リーグ戦最終マッチ。プロのe-sports集団である『フラクティス』との3連戦。全員がFPS経験者であり、大会で入賞したりしている人たち6人で構成されたチームだ。FPS大会の団体戦などを一緒に戦っているメンバーらしく、連携も問題なし。簡単に言うとハピハピ先輩が6人居て、意思疎通にも問題ない6人組ということ。
しかもこっちで互角のはずのハピハピ先輩が一番ノーマルなキャラを強制されているのに、向こうは好きなキャラを選んでいいとされている。しかもキャラ被りあり。適性と好みにもよるが同じキャラ6体もあり得るわけで。
まあ、簡単な話が無理ゲーというやつだ。向こうは賞金をもらってそれで生計を立てている本物のプロフェッショナル。こちらも連携という意味ではかなりのものだろうけど、プレイヤースキルはかなり劣る。
e-sportsのプロとは言え、ゲームの種類もかなりあるのでプロと一言に言ってもかなり多分野に選手はいる。格ゲーだったり、それこそRPGの対戦モードだったり、狩猟ゲームにもプロがいるとか。
だけど今回の対戦相手は全員FPS関係者だ。専門の人もいれば、他のゲームにも手を出しているものの公式大会に出場経験がある人しかいないらしい。全員ハピハピ先輩が他のFPS大会で会ったことがあるようで、得意武器から癖まで結構教えてもらっている。
そんなハピハピ先輩の予想としては、相手はサポーターなし編成で来るらしい。
「サポーターなしですか?」
「全員が私以上のエイム力を持ってるのに、わざわざ火力が低くて周りの援護なんてしてくると思う?索敵を無しにしてでも全員アタッカーで来る方があのチームは強いんだよ。スナイパーのスコープで擬似索敵はできるから、数でのゴリ押しが最適解になりやすいんだよね」
「ってことはだ。向こうはスコープ越しでしか索敵ができねえ。こっちは索敵が可能。となると……」
「前線のウチらはなるべく見付からないルートを選択。その上で索敵による奇襲で数を減らす、そして前線組が雪崩れ込んで倒す。これがベストだね」
「じゃあ編成が当たってるか確かめるか。『ポイントマッチ』のフィールドは『宇宙第4前線基地』だな。スナイパーが活きにくいのはこれ、デメリットか……?」
このフィールドは他のフィールドと違ってエリアごとに区画が別れていて、その区画を超えて射撃ができないのでスナイパーがあまり役に立たないフィールドだ。対物ライフルによる索敵ができないし、長距離射撃がほぼほぼ意味がないのでスナイパーライフルがメインになる。
ここ、苦手なんだよなあ。エリアがブロック状になってるから全部が正方形で構成されていて、距離とかが肉眼でわかりやすい。その上で隠れる場所が少なく、いわゆるスナイプポイントが全くないのでスナイパーからしたらかなりやりにくいフィールドだ。
相手にスナイパーがいなかったら、特大のデメリットだろう。
「げ。相手スナイパーなしの全員アタッカー?ハピちゃんの予想的中かよ……」
「スナイパーがいなかったのは予想外だけどね。リリ君、徹底して遅滞戦闘。ハラスメントがメインで撃破までしなくていいから相手の足止めお願い。どうせBで戦うしかないんだから」
「了解です。射程の違いを見せつけてやりますよ」
『あれ?公式放送がなんか荒れてる?』
『なんかあったのか……?』
『リリには不利なフィールドかもしれないけどがんば!』
試合が始まる。ここはABCの3つのエリアしか存在せず、AとCはリスポーン拠点だ。Bがメインエリアで、たまに物資コンテナが置いてある以外には障害物も少ない、正直訓練場とあまり変わらないフィールドだったりする。
ユークリム先輩が出し惜しみもせずに索敵スキルを使う。そのおかげで相手の行動を読み取ってこちらの作戦を考える。
「え、ツーマンセルっぽい!2人ずつになって3方向に別れて移動してる!突出してるのはB-13辺り!」
「じゃあ近い方から倒していこう。リリ君、囮よろしく」
「はい。場所がわかってるならいけます。メガ粒子砲、セット」
『え、2人のために使うのか⁉︎』
『特大デメリットスキル付きロマン砲キチャー!』
『スキルの1つがこれで消えてるから、他のチーム誰も使ってないんだよなあ』
『基本キルとったもん勝ちの『ゼムキルオール』じゃないと使いづらいから……』
『味方にもダメージ判定あるせいで『ゼムキルオール』こそ使いづらいんだよ』
