが福圓梨沙子さんだったりする。宮下智紀さんの奥さんだ。この人と配信のチャット欄やSNSで会話をしたというのがなんとも不思議な気分だ。

 主人公が1人で村を出て新しい空島を探そうとして飛行船に乗ったところで魔物に襲撃されて戦闘チュートリアルが始まる。

 リアル戦闘システムで、ターン制ではないのでプレイスキルが出そうだが、よっぽどの下手でもない限りクリアできるように結構難易度は簡単にされている。難しいのはメインストーリーのボスと、レイドやイベントなどの一部の敵。

 シナリオを楽しむだけならゲームが下手な人でも楽しめるようになっているのも他の人に勧めやすい要素だろう。

 ゲームが上手い霜月さんはすぐにチュートリアルで動きを覚えて瞬殺。RPGとかをやっていればつまづく要素もない。

 この後戦闘ができないヒロインキャラと会って、プロローグはおしまい。ここからはガチャを回せたり、マルチ要素であるレイドに参加できたりする。まずはプレゼントボックスから数々のプレゼントを貰って、スタート記念の10連ガチャがキャラと武器どちらも1回ずつできるのでそれを回してもらう。

 

「エリー、これリリースされた時にはこのガチャ無料なかったんだよ。今では初心者にプレイしてもらいたくて実装されたの。リリちゃん、いつだっけ?」

 

「確か半年記念のアップデートじゃなかったかな。既存プレイヤーにも10連ガチャチケットをそれぞれ配られたので誰も損しなかった改修ですね」

 

「へ〜。運営のサービスが良いと続けたくなるよね。じゃあまずはキャラの方からで良い?最高レアリティって星5でしょ?演出あるの?」

 

「回した直後に現れる空島が虹色に光れば星5確定で、あとはさっきのヒロインが出てくる演出はピックアップ確定だよ。こういう無料系のガチャだと星5が確定になる感じかな」

 

「じゃあ回す、前にリリくんを拝んでおこう。良いの出ますように」

 

「それ、要ります……?」

 

『要る(鋼の意志)』

『今日のお役目でしょ』

『リリがいるガチャ配信って久しぶりだったり?』

『うおおおおお!教祖様がいるなら俺も回すぞー!』

『リリ教はまだ健在だったか』

 

 そういえば誰かのガチャ配信に呼ばれるのは久しぶりか。今月は本当にそれどころじゃなかったからな。

 先月は結構お呼ばれされた気がするけど。

 というわけで霜月さんがチケットを使ってキャラの10連をしたらヒロインがドアップでこちらに笑いかけてきた。今回はピックアップガチャじゃないために星5確定だ。

 

「リリちゃんやった?」

 

「良い結果をやったって言うのはどうなの?」

 

「あ、凄ーい!虹色の球が2つある!星5が2人いるってこと?」

 

「リリちゃん?」

 

「冤罪だ!金色が3つ見えるのも僕のせいじゃない!こんなの自分でやりたいくらいだ!」

 

『リリ……(白目)』

『1発目はやめろよー。露骨じゃないか』

『まあまあ、これ恒常の闇鍋ガチャだから。優良キャラが出るとは限らんし』

『星5は素でステータス高いから序盤こそ欲しいんだよなあ』

『ちなみにこれ、どれだけヤバいんです?』

『星5が出る確率が3%とかで、最低保証で星4が1体確定以外は他のソシャゲと基本確率は大差ない。2枚抜きなんて1年プレイしてるけど全然見ないぞ』

『あ〜あ。リリ、俺たちにもその運分けてくんね?』

『うおおおおおお!エリーと一緒に回したら俺も星5キチャー!リリ教最強!リリ教最強!』

『ここにも運を分けて貰ってるやつが……』

『俺も回そうっと』

 

 毎度思うが本当にこれって運の収束なのだろうか。俺の運が悪くて、その悪運を取り戻すような幸運によるぶり返しが俺と周囲の運が良くなる理由だって前に難波君が言っていたけど、それってこんな長期間続くものか?

