元俳優、タヌキVtuberに転生する   作:桜 寧音

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初心者向け!野球超基本講座・1

 食べられないけどタヌキだからという理由で持ってこられたペット用のご飯案件を一人でこなして金曜日の夜。今日はちょっと前に告知していたコラボの日だ。

 内容的に暇な人と興味ある人は来てくださいと伝えたら割と集まってしまったのが困りものだ。画面占有率という意味でも全員のライブ2Dを載っけると画面が狭くなりすぎるということで、通話アプリのアイコンだけで済ませることにする。

 当初の予定だとドロッセル先輩だけとのコラボ予定だったんだけど、ドロッセル先輩が他にも知りたい子がいるかもしれないからと全体周知をしたら案外集まったというのがオチだ。

 ドロッセル先輩は必要になったから知識をつけるついでに配信にしてしまおうとした結果、興味があった人は来たって感じだ。

 時間になったので挨拶をする。

 

「皆さん、こんばんは。絹田狸々です。今日はね、もう始まっている高校野球だったり、プロ野球のオールスターがもう少しだったり、それこそオリンピックも始まるので野球のルールがわからないと楽しめないよ!って人向けの野球のルールについての超基本的な講座をやりたいと思います。経験者の人とかに最初に言っておきますけど、インフィールドフライとか故意落球とかは説明しませんのでご注意ください」

 

『リリこんばんちゃ!』

『OK!まあ、初心者講座って銘打ってるし』

『コリジョンルールは?』

『報復死球による退場は?』

『ボークもなし?』

『ボールデッドとボールインプレーは教えないと動けなくね?』

『実際にプレイするんじゃなくて観戦に必要な知識ならボールデッドなんて要らないだろ……』

『お前らさあ、どれもこれも基本的なルールじゃないんだよ』

 

「コメント欄の皆さん?超基本なことって言ったばかりですよね?審判が判断したりする条件とかは絶対に話しませんから」

 

 天邪鬼なのかコメント欄に難しいルールが羅列されていく。だから説明しないと言ったばかりなのに。あくまで観戦する分にはそこまで細かいルールは教えなくていい。

 一番この知識が必要で教えなくちゃいけない対象のドロッセル先輩も、結局はゲームがオートでやる(・・・・・・・・・・)から用語と簡単な試合進行を教えればいい。

 コメント欄はアレだ、この場所を大喜利会場だと思ってるに違いない。アーカイブを見直したら面白いコメントが付いてたりするのでそういう文化を楽しんでいる人もいるのだろう。

 配信にあまりにも関係ないことを呟いてない限り対処はしないのでコメントで楽しんでいる分にはあまり注意したりしない。

 ライブ配信中に付けられたコメントが多いと動画サイト側がホーム画面にピックアップしてくれるので、コメントを打ってくれることはとてもありがたいんだけど。限度もある。関係ない話題だったら炎上していると受け止められかねない。

 

「まあ、いいでしょう。じゃあ生徒の皆さん、デビュー順でお願いします」

 

「皆さんこんばんは。1期前半組のドロッセルです。私が野球のルールを知りたくてリリさんに声をかけました。先生、今日はお願いしますね」

 

「はい、こちらこそ。続いて?」

 

「2期前半組、我こそは宇宙からの這い寄る混沌、イソラ・イグスートスだよ。いつかスポーツで地球を侵略するのも良いかなと思ってメジャーなスポーツの野球を学びに来たってわけ。続いて同期」

 

「エクリプスの名探偵とはワタシのこと!音無ケインです。野球の知識が事件解決の糸口になるかもしれないので教わりに来ました。こう見えても知識欲旺盛なのでね」

 

『ドロッセルも起案側か。メジャースポーツだし、最近のスポーツニュースは野球ばっかだからな』

『メジャーリーガーがね……。暴れ過ぎなんよ』

『イソラっち、スポーツによる侵略はギャグ漫画じゃねーか』

『お前、ホビー漫画やアニメを見ても同じこと言えんのかよ!アイツら真面目にホビーで世界征服しようとしてるぞ!』

『世界観によったら全然ありってことだよなあ』

『こう見えて知識欲旺盛って、探偵やる奴は雑学もできないとダメに決まってるだろ。どんなものが事件の道具にされるかわからないんだぞ!』

『そういや昔、元プロ野球選手が犯人の探偵ドラマあったなあ。その役を当時の現役メジャーリーガーがやってて驚いた覚えがあるわ』

 

 先輩方はここまで。次は同期から後輩だ。

 