『あれ?公式大会では初か?』
『さっきは使う前に殺されたから……』
『あれはレインボードロップスがめちゃくちゃリリを警戒してたししゃーない』
『リリのスキルでマジ一発逆転あるからなあ』
俺は宣言通り、スキルのメガ粒子砲を発射する。これはその前列に対して極太のレーザー砲を放つというもの。距離は関係なくエリアの最奥まで届き、当たったら防御バフがあろうと倒せるほどの高威力だが、スコープで相手を見れないために照準があまりつけられないことと、味方にもダメージがあるのでしっかりと連携を取らないと巻き込んでしまうデメリットがある。
しかも『ポイントマッチ』だと味方をこのスキルで倒してしまうとマイナス5点というかなり大きい減点を食らう。味方も巻き込む系のスキルは他にもグレネードとかそれなりにあるので、それを『ポイントマッチ』で使う際には注意しないといけないんだが、意図的に狙わなければ俺のスキル以外は滅多に味方を巻き込まない。
それにこれを使うと、このルールマッチが終わるまで対物ライフルが使えなくなるというデメリットもある。正直対物ライフルは色々と便利なので失いたくないのが本音だ。スナイパーとして一番遠距離まで届く武器を失うのは厳しい。あとは終了2分前以降にはこのスキルが使えない欠点もある。
スナイパーがスナイパーを倒せなくなるという一番まずい状況ができてしまったら一方的に蹂躙されるだけ。
ロマン砲と呼ばれるわけだ。
「2人キル!排熱による行動不可残り8秒!これから後はスナイパーライフルでハラスメントに努めます!」
「リリナイスぅ!あとはオレらに任せな!ポラさん、仕掛けるよ!」
「おっしゃあ!ユークリムちゃんバフよろしく!」
「かけました!ハピっちとケピナ、そっちはよろしくね!」
「向こうがバフデバフなんてかなぐり捨てて来てるならさあ!こっちは最大に恩恵受けてぶっ飛ばしてあげるよ!ケピナ、姿が見えた途端デバフよろしく!あとは逃げて!」
「見せてみろ!お前が最強だと!」
回り込んで来そうな外側の2人組への対処にハピハピ先輩とケピナ先輩が向かい、真ん中の2人に対してはポラリス先輩、ジョン先輩、ユークリム先輩で当たる。俺が援護するのもこっちだ。
排熱によるスタンも終わって前線へ合流する。スナイパーライフルで立ち止まる必要はあるものの、それなりに狙える距離まで来て援護射撃を始めた。
「リリ、ナイス援護!」
「よっしゃあ!ダブルキル!ハピハピちゃん、そっちは?」
「もう倒せる!最初の2人がそろそろ復帰してくるから気を付けて!」
「ハピハピ、回復だ!こいつらを倒した後に索敵をする!」
「こっちも回復は使っちゃたからね!バフももう切れそう!」
「こっからは全員地力だよ!数的有利をずっと保ったまま、サポートの優位性を相手に見せ付ける!」
「「「おお!」」」
サポートによるバフデバフによってゲーム上では圧倒的に有利なはずなのに、相手のキャラコンが上手くヒット率が低かった。エイムも良くこっちも倒されてかなりの泥沼に。
こっちはサポートポイントでかなりポイントを稼ぎ、向こうはポイントの細かい計算なんてどうでもいいと言わんばかりにキルしか狙ってこない。サポートがいないためにそれはそうなんだけど、キルポイントとキルアシストポイントしか加算されていない。
こっちはアタッカーでもサポートスキルがあるキャラをジョン先輩が使っているために、細かいサポートポイントも加算されながら通常のキルポイントも合わさって割と接戦になっていく。
俺も前に出過ぎたからか、二回殺された。接近されたら上手い人には攻撃を当てられずにこっちは小回りが利かないために殺されてしまう。
早く終われと、誰もが思っている。最後の最後まで一発でも相手に当てて誰かが倒してくれることを願ってとにかく撃ち続けた。
Battle Endの表示が出るまでポイントは気にしていなかった。それでも67-84が出てウチの勝ちだとわかった瞬間に、エクリプスの面々が声を挙げる。
「おしおしおし!まずは1勝!」
「いやー、脳筋で助かったねえ。サポートポイントが高くなかったら負けてたよ。ユー、ケピナ。ありがとう。この勝利は2人のおかげだよ」
「やることをやっただけだ。キルを取られまくったから半々になってるかどうか……」