 だって俺が俳優を辞めたのはもう八ヶ月も前のことだぞ?それでも幸運が続いてるってオカルトどころの騒ぎじゃないだろう。

 そう思ってると、スマホが振動をする。誰かからの連絡だろうかと一応見てみると、それは今思い浮かべていた人物からのメッセージ。

 

「難波明:職業変更という一生に関わる他人からの負債だから、俳優を続けていて得るはずだった良い物全部の運のぶり返しなんだよ。だから相当な幸運が降り注いで、そのキャパを君が受け止められないから周りにお裾分けしてるだけ」

 

「ええ……?」

 

「リリくん、どうかした?」

 

「友人からも運が良いねってメッセージで言われて。この配信見てるみたいです」

 

 思い浮かべた瞬間に本人からメッセージが来るって、オカルトどころか遠距離での読心に成功していないだろうか。流石にそれは怖すぎるんだけど。

 続いてメッセージで「未来を視ただけ」って来たけど、これもうホラーだよ。水瀬さんのスーツケースの件といい、疑ってはいないけどさあ。

 画面に目線を戻して、霜月さんが当てたキャラを見ていく。星5の中でもヒーラーとして優秀な『アンジェラ・ヒュライン』と、『アセム/ル/フェ』を引いていた。

 

「あああああああ!良いなあ、アセムだ!」

 

「うわ、びっくりした!リリくんの推し?」

 

「推しです。推しなんですけど……。かなりピーキーというか、なんというか……」

 

「必殺技を使わなければ超高火力遠距離型、紙装甲キャラってだけ。ちゃんとヒーラーと一緒に編成すればかなり強いよ。大当たりだね」

 

『アセムは、ぜひメインストーリーを進めてくれとしか』

『推しになるのわかる。あと編成しづらいっていうのも』

『まあ、ガンガン使うんですけどね!強いし!』

『リリも使ってるからモーマンタイ』

 

 実装された時に課金してまで手に入れたキャラだ。それが無料で出てきたとなったら、ねえ?

 星4のキャラも結構粒ぞろいな感じだ。最初の10連という意味では大当たりだろう。

 改めて当たったキャラを確認していき、3Dモデルや能力を確認していく中で、とあるキャラが気になったのか霜月さんの手が止まる。

 

「あれ?『アセム・クロウ・ル・フェ』?さっき星5で当てた『アセム/ル/フェ』と名前が似てるし、もしかして同一人物……?けど自己紹介ボイスが結構違ったような?」

 

「アセム周りはメインストーリーの3・4章でガッツリやってるので、それで確認してください。このゲームは同一キャラ縛りとかがないのでアセムを並べて編成することもできますよ」

 

「声優はどっちもみーちゃんだね。キャラ分け凄いよねー。あと、『クロウ』ってキャラもやってるよ。私はそっちの方が推しー。あと『ヴィヴィ』ちゃんが一番好き」

 

「水瀬さん分かってるねえ」

 

「リリちゃんこそ。メインストーリーをやってたらそうなるでしょ」

 

「2人だけで分かる話禁止ー!」

 

『みーちゃんすげえよな。まだ高校生ってマジ?』

『ピピーっ!ネタバレ防止警察です!』

『お?エリー嫉妬か?』

『良いぞもっとやれ!』

 

 水瀬さんと盛り上がっていると霜月さんに注意される。危ない危ない、これ以上はネタバレになるところだった。ゲームを始めたばかりの霜月さんにこれ以上アセム周りの話をしたら大顰蹙を買う。

 それとアセム3キャラを演じてる声優の間宮光希君。ハピハピ先輩と一緒に見たズァークでも主人公をやっていたので演技を聞いたけど、凄い以上にやっぱり既視感が出て来る。

 彼、一世を風靡した天才子役、間宮沙希君だよなあ。苗字が同じだし、年齢も一致するし。でもそんな情報がネットに転がってるわけでもない。

 彼はかなりのカメレオン俳優だったから、演技を聞いただけじゃわからないのかもしれない。間違ってるかもしれないし、彼も公表しようとしていないから口に出すつもりはないけど。

 