「皆さんこんばんちゃ!リリちゃんの同期の水瀬夏希です!リリちゃんが『ウルプロ』をめちゃくちゃやってたけどあんまりわからなかったので今日の配信で野球を覚えてリリちゃんのアーカイブ見直したいと思います!」

 

「こんつき〜。リリくんの同期、FORのO担当霜月エリサです。最低限の知識はあるんですけど間違ってたら嫌だなと思って参加しました。お願いします。続いて一番の新人の?」

 

「3期後半組の但馬火乃香です!野球は野球拳のことしか知りません、対戦よろしくお願いします!」

 

「野球関係ないねえ。以上7名でやっていきます。人数の都合上皆さんの立ち絵は出せませんのでご理解お願いします」

 

『FOR勢揃い。仲良いなあ』

『女性多くね?』

『男どもは体育でソフトボールとかキックベースやるから何と無くわかる。ゲームでそれこそ『ウルプロ』やってる奴もいるだろうし。現実ではやってないけどゲームだとやったことあるスポーツとかあるだろ』

『但馬?これもしかして説教案件か?』

『酒好きだからって野球拳はさあ……』

『この子、いつもリスナーに怒られてるの?』

『そうだよ。羽目を外しすぎて怒られてる。配信中はだいたいお酒入ってるし』

 

 全員の自己紹介が終わったので配信画面を動かす。『野球超初心者講座!』と書かれたロゴだけが白い背景に浮かんでいる画面から動かして、早速試合のルールについて書かれたスライドを見せる。

 スコアボードの簡単なものと、文字が書いてあるスライドだ。

 

「ここから早速僕が野球について教えていきます。スライド終わりになったら質問コーナーを設けるので、わからないことがあったらすぐに発言してください」

 

「はーい、パパ!」

 

「水瀬さん、今日は先生と呼ぶように。じゃあまず試合の大前提からですね。野球は両チームで攻撃と守備を交互に繰り返します。表と裏を1イニングずつ、9回まで試合をやって点数が多い方が勝ちです。1イニングは3つのアウトを奪うとチェンジ、つまり相手より多く点を奪って27個のアウトを奪うことが基本的な勝利条件です。小さく注釈で延長とかコールドとか書いてありますが、これは次のスライドで話すのでお待ちください。ここまでで質問はありますか?」

 

「はーい。サッカーやバスケみたいに時間制限とかはなし?」

 

「ないですね、イソラ先輩。テニスみたいに試合形式が決まってるスポーツです。細かいことを言うと時間制限みたいなこともあるんですが、本当に細かいルールなので気にしなくて大丈夫です」

 

 パパと呼んだ水瀬さんを注意しつつ、試合形式について説明する。

 早速イソラ先輩から質問が来たが、正直この質問はかなり大事だ。高校野球では大会の運営的にタイムスケジュールはかなり厳しく設定されているし、メジャーではピッチクロックと言う投手がボールを持ってから15秒以内に投げないといけないというルールがある。

 それに今日は説明するつもりはないが、ランナーがいる状態でピッチャーが一定時間バッターへボールを投げなかったらボークを取られてランナーが進塁してしまうというケースもある。野球にも時間という概念はあるものの、ほぼ気にしなくていいルールだ。

 

「他に質問は……ないようですね。じゃあ次に延長についてです。9回までに決着が付かなかったら最長15回まで続けます。高校野球だと10回になった時点で1・2塁にランナーがいる状態で攻撃が始まるタイブレーク制度もあります。ランナーについては後で話しますので、簡単に言うと点を取りやすい状態にして決着を早めるための制度です。コールドはこれも高校野球で6回終了までに10点差以上、もしくは8回終了までに7点差以上付いていた場合強制で試合が終了します。実力差がありすぎて試合が終わらないと言うことを避けるためのルールです。40点以上差が付いて終わる試合って高校野球だと珍しくもないので……。ここまでが試合の特殊ルールについてですけど、質問のある方?」

 

「あ、サヨナラとかって教えてもらえるのかな?ほら、ニュースで羽村選手がサヨナラホームランを打ったとかで今日話題になってたから。あれってどういうこと?」

 

「良い質問です、ケイン先輩。それは次のスライドで話すつもりだったのでこのスライドで質問がなければ次に行っちゃいましょうか?」

 

『そういや今日サヨナラスリーラン打ってたな、羽村』

『奴は世界最強のキャッチャーよ』

『打者括りでも今年は最強だろ。去年はメジャー初挑戦だから慣れない環境ってのもあるし』

『慣れない環境で打率0.311、ホームラン38本、114打点はバケモンなのよ』

『現時点だけど、ホームランと打率はメジャートップだぞ』

『羽村やっば。これで負担の多いキャッチャーってどういうこと?』

 