「私もめっちゃやられたー。やっぱプロって上手いねえ。もう少しで逆転だった」
「ハピハピちゃん、15キル⁉︎相手を2回半殲滅したってこと⁉︎ヤバくね‼︎」
「ヤバいですねえ。さすがウチのエース」
「エース!どこまでもついていきます!」
「我らがキャプテン様様だな。次もよろしく、ハピハピ」
「みんなで勝つの!ウチ1人じゃ勝てないんだから!」
『ナイスゲーム!プロに勝っちまった!』
『次も勝って決勝決めちまおうぜ!』
『水瀬夏希:みんなつよーい!もしかしてウチって最強⁉︎』
『最強だぜ、なっちゃん!』
『リリもアシストナイスー。いや、キル8はかなりやってんな?』
『いくら威力高めとはいえ、めっちゃキルしてるじゃん。最初の2キルもあるとはいえ』
『その倍キル取ってるハピちゃんヤバない……?』
『ヤバいから皆褒めてる』
2勝することが目的で最初の1勝を取れたのは大きい。
次の『エリアマッチ』で勝てたら決勝進出だ。フィールドは、『アレンシア大樹林』?知らないフィールドだ。ってことはこれがレインボードロップスさんたちがいきなりやらされた新フィールドなんだな。
「うわー。ここで新フィールド。マップの詳細もなしだと作戦も立てられないなあ。マップ把握後にリリ君とユーのペアとそれ以外っていうのは変えずに行こうか」
「りょ!せめてミニマップあれば作戦も考えられるのにねえ」
「一応リスポーン拠点がバラバラだった時用に、またオレとジョンで合流報告するか。めんどくさいマップだと嫌なんだけど」
「大樹林って名前だと、多分隠れられる場所多そうですよね。スナイパーでちゃんと狙えるかどうか……」
「ここを捨て試合にはしないよ。勝ってもう終わらせちゃお。向こうも知らないフィールドなんだから条件は五分だよ」
こっちは準備完了ボタンを押してマッチが始まるのを待っていたのだが、どうやら向こうの人が落ちたのか2人ほどルームから消えていた。プロが弱い回線を使っているのだろうか。
もし回線落ちしたらそのまま人数が少ないまま試合続行らしいけど、大丈夫か?変なイチャモンがつけられるような状態で勝ったら、勝利にケチが付かないだろうか。それが心配だ。
「うーん、もう試合開始時間なのにルームにも入れないってトラブルかな?運営に聞いてみるね」
「了解。ルームに入ってマッチ始まってから回線落ちならルールに書いてあるけど、そもそも回線落ちてたら試合始められないもんな」
「誰か、試合終わった直後にあの2人がルームにいたこと確認した?」
「終わった直後ならいたぞ。全員6人分の名前が表示されていた」
「そうですね。僕もそこは確認しています」
「ルール変更前に都合よく落ちる?2人も?」
確かに不審だ。ネットワーク環境がいつもと違うとかあるのだろうか。世界大会とかだと現地でプレイするのでラグがあったとか聞くけど、今回は配信者が多いので普通に自宅から繋げていることが多いはず。
試合中に落ちていて、1戦目が終わった後に復帰したとか?だとしても今も落ちている理由にはならないような気がする。
ハピハピ先輩が電話で状況を確認していると、いつの間にか2人がルームに復帰していて試合が始まってしまった。
「ハピハピ!試合が始まった!」
「え、うそ⁉︎あの2人が落ちてたんじゃないんですか⁉︎これって仕切り直し⁉︎」
「待て待て!なんでさっきとキャラが違う⁉︎マッチ中にキャラ変えていいなんてルールに書いてあったか⁉︎キャラ決めてからルームに入る設定だろうが!」
「あ、だから1回ルームから外れてたってこと⁉︎」
「試合時間になってもルームに入ってなかったんですよ⁉︎それで試合を勝手に始めて、その理由がキャラチェンジって公式大会的にどうなんですか‼︎」
ハピハピ先輩が運営へ怒鳴っている。問い合わせをしている間に試合が始まって、こっちは準備が万全じゃなかった。試合は進んでいてエリア確保のポップアップが表示され始めている。
こっちは状況の推移を見守るために動けなかった。運営と電話をしているのはハピハピ先輩だ。その判断が下るまで、というか不公平で試合は仕切り直しだろう。
「続行⁉︎こっちは動かずに待ってたのに、向こうが勝ってに始めて向こうが既に有利な状況で仕切り直しもなし⁉︎ふざけんなっ、それが公式大会を謳っていいの⁉︎ルームに入ってからキャラチェンジができない仕様で、時間厳守って言ってたのにフィールド見てからキャラチェンジを許可するって、それはどこに明文化されてましたか⁉︎問い合わせ中にマッチ可能にしていたこっちの落ち度もあるけど、相手の不手際なんだから相手が試合開始を待つ必要はあったでしょ⁉︎」