「じゃあ次は武器ガチャ行こっか。キャラによって装備できる武器防具が決まってるから、できたらレアリティの高いキャラには合うレアな武器を着けたいかな。防具は男女と装備できる武器種で大体パターンが決まってるから、汎用防具が男女でいくつかあればって感じ。最悪武器と防具はイベントとかメインストーリーで貰えたりするから、おまけ程度で大丈夫だよ」

 

「気軽に回せるってことだね。じゃあ回そうか。行くよー!」

 

「あ」

 

「え、またヒロイン?」

 

『リリ……?』

『何やってんだおめえ!』

『ま、まあ武器ガチャはオマケだから。あったら良いくらいで……』

『リリ教に入信します。入信書はどこですか?』

『解散解散』

『リリのガチャ配信見てると毎度肩組めねえなって思うわ』

『↑身長的に無理だろ』

『↑物理的な話をし出したらそもそも本狸と会えねえだろ』

 

 今度は虹色が3つ、金色も3つ。

 霜月さんのコメント欄が俺のことを責めてくるけど、これにはちゃんと言い訳ができる。

 

「武器ガチャは星5の確率が10%でキャラよりも高めに設定されてるから!星4も確か20%でこっちは当たりやすいんだよ!」

 

「リリちゃん、それでも3つずつは出ないよ……。金3つだけならわかるけどさ」

 

「また当たりってこと?リリくん様様だね」

 

『武器の方は20連回せば星5がだいたい出るのは事実』

『割と良心的だな?武器にあまりガチャ石使いたくないし、頑張る人向けとか?』

『それでも虹3つはギルティ』

『あなたもこの配信の間にガチャを回しませんか?リリ様がいる間はピックアップ率、最高レアリティが格段アップ!当てたいキャラが当たるかも⁉︎この機会に是非、あなたもリリ教へ!我々は皆様の入信を心よりお待ちしております!』

『なーんかタチの悪いキャッチセールスみたいなコメント流れたな』

『今のスパムとか荒らしじゃないってマジ?』

『俺もリリ教入ろうかな……』

『まあ邪教じゃないし、こっちに痛手はないんだから入ったテイでガチャ回せば良いんじゃね?』

 

 これ本当に俺だけの運?霜月さんの運っていうこともない?

 彼女も俺みたいに会社がとんでもない目に遭ったという、同じ境遇の人物だ。その揺り返しが来ているんじゃ……。

 そう思ったらまたスマホが振動して、さっきみたいに難波君から。「正解。彼女も揺り返しで運が良くなってるよ」とのこと。もう突っ込まないぞ。彼には俺たちのプライベートはないらしい。恐ろしい力だ。

 武器と防具は、どのキャラに装備できるか、どれが相性が良いかまでは覚えてない。武器は拘っても防具は割とどれでも良いかなって思って適当に選んでいるので、相性がどうとかまでは考えていない。それでもほとんどのコンテンツがクリアできるんだから。

 高難易度イベントの時にどれを着けようかなと悩むくらいで普段はあまり気にしない。そのため霜月さんが出すレアな防具も男女どちらが着けられるかだけを気にして見ていた。

 そして最後の武器は、遠距離用の魔法使い用の長い杖だった。それを見た瞬間、俺と水瀬さんは叫んでしまった。

 

「ウッソ⁉︎『モルゴースの杖』だ⁉︎」

 

「エリー、それ大当たり!え、この20連完璧すぎない⁉︎」

 

「え、なになに?この星5の杖、そんなに凄いの?」

 

「それ、『ヴィヴィ』と『アセム/ル/フェ』にしか装備できない専用杖なんだけど、さっきエリーはアセムを当ててるから最適な杖手に入れちゃった、ってこと……」

 

「しかもその最後のパッシブスキルの、アセム専用の奴がアセムとすっごく噛み合っていて……。ヴィヴィよりもアセムに装備する人が多いくらいです」

 