 他の人の質問がないようだったので次のスライドへ。

 最近の日本人メジャーリーガーは誰も彼も活躍してるからすごい。朝のニュースとかだと大体どこの局でもメジャーリーグ速報をやっている。それだけ世界最高峰の舞台で活躍している選手が多い。

 このスライドはまさしくサヨナラ勝ちについて。

 

「野球にはサヨナラというルールがあって、裏の攻撃で勝ち越しの1点が入るとそこで試合が終わるんですね。9回以降ならもちろん、コールド条件もこれで満たせるので7回とかに7点差が付くことになったらそのまま試合終了になりますね」

 

「へ〜。ということは裏の攻撃の方が有利だったりするのかな?」

 

「基本はそうですね、イソラ先輩。なのでプロ野球だとホームグラウンドのチームが後攻になりますよ。その他だとジャンケンが基本ですね」

 

 スポーツで他に後攻が有利なものって何があるだろうか。大体先攻の方が有利になりやすいはずなんだけど。

 ひりついた試合だとこのサヨナラが起こるかどうかが注目される。特にサヨナラホームランは劇的なために大々的に報道もされる。

 

「次に基礎的な用語ですね。グラウンドのこの五角形を逆さにしたもの。この場所がホームベースで、ここからスタートしてこのホームベースに帰ってくると1点が入ります。このホームベースから右手側にある1塁ベースをまずは目指します。次がこの中央の2塁ベース。更に次が左側のここ、3塁ベース。この3塁ベースの次にホームベースを踏むと1点が入ります」

 

「じゃあそのグラウンドを1周したら1点ってこと?足が速い人が有利?」

 

「有利だね、水瀬さん。足が速いとそれだけで有利だから、ユーティリティープレイヤーって呼ばれる人は足が速いのも必要って言われるね。まあ、ここを走って1周しなくても、ホームランを打つと歩いて良いから足の速さは関係なくなるよ」

 

「ホームランが凄いとは聞くけど、ホームランって何?」

 

「簡単に言うと柵越えのことだよ。ノーバウンドで外野……。ここのフェンスを越えたらホームランだね。今ちょっと『ウルプロ』のゲーム画面を見せます。これ、守備練習の画面なんですけどホームラン打ちますね」

 

 水瀬さんがホームランがわからないということだったので説明用に起動しておいた『ウルプロ』の画面を見せる。守備位置の説明をするために『ウルプロ』を用意しておいたのが良かった。

 守備練習で好きなところに打球を打てるんだが、ノッカー(ノックを打つ人)のパワーを全開にすればホームランを打てる。実際に打ってみてレフトのスタンドを超えていく打球を打った。

 

「これがホームラン。ホームランだとランナーがいればその人数とバッターの数の合計で点数が入ります。最大4点ですね」

 

「これ以外だとコツコツとベースを一周するしかない感じ?」

 

「そうですね。霜月さんの言う通りまずは出塁をしなければならないんですけど、攻撃の前に守備を見ましょうか」

 

 一度スライドに画面を戻す。

 27個アウトを取ることの方が大事かなと思う俺からすると、守備についての説明の方を優先したい。

 

「次は守るべきポジションです。投手、ピッチャー。この人が投げないと野球が始まりません。このピッチャーが投げるボールを受けるのが捕手、キャッチャーです。このキャッチャーから見て右方向の近い人から順番にいきます。1塁ベースに一番近い一塁手、ファースト。2塁ベースの近くを守る右側のポジション、二塁手、セカンド。2塁ベースの左側を守る遊撃手、ショート。3塁ベースの近くの三塁手、サード。ここまでの基本的にグラウンドの土の部分を守っている人たちを内野手と呼びます」

 

「近くの人の方が多いんだ?緑のところを守ってるの、3人だけ?」

 

「外野は3人ですね、ドロッセル先輩。外野手は左からそのまま左翼手、レフト。真ん中が中堅手、センター。右側が右翼手、ライトです。やっぱり見てわかる通り広いので足が速い選手が配置されやすい傾向にあります」

 

 これ、本当に絶妙な守備位置だと思う。これ以上多かったらヒットなんて産まれないだろう。昔のテレビ番組で2塁ベースにもう1人、そして外野の間に2人足してみたらヒットは産まれるのかって企画をやっていて、1・3塁線を抜けるような当たりか、フェンス直撃のものくらいしかヒットにならないみたいな検証結果が出ていたはずだ。

 細かい説明というよりは、どうやったらアウトにできるかの話をしていこう。

 

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