『え?仕切り直しじゃないの?』
『そもそもキャラピック変更がアウト寄りのグレーのはず。ハピハピからの説明的に待機場でキャラチェンジできない仕様上ルームから出る必要があるし、それってただの遅延行為。しかも入り直してたらプレイヤーが変わってるのかのチェックもしないといけないから普通の大会だったら絶対許可されない』
『回線落ち以外で復帰は基本認められないよ。替え玉問題があったからそこは公式大会であればかなり厳格』
『替え玉でやばくなったから公式大会とかでアカウントロックとかそもそも回線落ちしたらアウトとか、審査が厳し目になってる。運営側が結構対策はしてるけど……』
『さっきの初戦、レインボードロップスとの試合で使ってなかったキャラ使ってたんだよ。スナイパー普通に使ってたし。公式放送の方で最初のチーム発表の際に使うキャラも一緒に紹介されてたから、使ってるキャラ違うじゃんってさっき公式放送が荒れてた』
『今もめちゃくちゃ荒れてるぞ。エクリプスが動いてないんだから』
ハピハピ先輩がいくら抗議しても続行で変わらなかった。
向こうはすでに14%稼いでいる。時間にして1分ちょっと。なんだ、この格差は。
製品版が出ても絶対にやらないなと、決めた瞬間だった。
「……勝つよ。こんなクソみたいな逆境ブチ抜いてやる!ハンデ渡そうが勝てば良いんだよっ‼︎」
「ハピハピ、落ち着け。お前が怒ってエイムがブレたら勝てるものも勝てない。『エリアマッチ』だ、視界も悪そうなフィールドでエリアを確保したら通知が行く。ならやはりエリア確保はユークリムと私だけでやって、残りの4人で相手を殲滅しろ。リリも積極的にスナイパーを狩れ。……このマッチが終わったら抗議をするぞ」
「ケピナ、ごめん。…………ハーーーーーーーーーーーーー。胃がぐるぐるするけど、叩き潰す。2分のハンデ?20%エリアを奪われた?上ッ等‼︎アマチュアの、企業勢の誇りを!視聴者に見せつける!ウチらはライバーだ!配信者だ!敵にキレるより、圧倒的な不利をひっくり返す最高のエンターテイメントってやつを見せつけてやるよ‼︎」
「吐き出せ吐き出せ!今回ばかりは温厚なオレも許せねえ!結果で見せてやるぞ!」
「格ゲーでボコしてやりてえ!向こうの土俵に乗ってやったんだからオレの土俵でボコらせろ!」
「ここまでみんなをコケにされたらさあ!やり返しは正当な行為だよねえ⁉︎」
「こっちが練習の時からどれだけ理不尽に耐えてきたと思ってるんだ!これで同期までバカにされて、黙ってるわけがないだろうが‼︎」
「パッチが未完成な上にいきなり新フィールド追加とか、この対応とか!社会人としてもっと真摯に仕事しろよ!」
全員怒りが頂点に来ている。俺もキャラ崩壊とか気にせず鬱憤を叫んだ。
そこからはもうゲームに集中する。木が生い茂っていて視界がかなり悪いこと、エリアの広さは『大自然保護区』と変わらないくらい広いこと。そして索敵スキルで見付けた相手の情報などを連絡し合い、相手を攻撃して行く。
エリア確保はサポートの2人に任せた。こっちはとにかく相手を倒して相手のエリア確保を邪魔する。
『よっしゃあ!4人キルナイス!』
『前線いなくなったぞ!』
『リリがスナイパー1人排除した!』
『向こうはエリア確保をスナイパーがやってるからな。場所なんてバレバレよ!』
『リリは索敵スキルがないから場所がバレない。向こうはルールで勝つために場所を晒してくれる。リリの独壇場だぜ!』
『霜月エリサ:リリくんが抑止力になってるよ!相手のエリア確保、一気に遅くなった!』
『水瀬夏希:あと10%まで追いついた!頑張れー!』
「わり、やられた!あと2分だからオレもエリア確保に移る!」
「ポラ先輩、最後までありがとう!ここまでくれば十分……!」
「ハピちゃん危ない!」
「っ、ジョン先輩!ごめん庇ってくれて!リリ、2人であいつら全員潰す!」
「スナイパー排除しました!そっちに合流します!」
まずいまずい!ポラリス先輩とジョン先輩が一気にやられた!中央部分はもう相手を倒してエリアを奪うしかないのに、ここで一気に前線が2人欠けたのはキツイ!