「えーっと?『魔女の愛』?『アセム/ル/フェ装備時、必殺技使用時の戦闘不能回避(HP1の状態となる)、必殺技ダメージ50%UP、必殺技ゲージ50%チャージで戦闘開始、常時魔法威力30%UP』……?このゲームを始めたばかりのあたしでもわかるよ。ぶっ壊れ装備だね?」

 

「「うん」」

 

『それはそう』

『エッモ。エモすぎて心臓止まったわ』

『成仏してクレメンス』

『アセム引いてモルゴースの杖当たる?普通』

『配信者ってすげー』

『ただこの愛がストーリーで適用されたかと言うと……』

『ネタバレ厳禁だぞ』

『モルゴースの杖もだけど、ル=フェの杖もヴィヴィが着けた方が強いんだよなあ。なんだあのカップル。自分より相手のことかよ』

『相手のことを想っての行動だからな。あいつらの動機って』

 

 うーん、完璧なスターターセット。遠距離で超火力のアセム、ヒーラーとして初期から活躍しているアンジェラ、それに汎用の主人公がいるのでパーティーとしては完璧に近い。装備も中々だし、これメインストーリーでは基本的につまづかないんじゃないだろうか。

 で、今はアニバーサリー記念をやってるからこれだけじゃないんだよなあ。

 

「こ、ここから期間中1日につき10連ガチャを回せるんだけど、期間中にログインできていなくても回せる回数が累積されていってエリーの場合180連ガチャ回せるんだよね……。こっちも恒常ガチャだけど、さっきのアセムみたいにストーリーで追加されたキャラはほとんど恒常だからこっちで引けて……。まあ、こっちは特別ガチャだからキャラと装備がゴチャ混ぜなんだけど。一応キャラ5体、武器防具5つが確実に出るガチャになってるよ」

 

「そっかあ。ここから更に180連か。この無料ガチャは30日までなのでまだインストールしてない人は今すぐダウンロードしてね!始めるなら今!」

 

「あれ?この配信、プロモーション含んでたっけ?」

 

『リリが宣伝してるよ』

『キャラ100、武器防具100確定はマジでデカイ。被っても重ねてもっと強くできるし』

『なんだって⁉︎今すぐダウンロードしなくちゃ!』

『良い宣伝部長と良い客で草』

『実際始めるなら今すぎるんだよな。ストーリー進めるためのスタミナ半減だし、スタミナ回復剤もたんまり配ってるから』

『こんな太っ腹で運営に支障をきたさないんか?』

『どうせこの後の水着限定キャラで搾り取ってくるゾ。リリースして1ヶ月後の初めての水着ガチャ、めちゃくちゃやばかったからな』

『そうか。もう水着の季節か』

 

 なんとなく今のキャンペーンを宣伝してみる。本当に今がかなり始め得な時期で、ここを逃すとキャラが中々集まらずに武器も集めるのに苦労するだろう。

 今日は月末の金曜日なのでキャンペーンは今日を含めても残り3日しかない。だから興味を持った人がいるのならこの機会にやるべきだと思う。スタミナ半減に、強化アイテムによる獲得経験値の上昇、プレイヤーレベルのレベルアップ経験値増大などお得なキャンペーンが多い。

 大盤振る舞いすぎてこの機会を逃したら一気に効率が落ちるくらいだ。日替わりデイリーミッションも全部解放されているので初回クリア報酬のガチャ石なども集めやすく、貯めた石で周年記念の限定キャラを当てても良し、次に控えている水着ガチャに備えるのもよし、だ。

 そこから霜月さんのガチャ配信が始まるが、これがまた酷い。被りがあったり、初期の武器なので今の環境ではちょっと性能が低かったりするけど星5が複数当たり、コメント欄は霜月さんには祝福を、俺には辛口コメントが複数見受けられた。

 霜月さんのチャンネルだから仕方がないだろう。だとしても俺が責められるのはおかしいだろう。

 そして、120連目。

 

「ヴィ、ヴィヴィちゃん!さっきル=フェの杖も引いてたし、おしまいだよ!」

 

「あー、揃っちゃった。恒常でのランキングどころか、全体でも強キャラランキングに入るコンビが揃ったのでゲームクリアです。これでメインストーリーは敵なしですよ」

 