「私が壁役になる!これ以上はただキルを取られるだけだ!ならハピハピが切り拓いたエリアを奪うしかない!」
「ケピナ、壁よりもエリア確保優先だからね!リリとウチ以外に確保は任せた!」
「「「「任せろ!」」」」
残り1分。空白エリアも無くなり、あとは全部相手からエリアを奪うしかない。5vs2みたいになっているが是が非でもエリアを確保しないと負けだ。ひたすら相手を倒して、倒して、倒して。
最後にハピハピ先輩の壁になって、ハピハピ先輩が前衛を全部消し飛ばして。最後のエリアを確保しようとするのを見届ける前にリスポーン拠点に戻ってしまった。
そしてハピハピ先輩のポップアップが出る前に、試合が終わる。
54-46。
あと少しの差で、勝てなかった。
「くそ、あと8%っ!」
「あぁぁあーっ!いっちばん悔しー!もうちょっとだったのに!ここで勝って終わらせたかった!」
「全然負けてなかった!新フィールドで全然ノウハウないのによくやった方だぜ、本当に!」
「ごめんなさい〜……。私がキルされてなかったらもっと確保が早かったはずなのに……」
「それを言ったら僕も全然敵の足を止められなかったので……。こっちで止められれば後方でのキルもなかったのに……」
「全員、反省は終わりだ。次の試合が始まる。
ポラリス先輩とハピハピ先輩が何度も台パンし、ジョン先輩が励まして、ユークリム先輩と俺が反省していたが、KP7先輩が柏手を2回叩き仕切り直し。
相手の遅刻を責めてこの結果なのだから、こっちはルールを守って堂々としていようということだろう。
3分あるから飲み物の補給とかあれば今の内にということで俺は冷蔵庫に仕舞っておいた冷えピタを取りに行った。物理的に頭を冷やしたくなったので文明の利器に頼ることにする。クーラーは寒すぎてリモコンを操作することになったらマズイのでやめておく。
『これ有効試合なの?エクリプスにハンデあって成立するわけ?』
『運営が続行って言ったからそのまま。中止なら運営側が止めてるはず』
『公式放送で続行って宣言したから有効試合だぞ。クソがよ!』
『最初の2分なければ実質勝ちでは?』
『運営の言い分だと、試合が始まってるのに動かなかったエクリプスの自己責任、だそうだぞ(白目)』
『『実質8分』と『世紀のクソ運営』がトレンド入ってんじゃん……。あ、悪口は書くなよ?誹謗中傷で訴えられたら負けるのはこっちだぞ』
『事実しか書かねーよ、クソ運営でしたってな!』
『コメント欄もSNSも阿鼻叫喚じゃん……。もしかして炎上商法狙ってる?』
『ナイナイ。純粋に運営の能力不足でしょ。ゲーム部分も企画部分も』
『スターティンクルの参加メンバーがお気持ち書いちゃってるからめっちゃ注目されてるじゃん……』
『気持ちはわかるよ?でもそれに便乗してファンらしき奴が運営叩きをしまくってる……。開示請求されない程度に批判してくれ』
冷蔵庫に入れておいたペットボトルのカフェオレをコップに移さずにそのまま口を付けてゴブゴブと飲む。一気に半分以上飲んで、首裏とおでこに冷えピタを貼り付けたところでスマホに電話が来た。
グループ電話。FORの奴だ。時間はないものの席に戻ってマイクをミュートにして受け取る。
「リリくん、えっと……」
「大丈夫⁉︎無理してない⁉︎このまま試合続けるの⁉︎なんかスタッフさんたちが抗議の電話をしてるみたいだけど……!」
「霜月さん、水瀬さん。心配かけてごめん。でも試合がすぐ始まるからさ。後で愚痴聞いてくれる?俺、割と限界っぽい」
「うんっ!いくらでも聞くから、負けないで!」
「リリちゃんの愚痴聞くのとか初めてかも?コメント欄は見てないだろうけど、そっちで応援してるから!」
「2人とも、ありがとう。──勝つよ」
通話を切って、ヘッドホンを付け直してミュートも解除して、戻ったことを皆に伝える。
今のところ1-1。しかも次は超短期決戦の、ミスを許されないラストマッチ。
全員が戻ってきたところで短いながらも作戦会議を始めた。
フィールドは『エリア666跡地』。レインボードロップスと『ポイントマッチ』で争った市街地の廃墟だ。