「アセムくんのヒロインキャラ?どう強いの?」

 

「近遠距離どっちも対応してるキャラは結構少ないんだけど、ヴィヴィちゃんはそのどっちもできるタイプ。魔法に回復に接近戦もできる万能キャラ。リセマラの狙うべき1人だよ」

 

「どれも能力が劣るわけでもなくて、どれも強いんですよ。正直1人で完成されているのでヴィヴィに慣れると他のキャラが使いにくくなるとは言いますけど、実際強いので楽になります。困った時に使うとかもできますし」

 

『マジでいると難易度が変わる』

『ヒーラーとしても高水準なのマジで助かる』

『近接性能4位、ヒーラー2位、遠距離性能2位とかいう本当に恒常で良いのっていう性能してるからな』

『万能すぎるだろ……』

『声優2人の熱演を聞いてメインシナリオライターが3章丸々書き直したら膨れ過ぎて4章にも続いた話好き』

『この2人のCV、どっちも高校生なんだよな。業界の未来は明るいって結構話題になってるらしい』

『若くて上手い子が増えるのは良いことや。ベテランばかりよりもフレッシュな空気も入れないと業界は死んでいくだけだからな』

 

 残りのガチャも引き終えて、キャラの強化に移る。初心者応援セットと、リリース記念のキャラクター強化アイテムなどを用いてキャラのレベル上げ、装備のレベル上げをする。限界突破とかスキル上げは素材が足りないので後回し。

 今日の本題のマルチをやる。結構な人数で討伐もできるものの、難易度も低いので3人で挑戦する。ダメージランキングで3位までに入ると報酬が増えるので、敢えて人数を増やさず戦うことで霜月さんに報酬を多めに渡すことができる。難易度が上がれば10人以上とマッチしないと厳しいけど、霜月さんが参加できるレイドのレベルなら俺たちだけで十分だ。

 霜月さんがアセムを、水瀬さんがヴィヴィを、俺がクロウを選択。超火力で速攻終わらせるパーティーだ。

 

「リリくんのクロウってキャラもアセムにそっくりだね?」

 

「CVも同じ間宮君ですよ。能力は星3のアセムの強化版みたいな感じです」

 

 あれだけ引いたのにクロウは引けてないんだよな。引いた時のアセムに対するセリフが楽しみだ。

 マルチレイドの一番簡単なやつをやったが、チュートリアル的な意味も含めて霜月さんのアセムの必殺技ゲージが溜まるのを待ち、トドメを刺したのは霜月さんだった。

 俺たちのキャラの方がレベルが高いのでダメージランキングでは俺たちの方が上だ。でもアセムの立ち回りと使い方を教えられたのでアリだろう。

 次のマルチでは俺と水瀬さんが吹っ飛ばして完全な姫プレイとなっていた。初心者へのフォローなんて手厚くするべきなんだから。

 個人でできること、大人数でやれること、優先すべきことを霜月さんに伝えて今日の配信は終わることとする。

 

「うん。これで伝えるべきことは伝えたかな。イベントは基本的にメインストーリーの1章をクリアしないと参加できないから、今からだとメインストーリーを進めるのが優先で、その後にイベントを進めるのが良いと思うよ。デイリークエストは一通りだけやって、石だけ回収しておくべきかも」

 

「できたら限界突破用の素材を集めるのを優先させたいですね。アセムとヴィヴィがレベル上限に来ているので、できたら素材を集めたいです。キャラの限界突破画面から必要な素材と集められるクエストが載っているのでそこから集めに行くと良いですよ」

 

「うん、2人とも今日はありがとー。リリくん、明日はFPS大会頑張ってね。試合は観戦してるよ」

 

「私も見てるよ〜。目指せ優勝!」

 

「ありがとう、2人とも。練習時間ならウチが多分ダントツだからね。プロチームに勝って決勝戦に出られるように頑張るよ」

 

 好きなゲームをただ布教するというのもかなり楽しかった。日付けが変わる前に配信は終わったので、今日はゆっくりと休もう。

 明日は決戦だ。

 

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